
ぼくの「愛しき言」が
あなたのお腹をいっぱいにしていることを
ぼくはいつも
願っています
■これから遠子先輩の話をしようと思う。ぼくを導き救ってくれた“文学少女”の話を
この世のありとあらゆる物語や文学を食べてしまいたいほど愛している“天野遠子”と、元・美少女(?)覆面作家の井上心葉(♂)。多くを失い、小説を書くことをから遠ざかっていた心葉は、むりやり遠子に文芸部に引っぱっられて以来、彼女のお腹を満たすため、彼女に三題噺を書かされる毎日を送っていた。そんなふたりの不思議で優しい日々を、今はいっぱしの小説家になった“ぼく”がふりかえる。たくさんの思い出、彼女がくれたいくつもの物語、その痛みや優しさを…
人気ライトノベルのコミカライズ…だと思っていたのですが、ちょっとこれはコミカライズとは違うかも。それについては後ほど書くとして、「文学少女」のご紹介です。主人公は、元売れっ子作家の高校2年生・井上心葉。中学の時にデビューし瞬く間にベストセラーになるも、それが原因で深いトラウマを負うことに。以来小説を書くことから遠ざかっていたのですが、高校にて先輩の天野遠子に出会い、彼女の秘密を知ってしまうことで再び文学に触れていくようになります。彼女の秘密とは、人間が食事を摂るように、物語を食べるというもの。本を食べたり原稿を食べたり…自由奔放な性格も相まって、なんとも不思議な生き物に見える彼女を、心葉は「妖怪」と呼んでいます。そんな文学少女のお腹を満たすため、心葉は日々三題噺(3つのキーワードを使って小説を書くというもの)を書かされているのでした。

本を食べるという描写はなかなか強烈ではあるけれど、遠子の場合どこかお上品で可愛げがある。実際食べる人見たことあるしね。辞書食べる人だけど。
お話は、毎回なにかしらの文学作品がピックアップされ、それにシンクロするような形で物語が展開。読切り形式なので、多くの文学作品に触れることができます。それがひとつ、このシリーズの見所になっているようですね。また物語の導入は、小説家としてバリバリ活躍する、“その後”の心葉が、過去を懐かしむという視点からおくられます。短編と、過去回想という二つの要素が合わさった影響か、脇役たちはまったくといっていいほど登場しません。もともとそういう話なのかと思ったのですが、どうやら原作は違うようで。言うなればこれは、コミカライズというよりはアフターストーリーを漫画で読んでいるみたいな感覚?いや、描かれるのは高校時代なので,アフターストーリーというのはおかしいのだけれど、後日談みたいな感じというか。そういう意味では、やはり原作をある程度知っている方が、よりこの作品を楽しめるのではないかな、と。特に遠子さんは、「このライトノベルがすごい!」で女性キャラの人気ナンバー1になっているくらい素敵な女性らしいではないですか!読者サイドにそういった“思い”があるからこそ、よりこの物語で語られる遠子さんとの思い出や、心葉の思いが沁みるのではないかな、と思いました。
オマケ漫画として、毎回テーマにされる文学作品を、本編に登場しない脇役たちで人形劇調で10ページほどで解説するというものがあります。この充実っぷりがすごい。オマケ漫画というにはもったいないくらいで、これも立派なコンテンツのひとつですよね。原作未読者にとっては、突然しらないキャラ達がわらわらと出てくるので戸惑うのですが、原作ファンであればこれもまたお楽しみのひとつになるのかもしれません。だからこそ原作を知っていたほうg(ry
【男性へのガイド】
→男の子視点で、文学少女はカワイイし、なんで女性向けレーベルでの発売なんだろう。確かに詩的に感動的にさせようという動きはあるのですが、だからって男性に向かないってわけじゃなかろうし。
【私的お薦め度:☆☆ 】
→長編で読みたいなぁと個人的には。読切りに加えオマケ漫画がかなり長くはさまれるので、なんとなく本編が印象に残らず。試みとしてはアリなのでしょうが、あくまで原作既読者向けなのかな、という印象が。でも原作未読でもこれだけはわかる、遠子さんは素敵。
作品DATA
■著者:野村美月/日吉丸晃
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA COMICS DX
■掲載誌:ビーンズエース(2009年vol.17~vol.19),Asuka(2009年9月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:560円+税
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