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Tag [新作レビュー] 2011.08.26
1106035724.jpg藤村あゆみ/霜月はるか「グリオットの眠り姫」1巻


世界はキレイだし
めっちゃ広いんだぞ!



■人里離れた深い森の中の村で暮らす、ライルとシトラ。狭い世界から出たいと願う、二人の幼なじみ・エルフィンは、外の世界に憧れ、ライルに村から出ようと誘う。大きな出来事は何もないけれど、それなりに楽しい日々。しかしそんな日々は、ある日突然打ち壊される。何の前触れもなくやってきた、黒騎士たちに、村はめちゃくちゃにされ、エルフィンも殺された。そして残されたライルとシトラは…

 「ティンダーリアの種」(→レビュー)のタッグが贈る、ファンタジック冒険活劇でございます。前作「ティンダーリアの種」が非常に自分好みであったので、今回も迷わず買ったのですが、戦いの描写が殆どなかった前作に比べ、今回はまさに「RPG」という感じの、ファンタジックな世界を舞台にバトルメインで物語は動いて行きます。主人公は、とある辺鄙な村に育った少年・ライル。彼が普段仲良くしているのは、同じ村に生まれ育った二人の男女。唄が上手いけれど、肝心の試験ではなかなか上手くいかないシトラと、外の世界に強い憧れを持つエルフィン。お金の概念すらない田舎町で、平穏な日々を送っていた彼らですが、そんな毎日はある日突然崩れさることになります。突如現れた黒騎士の集団。そんな彼らが狙うのは、何故かシトラ…そして彼らの持ち物から臭うは、数年前に町を離れた歌い手・ローザ。シトラを守るため、エルフィンは黒騎士の前に立ちはだかるも、力が違いすぎる。結局彼は、外の世界に行きたいという願いを叶えることなく、その命を落とすのでした。どうしてこんなことに…友の死と、渦巻く謎を前に、ライルは村を発つ決意をする。そしてそんな彼の背中を追うように、シトラもまた外の世界に足を踏み入れる決意をするのだった…。


ク#12441;リオットの眠り姫
たびたびシトラの歌がポイントに。歌ありきですから、ライルとシトラの活躍の場は意外にも半々くらいです。


 単純に力比べでのし上がって行くようなお話ではありません。ドラマCDというかヴォーカルCDがメインであり、原作となるため、物語には自ずと“歌”という要素が登場し、重要な要素として位置づけられます。シトラをはじめ、この村出身の歌い手が歌う歌には、特別な力があり、ひとたび感情を込めて歌えば、様々な現象が起こります。しかしシトラは、その力を自在に操るほどのスキルを持っておらず、まだまだ修行中の身。そんな彼女がスキルを磨くには、もちろん練習も必要ですが、それ以上に精神的な拠り所が必要となります。そしてその役目を果たすのが、主人公のライル。彼もまた、剣術の才能はあるものの、荒削りで強いとは言えないレベル。そんな二人が、同じ想いで村を飛び出し、新たに経験しはじめて出会う町・人・ものに影響を与え、また逆に受けながら、成長を重ねて行く姿は、こういった世界観であるからこそ与えられるのであろう前向きさや力強さを感じることができます。
 
 私はRPGをそんなにやったことある方ではないので、そういった視点からこの物語のストーリーの良し悪しを語ることはできません。とりあえず1巻終了時点でわかるのは、まだ一つ目の町でのイベントをクリアしたばかりということ。さすがに長編RPGのようにイベント盛りだくさんということはないでしょうが、それでもなお序盤という感は強く、物語がどう転がって行くのかというところまでは、なかなか想像ができないです。こういった系統の物語がお好きな方であれば、多分安定して楽しめると思います。ひと捻りふた捻りしたファンタジー作品が多い中、ここまで気持ち良くRPGのそれを体現しているというのは、良いことだと思います。表紙に、タイトルにビビッと来た方は、たぶんそういう系統お好きでしょうから、チェックをば。


【男性へ向けたイド】
→このストーリーであれば男性でも全く問題ないかと思われますよ。
【感想まとめ】
→こういう系統の物語についてはあまり明るくないのですが、普通に世界観を理解し、楽しんで読むことができました。作りはしっかり、物語が描き出していることをちゃんと受け取り堪能することができるようになっています。


作品DATA
■著者:藤村あゆみ/霜月はるか/日山尚
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税


■購入する→藤村あゆみ/霜月はるか「グリオットの眠り姫」1巻

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Tag [新作レビュー] 2011.07.30
1106035672.jpg群青「ノッキン!」1巻


すまない
帰してやれなくて…



■国で五指に入ると言われる名家・クロイ本家。その家の後継候補でありながら、その権利を捨てとある屋敷の所有権のみを手に入れた少年・モモ。しかしその屋敷には、すでに見目麗しい男女たちが住み着き、生活を謳歌していた。しかも彼らは人ではなく、世の中で「マガモノ」と呼ばれる存在。少年・モモは、マガモノが好きではなく(嫌いでもないが)、自分に刃向かうマガモノは全て消し去ろうとしている。そんな彼がロータス館の愉快なマガモノ達に出会ったら…!?

 「橙星」(→レビュー)などを描いておられる、群青先生のゼロサムでの新連載になります。いつもの群青先生のテイストたっぷりの、ファンシーで、だけどちょっぴりダークな異世界ファンタジー。物語の舞台となるのは、とある国にあるとある屋敷。そこには「マガモノ」と呼ばれる存在が住み着いており、街の人々と共に共生しています。そんな平和な屋敷にやってきたのは、国でも五指に入る有力な名家・クロイ家の後継候補の一人・モモ。見た感じ粗雑で乱暴な少年・モモは、後継者となる権利を捨て、「マガモノを根絶やしにする」ために、この屋敷にやってきたそうなのです。なんとも奇妙な存在である、マガモノの正体、そしてそんなマガモノが住み着く屋敷にやってきた変わり者の少年の、おかしく賑やかな毎日が、始まります。
 
 「マガモノ」ってなんなの?というところなのですが、簡単に言うと、異世界にいる存在の魂を、この世界に存在させるために現実世界の“物”にその魂を移したもの。ちょっとニュアンスは異なりますが、物に魂が宿ったというのが近いでしょうか。雨隠ギド先生の「やさしさにふれてよ」(→レビュー)の付喪神とか。見ためはまんま人間。ただちょっと、変わり者が多いような気もします。個人的には難しい漢字は全然わからない、筋肉バカのタイコがお気に入り。もう流れとかガン無視で場を引っ掻き回すその奔放さが、たまらなく魅力的です。


ノッキン
その屋敷で生まれたマガモノは、やがて寿命を迎えると、この屋敷に戻ってくる。そしてまた、元の世界に帰るのです。


 「形あるものいつかは壊れる」と言うように、物に宿っている以上、宿主である「物」の寿命が来れば、マガモノ自身もその形を保っていられなくなります。そうなったマガモノは、化け物のように形を変え、時に人を襲い、そして最後は生まれたお屋敷へと帰ってくるのです。物語の舞台となるのが、そのお屋敷。「マガモノ」として一義的に捉えられることの多い彼らですが、この場はマガモノにとってはちょっと特殊な場所であるため、様々な表情を見せることになります。それが、物語における一つのミソ。
 
 物語では、そんなマガモノたちの愉快な毎日が描かれるのかというとそうではなく、どちらかというとマガモノに恨みを持ち、殺意たっぷりに現れる少年・モモの成長・変化がメインとなります。クロイ家の血筋というだけで、マガモノに襲われることが多いのですが、屋敷に来てみたら、なんだかそうじゃないマガモノがいっぱいいる。触れ合いを通して、そのギャップと、彼のルーツと、そしてマガモノのルーツを知り、そして自分なりに消化し、向き合っていくのです。無表情なその裏で揺れる感情の機微を、行動から読み解く味わい深さが良いですね。

 さて、毎度毎度群青先生の作品をご紹介する時に、この言葉を使っている気がするのですが、「基本的に物語背景の説明が後手後手になり、非常に不親切でわかりにくい物語」に仕上っております。今回も「マガモノ」という特殊な存在が登場する、独特の世界観の中物語は展開され、パッと見とっつきにく感が。けれどもこういうお話を描くところも含め、群青先生の作品の魅力でもあるわけで、私は大歓迎でございます。あと今回は、他の作品に比べると、比較的親切。メタ発言を繰り返す家主がいたり、しっかりと説明パートが入ったり。今までの作品は、賑やかにしつつもその裏にある暗い部分やシリアスな部分が邪魔して、安易に説明できない雰囲気があったようにも映るのですが、この作品についてはダークな部分は比較的抑えられていて、安心して読む事ができます。あ、でもちょっととっちらかってる感は拭えず。たぶんわざとなんでしょうけど。


【男性へのガイド】
→群青先生ってどうなんでしょ。あんまり男性読んでるイメージないですが、っていうかそもそもそんなにメジャーでないのか。
【感想まとめ】
→群青先生のやり方でありながら、テイストは若干異なる印象。ややとっちらかった1巻を、2巻以降どうまとめ掃除するか。今はまだ、キャラ頼りで物語が本格的に動いてきていないという印象です。


■作者他作品レビュー
鉢植えの根元に住む、手のひらサイズの女の子:群青「こいし恋いし」1巻
*新作レビュー* 群青「獏屋鶴亀放浪ノ譚」
*新作レビュー* 群青「黒甜ばくや薬笥ノ帖」
半人半妖の“しましま”たちと、人間たちが住む町で…:群青「しましま」


作品DATA
■著者:群青
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.07.05
1106035677.jpg高河ゆん「佐藤くんと田中さん-The blood highschool」1巻


あんなの反則だ


■佐藤くんは吸血鬼…転校してきてすぐにそうだと気づいた田中さんは、早速佐藤くんを呼び出し、自分の願いを叶えてもらおうとする。「佐藤くん、アナタを吸血鬼と見込んでお願いがあるの。。。」。そんな田中さんに、佐藤くんは「田中さんってアタマおかしいの?」。それでも引かない田中さん、強引に家に連れて行ったら、あれ佐藤くんが正体を現した!?しかも彼の狙いは、田中さんじゃなくて、田中さんのおばあちゃん!?あれれ、どうなる?吸血鬼ラブコメ、開幕!

 高河ゆん先生による、新作ラブコメでございます。一迅社で高河ゆん先生というと「LOVELESS」の印象が強いですが、「LOVELESS」はまだ連載中です!いや、別に何を言いたいとかそういうことはなくてですね…そもそも私、「LOVELESS」くらいしか高河ゆん先生の作品は読んだ事ないので、その本領というのを味わっていないというか。というわけで、「佐藤くんと田中さん」のご紹介です。一途でちょっと捻くれている吸血鬼の佐藤くんと、吸血鬼研究に明け暮れ人一倍ヴァンパイアに憧れるちょっとイタイ女の子・田中さんの二人が織り成す、ドタバタラブコメディでございます。


佐藤くんと田中さん
なるべく避けたい佐藤君、そしてなるべく関わりたい田中さん。田中さんの暴走によって、佐藤くんが迷惑を被るというのが一つのパターン。


 佐藤くんはこう見えても80年~90年くらい生きており、田中さんとは異なり様々な人と関わり、様々なことを経験してきました。今は流れ流れて学校に通っていますが、そうではないときもあったようで、彼のルーツは戦時中にまで遡ります。まだ生まれて十数年程度の彼が恋した相手、それが田中さんのおばあちゃん・文子さんでした。猛アタックをするも、結局彼女が選んだのは田中さんのお祖父ちゃん。そこで彼の恋は終わる…と思いきや、長寿のヴァンパイアである彼は、お爺さんが亡くなった後に現れると宣言までして、その想いを長きに渡って引きずるのでした。そして時は経ち現在、なんとその文子さんの孫に言い寄られるという状況に。これはある意味願ってもないチャンス!?けれどもその孫・田中さんは、文子さんとは似ても似つかぬ、超積極的なKY女子で…という背景。ここで面白いのが、この状況が作られているのは偶然ではなく、尽く必然めいた感覚を与えるというところにあります。
 
 例えば佐藤くんと田中さんが、田中さんと同じ学校の同じクラスであるというところ。何十年も想いを引きずるのであれば、その人の家族関係を把握しているんじゃないかな、と。要するに、佐藤くんが狙っていたという。逆に田中さんがヴァンパイアに興味を持ったのも、彼女の祖父が佐藤くんの再来を怖れてあれこれと研究・対策を書き溜めていたから。何気なく描かれていることでも、結構因果があってのこの状況という、なかなか興味深い構成です。
 
 コメディですので、基本的にはライトに、物語としての各話の繋がりは薄めに展開されるのですが、それ以上にブツブツと途切れるような印象を受けるのは、この先生の独特のリズムによるものなのでしょうか。常に一定のテンポで、そして前後の繋がりを意識していないような、なんとも不思議な感覚を受けます。ひとつのお話なのですが、まとまったお話というよりはぶつ切りのお話を詰め込んだような。そしてそれが、何故だか楽しく読んじゃうのですよ。げらげら笑うでもなく、ニヤニヤ読むわけでもなく、でもなんだか印象に残るという。後先考えない、ちょっとおバカな田中さんも、そんな彼女に気づけば振り回されている佐藤くん、どっちも可愛いです。本当に気楽に読む事ができる、良きコメディ作品だと思います。
 

【男性へのガイド】
→箸休め感覚というか、息抜きに読むのにすごく良さそうな。ヒロインかわいいですし、読みやすさはすごくあるかと。
【感想まとめ】
→なんだか不思議な感覚の残るコメディでした。面白いっていうか、なんだか、うん、読んじゃうんです。


作品DATA
■著者:高河ゆん
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:WARD(連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2011.04.30
作品紹介→*新作レビュー*久米田夏緒「ボクラノキセキ」
2巻レビュー→ますます白熱!《続刊レビュー》 久米田夏緒「ボクラノキセキ」2巻
3巻レビュー→自分に前世があるとわかったら、どうしますか?:久米田夏緒「ボクラノキセキ」3巻
関連作品紹介→ニュースが繋ぐ、僕らの青春狂想曲:久米田夏緒「NEWS PARADE」



1106004362.jpg久米田夏緒「ボクラノキセキ」4巻


…まだ死にたくない
また
死にたくない



■4巻発売しました。
 王女・ベロニカであったという前世の記憶を持つ高校生・皆見晴澄。かつての記憶を取り戻したクラスメイト達の前世での因縁や、過去の未聞への固執による諍いは、悪化の一途を辿る。そんな中、現世の生活に不満を持つ矢沼が、前世での地位をかざし現世でも力を得ようとするが、その目論みは手嶋野に阻止されてしまう。プライドを深く傷つけられた矢沼は、暴走しだし…!?
 

~混迷極まる4巻ですが…~
 一気に登場人物が増え、前世も絡んで「さらに倍!」的な状況になっております故、ここらであと誰が足りないのかとか、この人怪しいってキャラを整理したいところ。こういう考察・整理のしがいのある題材は、プリン味サワーさんが得意としていらっしゃったのですが、お忙しいみたいなので、ただリンクを貼るだけという暴挙はできず…(7SEEDSとかもそのつもりだったのに…!おかげで放置ですよ…!)。元々こういったことは苦手なのですが、ちょっと自分のためにも軽く整理しておきましょう。


~前世~
 とりあえず前世から、まだ登場していないと思われる重要人物たちは以下になります。まず最も重要なポジションと思われるのが、ベロニカと恋仲であったとされる騎士見習い:グレン・シュライバー。彼の弟であるバルトは、スレンダー美女・広木さんが転生しています。絶対ないと思いますが、実写化とかしたら、10歳若い水川あさみとかにやって欲しかった(本当にどうでもよい話ですね。。。)。もう一人は、同盟国でありながら折り合いの悪いモースヴィーグの王子・ユージン。どうも彼は結構冷酷なところがあるらしく、転生してないんじゃないかって話もあります。そして最後、ハゲ頭で眉髭もじゃ公な司教様。彼の場合、転生していたも特に物語を大きく動かすってことはなさそうで、むしろ安定剤として機能しそうなところであります。そしてもう一人、神官のリュカ・エルランジュ。どうもこの人も、登場したとしたら結構やっかいなことになりそうで。神官ということで、上岡の件に絡んできそうなのですよ。


~現世~
 さて、お次は現世で謎の残る人物。まず筆頭となるのが、「オレ記憶あやふやだわー。まじつれー。」的に飄々と物語に絡んでいる、瀬々稜。もうね、どう考えても彼が鍵握ってるとしか思えんのですよ。記憶があやふやってものすごい嘘っぽいし。彼が上記の3人のウチの誰かじゃないのかなぁ、と。で、なんとなくキャラ的に被りそうなのが、グレンとか。度々回想に登場するグレンの性格が、なんとなく似ている気がするのですよ。って全然関係なかったらあれですが。もしくは意外と広木さんが…なんてそれはさすがに大穴すぎますかそうですか。そしてもう一人が、上岡さん…
 

ボクラノキセキ4-1 
 中学時代の皆見の理解者であった彼女ですが、前世の記憶がないとされると途端に出番は激減。でも仕込みが好きな久米田先生ですから、無下に序盤だけ登場させてポイってことはないと思うんですよね。もちろん、皆見にとって、前世に対しての現世の尊さを意識させる存在として機能しているといえば言えるのですが、果たしてそれだけなのかね、と。


~神官は誰だ~
 そうそう、あと今回何気に重要人物としてフィーチャーされた人物が。それが、上岡に魔法を使ったとされる人物。実はあれ、都築くんではないらしく、それも神官という職業(ドラクエ的表現)の方が使える魔法らしいのですよね。その結果浮上してきたのが、槙さんと山田さん、そして未だ現れていないリュカ・エルランジュと司教様。もうここまで名前出してんならリュカ・エルランジュで良いんじゃね?とか思うのですが、せっかくの機会ですので、一人ピックアップ。真っ先に名前が出てきた槙さんなのですが、実は彼女1巻で名前が登場していたりします。それがこのシーン…


ボクラノキセキ4-2
 ああ、またしても青春の匂い。。。たれ目で結構モテそうですが、果たして恋の芳香は彼女にも漂ってくるのか。ちょっとだけ期待してみたいと思います。


 とまぁあーだこーだとやってきたわけですが、結論からしたら全然わからないな、という話ですよ。もう物語に身を投げたまま、楽しむことにしましょうか。せめて登場人物たちの背景を知っているぐらいで、十分なのだと思います。


~はっきりとこの世界で生きようとし始めている湖春~
 そう、今回は湖春にもちょっとした意識の変化が。崖崩れによって、走馬灯(的なもの?)を見た際、彼女は前世ではなく現世での思い出、そしも晴澄のことを思い出し、強く「好きだ」と再認識していました。ちょっと前までは、むしろ対ベロニカという感じで、前世の身分差が強くそこにあったように見てとれたのですが、この一件で状況はだいぶ変わってきそうですね。個人的にはこの二人の組み合わせは非常に好きなので、無事結ばれたままでいて欲しいのですが、そうなると俄然気になるグレンの転生。湖春自身も、グレンの存在を強く意識しています。結ばれており、なおかつ大好きだと再認識したにも関わらず、どこか悲恋めいた印象を残すのは、グレンがいるから。でもねー、これねー、すごく勝手な予想なのですが、グレンは女性じゃなく男性に転生してるんじゃないかと思うんですよ。生まれ変わりもののコメディ「NGライフ」(→レビュー)パターンというか。十代のうら若き少年少女が、前世での大人の恋愛と対峙しなくてはいけないってのは、結構酷だと思うんですよ。
 

~西園さんの可愛さがここに来て最高潮に達している件~
 さて、そんな中、とあるキャラの可愛さが最高潮に達しようとしております。それが比較的早い段階から物語に登場していた、西園さん。小さめでくりくりした感じの彼女は、比較的ドライでサバサバした女子キャラが多い中、マスコット的存在で可愛さを発揮しておりました。そんな彼女が今回思わぬトキメキをもたらすことに。まずはジャブ程度に…
 
 
ボクラノキセキ4-3
泣いちゃう


 思わず頭撫でてあげたくなる感じ、わかりますか男子諸君!(ちなみに当ブログの男性読者は比較的少なめと思われます)。小動物系の涙ってこう、すごく、良いですよね(しみじみ)。そして最後はこれですよ、これ…
 
 
ボクラノキセキ4-4
まさかの百合


 この無邪気さに、皆々微笑みつつ赤面したはずです。「尊敬」「崇拝」…身分差がもたらす畏敬の念は、数々目にしたものの、現世でも通用する感覚での「憧れ」を、こういった形で目に出来るとは。諍いや疑いがなければ、もっとこういう再会もあったであろうに。素直に転生できて、そしてまた出会えて嬉しいというその感情が、ストレートに伝わってくる、そんな彼女の様子に、また違った生まれ変わりの魅力を見た気がします。とりあえずかわいいよねっていう。これからもこの作品の甘味料として、その可愛さを発揮して欲しいものです。



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Tag [新作レビュー] 2011.03.07
1103024164.jpgあき「アルオスメンテ」(1)


わたしは
お前の夢に棲む“賢者”
おまえの問をを聞こう



■皇帝に仕え、神託を受けることのできる一族の末裔である“エンジェル”ことレグナは、ある夜不吉な夢見をして目を覚ます。そこにあったのは、強い殺意。なんとかして食い止めようと、賢者の夢「アルオスメンテ」を行ったレグナは、夢で出会った賢者に、ひとつの試練を告げられる。それは、皇帝を取り巻く人物たちを、タロットカードの愚者、賢者、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、教皇、恋人、戦車、正義、隠者にそれぞれ配置すること。すると、真実が見えてくる。華麗なる王宮に渦巻く人々の想いを描く、王宮絵巻、堂々開幕。

 「オリンポス」(→レビュー)のあき先生の新作です。前作オリンポスは、神の姿を描いた荘厳で美しい雰囲気の漂うお話でしたが、今回も神事っぽい要素を取り入れたファンタジックなお話となっております。ベースはヨーロッパ。主人公は、まだ幼き皇帝の側に仕えるレグナ。神の言葉を聞き伝えることができる「神託」を行うことができる一族の末裔で、いわば占い師のようなポジションの彼。実に真面目で聡明、周りからは「エンジェル」とまで呼ばれる彼が、ある日皇帝に対する強い殺意を映し出した夢を見、その調査に乗り出すことから始まります。夢を見たというだけで、何か確証があるわけではありません。そこで彼は、言い伝えとして聞く、賢者の夢「アルオスメンテ」を試してみることにします。そして見た夢の中、出会った賢者から告げられたのは、一つの試練。その試練をクリアしたとき、真実が見えてくる。命すら落とすかもしれないというその試練を、受けることにしたレグナは、今まで以上に皇帝を取り巻く人物たちを注意深く観察するようになるのですが…というお話。


アルオスメンテ
夢の中で出会う賢者は、自分の中にいる“賢者”の部分。とはいえかなり性格は異なり、扱いづらいところがある。


 前作「オリンポス」はわかりにくくも美しい世界観で、結構な人気を集めていたようです。年末にお世話になった「このマンガ~」でも上位にランクインしており、コアなファンの方が多いことを表していたように思います。今作も、前作のファンの方が買うのだとしたら、安心の世界観に雰囲気。ファンタジックな世界観の中、登場人物それぞれの思惑がぶつかり、やがて一つに集約されていく。またしてもあまり動きのない画ではあるのですが、華やかさと登場人物の多彩さでそれをカバー。飽きさせません。
 
 試練として課せられるのは、与えられた10枚のタロットカードに、見たい真実に絡む10人の人物をそれぞれ当て嵌めなくてはならないというもの。そのヒントはせいぜいカードの種類程度で、どう当て嵌めるかは当人次第。それが正解でないと、願いは叶わないということから、レグナはかなり慎重になります。きっと10人も当て嵌めるように人物たちを探って行ったら、自ずと犯人は見えてくる気がするのですが、それだけで落とさないような気がするのも確か。壮大に見えて、その実緻密で狭い世界で繰り広げられるこの物語。勝負はいかに登場人物たちの想いを交錯させていくかだと思うのですが、10人というのはなかなか期待を抱かせる人数ですねー。静かに美しいファンタジーがお好きな方は、是非とも。


【男性へのガイド】
→支持しているのは女性が多かった気が(女性向けなんだから当たり前か…)。華やかな登場人物たちも、男性メイン。クセのある作品ではないので、読むのに抵抗はあまりないとは思います。
【私的短評】
→安心の出来。アンテナの問題か、その雰囲気に溺れるような感覚を覚えることはないのですが、前作よりも出口がハッキリしている分、個人的には好みでございました。


作品DATA
■著者:あき
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税


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レビュー
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レビュー
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レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。