
描け
■5巻発売、完結しました。
まんがの仕事に邁進する明子。余命四ヶ月を宣告された日高先生がアキコに伝えたかったのは……。まんが家・東村アキコのドラマチック・メモリーズ万感胸に迫る最終巻!
~完結とマンガ大賞~
5巻が発売され、完結を迎えました。そして同時に、マンガ大賞受賞の発表が。自叙伝的な作品が受賞するのは初めてかと思うのですが、東村先生はこの手の賞レース的なものはやはり強いですね。ムック本でも上位常連で、毎年見ないことがないぐらいです。しかしマンガ大賞は振り返ってみると女性作者が強いですねー。各年ではそんなに意識していなかったのですが、歴代受賞作を一気に見ると、その隔たりがよくわかります。
~誰かの死と向き合うこと~
4巻ラストでガン告知があり、1巻を使って完結となりました。どんな濃厚で感動的なやりとりが待っているのかと思いきや、おそらく読んだ人は皆思ったのではなかろうかと思うのですが、案外希薄な接触のみで終わっていました。これをどうとらえるかは読み手の人たち次第ではあるのですが、自分はどちらかというと好意的というか、実にリアルに感じを受けたというか(実話なんだから当たり前ですけど)。自分自身の経験をどこかで思い起こしている部分があったのかもしれません。私も祖父が亡くなった際、すでに上京していたのですが、振り返ってみて驚くほど会いに行かなかったし、普段から気にも留めていなくて。で、久しぶりに見に行って弱っていて驚くという。そしてお葬式に行っても悲しいんだけれどもなんだか実感が沸かないし、お葬式が終わって東京に戻ってきたら何もなかったかのように日常に戻れるし。そんななかで、あるときふと思い出して、「あの時ああしてあげれば良かった」なんて後悔の念に駆られたりするものです。
普段そういった想いは吐き出されることなく時と共に消化されていくのですが、本作はそれを作品として送り出す形で体現しています。5巻についてはコメディだ人情ものだなんていう印象はことに希薄で、とにかくモノローグという形で表現される、作者さん自身の後悔や自責ばかりが印象に残りました(作中でも触れられているように、後半は殆ど会っていないのでそうならざるをえないという面もあると思いますが)。なのでちょっと最初に想像していたところとはちょっと着地点が異なったような感じはあるのですけれど、非常に腑に落ちる結末でして、大波の感動はなくとも心の端に響くものがある素敵な作品だったと思います。
~あの時の気持ちについて~
そうそう、過去のレビューで「ここでこう思った気持ちがよくわからん」と言っていた、大口入金があった口座残高を見たときに悔しさを感じたというあのエピソード、5巻で真相が語られていました。

再度こうして描くという事は、そこについて教えてほしいという要望がそこそこあったってことなんでしょうか。色々と考えを巡らせていたのですが、こういうつながりがあっての「悔しい」だったのですね。
……と、なんだかどう締めたらよいかわからなくなってしまいましたが、5巻完結というちょうど良いボリュームと、笑いあり感動あり切なさありの濃厚さとで、改めて強くオススメしたい作品です。もし未チェックの方がいましたら、是非とも買ってみてはいかがでしょうか。4月で環境が変わる方もいるかと思いますが、今一度ちゃんと生きてみようと前向きな気持ちになれる作品でもありますので、ぜひ。
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