
ありがとう
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■主人公は、友人も彼女もいない小説家志望の大学生。彼は別大学への入学と小説の完成を目指し、孤独でつまらない日々を送っていた。そんなとき、突然押しかけてきたのは「セミ子」と名乗る女の子。毎晩、なかば強制的にセミ子と過ごす時間が、次第になくてはならないものになっていく。そんなある日、彼はふと気づく…。「なんでセミ子は夜にしか来ないのだろう」。せつなくて、ほろ苦い、珠玉のハートフルコミック。
一応刊行当時は女性向けという触れ込みだったのでジーンシリーズをご紹介しているのですが、これはもう作品的に男性がメイン層の雑誌に掲載されていても違和感ないぐらいの内容。鬱屈した毎日を送る大学生の男の子の元に、謎の女の子が押しかけてくるという、一夏の不思議な体験を描いた1巻完結の物語です。
主人公は別の大学を再受験しようとしている大学生(ちなみに最後まで名前が明かされません)。そのことを決意して以来、周りと馴染もうともせず、孤独な毎日を送っていました。そんなある日、いきなりセミ王国からやってきたという、「セミ子」と名乗る謎の女の子が押しかけてきます。過去に助けられた恩を返すため、願いを叶えに来たという彼女に、思わず「友達が欲しい」と言ってしまった彼は、以来彼女と「友達」に。毎夜やってくる彼女を不思議に思いながらも、だんだんと居心地よく思い始めた矢先・・・。

世間知らずでお金も持っていなくて、「セミ王国からやってきた」なんていうセミ子。もうこんな訳わかんない人が突然夜中にやってきたら、怖すぎて逃げ出す勢いなんですが、主人公は体調不良と一抹の寂しさからつけこむ隙を与えてしまい、関係を築くことに。セミ子は終始アホ子なわけですが、そんな明るさに救われる主人公という図式。願いを叶える力などないセミ子ですが、その明るさや前向きさが作用して、結果的に夢に向かって動き出す原動力となっていくわけです。その関係が、優しく温かい。
物語は基本的にこの2人で閉じていて、また舞台も基本的に主人公の部屋と、人間関係もフィールドも狭い中で展開します。また「セミ子」という名前からもわかる通り、時間的にもリミットがあることが容易に想像がつくかと思います。人、場所、時間とコンパクトに収まっており、1巻完結ながらも無理なく十分に描き切られております。
タイトルと表紙からは判別がつかないと思いますが、少なからずファンタジックな要素が含まれている内容となっています。また、いわゆる感動もの路線を真っ直ぐベタに進む感じの作品で、そういった「おとぎ話」的な話が好きな方にはうってつけかと思います。そういう意味で、「ひねり」を期待して読み始めると肩透かしを食らってしまうかもしれませんので、ご注意を。ともあれ非常に優しい作品でございます。
【男性へのガイド】
→冒頭にも書いた通り、男性向けの媒体に掲載されていてもそんなに違和感なさそうな。
【感想まとめ】
→思いのほか王道と言いますか、ヘンに気取らずに感動的な話が描かれており、好印象の一作でした。
作品DATA
■著者:わんにゃんぷー/からて
■出版社:メディアファクトリー
■レーベル:ジーンシリーズ
■掲載誌:コミックジーン(?)
■全1巻
■価格:533円+税
■試し読み:pixiv
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