
理不尽だよ…
もうわけが分からない
■普通の女子中学生だった藤本ひなた。しかしクラスメイトとの諍いがあった夜、何者かに誘拐される。眠っている間に連れて来られた場所は、誰の助けも得られない無人島。そこには計12人の少年少女が集められていた。人間としての点数をつけられた彼らは、とある資格を懸けた恐ろしい非日常を送ることになる…!
野奇夜先生の新作単行本でございます。原作付きの作品を描いているイメージの強い野奇夜なのですが、こちらはオリジナルの単行本になります。なんだか怪しげな表紙とタイトルの本作、なかなかインパクトのある作品となっていますよ。
物語の主人公は、ごくごく普通の女子中学生・藤本ひなた。ある日クラスメイトをイジメめいた諍いに巻き込んでしまったその夜、何者かに拉致されてしまいます。気づいた時に自分がいたのは、見知らぬ体育館と、見知らぬ11人の男女。顔も見知らぬ彼らは皆、拉致されこの場に集められたらしい。ワケも分からぬまま、スクリーン越しに語られたのは、自分達は生きる資格がない社会のクズであること、そして最後のチャンスとして、学校での共同生活を通して社会で生きていく能力があるかテストされるということ。生徒達はそれぞれ点数がつけられ、100点に到達した者は元の生活に、逆に0点になった者は大人になる資格を剥奪されるという。学校があるのは、逃げ場のない無人島。果たしてひなたは、この壮絶な非日常を生き抜く事ができるのか…というお話。

学校に集められた(拉致された)のは計12人。それぞれ拉致される前の日常生活での態度が点数化されており、上は85点から、下は10点まで。ルールに従ってちゃんと行動出来た場合は持ち点が加算され、逆に諍いを起こしたりルールに反する行動を起こした場合は減点。100点に達すればシャバに戻れて、逆に0点になれば…。
序盤に見せしめ的に一人が犠牲になり、物語の緊張感は一気に上がります。ヒロインの最初の持ち点は50点。そんな彼女が結果的に一番仲良くなったのは、最初の持ち点が10点という少年なのですが、これが実に食えないキャラ。非常に切れるけれど、内面が全く見えない恐ろしさがあります。以前人を殺したのでは…と噂される男の子が最初の持ち点35点ですから、10点てもはや…となかなか気になる設定です。
ルール化された中で動くのであれば、余りに退屈な物語で終わってしまいますが、こちらはそうは行かない要素が二つ落とし込まれています。まずはルールは明文化されていないということ。加点・減点は主催者側の裁量で決定しますし、秩序を生み出そうと自分達で決めた内輪のルールすらもトリガーとなりえる不安定さがあります。また、ルールを守らなくてはいけないのは7時〜17時までの間で、それ以外は何をしてもOKという設定があるため、場は荒れやすいです。この二つを落とし込めたため、割と物語のアクティブさについては、作者さん側で調整可能なのかな、と。これは結構上手い設定だと想いました。

結局のところ点数でのせめぎあいになる。個人同士の点数比較が直接物語を動かす要素には今のところなっていないが、これから段々とそういう部分も出てくるのでしょう。
中学生が島に拉致監禁されて、サバイバル…というと「バトルロワイヤル」なんかを思い出します。こういう理不尽系のお話は男性向けの雑誌などでしばしば見られるのですが、女性向けでは珍しい。なかよしでの「ミリオンガール」(→レビュー)などと同じく、ネタや雰囲気的に二番煎じ的なものであったとしても、そのインパクトだけでもう勝ちなんですよね。本作も、そんな印象のある一作です。ただ女性向け作品で共通して不安になるのは、どこまで物語の器を拡げるのかというところ。設定的にはかなり壮大な物語に仕上げることも出来るかと思うのですが、この掲載誌でしかもオリジナル連載はそこまでやっていないということを考えると、結局思いの外小さい枠に収まる物語になってしまうのではないかな、という懸念もあります。集められた理由も、結局の所判然としませんし。何かクズっぷりで共通点でもあればまたあれなのですが。しかし1巻時点ではそのへん判別付かず。物語の展開含め、色々と続きが気になるお話でございます。
【男性へのガイド】
→こういう話を好む男性の期待に耐えうる物語になるかは、まだわかりません。ただネタとしては結構読ませる内容だと思いますよ。
【感想まとめ】
→こういうインパクトのある作品は好きです。色々粗いというか、気になる点はありますが、ちょっと追いかけてみたいですねー。
作品DATA
■著者:野奇夜
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKAコミックス
■掲載誌:ASUKA
■既刊1巻
■価格:560円+税
■購入する→Amazon
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