■完結作編に続いて、現在も連載が継続している作品(継続作)のベストをお届けです。今年は5作増やして「このマンガがすごい!」と同様に20タイトルを選定しました。例年通り「おとなも こどもも おねーさんも。」を念頭に、“昨年どれだけ面白かったか”と“今年どれだけ期待できるか”の2つを加味し「今押さえておくべき作品」として順位付け。これらを押さえておけば、今年の女性向け漫画の流れはそれなりにキャッチできるんじゃないかと思ってます、たぶん(除く“りなちゃ”)。
あくまで管理人の主観による順位付けですので、どこか納得のいかない部分もあるかと思いますが、悪しからず。リンク先は各レビュー記事です。ではではどうぞ…
1.東村アキコ「かくかくしかじか」(既刊1巻)

…東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。昨年も面白かった作品は数々ありましたが、中でも本作は非常に印象的かつ、次巻の発売が最も楽しみでした。東村アキコ先生のエッセイマンガらしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めがあるなど、一冊に笑いと感動を詰め込むこの贅沢さ。現時点での面白さもさることながら、シリアスな締めが匂わす結末をいざ迎えたときに、どんな感動が待っているのか。いやがうえにも、期待してしまいます。
2.高野苺「orange」(既刊2巻)

…別冊マーガレットの作品では「俺物語!!」(3位選定)が非常に話題になりましたが、現時点での勢いでは「orange」もまったく遜色ありません。16歳のヒロインの元に届いたのは、10年後の自分からの手紙。未来の自分の願いを叶えるために、手紙の指示の通りに行動するのですが…というSF要素を交えたお話。予定では、次巻3巻で完結とのこと。2巻ラストの切り方がどうしたって次を期待せざるを得ないものであり、このまま行けば名作になる予感。2巻発売のタイミングが悪かったのか、ムック本であまりピックアップされていないのが、本当にもったいない。
3.アルコ×河原和音「俺物語!!」(既刊2巻)

…ダントツの得票で「このマンガがすごい!2013」オンナ編1位に輝いた本作。発売前の予想でも、正直この作品以外が1位を獲得する画が浮かびませんでした。ゴリラのような高校生男子・猛男が主人公の本作。単なる出オチではなく、やっていることは全力で少女マンガであり、そして主人公の猛男は、どの少女マンガのヒーローよりもカッコイイのですよ。既に本作をご存知の方も多いかと思いますが、もしまだ食わず嫌いで手に取っていない方がいたら是非とも手に取ってみてください。絶対に後悔はさせませんから。
4.咲坂伊緒「アオハライド」(既刊6巻)
※リンク先は5巻のレビュー
…別冊マーガレットが3作連続になってしまいましたね…。本作は、昨年も好順位でプッシュした気がするのですが、面白さと次巻への期待感はより高まってきています。いよいよ恋心を自覚した上で、素直になれずに駆け引きをするフェーズに差し掛かって来ているのですが、この付き合う/付き合わないのギリギリのやりとりがとにかくヤバい。もうキュンキュンなんて歳ではないのですが、キュンキュンしてしまいますってば。無自覚なヒロインの小悪魔っぷりとイイ、咲坂先生の作品らしさが一層強く出てきたここ2〜3巻は、何度読み返してもニヤニヤが止まりません。
5.末次由紀「ちはやふる」(既刊19巻)

…巻数を重ねると、やはり陳腐化による期待感の逓減というのは避けられないものなのですが、本作に限っては全くそれがありません(私だけ?)。もう次が楽しみで楽しみで仕方ない。駆け抜けるように毎度読んでしまうのですが、だからといって積み重ねて来た過去の巻はムダになっておらず、しっかりと物語に生きている。かませ犬ポジションの太一の覚醒によって、かるた競技と人間関係(恋愛模様)の両面で面白くなってきた2012年。この勢いのまま、2013年も突っ走ってもらいたい所です。
6.よしながふみ「大奥」(既刊9巻)
※リンク先は7巻レビュー
…映画化、ドラマ化とメディアミックスでの話題が事欠かなかった本作ですが、2012年は単行本も2冊刊行と、コミック単体で見ても充実一途の1年でした。ここ数巻は、人間関係よりも江戸時代の時代の流れに重きを置いた物語展開。特に物語の起こりでもあった「赤面疱瘡」への対策へと乗り出す動きは、物語の大きな転換点となるはずで、10巻以降の展開が非常に気になるところ。あと、個人的には9巻で登場の松平定信ちゃんが可愛くて仕方ないというのも、プッシュしておきたい所。新刊2冊はレビューできていないので、後々レビューできれば…
7.天堂きりん「きみが心に棲みついた」(既刊2巻)

…ananの特集記事でもオススメさせて頂きましたが、今年は天堂きりん先生が何気にブレイクしておりまして。中でも本作が、ひと際印象的でした。挙動不審でどもりがちなヒロインが未だに縛られ続けるのは、大学時代に想いを寄せた一人の男性の存在。そんな過去からの脱却を図り頑張るヒロインの姿がとにかく痛くて痛くて痛くて、痛い。痛い上に、2巻ではまさかの足踏みと、なかなかイライラさせられるのですが、それでもヒロインを応援したくなるし、目が離せないんです。きっと今年もキョドコにやきもきさせられるんだろうなぁ…。
8.びっけ「王国の子」(既刊1巻)

…良作揃いの新興誌・ITANですが、個人的に続刊が一番楽しみなのが本作です。稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描くのは、重厚感のある“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリーなのですが、「王女と影武者の禁断の恋愛」なんて簡単に想像できるような展開にはなりません。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある本作。より物語として動いてくるであろう2巻の発売が、今から楽しみです。
9.小森羊仔「シリウスと繭」(既刊1巻)

…2012年で一番の掘り出し物といったら、個人的にはこちら。満を持してオススメをしたら、「このマンガがすごい!2013」でTOP20にランクインしていたのだからビックリです。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。静かな淡い恋愛ものがお好きな方は是非。
10.鳥野しの「オハナホロホロ」(既刊4巻)

…羽海野チカ先生のアシスタント出身である鳥野しの先生が描く、同居生活グラフィティ。いつもどこか心にズシっと来るものがあって、いつも読むのにエネルギーを使ってしまうのですが、4巻はそれに対しても余りある盛り上がりでした。友情、恋愛感情、腐れ縁…様々な感情が混ざり合った、単純でない大人達の心の行き交いは、前に進もうにも縺れてなかなか進みません。そんな中、やっと解れが見えた4巻。このままいけば。次巻あたりで完結を迎えるでしょうか。このタイミングで、改めてオススメしてみました。
11.田中相「千年万年りんごの子」(既刊1巻)

…ITANの2012年新刊からもう1タイトル。デビュー短編集が話題になった田中相先生のオリジナル連載。雪深い東北の地を舞台に描く、林檎農家に婿入りした青年とその新妻のお話。淡々と過ぎる日常から一転、突如として投入されるのは、村の禁忌を犯したことで新妻に降りかかる、呪いにも似た不思議な現象。この雰囲気、この話運びはやはり新人離れしたもので、作品と作者さん共々要注目の一作でございます。
12.西炯子「姉の結婚」(既刊4巻)
※レビューは2巻
…40歳を目前に控えた不器用な大人の女性の恋愛、そして結婚について描いた話題作。真木との不倫が一区切りつき、前に進めると思いきや縁談が破談に。進もうともがけばもがくほど、上手くいかない様子に幾度となくやきもきさせられるのですが、関係がキレイになったこのタイミングでようやっと話が前身しそうな予感。正直もっと上にしても良かったかと思っているのですが、「娚の一生」でやられた苦い経験があるのでこの位置に…。こちらも新刊のレビューが出来ていないので、近いうちにお届けしたいと思います。
13.びっけ「あめのちはれ」(既刊6巻)

…「王国の子」に続いて、びっけ先生の作品からもう一つ。昨年は単行本1冊のみの発売と、相変わらず刊行ペースはゆっくりだったのですが、俄に恋愛色が強くなって来ており、個人的には嬉しいばかり。「雨が降ると女の子になってしまう」というキャラを複数人配置してもウルサくならずに、むしろ強みとして活かしてしまうその手腕たるや、お見事の一言。真っ正面の恋愛関係、微妙な三角関係、歳の差、遠距離恋愛、加えて正体を知りつつも惹かれてしまうというまさかの恋心まで投入され、なんとも多彩で贅沢な恋愛模様を楽しんでください。
14.いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(既刊1巻)

…毎度高め安定のいくえみ綾先生は、今年新作2タイトルを投入。個人的にはこちら「トーチソング・エコロジー」が好みでした。売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。
15.雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(既刊3巻)

…昨年1位に据えた本作ですが、2巻3巻と発売されて、相も変わらず面白かった。2012年は「与太郎篇」から、八雲の回想による「八雲と助六篇」へ展開。菊比古と助六、激動の時代を落語と共に生きた二人の熱い生き様が、これでもかと濃密に、そして色気たっぷりに描かれます。3巻では今までなかった恋愛要素が投入され、人間模様はさらに多彩に。クライマックスを迎える「八雲と助六篇」、そしてその話を聞かされた与太郎の変化と、2013年も楽しみな要素は盛りだくさんです。
16.やまもり三香「ひるなかの流星」(既刊4巻)

…こちらは昨年2位に据えました。新刊3冊と1年でだいぶ話も進んだ本作。ゆゆか様というツンツン女王様もさることながら、ザ・かませ犬の馬村が不憫で可愛かった。気がつけば馬村に転ぶ可能性は目に見えて低くなっているのですが、それでも一縷の望みにかけて応援してしまいます。こちらもあまり話題になりませんでしたが、連載中の青春恋愛ものとしては飛び抜けて面白い作品の一つですので、少女マンガらしい少女マンガを読みたい方は今すぐにでもチェックすべし!
17.池ジュン子「BEAR BEAR」(既刊1巻)

…白泉社の新作では「ラストゲーム」(18位選定)が話題になりましたが、個人的にはこちらも印象的でした。高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。テンポの良い掛け合いも見所の一つで、取っつきやすい間口の広いお話でございます。
18.天乃忍「ラストゲーム」(既刊2巻)

…勉強、運動、容姿、家柄全てが完璧な王子様が恋に落ちた相手は、運動・勉強で彼の上を行く貧乏無口な鈍感女子。なんとか相手を恋に落とすため、同じ大学にまで行き、10年越しの恋の駆け引きを仕掛けるのでした。そんなストーカーチックな純情を抱える主人公の数々の努力にも関わらず、一向に振り向いてもらえないその可哀想な様子や、ちょっとでも気を惹けると途端に犬のように喜ぶその姿が本当に可愛い!切ない片想いを描かせたら天下一品の天乃忍先生が贈る、珠玉の片想い物語、今年も引き続き注目ですよ!
19.有永イネ「かみのすまうところ。」(既刊1巻)

…期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。夢もなくぶらぶらしていた青年が、ある日出会った美少女に触発されて家業の宮大工を志すというお話。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品でした。
20.葉月かなえ「好きっていいなよ。」(既刊9巻)

…まさかのアニメ化というサプライズがあった2012年。単行本発売は2冊のみと平常運行でしたが、その2冊どちらも内容が充実していました。大好きな相手のために健気に頑張るヒロインの姿に心打たれ、自分が築き上げてきたものを拠り所に精一杯自分をアピールするライバルに心打たれ、大切な彼女のために目一杯の肯定を与えるヒーローに心打たれ…どのキャラも一本筋が取っていて格好よく、その誰もが印象に残る活躍をしてくれました。そろそろカップルとして一歩先に進んでも良い頃だと思うのですが、果たして。
以上20作品でした。なんだか集英社と講談社に偏ってしまったような気がするのですが、実際それらの作品を読んでいる量が多いので、単純にそうなったのかもしれません。昨年は続刊よりも新作が元気だった印象で、新作があまり上位にならなかった一昨年のランキングに比べ、新作の比率が多くなっています(あくまで当社比)。
また年末のムック本では、ザ少女漫画という感じの恋愛色が強いティーン向けの作品は敬遠されがちなのですが、そういった中にも面白い作品はたくさんあるわけで、こういった場で改めてサルベージ出来れば…という想いもあります。「orange」「アオハライド」「ひるなかの流星」などはまさにそれ。
入れようか迷った所ではこうち楓「LOVE SO LIFE」、会田薫「梅鴬撩乱-長州幕末狂騒曲-」、麻生みこと「そこをなんとか」、あさのあつこ/木乃ひのき「No.6」、吉田秋生「海街Diary」などでしょうか。読めていない続刊もあるので、多少の抜けもあるかもしれません。選定した20作品はどれも面白い作品ですので、もし知らない作品があったとしたら、この機会に是非ともチェックを!
■昨年までの記事
この女性向けマンガがすごい!2012(未完作品編)
来る2011年、これだけはチェックしておきたい15作品
2010年へ向けて、これだけはチェックしておきたい15作品
あくまで管理人の主観による順位付けですので、どこか納得のいかない部分もあるかと思いますが、悪しからず。リンク先は各レビュー記事です。ではではどうぞ…
1.東村アキコ「かくかくしかじか」(既刊1巻)

…東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。昨年も面白かった作品は数々ありましたが、中でも本作は非常に印象的かつ、次巻の発売が最も楽しみでした。東村アキコ先生のエッセイマンガらしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めがあるなど、一冊に笑いと感動を詰め込むこの贅沢さ。現時点での面白さもさることながら、シリアスな締めが匂わす結末をいざ迎えたときに、どんな感動が待っているのか。いやがうえにも、期待してしまいます。
2.高野苺「orange」(既刊2巻)

…別冊マーガレットの作品では「俺物語!!」(3位選定)が非常に話題になりましたが、現時点での勢いでは「orange」もまったく遜色ありません。16歳のヒロインの元に届いたのは、10年後の自分からの手紙。未来の自分の願いを叶えるために、手紙の指示の通りに行動するのですが…というSF要素を交えたお話。予定では、次巻3巻で完結とのこと。2巻ラストの切り方がどうしたって次を期待せざるを得ないものであり、このまま行けば名作になる予感。2巻発売のタイミングが悪かったのか、ムック本であまりピックアップされていないのが、本当にもったいない。
3.アルコ×河原和音「俺物語!!」(既刊2巻)

…ダントツの得票で「このマンガがすごい!2013」オンナ編1位に輝いた本作。発売前の予想でも、正直この作品以外が1位を獲得する画が浮かびませんでした。ゴリラのような高校生男子・猛男が主人公の本作。単なる出オチではなく、やっていることは全力で少女マンガであり、そして主人公の猛男は、どの少女マンガのヒーローよりもカッコイイのですよ。既に本作をご存知の方も多いかと思いますが、もしまだ食わず嫌いで手に取っていない方がいたら是非とも手に取ってみてください。絶対に後悔はさせませんから。
4.咲坂伊緒「アオハライド」(既刊6巻)

…別冊マーガレットが3作連続になってしまいましたね…。本作は、昨年も好順位でプッシュした気がするのですが、面白さと次巻への期待感はより高まってきています。いよいよ恋心を自覚した上で、素直になれずに駆け引きをするフェーズに差し掛かって来ているのですが、この付き合う/付き合わないのギリギリのやりとりがとにかくヤバい。もうキュンキュンなんて歳ではないのですが、キュンキュンしてしまいますってば。無自覚なヒロインの小悪魔っぷりとイイ、咲坂先生の作品らしさが一層強く出てきたここ2〜3巻は、何度読み返してもニヤニヤが止まりません。
5.末次由紀「ちはやふる」(既刊19巻)

…巻数を重ねると、やはり陳腐化による期待感の逓減というのは避けられないものなのですが、本作に限っては全くそれがありません(私だけ?)。もう次が楽しみで楽しみで仕方ない。駆け抜けるように毎度読んでしまうのですが、だからといって積み重ねて来た過去の巻はムダになっておらず、しっかりと物語に生きている。かませ犬ポジションの太一の覚醒によって、かるた競技と人間関係(恋愛模様)の両面で面白くなってきた2012年。この勢いのまま、2013年も突っ走ってもらいたい所です。
6.よしながふみ「大奥」(既刊9巻)

…映画化、ドラマ化とメディアミックスでの話題が事欠かなかった本作ですが、2012年は単行本も2冊刊行と、コミック単体で見ても充実一途の1年でした。ここ数巻は、人間関係よりも江戸時代の時代の流れに重きを置いた物語展開。特に物語の起こりでもあった「赤面疱瘡」への対策へと乗り出す動きは、物語の大きな転換点となるはずで、10巻以降の展開が非常に気になるところ。あと、個人的には9巻で登場の松平定信ちゃんが可愛くて仕方ないというのも、プッシュしておきたい所。新刊2冊はレビューできていないので、後々レビューできれば…
7.天堂きりん「きみが心に棲みついた」(既刊2巻)

…ananの特集記事でもオススメさせて頂きましたが、今年は天堂きりん先生が何気にブレイクしておりまして。中でも本作が、ひと際印象的でした。挙動不審でどもりがちなヒロインが未だに縛られ続けるのは、大学時代に想いを寄せた一人の男性の存在。そんな過去からの脱却を図り頑張るヒロインの姿がとにかく痛くて痛くて痛くて、痛い。痛い上に、2巻ではまさかの足踏みと、なかなかイライラさせられるのですが、それでもヒロインを応援したくなるし、目が離せないんです。きっと今年もキョドコにやきもきさせられるんだろうなぁ…。
8.びっけ「王国の子」(既刊1巻)

…良作揃いの新興誌・ITANですが、個人的に続刊が一番楽しみなのが本作です。稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描くのは、重厚感のある“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリーなのですが、「王女と影武者の禁断の恋愛」なんて簡単に想像できるような展開にはなりません。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある本作。より物語として動いてくるであろう2巻の発売が、今から楽しみです。
9.小森羊仔「シリウスと繭」(既刊1巻)

…2012年で一番の掘り出し物といったら、個人的にはこちら。満を持してオススメをしたら、「このマンガがすごい!2013」でTOP20にランクインしていたのだからビックリです。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。静かな淡い恋愛ものがお好きな方は是非。
10.鳥野しの「オハナホロホロ」(既刊4巻)

…羽海野チカ先生のアシスタント出身である鳥野しの先生が描く、同居生活グラフィティ。いつもどこか心にズシっと来るものがあって、いつも読むのにエネルギーを使ってしまうのですが、4巻はそれに対しても余りある盛り上がりでした。友情、恋愛感情、腐れ縁…様々な感情が混ざり合った、単純でない大人達の心の行き交いは、前に進もうにも縺れてなかなか進みません。そんな中、やっと解れが見えた4巻。このままいけば。次巻あたりで完結を迎えるでしょうか。このタイミングで、改めてオススメしてみました。
11.田中相「千年万年りんごの子」(既刊1巻)

…ITANの2012年新刊からもう1タイトル。デビュー短編集が話題になった田中相先生のオリジナル連載。雪深い東北の地を舞台に描く、林檎農家に婿入りした青年とその新妻のお話。淡々と過ぎる日常から一転、突如として投入されるのは、村の禁忌を犯したことで新妻に降りかかる、呪いにも似た不思議な現象。この雰囲気、この話運びはやはり新人離れしたもので、作品と作者さん共々要注目の一作でございます。
12.西炯子「姉の結婚」(既刊4巻)

…40歳を目前に控えた不器用な大人の女性の恋愛、そして結婚について描いた話題作。真木との不倫が一区切りつき、前に進めると思いきや縁談が破談に。進もうともがけばもがくほど、上手くいかない様子に幾度となくやきもきさせられるのですが、関係がキレイになったこのタイミングでようやっと話が前身しそうな予感。正直もっと上にしても良かったかと思っているのですが、「娚の一生」でやられた苦い経験があるのでこの位置に…。こちらも新刊のレビューが出来ていないので、近いうちにお届けしたいと思います。
13.びっけ「あめのちはれ」(既刊6巻)

…「王国の子」に続いて、びっけ先生の作品からもう一つ。昨年は単行本1冊のみの発売と、相変わらず刊行ペースはゆっくりだったのですが、俄に恋愛色が強くなって来ており、個人的には嬉しいばかり。「雨が降ると女の子になってしまう」というキャラを複数人配置してもウルサくならずに、むしろ強みとして活かしてしまうその手腕たるや、お見事の一言。真っ正面の恋愛関係、微妙な三角関係、歳の差、遠距離恋愛、加えて正体を知りつつも惹かれてしまうというまさかの恋心まで投入され、なんとも多彩で贅沢な恋愛模様を楽しんでください。
14.いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(既刊1巻)

…毎度高め安定のいくえみ綾先生は、今年新作2タイトルを投入。個人的にはこちら「トーチソング・エコロジー」が好みでした。売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。
15.雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(既刊3巻)

…昨年1位に据えた本作ですが、2巻3巻と発売されて、相も変わらず面白かった。2012年は「与太郎篇」から、八雲の回想による「八雲と助六篇」へ展開。菊比古と助六、激動の時代を落語と共に生きた二人の熱い生き様が、これでもかと濃密に、そして色気たっぷりに描かれます。3巻では今までなかった恋愛要素が投入され、人間模様はさらに多彩に。クライマックスを迎える「八雲と助六篇」、そしてその話を聞かされた与太郎の変化と、2013年も楽しみな要素は盛りだくさんです。
16.やまもり三香「ひるなかの流星」(既刊4巻)

…こちらは昨年2位に据えました。新刊3冊と1年でだいぶ話も進んだ本作。ゆゆか様というツンツン女王様もさることながら、ザ・かませ犬の馬村が不憫で可愛かった。気がつけば馬村に転ぶ可能性は目に見えて低くなっているのですが、それでも一縷の望みにかけて応援してしまいます。こちらもあまり話題になりませんでしたが、連載中の青春恋愛ものとしては飛び抜けて面白い作品の一つですので、少女マンガらしい少女マンガを読みたい方は今すぐにでもチェックすべし!
17.池ジュン子「BEAR BEAR」(既刊1巻)

…白泉社の新作では「ラストゲーム」(18位選定)が話題になりましたが、個人的にはこちらも印象的でした。高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。テンポの良い掛け合いも見所の一つで、取っつきやすい間口の広いお話でございます。
18.天乃忍「ラストゲーム」(既刊2巻)

…勉強、運動、容姿、家柄全てが完璧な王子様が恋に落ちた相手は、運動・勉強で彼の上を行く貧乏無口な鈍感女子。なんとか相手を恋に落とすため、同じ大学にまで行き、10年越しの恋の駆け引きを仕掛けるのでした。そんなストーカーチックな純情を抱える主人公の数々の努力にも関わらず、一向に振り向いてもらえないその可哀想な様子や、ちょっとでも気を惹けると途端に犬のように喜ぶその姿が本当に可愛い!切ない片想いを描かせたら天下一品の天乃忍先生が贈る、珠玉の片想い物語、今年も引き続き注目ですよ!
19.有永イネ「かみのすまうところ。」(既刊1巻)

…期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。夢もなくぶらぶらしていた青年が、ある日出会った美少女に触発されて家業の宮大工を志すというお話。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品でした。
20.葉月かなえ「好きっていいなよ。」(既刊9巻)

…まさかのアニメ化というサプライズがあった2012年。単行本発売は2冊のみと平常運行でしたが、その2冊どちらも内容が充実していました。大好きな相手のために健気に頑張るヒロインの姿に心打たれ、自分が築き上げてきたものを拠り所に精一杯自分をアピールするライバルに心打たれ、大切な彼女のために目一杯の肯定を与えるヒーローに心打たれ…どのキャラも一本筋が取っていて格好よく、その誰もが印象に残る活躍をしてくれました。そろそろカップルとして一歩先に進んでも良い頃だと思うのですが、果たして。
以上20作品でした。なんだか集英社と講談社に偏ってしまったような気がするのですが、実際それらの作品を読んでいる量が多いので、単純にそうなったのかもしれません。昨年は続刊よりも新作が元気だった印象で、新作があまり上位にならなかった一昨年のランキングに比べ、新作の比率が多くなっています(あくまで当社比)。
また年末のムック本では、ザ少女漫画という感じの恋愛色が強いティーン向けの作品は敬遠されがちなのですが、そういった中にも面白い作品はたくさんあるわけで、こういった場で改めてサルベージ出来れば…という想いもあります。「orange」「アオハライド」「ひるなかの流星」などはまさにそれ。
入れようか迷った所ではこうち楓「LOVE SO LIFE」、会田薫「梅鴬撩乱-長州幕末狂騒曲-」、麻生みこと「そこをなんとか」、あさのあつこ/木乃ひのき「No.6」、吉田秋生「海街Diary」などでしょうか。読めていない続刊もあるので、多少の抜けもあるかもしれません。選定した20作品はどれも面白い作品ですので、もし知らない作品があったとしたら、この機会に是非ともチェックを!
■昨年までの記事
この女性向けマンガがすごい!2012(未完作品編)
来る2011年、これだけはチェックしておきたい15作品
2010年へ向けて、これだけはチェックしておきたい15作品
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