
神が下す罰が何か
人が勝手に決めるんじゃない!!
■古来より火の本は『八百万の神々』がおわす国―――
神様と人が互いを信じる、江戸に降りた駆け出しの神・春門は人の心のさざ波が織りなす事件に巻き込まれて……。
「しゃばけ」の畠中恵先生原作で、みもり先生が作画の作品です。畠中先生もみもり先生もどちらもファンタジックな作品を創られている印象があるので、この組み合わせだけで期待感が高まりますね。なお新装版とありますが、本作は2012年にフレックスコミックス・フレアとして単行本化されています。今回はポラリスコミックスとしての刊行となりますが、フレアはポラリスの前身ということで、実質同じ母体からの刊行です。新装版というだけあって、なかなか凝った装丁となっています。紙質といい、和色で揃えつつも華やかな色使いといい、大小の文字を組み合合わせたフォント配置といい、なかなかツボです。前回刊行時にレビューしていませんでしたので(というか単行本見つけたのですが、読んだ覚えがない……)、今回改めてご紹介をしようかと思います。
物語の主人公は、江戸のとある稲荷神社に勧請(分霊を他の神社に移すこと。子会社出向みたいなイメージでしょうか。)されてきた新米神様の春門。これから守り神として過ごそうとするものの、どうにも神様としての自覚に欠ける彼を、稲荷神に仕える狐の化身たちが厳しくサポートします。ひょんなことから、神社の近くで起きた毒殺事件に遭遇した彼らは、事の流れで犯人捜しを始めるのですが…というお話。

神様とはいえ新米で、何をしてよくて何をしてはいけないのかといった分別もあんまりついていないです。そんな彼の面倒を見るのが狐の使役たち。立場的には神様の方が偉いのですが、かなり舐められています。ゲンコツとか普通にするし。
神様が町で起きる事件の真相を暴くという、ファンタジー&ミステリーなお話。神様だからといって、不思議な力でたちまち事件を解決するなんてことはありません。どちらかというと人間臭く、当事者たちの話を聞いて、一つ一つ真実に近づいていきます。神様としての能力を発揮する系の話というよりは、その土地の守り神として、人々との距離を近づけていくというようなアプローチを見せるようなストーリー。めくるめく不思議な世界を期待していると、ちょっと地味めに感じるかもしれません。一方で人と人の繋がり的なものを重視するので、その分キャラクターの魅力や背景がより詳細に描かれ、より重厚で繊細な物語展開を楽しむことができるかと思います。
本作は計6話収録されているのですが、一つの事件で前篇・中篇・後篇という構成となっているので、実質2つの事件に関わるのみとなっています。じっくりと事件が描かれるので、事件の真相も凝ったものとなっているのですが、ファンタジックな要素を絡めつつというある種豪華な舞台装置を鑑みると、2話で終わってしまうのはちょっともったいないなというのが読み終わっての感想。巻数がついて、もっと話が色々と描かれたら、持ちたるキャラの魅力がいかんなく発揮されそうな予感があるから余計に…。
【男性へのガイド】
→人情物語なので性別年齢関係なく読める類の作品かと思います。
【感想まとめ】
→先にも書いた通り、1巻完結はちょっと寂しいというのがまずあります。というのも、それだけ面白くなりそうな要素がぎゅっと詰まっていたから。キャラは魅力的で、物語も練られていて、だからこそもっとこの時間を味わっていたかったという。どっかで続き描いてもらえないですかね(希望)
作品DATA
■著者:みもり/畠中恵
■出版社:ほるぷ出版
■レーベル:ポラリスコミックス
■掲載誌:フレア
■全1巻
■価格:630円+税
■試し読み:第1話
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