
うれしいんだよ結弦が来て
家族ができたみたいでさ
■貧乏学生・侑征の前に突然現れたのは、超~ナマイキなお坊ちゃまベイビィの結弦。両親を亡くし天涯孤独の結弦を、侑征が引き取ることに……。大波乱のふたり暮らしがスタート☆
壱コトコ先生のビーズログ連載作です。ナマイキな小学生との同居生活を描いた、ほのぼのコメディ。物語は唐突に始まります。親元を離れ一人暮らしをしていた貧乏高校生・侑征の家に突然グラサンにスーツの男が現れます。小さな子供を引き連れたその男は、「遠い親戚の子を引き取って面倒を見てほしい。お金ははずむ。」と通告し、半ば強引に男の子を引き取らせます。遠い親戚というその子・結弦は、お金持ちな家庭で育った世間知らずの生意気小学生。なんとか歩み寄ろうとする侑征ですが、連れない態度で彼を拒絶します。けれどもやっぱり子供は子供。一緒に過ごすうちに、段々と二人の距離は縮まってきて……というストーリー。

最初は距離がある二人。侑征の持ち前の包容力で、少しずつ距離を縮めていく。とにかく結弦の表情が豊かで、それだけでも楽しめます。
ものすごく無理やり感のあるスタートはご愛嬌。その勢いのままジェットコースター的に進むのかと思いきや、その後は比較的ゆっくりと、ほのぼのと物語は進んでいきます。高校生と幼い男の子のつながりを描いた作品というと、マッグガーデンの「flat」を思い出しますが、あちらは子供が高校生をかなり好いていて、逆に高校生はそれほどでもないというミスマッチからの面白さがある作品でした。本作は逆に子供からの信用がない中で、少しずつ信用を勝ち取っていくというアプローチ。お互いに一人身であるという環境から、絆を醸成するのにそう時間はかからず、物語の中盤以降は疑似家族、疑似親子、疑似兄弟的なエッセンスを含んだ物語へと変容していきます。
侑征は割と懐の広い高校生という感じなので、彼目線で物語を楽しむことが多いのかなと思います。一方で結弦はなかなかの食わせ物。自分が可愛いことを自覚しており、甘えるべき人には甘え、侑征に対しては生意気な態度を取り続けます。物語的にはこの子の可愛さを楽しむという部分が7割ぐらいを占めており、この子が可愛いと興味を持った方はとりあえず手に取って損はないかと思います。ナマイキなところから、ふと見せる寂しい表情とか泣き顔が本当に可愛らしくて。。。
物語は2人の閉じた関係で終わらず、侑征の同級生たちが頻繁に彼の家を訪れることで、関係性の広がりを見せていきます。加えて同級生の一人に妹がおり結弦と仲良くなるという、2世代による関係構築あり。侑征の友達は、女子2人と男子1人。女の子はそれぞれタイプが違い、ふんわり女子とちゃきちゃき幼馴染ということで、物語が進めば恋の匂いもしてきそうな雰囲気もあります。

こんな感じの幼馴染。結構普通に家にくるあたり、オタク好きする作品にありそうなシチュエーションが羨ましい。
温かい人間関係や小さな男の子を愛でるという以上には特に強調すべきところはないのですが、そこに絞って存分に楽しめるというシンプルさは魅力で、疲れた心を癒してくれることでしょう。とにかく悪意を持った人間が登場しないというのも個人的には好きなところで、安心感を持って読むことが出来ました。
【男性へのガイド】
→男2人の関係性を愛でるってのは、男子受けするのだろうかという所はありつつも、優しいつながりを描くというような話がお好きであれば、さほど抵抗なく読めるのではないかと思います。女の子も可愛いし。
【感想まとめ】
→表紙から受ける印象をそのまま信じてもらえばいいんじゃないかなと思います。ちょっとクサさはありますが、デフォルメされたキャラ造形からも、このくらいの濃い味でちょうど良し。
作品DATA
■著者:壱コトコ
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:ビーズログコミックス
■掲載誌:ビーズログ
■既刊1巻
■価格:620円+税
■試し読み:第1話(pixiv)
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