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Tag [新作レビュー] 2015.03.15
jyuuyousannkounintantei.jpg絹田村子「重要参考人探偵」(1)



よし!
重要参考人として身柄を確保!!




■弥木圭は、なぜか死体を見つけてしまう体質の男性モデル。そのせいで、しばしば犯人だと疑われ、殺人事件の重要参考人に!?自らにかけられた容疑を晴らすため、推理オタクの周防斎、ナンパ好きのシモン・藤馬の2人のモデル仲間とともに、圭は今日も難事件に立ち向かう!本格推理コメディ、待望の第1巻!!

 「さんすくみ」(→レビュー)の絹田村子先生の新連載です。今度はなんと、推理モノです。「名探偵コ○ン」が代表格とも言えるでしょうが、推理モノの主人公が出先で異常なほど殺人事件に遭遇するというあの現象、ありますよね。コナンなどは過去にどれくらい死んでいるかという数が集計されていたりと、こいつらが疫病神なんじゃないかっていう風潮すらあります。本作は、そんな推理モノの難点を逆手に取ったとも言うべき設定のキャラが主人公となっています。

 主人公の弥木圭は、探偵……ではなく、モデル。彼は幼いころからある特異体質に悩まされています。それは、行く先々で死体と出会ってしまうというもの。それも必ず第一発見者で、死に方も様々。余りの遭遇率に死体を見ること自体には慣れてしまったものの、困っているのが犯人と間違えられてしまうということ。自らにかけられた容疑を晴らすために、必死になって真犯人探しをするのですが、、、というストーリー。


重要参考人探偵0002
死体との出会いは日常。


 どうしてそういう体質になったのか、どうやらきっかけはあるらしいのですがそれは1巻では明かされず。恐らく先々明らかになってくるのでしょう。当人ですが、この体質は嫌ではあるものの引きこもりになるわけにもいかないので「仕方ない」として片づけて普通にモデル業をこなしています。容姿は優れているものの、頭脳の方は良いのかよくわからず。ただ自分が無実の罪を着せられたらたまったもんじゃないと、火事場の馬鹿力的に集中力を発揮します。

 探偵ではありませんから、当人だけで問題を解決するのは難しいです。そこで手を貸してくれるのが、同じモデルで度々現場に出くわす、推理マニア・周防とナンパ好きのシモン。結果性格バラバラの3人でどこか緩くトラブルを解決するという構図は、「さんすくみ」と同じですね。ただこちらはモデルなので、男としてのランクはグイっと上がっているわけですけれども。周防は推理マニアといえども洞察力はまるでなしで、あまり役に立つ印象はありません。シモンはナチュラルボーン・ナンパ野郎という感じで、そのテクを駆使して女性から様々な情報を引き出す役目を負います。


重要参考人探偵0001
周りの仲間もそれを知っているので、比較的慣れている。周防に関しては、待ってましたと言わんばかりにノリノリ。


 トリックはそんな突拍子もないものはありません。そこはあくまで、素人たちでも解決できるレベルのもの、という位置づけですから。難易度的には、「ぼくらの推理ノート」ぐらいでしょうか(恐らくほとんどの人には伝わらないであろう例え)。そう考えると、ミステリーという枠で捉えるよりかは、男3人のやり取りを楽しむコメディという方が正しいかもしれません。「さんすくみ」が好きだった方は、まず同じテンションで読んでもらって普通にそのまま楽しめるような感じだと思います。



【男性へのガイド】
→男子たちのゆるいやり取りは割ととっつきやすいとは思うのですが、モデルになったぶん「さんすくみ」よりかはハードル上がった感もあります。
【感想まとめ】
→表紙とタイトル見たときはものすごい方向転換だなと思っていたのですが、中身を読んで安心、これは「さんすくみ」の流れをくむ安心の絹田村子作品です。



作品DATA
■著者:絹田村子
■出版社:小学館
■レーベル:flowerコミックス
■掲載誌:flowers
■既刊1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2015.01.30
1106462177.jpg西炯子「姉の結婚」(8)



「あの人と一緒に生きていてよかった」と
お互い思って人生を終えられるような
そんなつながりをつくりあげていくことを
「結婚」というのだと思います




■8巻発売、完結しました。
 離婚が成立した真木誠から、正式に結婚を申し込まれた岩谷ヨリ。だが、離島での開業準備を進める真木に、一度はあきらめたはずのドイツ留学の話が舞い込んでくる。再びのすれ違いと別れを経て、ヨリが最後に選んだものとは…!?大人の純愛ストーリー、感動の完結巻!!

~完結です~
 8巻で完結しました。無事…とはいかず、最後の最後までドラマが待っていましたが、何とか終幕です。正直8巻の展開は全く想像していなかったので、最後まで手に汗握ると言いますか、まんまとしてやられた感がありました。まさかこんなにド直球な物語で来るなんて、思いもしませんもの。


~二人を隔てる最後の壁~
 flowersでの前作「娚の一生」では、最後に大災害が起きることによって二人の間に危機が訪れました。この抵抗不可能な圧倒的な力によって翻弄されるという展開は、個人的に望んでいた形でなかったので、どこか消化不良的にもやもやとしたものがずっと残っていました。そして本作、同じように突拍子もないラストを迎えると思いきや、二人の行く手を阻んだのは、

aneno.jpg
一人の女だったという。


 しかもその手口が実に古典的で、一昔前の韓流ドラマや昼ドラを彷彿とさせるものだったのですから、驚くほかありませんでした。これまで真木の周りにあったしがらみは、この比でなく複雑で規模の大きなものだったのですが、一人の情念によってここまで追い詰められるというのは、ある意味とてもリアルであり、女性の執念の恐ろしさみたいなものを強く感じさせられます。怖い怖い…。かくして物語はクライマックスを迎えるわけですが、これによって、「娚の一生」で抱えていたモヤモヤも合わせて供養されたような感覚があり、個人的には大満足の幕切れでした。


~ラストなんかベタ王道すぎて…!~
 ラストなんかもう、ベタ中のベタ、王道中の王道すぎてよだれ出るほどでした(笑)。たとえば最後の間などは特に素敵で、お見合いに向かう直前での一幕…


姉の結婚8-1
ふと引いた引き出しの中に、指輪の入った袋を見つける


 この何かを暗示するような意味深なコマ割り。セリフで散々真木のことを愛しているってことは語りつくされていたのですが、こうしてビシっと現物を見せられると、より納得感があるといいますか。彼女の心情をよく描いている感があります。

 また最後に助け船を出す天野さん、カッコいいです。正直もう登場しないと思っていて、「人物紹介になんでいるんだろう?」なんて考えていたのですが、ちゃんと意味があったってことですね。すみません、てか天野って名前もこれ見て思い出したってくらいなんですが。

 これで面白いのが、「女性の知り合いは裏切る」ってネタの後に、「男性の知り合いは助ける」ってネタになっているってこと。考えすぎ、単なる偶然なのかもしれませんが、ともあれ捨てる神あれば拾う神あり。本当に仲を深めるには、一緒にラブホテルに泊まるくらいしないといけないのかもしれないですね。(結論)


■関連記事
1巻レビュー→自分が幸せになれないと決め込んでいるあなたへ:西炯子「姉の結婚」1巻
2巻レビュー→“なりたい自分”と“なりたくない自分”:西炯子「姉の結婚」2巻
3巻レビュー→“どうすべきか”と“どうしたいか”:西炯子「姉の結婚」4巻
5巻レビュー→唯一傷つけ合える関係:西炯子「姉の結婚」5巻
作者他作品レビュー→笑いと涙の芸道一直線コメディ!:西炯子「兄さんと僕」
崖っぷち28歳とロリふわ22歳の凸凹婦警コンビが行く!:西炯子「ふわふわポリス」
オトナの情事×コドモの事情:西炯子「恋と軍艦」1巻
「娚の一生」2巻
恥ずかしい青春全開の弓道部ライフ:西炯子「ひらひらひゅ~ん」

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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] [オススメ] 2014.09.25
1106441945.jpg河内遙「文房具ワルツ」



小さなギスギスも
淡い白がほどく
そんな日でした




■『物語』は、まだ紙の途中。
夢と現実のギャップにあえぐナズナ。
ナズナに想いを寄せる八神。
漫画家として鳴かず飛ばずのハタノ。
しかしそれぞれの人生の傍には、知らぬところで支えてくれる存在が…。
恋と悩みが交錯する、文具系純愛短編集。

 「夏雪ランデブー」(→レビュー)の河内遙先生の、flowersで掲載された一連の短編をまとめたものになります。悩みを抱える若い男女達の想いを、文房具の擬人化によって描き出した物語たちです。

 長年使っている文房具って、愛着が湧きますよね。私にとっては、中学の時から使っているシャープペンシルがそれで、高校受験も大学受験も、社会人になってからの資格試験でも、常にそのシャープペンシルで切り抜けてきました。いわば相棒という感じなのですが、そういった着想をマンガに落としたのが本作になります。描かれる人間は、大学生2人に漫画家1人。それぞれつながりを持っており、またそれぞれに悩みを抱えています。それは恋の悩みであったり、仕事の悩みであったり。そんな彼らが抱える悩みを、普段使っている文房具が感じ取り、時に何かしたりしなかったりせずに、主人を案じる姿が描かれます。


文房具ワルツ1-1
基本的には主人のことを思っています。長年使って愛着が湧いていればなおさら。


 どのお話も実に読後感が爽やかで、なんだか心が温かくなるんですよ。そしてこれを読んだ後は、きっとあなたも文房具を大切にしたくなるはず。文房具は擬人化されても、基本的に何か自分の意志でしてくれるわけではなく、ただただ主人の心を案じるというだけ。ただそれが描かれることで、主人たちの悩みであるとか、頑張りってものが際立つんですよね。一番近いところで主人を見ているので、主人のことがよく分かっており、発せられる言葉がどれも沁みると言いますか。一方で、文房具同士の絡みも面白く、そちらは異様にポップでノリが軽いという。このバランス感が良いですよね。

 物語は全部で8話収録されており、各話でメインの3人の誰かの視点で描かれます。初回の掲載から最終回まで、実に5年の時を擁しているということなのですが、読んでいると絵柄的にも物語の質的にも大差なく、全く違和感なく最後まで読みきることができますよ。では個人的に気に入ったお話について…


「アケガタ花壇」……カラーに挑戦する漫画家・ハタノケントのお話。マンガと同じく、なかなか思い描くように絵を仕上げられない彼が、煮詰まったのちに同期デビューですでに相当の売れっ子になっている漫画家の元へ赴くというお話。「捉え方の違い」と言いますか、置かれている状況は同じでも、ポジティブに捉えて前に進める人と、ネガティブに捉えて引き返してしまう人がいるのですよね。本作は、ネガティブになりがちな主人公が触発されて前に進むというストーリーになっているのですが、こういう人と出会い仲良くなるっていうのも一つの才能なのだなぁ、とかちょっと思ったという。非常に前向きな気持ちになれるお話でした。


文房具ワルツ
「踊るコンパス」…基本的には人間視点で描かれるのですが、このお話に関しては半分人間、半分文房具という配分の目線で描かれました。文房具屋の片隅で、長年売れることなく眠っているコンパスが、あれこれと文句を言っているというお話なのですが、ツンデレ感漂う姿が実に可愛らしい。コンパスなんて小学生の時に少し使って以来、どこかにやってしまったのですが、こんな姿をしているのだったらもっと大事にしたかもなぁ、なんて思ったりしました。この先どうなっていくのかも期待させてくれる、爽やかな物語でした。

 
【男性へのガイド】
→男性目線のお話もありますので、物語への入り込みやすさはあるかと思います。恋愛特化とかでもないですし、割と万人受けしそうなイメージがあります。
【感想まとめ】
→面白かったです。どのお話も優しく前向きな気持ちにさせてくれるもので、ものを大切にしたいという気持ちが読み終わった後に生まれました。


作品DATA
■著者:河内遙
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックス
■掲載誌:flowers
■全1巻
■価格:940円+税


■試し読み:第1話

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2014.02.24
1106359243.jpg岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」(12)


好きだぞ 秋姫


■12巻発売、完結しました。
みんなを助けるために力をつかい
狐の姿になってしまった秋姫。
彼女を助けるため、瞬が、そして仲間達がとった行動は…?
青春ラブファンタジー、ついに完結!!


〜完結しました〜
 12巻発売、完結しました。11巻を積んでいたので、2巻一気読みで最後まで。いや、感動しました。実に6年半の長きに渡り連載され、ここまで。12巻はとにかく色々な要素が詰め込まれていて思うところも多く、どこから語れば良いのやら…。全部語ってしまえば余すところ無くネタバレになってしまうし、そもそもどこから崩して、どういう順番で書こうかとかも、全然決められないっす。
 

〜瞬ちゃんだけじゃない、みんなで引き寄せた幸せ〜
 物語はもちろんハッピーエンドなのですが、そこまでの過程が凄まじく、まさかこんな壮大な流れになるとは思ってもみませんでした。秋姫の願いはあくまで「普通の女の子になりたい」というものでありますが、所以天狗の子であるため、そう易々とはその願いは叶いません。徳を積んだ天狗になるというのならばまだしも、普通の女の子ですから、何か積極的に動けるわけではありません。ゆえに秋姫は最後までこれといった能動的な行動は起こさず、ただただ願い、我慢するという形でしか行動できませんでした。そんな中動いたのは、瞬ちゃん…だけじゃなく、本当にたくさんの人たちが動いてくれるんですよね。町でうわさの天狗の子、文字通り町ぐるみでの秋姫救出劇でした。
 
 しかもその手法、時を超えて縁を作るようなもので、まどマギチックとでも言いましょうか。タケルくんもそうですし、瞬ちゃんもそうですし、その人のその後の人生すらも決定させてしまうような大きな出来事ですよね。そしてそれを成し遂げてしまうってのがすごい。


〜一番の感動はお父さんだったんです〜
 救出劇においては泣き所満載だったのですが、個人的に一番泣けたのがお父さんの頑張りでした。これまで秋姫の父・康徳はその顔が描かれることは無かったのですが、この秋姫の危機に際して立ち上がり、ついにその顔がガッツリと描かれることになりました。
 

町でうわさの天狗の子12−1
娘のためを思って泣きながら戦う姿は、本当にグッと来るものがありました。
 
 
 顔が出てくるのがこのタイミングで、しかもやっぱりめちゃめちゃ強い。カッコいいです。これまでの娘想いのちょっとズレたお父さんというのも可愛くて良かったのですが、やっぱりこちらの方が俄然素敵。お母さんが惚れるのも、なんとなくわかった気がします。しかしそれでも天狐の力は凄まじく、彼だけの力だけではどうすることもできません。そして想いを、後の者に託すことになるわけですが…
 
 
町でうわさの天狗の子12−2
瞬と名前を読んで託す


 天狗の二郎坊に、そして一人の男としての瞬に、伝えた言葉。一番弟子を信頼し、同時にその身を案じるとともに、もう手の届かない、想いの届かないところへと行ってしまう娘を、娘の想い人に託す父親の物悲しさみたいなものが台詞の端っこに感じられて、まぁ泣けた泣けた。想いも様々であったでしょう。そしてこれが康徳様が登場する最後のシーンとなりました。もちろん死んだわけではないのですが、ある意味で親の手を離れたとでも言いますか。幸せの中にみる、ちょっとした寂しさのようなものをついつい感じてしまったのでした。 


〜彼女達の恋の幕引きは…?〜
 さて、瞬ちゃんと秋姫のある種壮大な物語の横で、気になるのがその他の恋の行方です。しっかりと結果を出しているのは主要キャラでは松中さんぐらいと、そのどれもが現在進行形。まず気になるのが、赤沢さんです。彼女の場合、修学旅行先で三郎坊と一緒になったにも関わらず、あの一件で離ればなれに。その後特に描かれていなかったので、少しくらいあるかと思っていたのですが、結局出てこず。うーむ、どうなったのでしょうか。投げっぱなし。12巻、赤沢さん関連で出て来たのはこれくらい…
 

町でうわさの天狗の子12−3
赤沢化粧品がこんなに大きくなっていました。そしてなんと言っても、その屋上にある狐の像が気になるではないですか!8巻では、三郎坊が赤沢さんと結婚すると商売繁盛するなんて話がされていましたが、この絵はそれを暗示していると思われ。

 そんな二人に対して、タケルくんとうららは逆にしっかりと描かれていましたね。11巻のうららの表情はもうかわいいというほか無かったわけですが、まさかこんな先の将来まで描かれるとは思いませんでした。年を取っても、安定の関西弁。とはいえ描写をみる限りでは、うららが緑峰町まで嫁に来たという形でしょうか。この二人、どうやって結ばれたのかめちゃくちゃ気になります。だってまず、アプローチ下手っぽくみえるうららと、これまた自ら動かなそうなタケルくんという組み合わせで非常に大変そうなのに、さらにうららにはあのお父さんですからね。「娘大好き!」というオーラがありありと出ていた彼を、どう説得させたのか。それこそ神谷の血が成せる業なのかもしれませんけれども。

 あとは紅葉ちゃんも素敵でした。この子も献身的で、本当に良い子でしたよね。いつも明るく、元気よく。それでも中身は恋する女の子。恋敗れれば、落ち込みもします。けれど決して涙を他人に見せなかったのは、しっかり者の彼女らしさが出ているところ。あざとそうに見えて、人一倍真面目で不器用で割を食うのが、彼女なのだと思います。
 
 
 というわけで、盛りだくさんの12巻でした。まだまだ語り足りないんですけれども、それこそこちらの時間もページも足りないということで、この辺で。壮大かつ詰め込み感もあったものの、物語が持つエネルギーはすごく、終始そのパワーに圧倒された感覚がありました。決して美しく綺麗に折り畳まれているとは思いませんが、その力強さだけで読ませてしまうと言いましょうか。感動を、ありがとうございました。



【関連記事】
作品紹介→岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」
4巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」4巻
5巻レビュー→やっぱり赤沢さんが気になる《続刊レビュー》「町でうわさの天狗の子」5巻
6巻レビュー→スケートといったらスカートですよね:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」6巻
7巻レビュー→なにこの激甘空間…:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」7巻
8巻レビュー→君の隣で夢見る“いつか”:岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」8巻

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Tag [続刊レビュー] 2013.12.23
作品紹介→青春を彩る美しい伝統芸能といくつかの秘密:小玉ユキ「月影ベイベ」1巻




1106349483a.jpg小玉ユキ「月影ベイベ」(2)


お前といっしょにおわらを踊りたいが
ただそんだけや



■2巻発売しました。
 「同級生」と「伯父さん」の触れてはいけない秘密とは!?
 光は、伝統芸能“おわら”を美しく踊る蛍子に心を惹かれる一方で、彼女と伯父・円の隠しごとも気になっていく…。静かな地方の町に、嵐の予感が広がって!?
 

〜このマンガがすごい!にランクインしていました〜
 2巻発売です。このマンガがすごい!2014ではやっぱり上位にランクインしていましたね。「坂道のアポロン」の事例もあるので、もしかしたら1位もあるかもなんて思っていましたが、そこまではいきませんでしたか。でも個人的には1位の作品よりも、こっちの作品の方がスゴいと思っております、はい。


〜こんなに切り替えられるものなのか〜
 さて、物語のほうは、おわらを踊る本番である体育祭へ向けて練習を重ねる日々。1巻では蛍子と円、そして主人公の光の3人の間で人間関係が閉じていましたが、2巻ではその関係に広がりが見えてきました。

 まずは1巻では殆ど登場することのなかった“おわら5”。2巻でも登場数は少ないのですが、台詞は少しずつ多くなってきています。そして今回、そのうちの1人がちょっと良い働きをしてくれました。それが、メンバーの中で一番美形イケメンくさい、涼。一見おわらとは無縁そうな見ためですが、かれもキレイなおわらを踊ります(知らんけど)。蛍子と円の謎の関係性に思い悩む光を見て、涼は的確なアドバイスを光にします。
 

月影ベイベ2−1
その誰かさんが笠の下に人に見られたない傷でも隠しとったとしたら
その笠取れ言われることがどんだけ苦しいか
お前は想像したことあるがけ
聞かんでそっとしといてやるが愛やと思うけど
俺は


 なまじ高校生とは思えない的確なアドバイス。さらにすごいのは、彼の一番好きな「おわら」に例えて愛を説くというアドリブ力の高さです。すごいっすよ。なんなんですかこの少年。あとさらに驚いたのが、涼のアドバイスを受けて、光は何の抵抗もなくそれを実行に移すんですよね。
 
 
月影ベイベ2-2
ためらいも戸惑いもなく、本当になんの抵抗もなく。頭ではわかっていても、なかなか実行に移せなかったりするものではありませんか、こういうのって。頭ではわかっているけど、気持ちばかりが先走って後悔ばかりの自分としては、この素直さと切り替えの良さに驚き、そして少しばかり羨ましく思いました。しかしこの素直さの源泉は、どこからきているものなのでしょうか。蛍子を完全に好きになりきっていないからなのか、恋を知らないからなのか。一旦、涼の言葉によってこういう立ち位置に落ち着いた光でしたが、段々と我慢ならなくなってくるのではないかと思われます。頭よりも心が、そして体が動くとき、そんなシーンがいつか出てくるはずで、それがいつになるのか非常に楽しみです。


〜三角関係にはならないのか〜
 今回蛍子と光の関係に加わってきたのが、同級生の松井さん。蛍子もなかなかの美人さんですが、こちらもまたかわいい子です。蛍子の対人力の低さから、女子たちとの間には誤解が残ったままに物語が進んで行くのかと思いきや、松井さんの行動力の高さであっという間に橋渡しが。すごいです。
 


月影ベイベ2−3
松井さんは光に好意があって、三角関係に…なんて安い妄想をしてしまったわけですが、現時点ではそういった感じはありません。上記のシーンからも、全くそういう感情が無いことが伺えます。純粋に蛍子という人間に興味があって、彼女のためを思って一緒におわらの練習をするという。ふーむ、青春です。


〜未だ謎多し〜
 ただ彼女が素直に脇役に徹するとは到底思えないのです。というのも、意味深すぎるあの写真の存在があるから。あそこに写っていたのは、円と蛍子の母である繭子、そしてもう一人の男性。彼はどうやら、ひとつ鍵を握っているようですが、どういう人なのか。少なくとも単なる脇役というわけではなさそうで、そして今回ああして3人でおわらを踊った以上、松井さんも当然のように物語の深部へと組み込まれていくのではないかと思われます。今時点ではお互いに意識すらしておらず、過去の3人組の謎にばかりフォーカスが当たっていますが、その横で着々と想いを積み上げていってくれれば。登場人物が揃った感のある2巻。3巻ではいよいよ核心に迫るのでしょうか。楽しみです。


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