このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2009.05.08
otonanomondai.jpg時山はじめ「オトナの問題」


…って別にトキめいてないし!!
私の夢は教職
理想の相手は公務員
絶対こんな適当野郎なんかじゃないとも!!



■2年連続で教員採用試験に受からず、今年も繋ぎの塾講師の仕事をすることにしたひかる。そんなある日、茶髪にピアスでいかにも軽そうな男に出会った。その風貌にその性格と、あまり関わらないでおこうと距離をとるひかるだったが、その男・大知は何かにつけて彼女にちょっかいを出してくる。最初は迷惑がっているだけだったひかるだが、彼のカリスマ的な授業と、仕事に対する真剣さを目の当たりにし、徐々に心を開き始める…。

 作者さん初コミックスです。表題作の他に、読切り2編が収録されています。真面目な教員志望のヒロインと、明るく人懐っこいカリスマ塾講師の恋愛模様を描いたお話しになっています。ヒロイン・ひかるは繋ぎで塾講師をしており、生徒との恋愛が横行している塾講師という職業を、若干軽蔑。そんな彼女の前に現れたのが、受験の神様と呼ばれる大知。その豊かな人間性を前面に出した授業スタイルで人気を博する彼は、何故かひかるに積極的に絡んできます。最初は彼のアプローチを固辞していたひかるでしたが、段々と彼の存在が大きくなり…といった感じ。


オトナの問題
そのラインの見分け方について是非ご教授願いたいものです。


 プチコミですから当然エロありでございます。表題作に限らず、登場する男はみんな積極的にヒロイン仁絡んでくるなど、この辺はまさにプチコミスタンダード。ただ表題作に関して言えば、アホキャラになってしまいがちなプチコミヒロインの中で、どちらかというと真面目路線(地も恋愛に関しても)で来ており、好感が持てました。プチコミは基本的に、積極的な男性×恋愛脳のアホっぽい女子という組み合わせになることが多いのですが、何でこうなるのでしょうね、不思議です。どうも動物的で、節操がない。この作品ではヒロインがそういった要素をある程度緩和しており、エロ2回でも全然余裕で読めました。パターン的にはプチコミのそれなんですけどね。ただ同時収録の読切りはどうだろうって出来でした。何だこの落差は。


 前にも書いたのですが、プチコミって必ずと言ってよいほど積極男子がお相手なんですよ。ヒロインからアプローチすることってほとんどない。この傾向って何なのだろうか。読者の多くが、自分から行くような人間性の持ち主ではないってこと?結局のところ、リアリティという衣をまとわせた、究極のファンタジーなのかもしれませんね。


【オトコ向け度:☆    】
→まぁプチコミですしね。
【私的お薦め度:☆☆   】
→表題作は結構楽しく読めました。初コミックスということを考えれば、あの出来はなかなかのもの。それに対して読切りの出来はなんなんだろう。初コミックスで色々試してる時期なんでしょうか。


作品DATA
■著者:時山はじめ
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミックスα
■掲載誌:プチコミック(2009年2月号~4月号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「プチコミック」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] 2009.03.14
蝶よ花よ表紙吉原由起「蝶よ花よ」


「久世蝶子さん、面接を始めます」
「はい!」
「ではまず、あなたは処女ですか?」
「・・・はい?」



■8巻発売、完結しました。
 代々続く大地主である久世家自慢の娘・蝶子。しかし久世家は父親の代で没落、現在は町の小さな蕎麦屋を一家でやっている。とにかく働きに出なくては。大学卒業後、唯一受かった大企業に勤めることになるが、配属されたのは、面接の時にセクハラ質問をしてきた上司のいる秘書課。心穏やかでなく始まったOL人生ですが、なんとあのセクハラ上司は、かつて久世家の元使用人”ちーちゃん“だった!元使用人だけど、今は上司…どうなる蝶子の人生!?
 
 かつてのお嬢さま、使用人が、時を経て上司と部下になって再会する、ハイテンションなラブコメディです。ちーちゃんは、秘書課の課長。面接前から蝶子だと知っており、内定を出したあと、心配だからと同じ秘書課に配属させます。普段は上司として蝶子に厳しく接しますが、根は使用人なので、ちょくちょく使用人モードに。そのへんのパワーバランスがかなり曖昧で、出入りの激しい状態になっていますが、作品通してハイテンションなので気にならないです。


蝶よ花よ
途切れることなく盛り込まれる小ネタ。

 
 プチコミはラブコメといえど、ラブ8コメディ2ぐらいの比率で描いてくるのですが、この作品は真逆。とにかく徹底してネタを仕込んできます。ネタの質はかなりバラツキがあるのですが、とにかく良くここまで押し込めてくるな、と。男が読む分にはこのぐらいの比率が丁度良いと思います。10巻手前でスッパリ終わらせたのも好印象。


【オトコ向け度:☆☆☆  】
→プチコミの中では抜群に読みやすいと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→タイトルと表紙からは想像できないほどコメディに走ってます。面白いと思います。


作品DATA
■著者:吉原由起
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミックス
■掲載誌:プチコミック(2005年9月号~2009年2月号)
■全8巻

カテゴリ「プチコミック」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.03.11
ミッドナイトセクレタリ大海とむ「ミッドナイト・セクレタリ」


ちょうどいい
あんたには俺に協力してもらおう
俺が吸血鬼だと知った上で
秘書としてフォローしてもらう



■6巻発売しました。
 優秀な仕事ぶりで、2年目ながら常務の秘書を務めることになった花夜。その常務・当麻杏平は、社長の次男でありながら、優秀。しかしわがままで横柄、そして女性との噂が絶えない。地味な格好を馬鹿にした常務を認めさせるため、完璧に仕事をこなす花夜だったが、ある日、常務の秘密を知ってしまう。なんと彼は吸血鬼だったのだ!
 
 出勤は遅く、常務室には女性が常に出入りしている。一見すれば、時間と女にだらしないダメ男。しかしこれは、彼が吸血鬼で、直射日光に弱く、若い女性の血を吸って生きていかなければならないため。そんな彼をサポートすることになったのが、花夜。童顔で社会人に見られない彼女は、わざと髪をひっつめ、伊達メガネをかけている。最初はあくまで吸血鬼と秘書という関係のふたりですが、一緒に行動するうち、お互いの魅力に気づいていきます。
 

ミッドナイト
花夜の見上げた忠義心。普段はこんな格好じゃありませんよ。


 イケメンでやり手、だけど女にはだらしない上司。「あぁ、またこういう話か…だからプチコミは」なんて思っていたのですが、まさかの展開に驚きました。常務が吸血鬼。これは上手い。たくさんの女性と関係を持つのは、相手がエクスタシーを感じている時の血が一番美味しいからで、かつ相手に悪い影響が出ない程度の吸血量に抑えるため。またエロ展開も、彼がピンチ(キリスト教の信仰心にあたる)に陥り、血が必要になって仕方なくという持っていきかたをするので、新鮮。その他にも、上手いと言わざるを得ない設定が組み込まれています。話自体はありきたりな流れですが、とにかく設定が秀逸で無理な展開がありません。


【オトコ向け度:☆☆   】
→大筋はプチらしく、オフィスラブなんですが、他の作品のような「どうなのこれは…」って展開はなく、比較的読みやすい部類に入るんじゃないでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→設定が秀逸で面白いです。ただ序盤でそれを使い切った感もあるので、今後尻すぼみになっていくんじゃないかって気もします。


作品DATA
■著者:大海とむ
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミッス
■掲載誌:プチコミック(2006年9月号~連載中)
■既刊6巻

Amazonで購入する
カテゴリ「プチコミック」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2009.02.12
キミはキラキラ吉野阿貴「キミはキラキラ」


心震えるほど
私を走らせてくれるもの
アイツを
捕まえる



■暇を持て余す大学3年生のヒロイン・忍。することがなく、休日の大学をうろついていたときに、偶然アメフト部の康介に出会う。ふてぶてしい態度の彼にムカついた忍だったが、試合で彼が活躍する姿を見て心震え、気がつけば目が離せなくなっている自分がいた。彼の姿をファインダーに捉えたい。康介の姿に心を突き動かされた忍は、一度はやめたカメラを再び手に取り、キラキラに向かって走り出した!

 恋愛マンガ?いいえ、違います。まぎれもなくこれは青春マンガ!最近では珍しいくらいの、ど真ん中もど真ん中の青春ストーリーを、小学館で、それもプチコミックで拝めるなんて…本当に驚きです。エロは一切なし。それどころか、恋愛展開も薄め。とにかく青春汁たっぷり。
 
 夢に向かってひた走る康介の姿を見て、自分も夢を見つけ、追いかけるようになるというのが大筋のストーリー。また、「写真」が離婚して出ていった父親の仕事であったり、彼女に想いを寄せるもずっと伝えられずにいる幼馴染がいたりと、ちょっとした要素を仕込んできていて、それがまたクサいんだ!(←褒め言葉)。
 
 あだち充ラインって気がしないでもない。でもモチーフはむしろ「耳をすませば」か。中学生や高校生って設定だとしても、このストーリーは…(思わず赤面)。ギップルなら死んでるね。とはいえこのご時世、こと少女マンガにおいてこういう作品に出会えるってのは、結構貴重なことなんじゃないかな、と思います。


【オトコ向け度:☆☆   】
→男性にも読めないことはないと思います。ただ基本は女性向け。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→作品自体を評価するわけではなく、なんていうか、これだけの衝撃を与えてくれたことにひとつ賛辞を贈りたいというか。


作品DATA
■著者:吉野阿貴
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミックフラワーコミックスα
■掲載誌:プチコミック(2008年9月号~2009年1月号)
■全1巻
■定価:400円+税

Amazonで購入する
カテゴリ「プチコミック」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.02.11
せいせいするほど愛してる北川みゆき「せいせいするほど、愛してる」


いらない
ブーケもチャペルも
白いドレスも   
欲しいのは
あの男だけ



■7巻発売。完結しました。
 化粧品会社の広報部で働くヒロイン・未亜。ある日突然、恋人からプロポーズされるが、「仕事を辞めて」という言葉に一気に醒めてしまい、断るどころかそのまま別れを告げてしまう。しかし諦めの悪い元カレはそのままストーカー化。対処に困った未亜だったが、出会ったばかりのイケメン・海里に助けてもらう。その後、海里が副社長であること知り驚く未亜。しかも、広報部に異動してきて未亜に近づこうとしてきたり…。
 
 やがて海里に惹かれていく未亜ですが、彼には結婚相手が。それでも諦めきれない未亜は、「愛人」になることを決意。とはいえこれはこれで純愛。好きになってはいけない相手なのに、どうしたって惹かれていく、そんな女性の心情をこれでもか、と描き出していきます。
 
 恋愛にのめり込んでいく女性の姿と心を描いたストーリー。こんな題材ですが、昼ドラ的にドロドロにならず、あくまで21時・22時台のドラマ的な仕上がりになっているのは、北川みゆきさんだからこそなせる業なのかもしれません。笑いの要素を入れるのが上手いんだよね。また、このふたり以外にも、友人の恋愛話を展開させることで、飽きずに読むことが出来ます。プチコミの作品って、自分の中での評価が低くなりがちなんですが、この作品を基準に考えていたせいなのかもしれません。巧いですね、やっぱり。
 
 しかし最後にああやって持っていくあたり、やっぱり少女マンガなんですね。これで正解なんでしょうが、あえてぶん投げるってのも見てみたかった気がします(笑)


【オトコ向け度:☆    】
→プチコミの作品は…(以下略)
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→プチコミが目指さんとする物語像のひとつを、見事に体現している作品なんじゃないでしょうか?ただオススメするような作品ではなく、読みたい人が読むべきマンガだと思います。


作品DATA
■著者:北川みゆき
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミックス
■掲載誌:プチコミック(2006年5月号~2009年1月号)
■全7巻

Amazonで購入する

カテゴリ「プチコミック」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。