
約束だよ
必ずまた
会いに行くよ
■サイハテと呼ばれた地にある調査機関「スフィア」。そこには養成学校があり、ブルーチルドレンと呼ばれる子供たちを育成していた。彼らは、特殊能力を植え付けられた子供たち……。しかし、その施設は3年前、爆発事故を起こし、その姿を失った……。
冬芽沙也先生の2冊目の単行本です。「最果てのアオ」ってタイトル、なんか聞き覚えがあるなと思って考えていたら、「死にぞこないの青」が出てきました。全然似てなかったです。さてそんな話はさておき、内容をご紹介しましょう。主人公のハルは、3年前に事故によって記憶を無くし、今は元警察官の青年・霧生に引き取られ日々を送っている学生。楽しい友達たちに囲まれ、思い出せない過去は気になりつつも楽しく生きていました。そんな彼の日常が変わったのは、社会科見学で“サイハテ”と呼ばれる地を訪れてから。サイハテにある特殊調査機関「スフィア」の跡地に既視感を覚えたハルは、その夜得体の知れない何かに襲われ、見知らぬ少年に助けられる。混乱している中ハルは、自分がスフィアで秘密裏に育成された子供であり、死なない身体の持ち主であることを聞かされる……というあらまし。

突如襲われ、わからぬままに守られたハル。この夜を境に、一気にハルの日常は変わっていくことになる。
ゼロサム(本作はWARDですが)らしいファンタジー作品です。物語背景をざっくりとまとめると、調査機関「スフィア」という怪しげな組織が秘密裏に優れた資質(特殊能力:ブルー)を持つ子供たちを生み出し育成していたものの、3年前に証拠隠滅(?)のために建物もろとも組織は解体。主人公であるハルはその子供で、何やら大きな秘密を握っている模様。当然そんな彼は様々な者から狙われるワケですが、一方彼を守ろうとする者たちもいます。それが彼の保護者である霧生であり、クラスメイトに扮して彼を見守る、スフィアで育った子供であり。またこの世界は厳密に区域分けされ、ハルたちが暮らしているのはいわゆる富裕階層。その近くには貧困層が住む地域があるものの、決して出入りは出来ないようになっているのですが、その辺りもスフィアの設立背景と絡みがあるようで、おいおい明らかになって来そうです。こうした舞台背景からもわかる通り、いわゆるディストピアものの要素を多分に含んだ物語設定で、個人的には大好物の部類。コミカライズ作品ではありますが「No.6」(→レビュー)が完結してしまった中で、本作が登場してきたのはまさに日照りに雨とでも言いましょうか。
先述したハルを守ってくれる同級生は2人。一人はぶっきらぼうでいかにも不器用という感じの男の子・冬馬。もう一人は女の子で、独特の性格の持ち主である螢。男子の友情的なパートは冬馬との絡みで補給し、男女のアレコレは螢との絡みから、と少ないながらも抜かりない配置。螢に関しては物語途中から同居することになるので、これは色々とイベントを期待できそうです。

この螢がなかなかの変わり者で、ハルへの思いの強さは人一倍。ただそれが恋愛感情かというとそうではなく、執着とか信奉とか、そういう類の感情のような印象が強いです。
ゼロサムに限らずこの手のファンタジー作品でありがちなのが、序盤にあれこれ登場人物や特殊設定を投入しすぎた結果、読者に不親切な内容になり振り落とされてしまうというパターン。そんな中で本作は、比較的一般的(細かい説明不要)な中二要素・ワードで背景を構成しているからか、無理なく物語を説明・展開できている感があり、読者がついていきやすい部類に入るのではないかと思っています。あくまでゼロサム比ですけれども。あとは広げた風呂敷を無理なくたためるか(=ある程度連載が続くか)が鍵となりそうですが、そこは祈るのみ…と。
【男性へのガイド】
→絵的には女性向けの耽美な風合いは少なからずあるため、そこが一つハードルになるでしょうか。物語自体は中二好きしそうなファンタジー作品ですので、男女というよりもむしろそういうのが好きか否かかな、と。
【感想まとめ】
→非常に好きな設定の作品なので、是非とも続いてほしいところです。面白かったです。
作品DATA
■著者:冬芽沙也
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサム
■掲載誌:ゼロサムWARD
■既刊1巻
■価格:580円+税
■試し読み:第1話(Pixiv)
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