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2009.06.16
07194186.jpg鈴木理華「タブロウ・ゲート」(1)


こんなことになったのはあんたのせいよ
責任をとってみっちり回収に貢献してもらうわ



■4巻発売しました。
 唯一の肉親である祖父と離れ、孤独に暮らしている少年・サツキ。ある日、偶然手に入れたタロット画集から、不思議な光が飛び散るのを目撃する。それと同時に、その画集の持ち主だという少女が現れ、サツキは混乱。何やら、そのタロット画集は“タブロウ”という絵の化身を封印しておく特別な骨董品らしい。サツキが触れたことにより散逸してしまったタブロウ達。彼らを再び画集に戻すため、謎の少女・レディと行動を共にすることになったのだが…!?

 タロットがモチーフとなった、アクションファンタジー作品です。方々に散ったタロットの絵柄の住人・タブロウ達を回収することになったサツキと、前の画集の持ち主・レディ。話だけ見ると、「カードキャプターさくら」みたいな感じですかね。一応画集の持ち主とタブロウは主従関係にあるので、そこだけとりあげるのであれば、「夏目友人帳」(→レビュー)の逆バージョンとでも。仲間にしたタブロウ達と協力して、残りのタブロウを回収するという流れになっています。タブロウ達にはそれぞれ絵柄なりの特殊能力があり、力関係も当然ございます。死神が強いとか、月よりも太陽の方が強いとか…。


タブロウゲート
現在は秋田書店・プリンセスGOLDで連載されていますが、元々は角川で刊行されていた作品。秋田でも全く違和感ないですが、お耽美一本ではなく、こういうキャラも配置してくるあたりが、なんとなく角川の匂いを感じさせる…って気のせいだって?そうかもね。


 またタブロウ回収と共に、孤独に打ち崩されたサツキの心を再生していくというサブテーマも展開。唯一の肉親である祖父に見捨てられた彼は、その裕福な暮らしとは裏腹に、非常に寂しく辛い生活を送っていました。そんなところに現れた、レディとタブロウ達は、彼の心のよりどころに。主人公が欲しているのは「自分が必要とされている」ことを実感すること。またタブロウ達の能力を通じて、トラウマの承認や克服といったことが行われます。

 話が進むにしたがって、徐々に全貌(主人公の過去&画集をとりまく状況)が明らかになっていくというスタイル。タブロウの回収という一応の指標があるので、読者は振り落とされずについていけますが、それでも若干読みづらい感が。これは設定云々ではなく、単に心情描写が甘いからだと私は思うのですが、どうでしょう。もっと読者に親切で良いと思う。


【オトコ向け度:☆    】
→設定自体は男性にも楽しめる。ただエリファスがなぁ…男にはキツいんですよ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→「ついて来れない人は知らん」って感じで、親切じゃない。ただ親切にしたら、この作品の魅力が失われてしまう可能性大なんですよね。好きな人は心から溺れるって感じで良いんじゃないでしょうか。


作品DATA
■著者:鈴木理華
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2007年6月号~連載中)
■既刊4巻

■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] 2009.05.16
shibariyakomachi.jpg竹内未来「縛り屋小町」(1)


無限に存在する縁の中から
たったひとつ結ばれるべき縁をつなぐ
それが「結び」なんだよ



■6巻発売しました。
 元気一杯の高校生・梧桐茅子は、他人の「赤い糸」が見える能力を持っていた。その力を生かして、縁結びの占いをして小銭を稼いでいたのだが、とある出来事をきっかけに、神器「五色の糸」の一つ「白銀」の使い手として選ばれてしまう。しかし茅子にはいい迷惑。どうにかして契約を解除するため、そのまま神器の使い手集団「結び屋」に加わり、方法を探ることに。しかし人の縁を結ぶこの陰陽師集団は、イケメン師範を筆頭に、皆曲者揃い。思わぬ形で始まった、茅子の結び屋生活は前途多難!?

 人の縁(恋愛とは限らない)を結ぶ陰陽師「結び屋」を描いた、アクションファンタジーです。ひょんなことから神器「白銀」の使い手に選ばれた茅子ですが、それには思わぬ副作用が。それは、力を手に入れる代わりに、運命に縛られる=一番大切な縁が断たれてしまうこと。彼女にとっての一番の縁は、「自立した大人になること」。故にその縁が断ち切られ、子供の姿になってしまいます。そうなっては普段の生活に支障が出るということで、「結び屋」の師範の家にお世話になりながら契約解除の道を探ることに。この師範と茅子には、過去にとある縁があって、今回の出来事も決して偶然からではなく、起こるべくして起きていたりします。話は、茅子の結び屋としての成長を描くと共に、さらにもう一回り大きい物語(過去に起因する)を用意し、展開させていきます。


縛り屋小町
神器の力を使っているときだけ元の姿になれるが、普段は幼女の姿。


 「結び屋」ではなく「縛り屋」となっているのは、彼女の縁を結ぶスタイルが、導き出すというよりも、力で縛り付ける感じに近いから。そのためタイトルは異様にエロを想像させるものになっていますが、内容は至って健全なファンタジーです。というかここまで動きと設定で引っぱり込む正攻法の作品は、最近では珍しいぐらい。毎回毎回飽きさせず、動きをつけて話を進行、キャラクターもそれぞれ立っていて、また全体を通して大きな物語が動くので、読んでいてとってもワクワクします。これは良作じゃないでしょうか。アニメ化の線は薄いとは思いますが、ぜひしてもらいたいなぁ。

 イメージ的にはなんだろ、「GS美神」とか?登場人物の男性率は高めですが、鼻につくようなキャラもほとんどおらず、性別問わず読みやすい作品に仕上がっていると思います。作画、キャラ付けともに、なんとなく20代あたりの人に受け入れられそうな感じ。当然オススメ。
 

【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→これがなかなか面白い。少女マンガ的なキャラは師範ぐらい?テンポも良く、恋愛もアッサリ目。男性にも読みやすいと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→良作ファンタジー。秋田書店は色々と捻って耽美な方向へ持っていくことが多いのですが、あえての正攻法、非常に面白い作品になっています。時代にはそぐわないかもしれませんが、こういう作品こそアニメ化してもらいたいです。


作品DATA
■著者:竹内未来
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2006年7+8月号~連載中)
■既刊6巻

■購入する→Amazonbk1

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Tag [オススメ] 2009.04.18
12notukinomegurumani.jpg吉川うたた「12の月のめぐる間に」(1)


「どうして私が狙われるの!?」
「おまえが吸血鬼の娘だからだ あきらめろ」
「うそ!!!!」
「本当だ」



■4巻発売しました。
 17歳の誕生日。その日を境に、奏の毎日は一変した。様子がおかしいクラスメイト達に突然襲われ、さらには得体の知れない化物にまで襲われた。それでも何とか無事で過ごせているのは、灰色の髪の謎の男が助けてくれたから。その男が言うには、奏は吸血鬼の娘で、17歳になると封印が解け、化物たち(他の吸血鬼)に気づかれるようになる。そして同時に、奏を守るための封印も解け、男が現れたというのだ。突然のことに事態が飲み込めない奏だったが、吸血鬼達は容赦なく襲ってきて…!?
 
 なぜ奏が襲われるかというと、伝説の大吸血鬼(父親)の血を引いているから。その血を取り込みたいと、多くの吸血鬼達が、封印の解けた17歳の誕生日を境に襲ってくるようになります。また吸血鬼にも様々な者がおり、ただ奏の血を吸いたい者から、父親を崇める者、逆に敵対していた者、さらには吸血鬼撲滅を目指すハンターという存在まで。とにかくありとあらゆる吸血鬼たちが奏との接触を図ってきます。そんな彼女を守るのが、謎の灰色の男。彼の正体は飼い猫のフク。所在不明の父親が残していった猫で、奏の封印が解ける17の誕生日と共に、フクの封印も解けるようになっていました。なぜ封印が掛けられていたかというと、奏に人間として生きるか、吸血鬼として生きるか、自分で決めて欲しいと父親が願ったから。その考える期間が1年間ということで、このようなタイトルがつけられています。


12の月のめぐる間に
吸血鬼マニア・加賀野井さん。マニアって設定はどうかとは思うのですが、彼女がいることで話が円滑に、かつわかりやすく進行されるのもまた確か。


 フクだけでなく、吸血鬼の関係者は昔から奏の周りにおり、ハンターの幼なじみや、吸血鬼マニアの先輩がいたりと、17の誕生日を境に吸血鬼モードにシフトしていきます。そのため、守ってくれる存在を愛でるだけというお話にはならず、ファンタジー作品として楽しむことがでるんじゃないでしょうか。設定が設定だけに、受動的にしか話は進まないのですが、多彩なキャラ達を上手に利用することで、決して強引な運び方にしないのはさすが。また期間が確定しているので、だらだらと流れるということもなくて良いですね。ありがちな題材ですが、しっかり練り込まれているので、飽きる事無く読み進めることができます。


【オトコ向け度:☆☆   】
→女性向けファンタジー。男が好く要素は少ない気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ありがちな話ではありますが、しっかり組み立てられているので楽しんで読むことができます。良作ファンタジーですね。


作品DATA
■著者:吉川うたた
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD('06年9月号~連載中)
■既刊4巻

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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2009.03.20
07217844.jpg山田圭子「狐隠れの君」


うんと遠くまで行ってこい!
おまえは私の分まで…
広い広い世界で
何ものにも縛られない人生を送れ!



■読切り2作を収録。
 国内有数の銀産地として栄華を誇った真鍋藩だったが、徳川幕府の役人の陰謀によって真鍋藩を乗っ取られ、蓮華姫と弟・照真は改易、藩を追われてしまう。その横暴を許すことができなかった蓮華姫と家臣達は、無理を承知で幕府と戦う決意。まずは襲撃の準備を整えるため、幼なじみの忍者・如月丸の元で機を窺う。蓮華姫と弟の照真、そして如月丸の3人での束の間の暮らしを始めるが、やがて襲撃の時が…。果たして蓮華姫の運命は!?
 
 藩を乗っ取った幕府の役人を倒す決意をした姫と、それをサポートする幼なじみの忍者の歴史ラブロマンスです。舞台となる真鍋藩は、国内有数の銀産地として繁栄していました(実在した藩なんですかね?)。莫大な富を生み出すが故、諸国から狙われることが多かった真鍋藩は、それに対抗する優秀な忍者集団”真鍋蛇”を持っていました。その後江戸幕府の成立により真鍋蛇は解散…というか全員処刑されてしまうのですが、その唯一の生き残りが蓮華姫の幼なじみ・如月丸だという背景があります。


狐隠れの君
幕府と戦うことを決意する蓮華姫。

 
 捨てられたにもかかわらず、藩を奪い返す決意をした姫のサポートをするという時点で、彼の気持ちは明らか。当然姫も彼を想っているわけで、話のとしては信念を貫くことによって引き裂かれる二人の愛を描くといったところでしょうか。ラストは正直ありえないような展開で終わるのですが、ここまでだと逆に気持ちが良いです。2編とも切なさベースで話が進行しますが、ラストは幸せな展開に。切ないのも好きですが、時代物はやっぱりハッピーエンドにしてナンボかな。フィクションだと割り切って読めば、読後実に晴れがましい気分になれます。


【オトコ向け度:☆☆   】
→基本は男に愛され支えられる女性というのがモチーフ。展開も女性のが喜びそうな感じ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→良質読切り。切なさ追求ではなく、最後はハッピーエンドに持っていくってのは好印象でした。


作品DATA
■著者:山田圭子
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD('07年2月号,'09年2月号)
■全1巻
■価格:400円+税

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2009.03.20
07177511.jpg高橋美由紀「キルトS」


なぜ同じ高校の
よりによって
同じクラスに
あいつらがいるんだ!?



■5巻発売。
 間島祐一は中学2年のときに、たまたま部屋の窓から、当時の同級生・泉切人と松田龍二が連続殺人が起きた家に入っていくところを目撃してしまう。それだけでなく、泉切人の方は人間ではない、とても恐ろしい化物のような姿をしていた。あまりに現実離れした光景に、祐一は夢幻だと片付けようとする。しかし、記憶の奥底に残った恐怖が消えることはなく、以降彼らを避けて過ごすようになった。やっと彼らから離れられる。心晴れやかに高校の入学式に行くと、そこには泉切人と松田龍二の姿が。戸惑う祐一だったが、親しくしてみると意外と楽しい。過去の恐ろしい記憶を、やはり幻だったと確信する祐一だったが、それは全て間違いだということを、嫌というほど思い知らされることになる…。
 
 作者さんの前作「キルト」の続編です。タイトルのキルトは泉切人から。前作では主人公だった二人ですが、今回は間島くんが主人公です。上記の説明のみだと分かりづらいかもしれませんが、ジャンルはファンタジーになります。ただ最初から設定を全て明かすことはなく、主人公視点で徐々に謎が明らかになっていきます。まぁ前作読んでる人はどういう背景なのか全て分かるわけですが、それでも続編として楽しめる内容になっていますし、初読の人は主人公視点で徐々に理解していける(=続編だからといって弾かれることがない)ので、作りとしてはこれが正解なんでしょうね。


キルトs
今回は主人公じゃない二人。

 
 展開はものすごく遅いです。ゆっくり丁寧に、と取ることもできるし、逆に焦らしすぎと取ることもできるかもしれません。伏線作りをするというよりは、背景をしっかり作り込むためにゆっくりになっているので、個人的には悪い気はしません。ただそれが嫌って人もいるんだろうなぁ…。またベテランの作品らしく、絵柄や話の舞台が少し古めの印象。購入の際はその辺も考慮してみてください。
 

【オトコ向け度:☆☆☆  】
→男性でも読みやすいと思いますが、重要なのはむしろ性別よりも時代感か。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→良くできてると思います。あとは個人の好み次第でしょう。


作品DATA
■著者:高橋美由紀
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD(2006年5月号~連載中)
■既刊5巻


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