このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2013.08.26
1106299380.jpg亜樹新「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」(1)


あの能力が覚醒めるんじゃ…!


■超ツッコミ体質の高校2年生・小雪芹。彼は、かまってちゃん系にツッこむことだけはとても屈辱。そんな小雪に妙に絡んでくるのは、「暗黒破壊神」を勝手に名乗る、中二病男・花鳥兜。こいつにだけはツッコまないと固く誓う小雪だが、花鳥の想像を超えるふるまいに、思わず…。笑って笑ってときどきカワイイ。男子高校生コメディ!!

 「フェティッシュベリー」(→レビュー)などを描かれている、亜樹新先生の、ジーンでの連載作でございます。タイトルはちょいと長い「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」というもの。暗黒破壊神というちょいとベタな中二ワードが入っていることから想像つくかと思いますが、ファンタジーではなく、中二病を扱った学園コメディでございます。
 
 主人公はタイトルの一人称になっている“ぼく”:小雪。かなりのツッコミ体質の持ち主である彼は、ツッコミ体質を拗らせてしまったのか、ツッコミ待ち・イジられ待ちな構ってちゃんが大嫌い。そんな小雪が最近頭を悩ませているのは、高校に入っても中二病が治らない・花鳥兜。自称・暗黒破壊神ミゲルの花鳥は、小雪のツッコミ体質に目をつけたのか、“ゲシュテーバー”と小雪を呼び、何かにつけて絡んでくるのです。何とかして花鳥を避けたい小雪ですが、想像以上の振る舞いに、どうしたって突っ込まざるを得ない…!というようなお話。


ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます
本人の中にゆるい設定はあるものの、世界観が広すぎて、細かい所は場当たり的&可変。そんな所にも、主人公は苛つく。


 高校生の中二病患者を相手にしたコメディということで思い出されるのは「中二病でも恋がしたい!」でしょうか。あちらは恋愛メインでしたが、こちらは男の子ばかり登場するので、完全に学園コメディにフォーカスを絞った形での展開となります。変な格好(眼帯とか手袋とか普通にしてる)に変な言動(とりあえずわけわからんカタカナとか漢字とか出てくる)で、ミゲルくんはなかなかの中二っぷり。基本的に常に中二病は発動されているのですが、特に自分の分が悪くなった時は目を覆いたくなるような痛さ(苦しさ)でして、別に何もしていないのにこっちまでガリガリとライフを削られるような感じがします。
 
 物語の登場人物は主に3人。主人公と暗黒破壊神・花鳥と、クラスメイトでゆるドSの月宮くん。基本的に花鳥が主人公を巻き込んで、そんな二人を月宮がニヤニヤしながら眺め、時に裏で操ったりするという構図。主人公の真面目な反撃に、花鳥は一切動じることがなく、さらに二人は月宮には絶対に敵わないという力関係であるため、主人公に降りかかる理不尽さの具合がすごいです。最初主人公視点で物語を読んでいたのですが、花鳥相手のコントロールできない感と、月宮相手に理不尽にコントロールされている感のダブルパンチで、結構イライラが(笑)よくよく考えてみると女性向け雑誌ですし、これは主人公視点で見るのではなく、第三者視点で男の子たちが絡んでいるのをニコニコと眺める作品なんだな、と。


ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます1
 この作品で面白いのは、花鳥くんの典型的中二病が痛いというだけでなく、主人公に対しても月宮経由で思春期独特の恥ずかしい部分をグサグサと攻撃されるところにあります。例えば女の子とメアド交換して、メール来ないかドキドキして待ってたりするところを、まんま突っ込まれたりとか。むしろ中二病よりこっちのがツラい感が。いや、ほんとに主人公に優しくないマンガですよこれは(褒め言葉)。
 
 またオタク系のコメディ作品の特徴の一つであるパロディが満載。スラダンとか、まどマギとか、自分でもわかるネタがちらほらあったのですが、たぶん私が気づけていないだけで、他にもかなりのネタ数が散りばめられていると思われます。そもそも暗黒破壊神ってワードも、何かのパロディだったりするんですかね?それらに気づけたら、さらにこの作品が楽しくなるかも。


【男性へのガイド】
→可愛い女の子描けるのを知っているので、それが出てこない本作はちょいと男性への推し具合は弱くなってしまうものの、コメディなので基本読みやすいと思いますです。
【感想まとめ】
→亜樹新先生の作品って楽な気持ちで読めるかと思いきや全然そうじゃないっていう(笑)一歩引いたところから見ると楽しい学園コメディなのですが、一歩踏み入って読んじゃうとダメージ食らいますよ、ってな感覚のある作品でした。ネタ投入のペースはお見事。



作品DATA
■著者:亜樹新
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:コミックジーン
■掲載誌:ジーン
■既刊1巻
■価格:533円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「ジーン」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2011.12.11
1106090396.jpg遠藤海成「黒犬O'clock」(1)


足下に逃れられない死が迫っているとして
運命を
変えたいとは思いませんか?



■高校2年生の男子・小野田暁は、人が死を迎える時間が正確にわかってしまう不思議な能力「時限時計(カウントダウン)」を持っている。死まで12日を切ると、突然その人の胸の前に時計が現れるのだ。その力で大事な人の死期を知ってしまった彼は、せめて悔いのない最期を迎えさせてあげたいと、「理想の死に方」をプロデュースするという会社「ブラッグ・ドッグ」を訪れる…

 新創刊となった月刊コミックジーンより。この月刊コミックジーンなのですが、「女性向けの少年漫画雑誌」という一件矛盾したコンセプトの元刊行されており、一応女性向けを謳っておりますので、試験的に当ブログでも取り上げたいと思います。こういうコンセプトはどちらかというと嫌いなのですが、個々の作品の良し悪しには全く関係ないので、前向きにレビューしますよー。というわけで第一弾は「まりあ+ほりっく」などを描かれている、遠藤海成先生の作品「黒犬O'clock」です。
 
 主人公は、幼い頃からとある能力を持ち、悩んできた高校生・小野田暁。その能力とは、人の死期が見えるというもの。見えると言っても全員の死期を把握できるわけではなく、その人が死ぬ12日前になると、その人の胸の上に時計が浮かんで見えるというもので、いつも突然にその時計が現れるため、未だに慣れずに哀しみ悩んでいるのでした。そんな中、入院中の最愛の祖母にその時計が出現。どうすることもできない運命を目の前に、せめて悔いのない最期を迎えさせてあげたいと、「理想の死に方」をプロデュースするという会社「ブラッグ・ドッグ」を訪れるのですが…。というお話。


黒犬Oclock1-1
「ブラック・ドッグ」の中心人物。見ためは完全な少年だが、色々と隠していることがありそうな、いかにも怪しい人物です。


 物語は、主人公である暁の能力が「ブラッグ・ドッグ」のメンバーに認められ、以後その活動に強制的に巻き込まれていくことで進んでいきます。暁の願いはただ一つ、「運命を変えることはできないのか」ということ。そんな中、視えた死期を確定事項として動く「ブラック・ドッグ」の活動は、彼の願いとは相反するものではあるのですが、都度人の死と向き合うことによって彼の中での考え方を変容させていく契機となり、またそれ以上に何か大きな秘密がこの組織にはあるようです。「ブラック・ドッグ」でメインで動くメンバーの一人は、見ため完全な子供で口の悪い少年なのですが、彼の正体や、どうしてこういった活動を行っているのかというところは1巻時点では全く不明。今後物語が進むと共に、明らかになっていくようです。
 
 女性向けということもあって、やはり登場人物は男の子が殆どなのですが、ちゃんとヒロインもいます。しかも結構気難しそうな、中二心をくすぐるような。「いばら姫」なんて呼ばれている彼女は、暁と同じ学校の生徒で、近寄りがたい雰囲気を纏った無表情の女の子。暁の行く先々に突然現れて、「運命を変えたいとは思いませんか?」なんて言い放ったりと、なんとなく状況はわかっている感じ。「ブラック・ドッグ」ともちょっとしたつながりがあるようで、今後のキーパーソンになってきそうな気配がぷんぷんします。現時点では敵か味方かわからない感じ。…というかそもそも敵とか味方なんて切り分けが成り立つ物語なのかもわかりませんが。


黒犬Oclock1-2
わりとやんちゃないばら姫。陸上でインターハイに出場している主人公に追いつける程の脚力を持ち、ゴミ箱を余裕でぶん投げられるほどの腕力を持つ(穿った紹介の仕方)。髪型が特徴的ですよね。いかにも妖しげな感じが、雰囲気出てます。


 人の死が一つ大事な要素として登場してくるわけですが、それ以上に「ブラック・ドック」の活動であるとか、裏にある真実といったものに意識が行くように作られているので、ちょっと重苦しさは足りない感があります。命が一つの題材なのに、どこか薄いというか、小手先の感動というような。元々お涙頂戴な感動系のストーリーでないので、その辺は潔くて良いかと思うのですが、その辺を少しでも期待しているのであればちょっとした違和感は覚えるかもしれませんのでご注意を。


【男性へのガイド】
→一応体は「少年漫画」ですので、男性も食いつけるようにはなっていると思います。訴求するのは腐向け少年漫画とかそういうものだと思いますので、割り切った上で読めれば良いのでは。
【感想まとめ】
→1巻で全容が見えている感がないので、どうとも。。ただどういう展開で進んで、最終的にどういう結末が待っているのかというのは確かに気になります。その辺は作者さんの上手さでしょうか。


作品DATA
■著者:遠藤海成
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:ジーンコミックス
■掲載誌:コミックジーン
■既刊1巻
■価格:533円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「ジーン」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。