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Tag [新作レビュー] 2012.12.21
1106171725.jpg黒山メッキ「イデアの瞳」(1)


これは
個人的な復讐なんです



■人は巨大な地下シェルターに囲われ、大企業・ペンフィールド社の管理の下に暮らしていた。不思議な瞳を持つ少年・ルカと、彼に従う黒服の従者(自称保護者)・ユーリ。そして、個性派揃いの仲間たちが、それぞれの覚悟を胸に、体制への反旗を翻す!その先に待つのは絶望か、それとも…!?新感覚SFロマン、ここに開幕!!

 黒山メッキ先生のコミックビーズログでの連載作になります。黒山メッキ先生は、以前「戦場のヴァルキュリア」を連載していたり、BLで単行本を出したりはしていたのですが、非BLのオリジナル連載は本作が初のようですね。本作で描かれるのは、とある大企業が世の中を支配する近未来都市。戦争の災禍で荒れ果てた世で、生き残った人々を地下の安全なシェルターへと誘導、以降管理しているのが謎の巨大企業・ペンフィールド社。彼らの存在なくしては生活はありえないというレベルなのですが、本作の主人公達はその巨大企業に反旗を翻そうとする者たちになります。不思議な瞳を持つルカを筆頭に、個性派な男達5人が集い、目指すのはペンフィールドへの復讐。しかしその道のりは遠くはてしなく…


イデアの瞳
5人の中でもリーダー的なのが、特徴的な大きな瞳を持つ少年・ルカ。彼が何故PF社に恨みを持っているのかは、明らかにはされない。


 はい、こういう話大好物です。所謂ディストピアものなのですが、なかなか物語の枠は大きそうです。企業転覆を狙うのは若者5人組なのですが、それぞれ性格も特徴も点でバラバラ。体力バカがいるかと思えば、コンピューターを自在に操るものがいたり。ペンフィールドに対する想いもそれぞれ異なっているようで、それぞれの背景は1巻時点では明らかになっていないものの、「良く思っていない」という点でのみ一致しているようです。これまでの説明からもお分かりかと思うのですが、1巻時点では謎が多すぎて物語の全容を把握するのは難しいと言えるでしょう。主人公達5人のキャラがバラバラで、それぞれ個性的なのは、そこに行きつく前に読者を飽きさせないという狙い(?)もあるのかもしれません。
 
 女性向けの王道SFですから、見所は男子たちの掛け合いと、バトルシーン。1巻でも早々にカーチェイスから、白熱したバトルが繰り広げられます。相手は大企業ということで、出してくる手は様々。1巻ではなんだか明らかに小物っぽい敵がドジする感じでしたが、これからどうなってくるのか。主人公達の出自が徐々に明らかになるに連れ、巨大企業の正体というのも明らかになってくるはずで、謎が明らかになればなるほどまた敵もエグくなってくるのかな、と。巻を重ねて旨味が出てきそうな作品で、また絵もお上手ということもあれば、がっちり一定の支持を集めそうな予感があります。それなりに長く続いて、丁寧にその過程を描いて行ってくれれば、とは個人的な想いなのですが。ビーズログということで、そもそも続き出るのかなぁ、と…。


【男性へのガイド】
→登場人物が男のみという所をどう捉えるか。いわゆる癒し的な存在はいないのですが、物語自体はそれなりに骨太感はあります。
【感想まとめ】
→ありきたりと言えばそうなのですが、そういった設定も如何に丁寧に描くのかで大きく差が出てくるのも事実。1巻時点では如何とも言いがたい程度には、全容が明らかになっていませんが、物語としての外枠が属人的になりすぎなければ結構面白くなるんじゃないかと予感させてくれました。


作品DATA
■著者:黒山メッキ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:ビーズログコミックス
■掲載誌:コミックビーズログエアレイド
■既刊1巻
■価格:620円+税


■購入する→Amazon

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Tag [続刊レビュー] 2012.08.28
作品紹介はこちら→*新作レビュー* びっけ「あめのちはれ」
2巻レビュー→女子化以外は至って普通の学園漫画《続刊レビュー》「あめのちはれ」2巻
3巻レビュー→梅雨の雨も、これを読めば素敵なひとときに:びっけ「あめのちはれ」3巻
4巻レビュー→素直に明るい明日美ちゃんはモテるに違いない:びっけ「あめのちはれ」4巻
5巻レビュー→レギンスにロマンはあるか:びっけ「あめのちはれ」5巻
関連作品レビュー→びっけ「貘-BAKU-」「真空融接」「壁の中の天使」「赤の世界」「王国の子」




1106183662.jpgびっけ「あめのちはれ」(6)


これは俺の演技
友達を助けるための演技
俺はそう思ってたんだ



■6巻発売しました。
 大学式の日に落ちた激しい春雷をきっかけに、特異体質となってしまった葉月たち。雨が降ると身体が女子に変化してしまうため、部活も恋愛もままならない!状況を打破すべく動き出してみたものの、手がかりはなかなかつかめず、名門男子校・雨谷学園を舞台に織り成す、男女入れ替わり群像劇、恋愛模様交錯する第6章!
 

〜恋愛一辺倒!〜
 6巻発売ですよ。毎回毎回この作品は発売が楽しみで仕方ないのですが、楽しみにしている一つに表紙の鮮やかさがあるんですよね。毎回ベースとなるカラーがあって、それが映える色使いで本当に目を引く表紙にしてくるという。今回はイエローが基調となっている表紙ですが、この色使い大好きです…(うっとり)。さてそんな6巻ですが、本編の方はと言うと、今まで以上に恋愛色が強くなっています。これまでも恋愛の色は強く出ていたのですが、6巻は例えるなら“恋愛一辺倒”。しかも一人に絞った形ではなく、様々な登場人物たちが、様々な形でそれぞれの恋愛模様を描くという、実に贅沢な構成でした!


〜まずは円と梓でしょう〜
 各所で動きがあったのですが、個人的には激しさや悲しさのある恋愛関係よりも、より安定感のある恋愛模様が好みでして。そんな中もっともほっこりさせてくれるのが、円と梓の歳の差カップル。「カップル」なんて言ったら円が怒ってしまいますが、急激に女っぽくなる梓を意識しちゃっている時点で、もう二人は立派なカップルだぞ、と。しかし梓ちゃん、おませさんなんて言葉で片付けられないほどに立派に円にアプローチしちゃって、末恐ろしい子です。
 
 
あめのちはれ6−1
あざとい。大人っぽく見せても、ポジションはしっかりと年下で、甘えに甘える。弁えているというか、こんな甘え方されちゃったらもう…!


 物語が完結するまでに何かわかりやすい形で成就することはなさそうな二人ではありますが、それゆえにゆっくりと歩を進めて欲しいですね。許嫁とは言えこの歳の差。明確な終着点がイメージしづらい(しなくてもいい)分、微笑ましく見守れるってものです。年々大人っぽくなってくる梓に、段々とたじたじになっていくであろう円の姿が目に浮かぶようです。


〜そして何より明日美ちゃん〜
 さて、安定のカップルと言えば、明日美ちゃんと葉月の二人もそう。もうこの二人は初々しい男女交際のそれを、これでもかというほどに体現してくれています。初めてのお宅訪問で意識し合って緊張しちゃったり、バランスを崩してそれをしっかり抱きとめたり、デートの約束でドキドキしたり…どこまで少女マンガするつもりなんですかこの二人は!デートもとにかく初々しい…。お互い意識しまくりで、見ているだけでニヤニヤです。しかしそんな初々しさの中、ちょっと違和感のある発言が。それが葉月の…
 
 
あめのちはれ6−3
爪の色も合わせたんでしょ?


 これ男からすると、かなり難易度の高い発言です。なかなかネイルまで目が行かないものですよ?そこからさらに、服とのコーディネイトまでに踏み込むなんて、普通の高校生じゃできないですよ。これ普通に出てくる人は、かなりモテるんじゃないかと思います。
 
 これは5巻にて、月子の時に明日美にネイルをしてもらったことがあったから出てきた発言なわけですが、自然に見せて結構危ない台詞。この他にもチラホラ出てきているのかもしれませんね。これをさらっと言われたら色々な意味でドキっとしそうです。明日美ちゃん、恋愛経験が浅いからなのか、はたまたドキドキが先行していたのか、むしろ嬉しそうに受け入れていますが、なかなかドキっとさせる一言ですよ、これ。悪い虫が寄ってきたら騙されちゃうんじゃないかと、兄心的に心配になってしまいました。しかし今回女性化を経験している男性陣は、めちゃくちゃモテそうですよね。ちょっと自分も女性化してみたかったかも…。


〜TSもので百合BLの匂いたつ…〜
 さて、そんな安定の明日美と葉月ですが、この二人の周りではなかなか単純でない恋愛模様が渦巻いているようです。まずは以前から描かれていた、明日美に対する桜子の想い。黒髪ロングで百合というまさに至高の存在でございますが、今回はなんと…
 

あめのちはれ6−2
キス


 絵になります。片方はノン気というか、全然意識してなくて突然っていう、この関係がいいんですよね。百合要素だけども、決して百合百合しくさせないというか。良いバランスを保ちながら物語が進んで行くこの感じ。6巻中で結論が出るかと思ったのですが、結局明日美ちゃんの勇気が出ずに、7巻に持ち越し。さて、この二人の関係や如何に。
 
 それとコレ以外に、トーマが葉月(月子)を意識し出すという急展開が。正直これが6巻で一番の事件だと思うのですが、正直梓ちゃんと明日美ちゃんの可愛らしさには敵わなかったのです(※あくまで個人的感想です)。寮長のように、月子の正体を知らないで恋するのだとしたらそれは仕方のない事ですが、正体を知りつつそれでも意識してしまうという。これまもう歪んでますし、これは実にBL的というか。ただびっけ先生BL作品は始めから鉄板のカップリングという印象があるので、トーマは結構厳しい状況か。というか、夏輝ルートへのフラグという感もなくも…いや、さすがにないか。何はともあれ7巻に向けて大注目の要素が投下されました。物語は静かに、けれども確実に盛り上がってきていますよー。続きが今から楽しみです。


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2012.07.07
1106152401.jpgユキムラ「たむらまろさん」


わはははは
明日が楽しみだな〜



■誰もが教科書で名前“だけ”は知っている、坂上田村麻呂。征夷大将軍って、一体何をした人?伝説上では、金髪碧眼の超イケメンだったとか…!?そんな“美しすぎる征夷大将軍・たむらまろさん”の日常を描く、ゆるゆる歴史コメディが颯爽と登場!こんなゆかいな日常が、繰り広げられていたかも…?

 ユキムラ先生は「カーディナルスレッド」(→レビュー)の2巻を放ってこんな連載をしていたのですね…(いきなりこんな話題)。歴史の勉強で名前は覚えているけど、具体的に何やった人かよくわからない偉人の上位に食い込むであろう、坂上田村麻呂にスポットを当てた歴史コメディでございます。歴史上の人物でありながら、各地に伝説めいた様々な伝承がある坂上田村麻呂=たむらまろさん。本作では金髪碧眼の飄々とした人物として描かれていますが、これも数多有る伝説のうちの一つ。というわけで、一応モチーフになるものはあるようです。そんな彼の働きぶりを、彼ではなく彼の部下である文室綿麻呂の視点から覗くことになります。文室綿麻呂なんて一切知らなかったですが、Wikipediaにもページがある程度には有名な人物のようですね。肖像画は坂上田村麻呂共々全然違いますが。


たむらまろさん
 基本はゆるゆるコメディ。創作も多数アリというか、大枠のみ史実に基づき、その他はほぼ創作という感じです。
 
 メインキャラは前半2人、後半3人という感じ。一人は本作のメイン中のメインである坂上田村麻呂、そして前述の文室綿麻呂。自分の世界を持っていてとにかく飄々、そして自由な田村麻呂に、真面目で長い物には巻かれたい綿麻呂が振り回されるという構図。とにかく出世したい綿麻呂と、出世にはさして興味のない田村麻呂は言ってみれば真逆の性格の持ち主で、それらが噛み合ないことで物語が進行するエネルギーが生まれる印象です。
 
 物語が中盤に差し掛かると、ファンタジー要素が投入されます。伝承の中でも鬼退治をしたというものがある田村麻呂、本作でも鬼を成敗し、鬼に好かれついて来られてしまうという流れに。このついてきた鬼が、3人目のメインキャラ・鈴鹿御前。これがくりくりしていて小さなフォルムがとっても可愛らしいのですよ。鬼ではありますが、本作唯一の女性キャラというこで、是非とも押さえて頂きたい子です。
 
 帯では「坂上田村麻呂って何をした人?」なんて煽っているけれど、この作品を読んだところで坂上田村麻呂が何をしたかはわからないという(笑)とにかくキャラを押し出したゆるゆるコメディとなっているので、史実での働き等はあまり重視されず。征夷大将軍ですが、蝦夷の阿弖流為と仲良かったりするという(歴史では坂上田村麻呂に成敗されて、阿弖流為は処刑されているみたいです)。そういうところからもわかるように、決して歴史ものとして受け取っては行けません。歴史とかの要素がちょっと入った、日常コメディとして楽しんでいただければ。脱力しつつも台詞は多く、読み応えはそれなりにあります。動きも多く、退屈するような内容にはなっていません。最後はきっちり感動要素も織り交ぜており、全1巻として起承転結しっかりと作られた手堅い作品に仕上っているのではないでしょうか。
 

【男性へのガイド】
→キャラ萌え要素の強い作品ですので、当然女性向けの側面が強いのですが、コメディかつ必要以上に腐臭くないので、読むのは余裕だと思われます。女子がいないのが寂しいところかもですが。
【感想まとめ】
→こういう脱力系の歴史コメディは好きです。もうちょっとメッセージ性強くても良かったかもですが、ゆるゆるかつ1巻完結だからそこは仕方のないところなのか。本作の田村麻呂みたいな飄々としたキャラは好きなので、終始楽しく読む事ができました。


作品DATA
■著者:ユキムラ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:ビーズログ
■全1巻
■価格:円+税


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2012.06.30
作品紹介→乙橘「少年メイド」
2巻レビュー→千尋の意見を尊重すること《続刊レビュー》 乙橘「少年メイド」3巻
4巻レビュー→赤面する男の子女の子がかわいすぎるっ…!:乙橘「少年メイド」4巻



1106107315.jpg乙橘「少年メイド」(5)


母さん
お祖母ちゃんに会ったよ



■5巻発売しています。
 掃除・洗濯・料理が超完璧な優秀メイド。しかもそれがツンデレ少年なんて何それ超萌える!!大好評のメイド少年ホームコメディに、待望の第5巻が登場!千尋と円は時にぶつかることもあるけれど、少しずつ本物の“家族”に。ご近所の奥様から幼女まで、バレンタインはモテモテだった千尋。ホワイトデーのお返しに、お菓子作りを円から習うことになったけど…!?
 

〜レビュー遅くなりました〜
 5巻が発売されたのは実はもう半年も前のことなんですよね。発売直後に読んでいたのですが、ちょっとセットで里子に出していまして、レビューをお届けするのが遅くなってしまいました。きっと里子に出されていた先でも、何かしらレビューが見れるんじゃないかしら(プレッシャー)
 
 というわけで、5巻のご紹介です。物語に大きな動きのない類いの作品なので、あえて語るとすればいつも通りの「千尋ちゃんかわいい、千尋ちゃん欲しい、千尋ちゃん攫いたい」ぐらいなんですけども。今回も通常営業のツンデレっぷりを見せてくれましたとも。いつもは円を叱ってばかりいる千尋ですが、お菓子作りともなれば立場は逆。ホワイトデーのお返し作りでどうにも上手くクッキーが作れない千尋は、円に助けを求めることにします。しかし素直にお願いできないツンデレ千尋、譲歩して譲歩して…
 

少年メイド
食器を洗いながら、それとなくお願い


 歪な形の吹き出しがかわいいのなんの。そりゃあ円も“ブワアア”ってなりますわ。こんなお願いされたら、もう全力でサポートしちゃいますよね。いつものしっかり者の姿も好きですが、こうして素直になれずにモヤモヤしている千尋の姿もまたいとをかし。眼福であります。しかし千尋、ホワイトデーにちゃんと手作りクッキーをお返しするなんて、偉いですよね。手作りクッキー+手作り小袋なんて貰ったら、誰しもが本気を感じて落ちてしまいそう。乃村さんもきっと嬉しかったろうなぁ。いいですね、バレンタインデーにホワイトデー。社会人になって以降、ホワイトデーとは縁遠い感じになってしまいましたが、そもそも学生時代も本命チョコ的なものは殆ど貰ったことがなかったですね、そういえば。コミュニティでの義理チョコたちへのお返しは、決まってチュパチャップスの一杯入ったボックスとかだった覚えが。あれ間違いなくテンション上がるので。


〜今回もコスプレは多かったですが…〜
 いつもコスプレ多い気がしますが、今回も旬なコスプレが登場しておりました。千尋ではなく、日野家の三女・花子ちゃんへ施された…
 
 
少年メイド5−2
某魔法少女


 ちょっと遅いと感じるかもしれませんが、単行本発売が半年前+雑誌掲載がさらに前ということを加味すると、ドタイムリーなコスプレなわけですよ。そんなのもしっかり押さえちゃう円って一体何者なんだ…。
 
 なんて花子ちゃんもかわいいですが、やっぱりなんといっても可愛いのは千尋なわけで(結局)。お菓子作りのときはメイドコスではなく…
 

少年メイド5−3
見習いパティシエ風


 いいいいいいいやっほ~~~い!!!このかわいさ!これだけでもうホワイトデーのお返しですよ。なんでしょうね、こう洋風のコスプレが似合うというか。千尋の和装を想像してもなかなかできないという。円とのセットで更に美味しいです。本編の方はコメディとは思えぬほどにシリアスな展開になっていますが、時折こういうネタを仕込んでくれればしっかりと乗り切ることができますってば!次はそうですね、修道士見習いとかどうですか?あー、でも落ち着いた感じじゃない方がいいですね、えーとえーと(以下略


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Tag [新作レビュー] 2011.12.14
1106099910.jpg住吉文子「わがツン-わが家の長男ツンデレ社長-」(1)



わかっていたことだが
ツンデレだった



■日本屈指の黒字を叩きだす会社の社長・犬神総一朗。そんな彼が住んでいるのは、ある商店街の今川焼屋。表の顔は冷徹に仕事をこなすエリート…手段を選ばず完璧を求める仕事の鬼。けれども家では、一家の主夫。父が方々でこさえた弟たちの面倒を、彼が一人で見ているのだ。弟たちが大好きだけれど、素直になれないツンデレ社長と、その兄弟たちが巻き起こす、ハイテンションなハートフルデイズ!

 掲載誌はB's-LOGのエアレイド、その中のショートギャグコメディ枠だと思われます。我が家の社長はツンデレ社長、略して「わがツン」ということで、ツンデレ社長である犬神総一朗が主人公(表紙で言うと一番左)。昼間の顔は、冷徹なエリートビジネスマン。けれどもひとたび家に帰ると、エプロンを締めて台所に立つ、家庭を支える主夫に大変身。一緒に暮らしているのは、たくさんの弟たち。元々は一人っ子として生まれ育ったのですが、成長を重ねるうちにどこからともなく弟がやってくるように。というのも彼の父が非常に奔放な性格で、外でたくさん隠し子を作ってしまっていたのでした…。真面目な性格の総一朗は反発する姿勢を見せるのですが、なんだかんだで弟たちはかわいくて…いつの間にやら弟たちに素直になれない、ツンデレ兄が誕生していましたとさ…というお話です。


わか#12441;ツン
分かりやすいツンに分かりやすいデレ。機微な部分で勝負するのではなく、ツンデレの振れ幅を大きくしていくことでネタを作っていくイメージ。


 ギャグコメディですから、設定はぶっとんでても全然問題ないわけで、主人公の社長に始まり、弟たちもなかなかの個性派揃い。チャラ男や霊媒系の風貌の弟なんてのはかわいいほうで、一番の末っ子は殺し屋の息子ですし、果ては宇宙人とのハーフまで登場します。飛び道具にも程がある、宇宙人の弟はイカ的な風貌で、無駄にイケメンに描かれているのが非常にムカつきます(良い意味で)。イケメンというよりイカm(自主規制)。
 
 とはいえやはりネタのメインとなるのは、主人公の総一朗。ツンデレといってもナチュラルツンデレではなく、あからさまなネタ的ツンデレ。BL風味が強い本誌であれば、むしろ照れて素直になれないナチュラルツンデレの方がしっくりきそう(というか単純に男性キャラのツンデレはそっちが好みなだけなのですが)。なんて、こちらはこちらでとにかく全力でネタに走ってくれるので、これはこれで清々しく楽しめるという。
 
 なお個性派をそろえすぎたがために、物語はとにかくまとまりがなくバラバラ。1話完結スタイルのコメディとしては特に問題ないのですが、単行本で読むと若干違和感を覚える方もいるかもしれません。そんな個性派の中でも個人的なお気に入りは、殺し屋の息子である六海ちゃん。とってもかわいい幼稚園児なのですが、ひとたび殺し屋の血が騒げば拳銃すらも持ち出すアブナイ少年です。その見ためといい、奔放な性格もすごくかわいい。前髪しばりの幼稚園児ってだけで、もうなでなでしたいですよ、はい。


【男性へのガイド】
→女性キャラ皆無。それでも良いのなら。キャラ萌え的な所だと思いますので、俄然女性向けかと。
【感想まとめ】
→フリーダムの一言に尽きます。まさかイカ野郎が一発キャラじゃなくレギュラーで起用されるなんて思っちゃいなかったですよ。


作品DATA
■著者:住吉文子
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOGコミックス
■掲載誌:B's-LOGエアレイド
■既刊1巻
■価格:620円+税


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かくかくしかじか
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王国の子
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レビュー
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小森羊仔「シリウスと繭」(1)
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レビュー
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かみのすまうところ。
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レビュー
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