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Tag [オススメ] 2009.12.03
32085135.jpgなかはらももた「世界はひとつだけの花」(1)


お兄ちゃん なぁ…
あの日からそんな称号をいただきましたが
兄は 妹にあんなことしない
じゃあこの家で 俺たちってなんなんだろう



■2巻発売、完結しました。
 「花耶、これからお前の妹になる子だ。華ちゃんだ。」
 父親の再婚によって、25歳にしていきなり「お兄ちゃん」になった、花耶。一見中学生にも見えるその義妹・華は、16歳の高校生。16歳に興味はない…これといって意識することもなく、普通に接しようとする花耶だったが、バイト先での女関係のいざこざによって、色々とうんざりするように。そしてそのもつれから、バイトもクビに。そんなぽっかり開いた彼の心に、ふと入ってきたのが華だった。この花のためになら、少しやりなおしてもいいかもしれない…。花耶の苦悩の日々が始まった   
 
 話の主人公となるのは、料理店でバイトをしている25歳のフリーター・花耶。父親の再婚により、再婚相手の連れ子である、おとなしそうで地味な16歳の女子高生・華と同居することに。彼はバイト先の同僚相手に二股かけているのですが、それがふとしたきっかけでバレ、そのいざこざに巻き込まれた挙句クビになってしまいます。その際に女の汚さを目の当たりにし、すべてにうんざりした彼が、まだなんの汚れもついていない義理の妹・華に興味をもつのは、ある意味では至極当然だったのかもしれません。やさぐれた心のまま、半ば投げやりに華のカラダに触れた花耶でしたが、意外にも華は嫌がらずそれを受け入れます。「私に興味を持ってくれるのなら…」そこから二人の想いは加速していくのですが、年の差・兄妹関係・家族が同居しているなど、しがらみはたくさん。なかなかその先に進むことができずに、日々は流れていきます。


世界はひとつだけの花1
一度受け入れたら、あとはなし崩し的に。ただ最後まではいかないのがミソ。


 ティーンズラブというのは、言ってみれば女性用のエロ漫画みたいなもので、女性の性欲に訴えかけて充足させるような内容になっていることが基本です。それゆえに女性視点で話が進み、女性に都合の良い展開で話が進んでいくことがほとんど。以前紹介した「君は絶対君主!」(→レビュー)や「堀高ハネモノレンジャー」(→レビュー)も、ヌキ要素は薄い(多分)ものの、それらをしっかりと踏襲したような作りの作品になっていました。それに対し、今回ご紹介するこちらの作品は、終始男性視点で話が展開。しかも幾つか、男性の目を意識したような箇所が登場するような内容になっています。

 女性向けエロのなかに見せる、男性向けのエロ(というか萌えエロ)の要素なのですが、そもそもこの容姿で妹とかいう時点で、ハマる人にはハマるわけで。この時点ですでに狙っている感アリアリなのですが、例えばこのシーン…


世界はひとつだけの花2ブルマ


 華はブルマをはいてるんですよね。時代感を出すことを狙わない限りは、女性向けでブルマはほぼありえません。出てくるならばハーフパンツなのですが、ここでは狙ったようにブルマ。というか大人しい性格で地味サイドのはずなのに、私服は基本ミニスカートだったりショートパンツだったりと、やたら脚を出す格好でございます。他にもいちいち積極的にアプローチしてくる様などは、正直男しか得しないだろと思わざるをえなかったり。
 

 ティーンズラブということで、読み切り作でなくとも1話1エロがノルマ。そのためこの作品でも毎回エロシーンが入るのですが、キス・ペッティング止りで、行為にまでは及びません。常に寸止めで、それがひとつのお約束みたいな状況になっています。それでも我慢するから余計愛しくなる。華は焦る気持ちからか、どんどん積極的に大胆になっていき、花耶を困らせるようになっていきます。この進み方は、快感に溺れていくというよりは、エロや花耶への憧れに溺れていくという様子を描いたもので、これはこれでエロイ。とはいえオカズになるかと言われるとまたそれは微妙なわけで、そのへんは割り切った上で読むと良いのではないでしょうか。


世界はひとつだけの花
寸止めになる理由は様々。どうして欲しい?と聞かれた際の、この肩透かしなど。お互いの気持が乗らない時もあれば、邪魔が入ることもある。寸止め故の良さってのもあるのではないのでしょうかね。


 テーマとしては、主人公である花耶が、華を受け入れるだけの覚悟と状況を手に入れられるかというところ。そのひとつの障壁として、華のクラスメイトが登場し、2巻では三角関係の様相を呈してきます。1巻では二人の微妙な関係を丁寧に描いた大人しい雰囲気だったのに対し、2巻では打って変わって入れ替わりの激しい雰囲気に。状況が状況だけに、多少強引な手を使わないと大円団に持って行けないのでしょうが、最初の雰囲気を良いと感じた物としては、ちょっと腰砕けな印象。ただTLということを考えると、物語を展開した上でのこの締め方はなかなか秀逸なのでは、とも思います。


【男性へのガイド】
→ロリだとか妹だとかがお好きな方にはうってつけだと言えるのではないでしょうか。男性でも楽しめる人は楽しめるティーンズラブ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→個々人の性的嗜好が少なからず関わってきそうな作品はおすすめしづらいのですが、TLでこういう作品を持ってきた心意気を評価したいな、と。実際読んでてもレビューしてても楽しかったですし。


■作者他作品レビュー
なかはら★ももた/イタバシマサヒロ「おかわりのんdeぽ庵」


作品DATA
■著者:なかはら★ももた
■出版社:秋田書店
■レーベル:恋愛MAX
■掲載誌:恋愛読み切りMAX、恋愛LOVE MAX(2004年vol.4~2009年10月号)
■全2巻
■価格:各860円+税

■購入する→Amazonbk1

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2009.09.17
07208579.jpgかねだなつみ「君は絶対君主!」(1)


重ねた唇から
甘い君の恋心が伝わる
薄紅色の
恋心



■3巻発売です。
 『待ち人来る』お正月のおみくじではそう出たはずなのに、やってきたのはいやらしい暴君…。事の始まりは3学期の始め。おみくじで大吉が出て浮かれていた高野菜々美は、その勢いに乗って、憧れの先生・城崎が眠っている隙に、そっとキスをする。ところがその相手は、憧れの城崎ではなく、同じクラスの秀才・織田だった!「誰にも言わないで!」そう懇願する菜々美に対し、織田は「俺の言いなりになる」ことを条件に出す。以来、暴君と主従の関係が続いているのだけど…!?
 
 珍しくティーンズラブ作品のレビューでございます。知らない方に説明しておくと、ティーンズラブというのは、少女マンガ×エロマンガみたいな、十代をターゲットにした性描写ありの作品群の事を指します。この作品も、そんな中の一つ。ヒロインは、同じ学校の教師に憧れを持つ、ごく普通の女子高生・高野菜々美。そんな彼女が、先生と間違えて同じクラスの男子・織田くんにキスをしてしまうことから、お話は始まります。「誰にも言わない代わりに、自分の言いなりになれ」との要求を、渋々のむ菜々美。見かけによらず押しの強い織田くんと、見かけ通り押しに弱い菜々美ということで、織田くんの行動は徐々にエスカレート。ティーンズラブ作品ですから、当然それは、エロ方面にも及んできます。と言っても、ヒロインの気持ちは先生にあることを知っている織田くん、手を出すといってもペッティング止まりで、最後までは至りません。じらし…とも取ることが出来ますが、描き方的には、織田くんの律儀さを表す描写。菜々美はやがて先生に失恋するのですが、その穴を埋めたのが(性的な意味でなくね、念のため)、他でもない織田くんだった…という流れ。


君は絶対君主!
ただの少女マンガではなく、ピュア路線の少女マンガ色が出ているのは、このヒロイン一人の力によるもの。なんかわからないですが、かわいいです。


 要は少女マンガチックなピュアストーリーに、エロを組み合わせたもの。エロを無くせば、ど真ん中王道の少女マンガという感じです。そういう意味では、非常に親しみやすい話の流れといえるかもしれません。織田くんも、鬼畜暴君なのですが、見ためはどう良く見積もっても中の上ぐらいで、その辺もまた可愛らしく、鼻にかからないです。ヒロインも明るくて可愛いですし、結構このカップル好きです、私は。

 ティーンズラブですから当然エロはございます。ページ数も、少女マンガの比にならないほど多いです。ただエロ漫画的な「抜ける」エロではなく、エロメインといってもあくまでそれは「キレイなセックス」というライン(女性がどう感じてるのかは知らないけど、男目線的には)。それでも少女マンガに比べたら、リビドーをより感じられるように描かれているので、個人的にはこちらのほうが好き。またストーリーとエロ、どちらか一方が、というわけではなく、「ストーリーを活かすエロ」と「エロを活かすストーリー」のどちらにも取れるような、非常にバランス感の良い描かれ方がされています。
 
 ただエロ描写に関しては、この作品に限らず、巻を重ねるにつれてどうしてもマンネリ感が出てきてしまうように思います。あくまでラインは「キレイなセックス」であって、そうなるともうセックスで広がりを見せることができないというか。エロ漫画の場合、「キレイ」とは逆に逆に進んでいっている感じ。ただこちらの場合、ストーリーで幅を持たせることが出来るから、なんとかなっちゃうんですけどね。


【男性へのガイド】
→ティーンズラブの世界を見る入り口としては、結構良い作品かもしれないです。明るく楽しい作風ですし、ストーリーがまず易しいので。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→や、結構楽しんで読んでいる自分がいるという。この作品のエロは、いいエロだと思います、はい。さすがにオススメはせんけども。


作品DATA
■著者:かねだなつみ
■出版社:秋田書店
■レーベル:恋愛MAX
■掲載誌:恋愛チェリーピンク(2008年1月号~)
■既刊3巻

■購入する→Amazonbk1

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Tag [名作ライブラリ] 2009.06.26
horikouhanemonorenjya.jpg葉月かなえ「堀高ハネモノレンジャー」(1)


今まで私の目の前にあった空が
隼人で隠れた。
大きい手に
大きなカラダ。



■ちるさんからのご紹介。情報ありがとうございました。
 偏差値で言ったら最底辺、ロクデナシな撥ね者たちが集まる堀高。ちょんまげ男・隼人を筆頭に、勉強そっちのけで、喧嘩にHにやりたい放題やっている。そんなむちゃくちゃな彼らですが、恋はきっちり真面目にするのです。ほら今日もまた、ひとつの恋が始まったようです…
 
 あらまし紹介が我ながらヒドいなぁ。もっとちゃんと紹介したいんですが、難しいです。さて、この『堀高ハネモノレンジャー』ですが、現在『好きっていいなよ。』(→レビュー)を絶賛連載中の葉月かなえさんの初シリーズ物になります。連載誌は秋田書店の恋愛MAX系統の雑誌で、いわゆるエロ系のレディコミ。当然毎回ベッドシーン(ベッドじゃないときもあるけどさ)が入ってきます。そういった意味では、堀高のような舞台設定はティーンズラブでエロを展開するにうってつけ。各話ごと、堀高の生徒が一人主人公となり、各々の、馬鹿で少しHで、けれどもすごく真っ直ぐな恋愛模様が描かれていきます。


堀高ハネモノレンジャー
最中もメガネをはずさない。さすが葉月先生はわかってる。実際は邪魔で仕方ないのだろうけど、どうなんですか?


 ネットスラングでいう“DQN”が多く集う堀高が舞台ですが、みんなが皆お盛んというわけではありません。恋愛に臆病な生徒もいれば、自分の気持ちを切り出せない生徒もいます。故に話のバリエーション自体は豊富。また話は学校だけで展開されるわけではなく、様々な場所がフィールドとして登場します。学校にあまり縛られない彼らだからこそ、これだけ広がりを持たせることができるのでしょう。また読切りとはいえ連作の形をとっているので、最終巻ではしっかり物語として決着をつけてくれます。丸投げしないってのは良いことですよね。
 
 私が経験してきた高校時代とは全く毛色の異なる舞台なので、正直このノリはわからないし、わかりたいとも思いませんが、結局彼らもどこか「生きにくさ」みたいなものを抱えており、必死になって自分のあるべき場所を求めています。そういう意味では、同じなのかもしれんなぁ、と。それが、より本能的(直感的)か、思考的かの違いってだけで。まぁやりたい放題の男が、言葉と行動ひとつ見せただけで、簡単にヒロインが信用してしまうってのはどうなんだって気もするのですが…。彼らの心情の浅さ深さは別として、状況だけを冷静に考えてみたら、他のセフレと大して変わらないのでは、と。とはいえうじうじ考えてるだけで行動に移せない男よりも、こうやって積極的に動いていく男のほうが遥かにイイ男だってのはまぎれもない事実。少しは見習いたいものです。


【オトコ向け度:☆    】
→少女マンガ読みの男たちとは文化圏が違う気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→出来が良くなければこのレーベルで3巻なんていきません。女の子同士でオススメしあうなら全然OKだと思いますが、私の場合①男がオススメして良い作品なのか②誰にオススメすべきなのか…という2段階で悩んでしまうという状況に。

■作者他作品レビュー
葉月かなえ「好きっていいなよ。」
【名作ライブラリ】 葉月かなえ「あれもしたい、これもしたい」


作品DATA
■著者:葉月かなえ
■出版社:秋田書店
■レーベル:恋愛MAX COMICS
■掲載誌:恋愛よみきりMAX
■全3巻

■購入する→Amazonbk1

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