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Tag [新作レビュー] 2010.01.24
1102808572.jpg野村美月/日吉丸晃「“文学少女”と美味しい噺(レシピ)」第1巻


ぼくの「愛しき言」が
あなたのお腹をいっぱいにしていることを   
ぼくはいつも
願っています



■これから遠子先輩の話をしようと思う。ぼくを導き救ってくれた“文学少女”の話を   
この世のありとあらゆる物語や文学を食べてしまいたいほど愛している“天野遠子”と、元・美少女(?)覆面作家の井上心葉(♂)。多くを失い、小説を書くことをから遠ざかっていた心葉は、むりやり遠子に文芸部に引っぱっられて以来、彼女のお腹を満たすため、彼女に三題噺を書かされる毎日を送っていた。そんなふたりの不思議で優しい日々を、今はいっぱしの小説家になった“ぼく”がふりかえる。たくさんの思い出、彼女がくれたいくつもの物語、その痛みや優しさを…

 人気ライトノベルのコミカライズ…だと思っていたのですが、ちょっとこれはコミカライズとは違うかも。それについては後ほど書くとして、「文学少女」のご紹介です。主人公は、元売れっ子作家の高校2年生・井上心葉。中学の時にデビューし瞬く間にベストセラーになるも、それが原因で深いトラウマを負うことに。以来小説を書くことから遠ざかっていたのですが、高校にて先輩の天野遠子に出会い、彼女の秘密を知ってしまうことで再び文学に触れていくようになります。彼女の秘密とは、人間が食事を摂るように、物語を食べるというもの。本を食べたり原稿を食べたり…自由奔放な性格も相まって、なんとも不思議な生き物に見える彼女を、心葉は「妖怪」と呼んでいます。そんな文学少女のお腹を満たすため、心葉は日々三題噺(3つのキーワードを使って小説を書くというもの)を書かされているのでした。


文学少女
本を食べるという描写はなかなか強烈ではあるけれど、遠子の場合どこかお上品で可愛げがある。実際食べる人見たことあるしね。辞書食べる人だけど。


 お話は、毎回なにかしらの文学作品がピックアップされ、それにシンクロするような形で物語が展開。読切り形式なので、多くの文学作品に触れることができます。それがひとつ、このシリーズの見所になっているようですね。また物語の導入は、小説家としてバリバリ活躍する、“その後”の心葉が、過去を懐かしむという視点からおくられます。短編と、過去回想という二つの要素が合わさった影響か、脇役たちはまったくといっていいほど登場しません。もともとそういう話なのかと思ったのですが、どうやら原作は違うようで。言うなればこれは、コミカライズというよりはアフターストーリーを漫画で読んでいるみたいな感覚?いや、描かれるのは高校時代なので,アフターストーリーというのはおかしいのだけれど、後日談みたいな感じというか。そういう意味では、やはり原作をある程度知っている方が、よりこの作品を楽しめるのではないかな、と。特に遠子さんは、「このライトノベルがすごい!」で女性キャラの人気ナンバー1になっているくらい素敵な女性らしいではないですか!読者サイドにそういった“思い”があるからこそ、よりこの物語で語られる遠子さんとの思い出や、心葉の思いが沁みるのではないかな、と思いました。
 
 オマケ漫画として、毎回テーマにされる文学作品を、本編に登場しない脇役たちで人形劇調で10ページほどで解説するというものがあります。この充実っぷりがすごい。オマケ漫画というにはもったいないくらいで、これも立派なコンテンツのひとつですよね。原作未読者にとっては、突然しらないキャラ達がわらわらと出てくるので戸惑うのですが、原作ファンであればこれもまたお楽しみのひとつになるのかもしれません。だからこそ原作を知っていたほうg(ry
 

【男性へのガイド】
→男の子視点で、文学少女はカワイイし、なんで女性向けレーベルでの発売なんだろう。確かに詩的に感動的にさせようという動きはあるのですが、だからって男性に向かないってわけじゃなかろうし。
【私的お薦め度:☆☆   】
→長編で読みたいなぁと個人的には。読切りに加えオマケ漫画がかなり長くはさまれるので、なんとなく本編が印象に残らず。試みとしてはアリなのでしょうが、あくまで原作既読者向けなのかな、という印象が。でも原作未読でもこれだけはわかる、遠子さんは素敵。


作品DATA
■著者:野村美月/日吉丸晃
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA COMICS DX
■掲載誌:ビーンズエース(2009年vol.17~vol.19),Asuka(2009年9月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:560円+税

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Tag [新作レビュー] 2009.10.23
32329072.jpg神永学/小田すずか「心霊探偵八雲」第1巻


何故謝る?
…君はぼくの眼を見ても逃げなかった
それだけでいい   



■幽霊が出ると噂される廃屋に忍び込み、そこで突然意識を失い、以来高熱を出して眠り続けるようになってしまった友人を助けるため、大学生・小沢晴香は、同じ大学でそっち方面に強いと噂される男のもとに向かう。彼の名前は斉藤八雲。とにかくマイペースで飄々とした態度をとる八雲のことを信用しきれない晴香だったが、彼女の過去をズバリ言い当てられ、信用することに。赤い瞳を持ちその眼で幽霊を見通すという彼と、早速問題解決に向かうが…!?

 人気小説シリーズのコミカライズ作品です。なんて言って、コミカライズは2回目。数年前に白泉社にてコミカライズされており、2巻まで刊行されています。正直全然知りませんでした。むしろ知っていたのはドラマのほうで、こちらはテレビ東京にてドラマ化されています。どちらも原作に概ね倣った物語展開だそうで、このAsuka版も基本的な部分は原作に忠実。何かにつけて頼られがちなヒロイン・晴香が、赤い眼を持つ霊能力者・八雲と共に心霊がらみの難事件を解決に導くという、スピリチュアルミステリーシリーズです。


心霊探偵八雲
マイペースというか、あくまで自分のルールで動いている感じ。ホームズとかもこんな感じだよね。


 心霊がらみの事件ということで、幽霊サイドだけで完結するような事件は扱わず、幽霊が絡んだ刑事事件の解決がメインという感じ。まぁ大抵の鍵は幽霊が握っていて、それを八雲くんが簡単に聞き出しちゃうもんだから、ある意味では無敵で、ヒントから解決に導くという探偵もの本来が持つような魅力にはやや欠けるかも。とはいえヒロイン晴香がなかなかのトラブルメーカーなので、そうそう簡単に事は運ばないぞ、という感じで、決して飽きさせることはありません。また事件を解決するだけでなく、パートナーとして徐々に心を通わせていく部分も見所。お互いに心に傷を持っており、それを2人で埋めあっていくような関係性を見ることが出来ます。ただ緊迫していないときは、どちらかというと漫才風味。かみ合っていないようでかみ合っている二人は、実にいいパートナーだなぁ、と。
 
 スタイリッシュなヒーローに、テンポの良い物語展開、そんでもって話も分かりやすいと、ウケる要素は盛りだくさん。マンガだから当たり前のように描かれていますが、これが小説ともなると、結構スゴいのではなかろうか。まぁ読んだ事ないのでわからないんですが。


【男性へのガイド】
→これは読みやすいと思いますよ。面白いかは知らんけど、好きな人は好きだと思う。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→いい意味でライトで、もの凄く取っつきやすいです。ただそれが薄味感を助長してしまっているような気も。


作品DATA
■著者:神永学/小田すずか
■出版社:角川書店
■レーベル:Asuka DX コミックス
■掲載誌:Asuka(2009年8月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:560円+税

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2009.10.01
31640321.jpg松本テマリ/喬林知「今日からマのつく自由業!」(1)


おめでとうございます
今日からあなたは魔王です!



■8巻発売しました。
 正義感と負けん気は人一倍強い高校生・渋谷有利。ある日、不良に絡まれている顔見知りに遭遇し、仕方なしに助け舟を出したところ、逆に返り討ちに遭ってしまう。公園のトイレに連れ込まれた末に、便器に顔を…と思ったら、気がついたときにはそこは欧風の異世界。しかもいきなり襲撃されたと思ったら、逆に助けられてとワケがわからない状況。挙げ句の果てに「あなたは魔王です!」なんて言われてもう…!?

 ㋮シリーズは、今日から㋮王!としてNHKでアニメ化もされてますね。地球に生まれ育った魔王・有利が、本来生まれる予定だった異世界に呼び戻され、新米魔王として奮闘・成長していくというファンタジー作品です。連れ戻された異世界は、人間と魔王が共存する世界。双方は共に対立しあっており、しばしば紛争が起こるという状況。さらにここにきて状況が悪化したため、当初の予定よりも早く有利は呼び戻されます。魔王の仕事は、人間と戦うこと。しかし地球で人間として生まれ育ち、その記憶しかない彼は、状況はなんとか理解できるものの、そうやすやすと人間と戦うことなどできません。彼が取るのは、あくまで平和路線。


松本テマリ「今日からマ王」
最初から正義を自覚しているわけでもないし、悪を自覚しているわけでもない。だからこそ絶妙なバランスで話が展開される。


 魔王になる男ですから、強大な力を内に秘めています。ただしなんの訓練もされていないため、その力を制御できないと言うのが難点。それ以上に、地球と違う文化に慣れるのに手間取ります。ある程度の変化は受け入れることができる強さ…というか鈍感さは持っているものの、サポートなしで大丈夫というわけではありません。そんな彼を支えるのが、コンラートを始めとする家臣の人々。この作品の魅力は、彼らが非常に個性的で、主人公その他とテンポの良いコメディを繰り広げるというところにあるんじゃないかな、と思います。あ、でもコメディオンリーじゃないですよ、もちろん。
 
 魔王になるお話でNHKとかOKなの?と思ってたのですが、血なまぐさい描写は出てこず、主人公もあくまで平和路線と、逆にうってつけのお話になっているのか。しかもこの世界の人間は皆美形というおまけつき。主人公の性格もこの手の話ではスタンダードな性格の持ち主で、特別な何かをして目立っている作品というよりも、魔王視点という以外は基本にのっとり丁寧に…という作りの作品なのだな、という印象。だからこそ親しみやすいし、いったんファンをつかまえてしまえば人気も落ちないという。


【男性へのガイド】
→ビーンズ文庫原作ですし、女性向け感が強め。ただ読みにくさはないので、気になる人は手に取ってみては?
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→想像していたよりもマイルドでした。読んでいて安心できる良作ファンタジー。オススメにはしませんが、アニメはちょっと観てみたくなりました。


作品DATA
■著者:松本テマリ/林知
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA COMICS DX
■掲載誌:ASUKA(2005年6月号~連載中)
■既刊8巻

■購入する→Amazonbk1

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2009.10.01
31822264.jpgマジコ!「コードギアス―反逆のルルーシュ」(1)


スザク、僕は…
ブリタニアを…
ぶっ壊す



■7巻発売しました。
 神聖ブリタニア帝国によって占領された日本。「日本国」ではなく「エリア11」と新たに名付けられたこの地域では、ブリタニア人が暮らす「租界」と、日本人が暮らす「ゲットー」の2階層に自然に分かれ、人々の自由と権利は奪われたままだった。そんな世界を変えようと目論む、1人の少年・ルルーシュ。「ギアス」と呼ばれる特殊な力を手に入れた彼は、ブリタニアへの復讐のためならば、手段を選ばない。野望を秘めた孤独な少年の戦いが今、幕を開ける…!!

 「コードギアス」という名前は、多くの方が聞いたことあると思います。人気アニメとして様々な場所で話題を振りまいていましたね。ただ私は原作知らないので、その上でのレビューになります。「コードギアス」について知っているのは、1期のOPがFLOWの「COLORS」だったことと、声優の小清水亜美さんがインタビューで「許されるギアスが欲しい」と発言した、という程度。
 
 主人公は、日本を占領した側の人間・ルルーシュ。しかし彼は、神聖ブリタニアに復讐心を燃やしています。実は彼、ブリタニア皇族の末裔でありながら、皇族の陰謀により母を殺され、妹も体を不自由にされるといった過去を持っており、現在は普通のブリタニア人として暮らしています。そんなある日、ある事態に巻き込まれ謎の少女と出会ったことをきっかけに、相手を如何なる命令にも従わせることのできるギアス「絶対遵守の力」を手に入れます。もともとあった復讐心に、高い頭脳、そこに加えてギアス発現と、彼を復讐へ突き動かすには十分すぎる条件が整いました。彼は学校で副生徒会長を務めながら、裏で素顔を仮面とマントで隠したテロリスト・「ゼロ」として、私設軍隊「黒の騎士団」を結成し、ブリタニア帝国に反逆を引き起こすようになります。


コードギアス
ギアスを発動すると左目が光る。その力は意のままに使いこなせるというわけではなく、若干の制約あり。


 原作では、ルルーシュの友人である、スザクも主人公になるようですね。共にブリタニアに復讐心を持ちながらも、徹底的に叩きにいくルルーシュに対して、内部からの浄化を目指すスザクと、その方向性は真逆。ルルーシュは、一般的な「ヒーロー」ではなく、いわゆる「アンチヒーロー」の道を進むことになります。
 
 もともとある舞台背景に加え、ギアスという特殊能力を物語に組み込むことで、ストーリーに幅と動きを付けることに成功。一度目を引きつけてしまえば、そりゃ見入るよなぁ。やや貧弱な印象の主人公も、個人的には好き。最初から目的は「ブリタニアへの復讐」ではあるものの、小さいところから初めて、気がつけば一気に世界を相手に…という辺は、なんとなく「デスノート」を想起させなくもありません。まぁ元々持っている物語としての性格
は全然違うものですが。とりあえず微妙なレビューしても許されるギアスが欲しいです、はい。


【男性へのガイド】
→ここから入ろうって人は少ないんじゃないですかね?まぁそれなり、という感じです。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→原作との兼ね合いなしに見て、このくらい。まずまず面白いとは思いますが、私怨発端でディストピアを切り崩そうとする青年の生き様…みたいな所にはあまり興味がないという。


作品DATA
■著者:マジコ!
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKAコミックスデラックス
■掲載誌:ASUKA(2006年10月号~連載中)
■既刊7巻

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Tag [新作レビュー] 2009.09.25
32315112.jpg神田はるか「スウィートガール」 第1巻


先輩だから
誘ったんですよ



■真崎葵は、お菓子(を食べるの)が大好きな女子高生。昔から男のようだと言われ育ってきた葵だったが、ついに春が!?なんと中等部3年で製菓部部長の男の子・湯瀬巧から、告白されたのだ!!……「男」として。その時は速攻で断った葵だったが、後日周りの女子の陰謀により、偵察員として女子禁制の製菓部へ「男」として入部することに…。美形男子部員に囲まれて、「男」として部活に参加する不思議な生活を始めた葵だったが…!?

 美形揃いで女子から大人気、しかし女子禁制という製菓部。そんな謎に包まれた部活に、「男」として送り込まれることになったのは、先日製菓部の部長から「男」として告白されたばかりの女子高生・葵。始めは友達のお願いということで、嫌々ながら通っていた葵でしたが、部活に通い詰めるうちに、だんだんと自分の居場所をそこに見出していくようになります。男装もので秘密のまま行くのかと思いきや、嫉妬にまみれた女子によって早々に身バレ。しかし「葵は男っぽいし、今まで一緒にいたから特別OK」と、その後も紅一点として在籍することになります。


スウィートガール
もちろん不器用。製菓においては、どちらかというと足をひっぱってしまう。本人はそれを自覚しており、懸命に上達を計ろうとする。


 基本的にはありがちな、男装学園ハーレムもの。中等部でありながら部長を務め、葵にぞっこんのド変態・湯瀬をはじめ、抱きつき癖のある純粋無垢な少年・押領寺、常に笑顔で部員をサポートするしっかり者・山田、無表情の氷結男・御手洗など、個性派揃いの面々にと、男勝りの葵が少しずつ仲を深めていくというお話です。学園コメディ一本という感じなので、ストーリー性は薄く、またメッセージ性も希薄。ただその分気楽に読めるようになっています。ヒロインはサッパリしつつも、要らぬところで考え込んでしまったりと、なかなか可愛らしい性格の持ち主。なんとなく「恋愛ラボ」のリコっぽくて、ついつい感情移入してしまいました。


【男性へのガイド】
→ヒロインはそれなりに魅力的かもしれんです。ま、結局はハーレムものなんですけどね。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→全体的に薄いものの、それは別に減点材料にはならんと思うんですよね。学園ハーレムでのコメディが好きな方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。


作品DATA
■著者:神田はるか
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA ComicsDX
■掲載誌:Asuka(2009年2月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:560円+税

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