
でっかい波だ
見たこともないでっかい波
■中学女子バレーボール界の頂点に立ち、名を馳せた巻田中学校のエース・兼子武蔵。全中優勝インタビューでバレーを辞めると公言した彼女は、心機一転、大仙高校で自由な日々を謳歌しようとしていた。しかし、身長184センチメートルと目立つ彼女はバレー部主将・律から目をつけられ……!?
「千年万年りんごの子」の田中相先生の新連載です。なかなかインパクトのある表紙だと思いませんか?見ての通り、バレーボールマンガです。主人公は表紙に描かれ、タイトルにもなっている兼子武蔵。飛びぬけた身長と身体能力で中学バレー界を席巻し、難なく全国制覇を成し遂げます。バレー界を背負う至宝だと、その進路に注目が集まる中、彼女が放ったのは「バレー辞めます。部活なんて必死にやっても意味ない。」という言葉。兄が通っているバレー部のない高校・大仙高校へと進学をするのですが、そこには無いと思っていたバレー部が。部員は4人で同好会への格下げギリギリという状態の中、主将の律に目をつけられ、バレー部へ入ってくれと勝負を挑まれるのですが……という話。

バレー部ということでキャラクターはたくさん登場してくるのですが、メインとなるのは2人に絞られてくるかと思います。まずは主人公の武蔵。184cmという高い身長の持ち主で、それに対する男子のからかいも全く気にしない、心も体も大きい女の子。類まれなバレーの才能はあるものの、中学時代にバレーをすることに違和感を覚え、以来頑なにバレーをするのを拒否してきました。そんな彼女に狙いをつけて、バレー部再建を目論むのがバレー部主将の律。イギリスとのハーフという変わり種ですが、そのきれいな見た目とは裏腹に、かなり気が強いご様子。バレーに前向きでない武蔵の気を引くために、わざと逆上させるような言い回しをしたりと、目的を達成させるためにはなんだってしてやるというような、意志の強さを感じさせる選手です。なおバレーの実力もなかなかのもの。実は大仙高校、元々バレー部は競合で春高にも出場するぐらいだったのですが、顧問の体罰問題が明るみに出てバレー部は解体、顧問は辞任し、選手たちの大半はバレーが出来る高校へと転校してしまったという背景があるのです。
もうびっくりするくらいにスポーツもの。バレーものといえば「少女ファイト」なんかが最近だと目立つところですが、女性向けというところでいうと別冊マーガレットで連載されていた「紅色HERO」が記憶に新しいところですね。最近めっきり少なくなったスポーツものということで、それだけで無条件で応援したくなりますね。
部員数は新人交えてギリギリの状態ではあるものの、部員達の実力はそこそこあるという背景があるため、1からチームを作って長期計画で頂点を狙うというアプローチはしないと思われます。3年生が卒業する前までにチームを作って、春高を目指すという比較的短期の計画。とはいえ順調にレベルアップが図れる環境かというとそうではなく、体罰問題の影響は尾を引いており、周囲からの風当たりは強く、また練習時間もある程度限られてきているようです。
通常バレー部と言えば、目標に向かって一丸となって進んでいくという印象ですが、本作はちょっと変わっています。律はその行動からもわかるように、残り1年に懸けて本気で春高を狙っています。他の部員はそこまでの熱量かというと少し疑問で、それぞれの思惑を持って部に残っているという感じ。武蔵も一度は嫌になりやめたバレーをもう一度始めるのですが、上を目指して…というよりは、自分にとってバレーとは何かを見出す試行錯誤のアプローチを見せます。最終的に各人の思惑がどういったところに着地するのか、またその結果チームはどこまで勝ち進めるのか、大小2つのアプローチで少女たちの青春を鮮やかに描き出していきます。

田中相先生の絵柄でスポーツってあまり結びつかなかったのですが(割とかっちりと収まったコマ割りとか、キャラ造形なので)、バレーのシーンでは変則コマで動きを表現。ダイナミックさにはやや欠けるかもしれませんが、スローモーションを連想させる描き方で、手に汗握るシーンを描き出します。
そうそう、あと気になったのが新たに顧問になってくれた先生が完全に宮史郎なところ。これ偶然宮史郎的になってるんですかね?不祥事後ということでなかなか顧問になってくれる人がいない中、素人ながらバレーファンである彼が奮闘する姿も、今後見られそうで楽しみ。1巻時点ではバレー部が動き出したというところで終了。2巻以降、いよいよ活動が加速してきそうで、非常に楽しみです。
【男性へのガイド】
→スポーツものなので、やはり他作品比で読みやすいんじゃないかと思います。どうして部活をやるのか…という所があるぶん、動き出しは遅くなっているのですが、2巻以降で取り戻すんじゃないかと。
【感想まとめ】
→スポーツものであるってだけで応援したいのですが、それを差し引いても普通に面白いです。オススメです。
作品DATA
■著者:田中相
■出版社:講談社
■レーベル:KC ITAN
■掲載誌:ITAN
■既刊1巻
■試し読み:第1話
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