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Tag [続刊レビュー] 2010.07.29
作品紹介→…先生、はじめてキスしたのっていつ?:藤原よしこ「だから恋とよばないで」1巻
関連作品レビュー→やっぱり私は、どうしようもなくこの作品が好きなのだ《続刊レビュー》「恋したがりのブルー」6巻




1102940468.jpg藤原よしこ「だから恋とよばないで」(2)


「先生」だから一緒にいられるし
「生徒」だから笑ってもらえる
せつないけど   
だったらあたしは
先生のそばでずっとはしゃいでるよ
先生がさみしくないように



■2巻発売です。
 心は、最近担任のジローちゃんが気になってしかたない。一挙手一投足を逃さず見つめていたり、気がつけば先生のことを考えていたり…。先生がいつもみたいにヘラヘラしていないと、胸がざわざわするんです、とても。そして思わずついていってしまった、先生のお墓参り。その帰り道を、他のクラスの生徒に見られてしまい、学校では早速ウワサに。そしてその話は、職員達の耳にも入るわけで…。そんな状況に、ジローちゃんは…。一方、心をふったはずの不破は、心のことを気にかけていて…?
 

~素直すぎるヒロインは相変わらず~
 もう、やっぱり藤原よしこ先生の描く恋物語は素敵すぎます!どこまでも切なく、読んでいると、心だか鼻の奥だかが、ツーンとするのですよ。その切なさの源泉となっているのは、どこまでも素直なヒロイン。藤原先生の描くヒロインは、そろいも揃って「バカ」がつくぐらい正直で素直。この作品の心も2巻にて、不破くんの家庭の話を聞いた時に、実に彼女らしい素直な考えを見せてくれました。素直なヒロインに対して、奔放に見えて傷を負っている相手と、拗ねた優等生が出てくるというのは、藤原先生のお得意なパターン。不破くんも先生もまた、心と共に、これまでの藤原作品のような、いやそれを越えるような優しく切ない物語を作っていってくれるはずです。
 
 
~言葉遣いから見える、ヒロインの心の揺れ動き~
 今回は、いつにも増してヒロインの心情というのが響いてきます。元々シチュエーションや台詞回しで、切なさを生み出すのは得意ではあったのですが、今回のヒロイン・心は、今までとは少し違う、恋心をより浮き立たせる表現をしています。それが、先生に対して時折挟まれる、敬語
 
 大人っぽく見えない教師・ジローに対し、生徒達はみなため口。ヒロインも例に漏れず、普段はジローに対してタメ口で話しています。けれどもふと、敬語になる瞬間があるのです。例えば1巻では、彼のお墓参りについていって、感極まった瞬間…
 
 
だから恋とよばないで2-1
あたしが泣くことです


 ここ一番での、真剣な表情と共に放たれる、丁寧な言葉。先生と生徒という、歳も立場も違うシチュエーションだからこそ成立する、敬語の破壊力です。これほど端的に、ヒロインの心の状態が伝わる表現って、なかなかないと思うのです。意識しているからこそ、言葉遣いも変化する。そんなこと、皆さんにもありませんか?そして2巻では、ヒロインの想いがより強まったことを表すように、敬語で接する場面というのが多くなっていきます。


だからこいとよばないで2-2
だっ…て…
「先生」じゃないですか



 この言葉のつまり具合といい、赤らめた顔といい、「先生」を強調しつつの丁寧語といい、なんてわかりやすいんだ!これもまた、ヒロインの素直さを表す一部分。こういった形での、自然な素直さというものを、当たり前のように作中で表現してくる藤原先生、本当に素晴らしいです。


~ジローを救った相手とは~
 さて、話は変わってジローのこと。この辺からは俄然既読者向けになりますので、よろしくどうぞ。2巻にて、大きなポイントとなったのは、ジローの部屋にあったピアスとその持ち主について。ジローが未だに大事に持っているピアスの持ち主は、兄の恋人であったミヅキのものであったというのは確定的なのですが、そこである疑問が生まれてきます。実は一巻にて、ジローの人生で非常に重要な位置付けにいると思しき女性(?)の存在が匂わされているのですが、その時の彼の説明は…
 
迎えに来てくれたヤツがいたんだ
ひとり

 それに対しての新田の「女?」という質問に対しては、無言だったジロー。したがってまだ女性であると確定したわけではないですが、男であれば男と言うでしょうし、そこまで含みを持たせるようなことはしない気がします。そして女性であるとすれば、2巻のこのタイミングで登場した、ミヅキである可能性が、十分ある。しかし迎えにきたのだとしたら、なぜジローはピアスを渡せなかったのか。そもそもピアスに関してのジローの説明では、「もし会ったら返そうと思ってた」とのこと。だとしたら、やはりミヅキではない人?それともそれは、ただのウソ?…謎は深まるばかりです。そしてそんな彼のことを、一番聞きたいと思っているのは、他でもない心です。そして素直に表現される、彼女の心情。敬語で放たれた…


だから恋とよばないで2-3
こないだのピアス
誰のですか?



 は、数あった敬語シーンの中でも、特に強い想いがこもっていたように感じられ、非常に強く印象に残りました。真相は、3巻以降。果たして物語は、これからどのように転がっていくのでしょうか。今から続きが待ち遠しいです。


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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2010.07.27
1102945643.jpg尚月地「金色騎士」


先輩にとっての勲章は
こんなにも
先輩の周りにあふれていたんだ



■のほほんとした土井中村の駐在として勤務しているのは、都の金獅子の隊から左遷された、四郎。元エリートの彼だったが、今ではこれといった事件も起きない平和な田舎で、自由気ままに暮らしている。たまにスイッチが入るとき以外は、ミジンコ並みの戦闘力で、自堕落で女に弱いぼんくら色ぼけ変態野郎。かつての後輩であった草凪矢三郎は、四郎のことをそういって憚らないが、それでも彼だって、やる時はやるんです。たぶん…いや、きっと…なんて言っている間に、ほーらはじまった…

 ウイングスにて「艶漢」を連載中の、尚月地先生の短編集です。短編集と言っても、2篇づつのシリーズが2作収録されており、普通の読切り集とは雰囲気が異なります。とりあえずは表題作となっている、「金色騎士」のご紹介を。舞台となるのは、どこかの戦後の国のとある田舎町。都の有名な隊にいたものの、上官を殴ってしまい左遷となった、一人の駐在・四郎が物語の主人公となります。女たらしで品行が良くない彼は、どちらかというと悪い噂を立てられがちな人間。元々出来る資質はあるはずなのですが、当の本人にはやる気がなく、後輩が話をしにきても、おちゃらけて真面目に相手しません。というかそれ以前に、彼は今いる街が好きで、現状満足しているという状況。そんなよくわからない彼の、ハチャメチャな日々を、後輩の視点から描いていきます。


金色騎士
こんなかわいい子が男の子だなんて…!みなさんほっそり体型で描かれており、華奢な印象。だからこそ映えるのですが。


 絵が特徴的で、非常にキレイなのですが、人物描写もまた独特で繊細なタッチ。これで描く表題作は、コメディです。はい、コメディです。もちろん全編にわたってコメディというわけではないのですが、ベースはあくまでコメディ。芸風は、リアクション系でしょうか。なんか低年齢向けの少女ギャグ漫画作品とかにありそうな、捻りをあまり効かせていない、わかりやすいネタ。それをこの絵柄やってくるという。でなんていうか、ギャップがすごいのです。でもそれを、持ち味と言わんばかりに多用してくるという。そこに、終盤シリアスな物語性を話に付与し、物語を完成させるという流れ。
 
 挟んでくるネタが、やや物語の流れを澱ませている印象があり、ちょいと読みにくさを感じる部分がありました。いや、絵柄的に壮大な方向、ひと捻りありそうなイメージで、ギャップからその持ち味を浮き立たせるという手法もありだと思うのです。でも、これは果たして効果あるのか。シリアスならシリアス、笑いなら笑いと、メリハリ付けてもらえると、もっと読みやすかったかなぁ、と。
 
 もうひとつは、異世界を舞台にしたファンタジー作品。高台にある小さな街に暮らす少女が、ある日敵対している蛮族の王子と出会い、進行を深めていくというもの。こちらもネタをちょくちょく挟みつつなのですが、コメディベースでないぶん、表題作よりも読みやすかったです。残り一遍は、投稿作品。この頃から絵柄良いですねー。


【男性へのガイド】
→表紙は男の人です、二人とも。お耽美な印象ですが、そういう印象が強いのは表題作だけ…と思ったら、蛮族の王子が艶々してたなぁ…。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→作者の笑いは私には合わないと悟った本作。とはいえ、読み応えのあるシリーズ2篇に、投稿作品一篇ということで、短編集の構成としては、かなり高水準かと。作者さんのファンであれば、まず買って間違いない一作だと思います。


作品DATA
■著者:尚月地
■出版社:新書館
■レーベル:ウイングスコミックス
■掲載誌:Wings
■全1巻
■価格:590円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.27
1102940687.jpg式部玲「飯田田中坂下」


見てると面白いんだけど
近づきたくはないんだよなぁ…



■私立景山高校2年D組に所属する、飯田・田中・坂下は、なんだかんだで一緒にいることの多い男子三人組。部の先輩(女子)から生徒会の不穏な動きを伝えられ、その謎を解明しようと動き出す飯田…海外からの留学生(プリンセス)に恋をしてしまう、熱い(いや、暑苦しい)男・田中…そしてずっと片想いの幼なじみとの距離を近付けようと、静かに必死になるクールガイ・坂下。ごく普通の高校二年生の男子たちの日常は、ある日を境に激変し…!?

 式部玲先生の初オリジナル単行本だそうです。おめでとうございます。こちらも決済期の駆け込みで単行本化された一作。過去に掲載されたシリーズが、今になってコミックスになったというものでございます。内容は、高校の仲良し(?)男子三人組が校内でてんやわんやするという、青春学園コメディ。真面目な性格の主人公・飯田は生徒会で、熱くてバカな性格の田中は主に恋愛で、クールで無愛想な坂下は幼なじみとの関係で、それぞれ話のメインになりながら、物語は進んでいきます。基本的には、キャラ重視のテンポと勢いで運ぶコメディ。掲載年が平成16年前後くらいなので、やはり時代感は感じますね。


飯田田中坂下
とりあえず田中のインパクトがすごい。彼の暴走が、いい具合に話を動かしてくれる。


 主人公の飯田よりも、断然友人の田中のキャラが濃く、また脇を固めるキャラクター達もキャラ濃いめで、主人公の存在が若干薄れがちに。コメディなので笑える要素をそこかしこに埋め込むわけですが、結果的に田中がパワーで最後に持っていくというパターンが多く、彼の存在をどう思うかでこの作品に対する評価は変わってきそうです。ベースとなっているのは、オーソドックスな学園コメディですので、可もなく不可もなくという感じなのですが、田中を筆頭とした有り余る勢いとパワーには、やはり一目置きたいところ。なんて、個人的には幼なじみに静かに想いを寄せつづける坂下くんが一番つぼったわけですが…。ちなみにシリーズは全4話。それぞれがメインとなる回プラス、もう一人の脇役がメインで描かれるまとめ回が描き下しで収録されています。その描き下ろしは、それまでとは違い、ファンタジー要素を投入。勢いの良さは殺さず、ストーリーは軽快に、加えて見所たっぷりで、読んでいて楽しかったです。一番最初の話が、正直なところ「?」という感じだったので、それに比べると全然読みやすく、変わるものなのだなぁ…と感心。
 
 同時収録の読切り2作は、どちらもファンタジー作品。コメディベースながら、シリアスなところはシリアスに、という安心のパターン。どちらも熟れた感じがして、安心して読んでいられました。その分新鮮さであるとか、インパクトには欠けるわけですが、そもそも初単行本の読切りでそんなに斬新な読切りばかりなんて、なかなか難しいわけで。しかしこんな形での初単行本て、作者さんどんな心境なのか気になるところですね。だって突然日の目を見るわけですから、驚きだろうなぁ、と。


【男性へのガイド】
→ノリが2000年代初頭の学園コメディっぽい。男子メインも、女の子との恋愛に活路は十分見出せるかも。青春の中に潜む悲しさがなにのが、どうかというところ。
【私的お薦め度:☆☆    】
→後半2話はなかなか楽しめたものの、序盤2話がパワープレイすぎてちょっと個人的についていけなかった節が。一冊の単行本として見た時に、ちょっと一貫性に欠けるかなぁ、と。


作品DATA
■著者:式部玲
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM
■全1巻
■価格:552円+税


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.26
作品紹介→藤村真理「少女初年学級団」
4巻レビュー→恋をして変わっていく様子が、主題なのかも 《続刊レビュー》「少女少年学級団」
5巻レビュー→心もからだも、少しずつ大人になっていく:藤村真理「少女少年学級団」5巻
関連作品紹介→藤村真理「学級×ヒエラルキー」



1102940396.jpg藤村真理「少女少年学級団」(6)


あたしずっと
野球やりたい!



■6巻発売です。
 自分の訪れた体の変化に戸惑う遥は、落ち着かない状態のまま試合の日を迎える。集中しようにも、気が散って試合で力を発揮できない。先発という晴れ舞台の中、ピンチに陥る遥を救ったのは、試合会場で偶然出会った女子高生・凛だった。過去に野球をやっていたという凛に、遥はすぐに懐くが、さらに彼女が健の知り合いだということがわかり、状況はますます複雑に。凛は中学のとき、健に対し何かしらの感情を持っていたようなのですが…その想いとは一体…?
 

~凛の登場~
 6巻発売です。生理の中試合に臨まなくてはならないという状況の中、慣れていない遥は、集中力を切らしピンチに陥ってしまいます。試合中ベンチでうずくまり、動けなくなったところを、偶然試合会場にいた凛という女子高生が、助けてくれます。6巻のポイントは、彼女の登場といったところでしょうか。かつて野球をやっていたという、自分と同じ境遇の年上。その登場は、遥にとって非常に大きな意味を持ったと思います。男女の境界を、成長と共にイヤでも感じざるを得なくなってきた遥に取って、自分の経験からその道筋を肯定さらに応援してくれる存在というのは、この上ない存在です。成長するに伴い、周囲の助けや関わりあいが必要になってきたというのは、前回のレビューで描いたと思うのですが、こういう存在を登場させるなんて、上手いですね。

 また凛は、恋愛方面でもお話に絡んできそう。彼女と健との間にあった出来事を知るだけでも、ひとつ学生の恋愛要素が薄かった本作への良い味付けになりますし、遥の心へ何かしらの変化をもたらす存在にもなり得そうです。しかしこの子も中学生時代にハブられてたという設定が。イジメや学級問題を展開の起点に置くのは、藤村先生のいつものパターンなのですが、徹底しています。


~心境の段階的変化~
 さて今回は、遥の心に変化が。今までは、「健兄が好き」という気持ちが先行し、自分の想いでいっぱいいっぱいになっていた遥でしたが、いよいよ健の気持ちや、彼との周囲から見たときの関係性について気にするようになってきます。精神的な繋がりだけではなく、形式的な関係性というものにシフトしていくというのは、紛れもない成長の証。ひとつひとつ、各巻ごとに段階を置いて確実に成長の跡を映し出すというのは、何気にすごいことなのかもしれませんね。何はともあれ、次巻はどうなるのか楽しみ楽しみ。さすがに健兄とガチンコで恋愛に…なんてことはないと思いますが、失恋とかは普通にできてしまうからなぁ。。。


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Tag [新作レビュー] 2010.07.26
1102940688.jpg碧門たかね「葵心学園探偵倶楽部」


…ようこそ
中等部生徒会へ



■演技が上手くいかず悩んでいた人気子役の小宮奏人。出演中のドラマの役作りのため、奏人は中学のミステリー研究会を訪ねるが、なんとその中にいたのは、生徒会の面々!?学園の秩序と平和を守る、裏の顔を持った葵心学園中等部生徒会。構成員は、尽く濃いキャラばかり。そんな彼らと共に、芸能生活の合間を縫いながら、奏人は謎を探ることになるのだが…気がつけば探るどころか巻き込まれてばかりで…!?

 現在ゼロサムにて「しろがねの王」(→レビュー)を連載中の、碧門たかね先生の過去に連載していたシリーズを、このタイミングで単行本化。これ以外にも、一迅社では過去作の単行本化がされており、「いよいよ経営危ないか!?」なんて思ったら、一迅社の決算期が7月らしく、駆け込みで単行本化がされているということみたいです。この作品は、表題作が7年前の作品と、かなり古め。絵柄もなんとなく、時代を感じさせます。主人公は、人気子役の小宮奏人。彼が出演中のドラマの役作りのため(顔採用で演技はド下手)、学校のミステリー研究会に加入し、様々な事件や出来事に関わっていくというストーリー。ミステリー研究会といっても、その会員たちはそのまま生徒会の役員たち。学園の秩序を守るため、裏の顔として、ミステリー研究会を運営しているのでした。ドSな会長を始め、生徒会の役員達はみなみな個性派。そんな中で、かわいらしい見ためそのままに、見事に弄られ役になっていく、主人公の奮闘を、見守っていきましょう。


葵心学園探偵倶楽部
中一だけど、見ためは完全に小学生。かわいいです。


 現在のゼロサム(WARDを含めて)から見ると、絵柄や作風が、やや低年齢向けな印象を受けます。ガンガンとか、ギャグ王とか、その辺で連載していたとしたら、けっこうしっくり来るイメージ。主人公は中学生ですし、学園探偵ものということで、やはり少年誌連載作的な感覚で読んでしまいます。個人的には、ギャグ王で連載していた「少年探偵彼方 ぼくらの推理ノート」が大好きな子供だったので、こういうノリの作品は大好物。事件といっても、とてもかわいらしいもので、読み手に推理をさせるような作りにはなっていませんが、主人公が活発に動き回る(動き回される)ので、見ていて飽きることがありません。下手なファンタジーよりも、読み手に優しく、親しみやすい作品だと思いました。
 
 表題作のシリーズが収録されているのは、全体の2/3。残りはいままでに描いた読切りや、現在連載している「しろがねの王」の特別版など。全体的にボリュームに欠け、特別版も本編を読んでいないと楽しめないということで、作者さんの作品を初めて手に取るという方には、やや辛い所があるかもしれません。個人的には、北海道の女子寮に住む女の子達のとある一日を描いた読切りがお気に入り。こういうの、また描いてくれないかなぁ。なんとなく懐かしい匂いを感じて、いい感じなのです。


【男性へのガイド】
→ショタ好きでも良いし、ライトな学園ミステリーもの好きでもOK。比較的読みやすい作品が多く収録されていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→コスパは無視で、どのくらい楽しめたかで考えてこのくらいでしょうか。同時収録の読切りに、厚みがかけたのがちょっと残念。


作品DATA
■著者:碧門たかね
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■全1巻
■価格:552円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.26
1102940686.jpg榧世シキ「千の月」


もう
確かめる術はないけれど
俺たちは
多分幸せだったのだろう



■とある世界のとある国の中央統治局特別捜査部に身を置く、温厚で人当たりの良い青年・汐と、真面目ゆえに気の強い青年、海。二人に持ち込まれる依頼は、どこか不思議なものばかり。蝶の痣を顔に持つ、スラム街の教会に育った少女に、唄を捜す孤児の少年、街の時計を止めて回る眼帯の少年に、死人の帰りを待つ蝋人形師…。どこか壊れた人々の願いを聞き届ける、そんな二人が見つめるものとは…。この街は、戸惑いと希望に満ちている…

 「ねじまきの庭」(→レビュー)を連載していた榧世シキ先生が、過去に連載(不定期?)していたシリーズを、このタイミングで単行本化したものでございます。舞台となるのは、とある世界のとある国。そこの中央統治局特別捜査部に属する、温厚で人当たりの良い青年・汐と、無愛想で気が強い青年・海が物語の主人公となります。なにやらすごそうな所に所属していますが、実のところそこは、雑用捜査係とでも言いましょうか。さほど大きくない案件を任されるという部署。そんな所に舞い込む、ちょっと不思議な事件の解決までの過程と、その当事者の住民との関わりあいを、静かに静かに描いていきます。


千の月
落ち着きのある作風に、物語の優しさと悲しさが静かに降り積もる。


 不思議と言っても、魔法使いなどが出てくるわけではありません。イメージとしては、宗教であるとか、各地に伝わる民間伝承みたいなものが未だ残っているような世界という感じ。ゆえにファンタジー作品というジャンルには当たらないという印象です。狙ってそうしているのかはわからないのですが、全体的に「死」や「死者」が、物語に大きく関わっているものが多く、作品通しての雰囲気は、どちらかというと暗めとなっています。死や死者の存在があるからこそ、人々は何か得体の知れない不思議な力にすがりたくなるというもので、そんな人々を相手に、その行動を否定しつつも、その想いだけは汲み取るという、そんな役割を主人公の二人は担っていることになります。そんな二人もまた、死者の存在によって、その身の振り方を変化させられた人間。かきおろしとして収録されているストーリーは、まとめに相応しい良い物語だったと思います。ただ「ねじまきの庭」もそうなのですが、説明不足でわかりづらい節があるので、オススメはしづらい作品ではあります。
 
 同時収録されている「翠都」も、秀逸。こちらも設定的にはややわかりにくいところがあったのですが、物語や設定の折り畳み方が見事。新人類と旧人類というふたつの存在がいて、先に提示された関係を、そこに投入したとある設定を使って、最後にはひっくり返してしまうという。物語としても面白かったですし、作品の構成の仕方も上手いなぁと思わず唸ってしまいました。でもやっぱりちょっとわかりにくいところがあるし、なにより雰囲気がやや暗めで、オススメはしづらい作品ではあるのですが。


【男性へのガイド】
→主人公は男ふたりで、ややそっち向けの人物構成となっていますが、そういう雰囲気はほぼナシ。物語としても、それなりに読みやすい内容になっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→榧世先生の作品が持つ、独特の落ち着いた雰囲気は、個人的に好きだったりします。ただちょいとわかり(ry


作品DATA
■著者:榧世シキ
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:WARD(平成16年vol.4~vol.7)
■全1巻
■価格:552円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.25
1102940689.jpg魔神ぐり子「カッパときのこ」


「もう3日うんこが出てないんだけど」
「いきなり?
 いきなりシモの話なの?」



■ここは日本のどこかにある、地図上にはない村。そんな村のとある家の、とある縁側が、物語の舞台。カッパときのこの二人が、ひょんなことから悪魔を飼ったり、王子を誘拐したり、臨死体験をしたり…だらだらと日々を過ごす、そんな誰得な日常風景を、ぐだぐだと描く、魔神ぐり子のギャグ漫画!ごく一部のマニアが買ってくれると信じて、こんなタイトルのままで単行本化しちゃいました…

 「楽屋裏」の魔神ぐり子先生が描く、カッパときのこというおかしな組み合わせで贈るギャグまんがでございます。いかにも描きやすそうなフォルムの、ちょっと頭がかわいそうなきのこと、そんなきのこ相手に、冷静に冷酷に対応していくカッパの、ぐだぐだで生産性のないやり取りを、延々と収録していくという内容。しかし対話オンリーのシュールなものかというと、それは違います。片方のきのこが、バカなことを言いながら動く動く。場所は一定なのに、動きは毎回違うので、何故か絵的に飽きることがないという。基本的には下ネタやきのこの残念感、そしてパロディや内輪ネタなどで展開。正直なところ、これ別にきのことカッパじゃなく、人間でも成立したんじゃね?という感もアリ。


カッパときのこ
なんて伝わりにくそうな…というネタもちらほら。こちらは大阪の有害図書騒動の時事ネタと、連載誌の内輪ネタ。


 きのことカッパという組み合わせの時点で、なんとなく力技の芸風をイメージさせるのですが、ストレートなお下品ネタは6~7割程度。残りに関しては、内輪ネタやパロディなど、ちょいと志向を変えたようなネタとなっています。ベースは変なものに変なことを言わせる・させるという、わかりやすいものなのですが、そこに時折混ぜ込まれる変化球がスパイスに。「楽屋裏」的な暴露感や自嘲感はないので、刺激は若干劣るものの、特に何も考えずに気楽に読めるという所では、こちらに軍配が上がるか。もっとえげつない下ネタとか入れても、個人的には良かったですけど、それ以上やるとあかんのか…。
 
 作品のイメージとしては、ちょっと前にジャンプでやっていた、「太臓モテ王サーガ」あたりが似ていると感じました。多分主人公が残念な感じとか、結果的に痛い目見るあたりとかが、すごく被るという。ああいったノリの話がお好きな方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。
 

【男性へのガイド】
→男性でも余裕でいけます。ちょっとした息抜き的に、気楽な姿勢で読むと良いと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→個人的には、自分を削っている感のある楽屋裏の方が好みでしょうか。中でも触れられていましたが、単行本化は英断だと思います。素晴らしい。


作品DATA
■著者:魔神ぐり子
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサムコミックス
■掲載誌:ゼロサムアンソロジーシリーズArcana
■全1巻
■価格:648円+税


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.25
作品紹介→高梨みつば「紅色HERO」
16巻レビュー→カナコと嶋の、ベタで素晴らしき師弟関係《続刊レビュー》高梨みつば「紅色HERO」16巻
17巻レビュー→のばらにとってのバレーボールの在り方の変化:高梨みつば「紅色HERO」17巻



1102940395.jpg高梨みつば「紅色HERO」(18)


みんなの手をにぎって
春高へ



■18巻発売です。
 突然の大事故で意識不明の重体になってしまった祐信。あまりのショックに、のばらは立っているのもやっとの状態。数日後に始まる、春高の予選の出場も危うい。そんな彼女に、圭介は発破をかけるも、反応は薄い。けれどもカナコの熱い想いに動かされ、春高目指して戦ってきた仲間のために、試合に挑むのだが。


~ちょっと追いかけるのがしんどく…~
 前巻でかなり厳しかったのですが、そろそろ限界かもしれんです。もうそこには、スポーツ漫画の欠片はありません。いや、あったとしても、それはヒロインにではなく、カナコあにあるぐらい。バレーと恋愛を、祐信との約束のもとにセパレートして挑むはずだったのですが、祐信の事故によってそれが完全に一緒にされてしまいました。そこにあるのは、精神的にボロボロのヒロインと、体の動くことのない祐信。またヒーロー像とのばらに求める圭介と、そんな彼に積もった想いを爆発させる桜坂先輩。チームの軸となるべき選手達で、純粋に春高に気持ちが向いているのは、唯一カナコぐらいでしょう。コーチの嶋は、「迷いがあるようでは春高には出れない」と言っていたはず。うーむ、これで春高出場しちゃってもなぁ。。。


~ヒーローとしてののばらはどこへ?~
 ぼろぼろになったのばらに対し発破をかける圭介に対し、桜坂先輩は「のばらは普通の女の子だよ?」という忠告をします。確かにそうなんです、ただそれは、恋愛に関しての話。それはあくまで一面であって、バレーボーラーとしてののばらは、決して普通の女の子でカテゴライズできるようなヒロインではなかったはずです。というか、バレーボーラーとしてののばらは、ヒロインではなくむしろヒーローに近い存在と言えるでしょう。それを端的に表しているのが、作品タイトルであるわけで。この作品はそもそも、女の子(ヒロイン)としてののばらと、バレーボール選手(ヒーロー)としてののばらという二面が、主人公の中に内在していて、そのバランス感がそのときどきの物語の印象を変化させてきました。その割合における、ヒロイン要素が巻を追うごとに増えていき、また相手役となる祐信も、のばらのヒーロー性ではなく、女の子としての部分を肯定することでのばらの心を掴みました。段々と薄れていった、のばらのヒーロー部分が、この事故によってすべて飲み込まれようとしている感を受けるのです。それが、ヒーロー面を楽しみにしていた者にとっては、かなりつらい。恋愛に於いても、土台となっていたのはバレーボールであるはずなのに、気がつけばその配置が逆に。うーん、19巻どうなるのでしょうか。多分矢部商業との対戦で春高出場決まってラストみたいな感じになりそうですが、そこにスポーツ漫画の要素はあるのか。


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.24
作品紹介→ *新作レビュー*田島みみ「君じゃなきゃダメなんだ。」
2巻レビュー→青春とは身勝手なものである《続刊レビュー》「君じゃなきゃダメなんだ」2巻
3巻レビュー→ガムテごしのキスとかエロすぎだろ…:田島みみ「君じゃなきゃダメなんだ。」



1102940389.jpg田島みみ「君じゃなきゃダメなんだ。」(4)


紅くんはあたしの事……
どう思ってる……?



■4巻発売です。
 福引きで当たった温泉旅行に、行くか行くまいか迷う菜花。当日はテスト。しかし相手は紅だし、行き先は育った場所。どうしても行きたい…結局紅の反対を押し切り、勝手に一人出発しようとした菜花だったが、そんな行動紅にはお見通し。結局一緒に行くことに。楽しい旅行になるかと思いきや…紅が菜花に想いを告げて…!?そして迎えた二人っきりの夜、菜花は紅から…


~留まることを知らない、菜花の無防備エロ~
 前巻3巻にて、ガムテ越しのキス(っぽいプレイ)という、やたらエロティックなシーンを投入し、私の度肝を抜いてきた本作。少女漫画のヒロインというよりは、なんとなく、成人漫画のヒロインっぽさを漂わせる菜花ですが、その勢いは4巻でも衰えず。無防備・無警戒すぎる男性向けエロを、今回もすごい形で見せつけてきました。
 
 軽いジャブとしては、件の温泉旅行から。一緒にきて、二人きりのドキドキの夜…なんて思いきや、紅はそこで出会った大人のおねいさんと消えてしまい、ひとりぼっちで過ごす事に。そんな状況で、一人紅くんを想い横になる菜花…
 

君じゃなきゃダメなんだ4-1
不必要に色っぽい


 若干の汗をかき、赤らんだ顔。そしてはだけた浴衣から覗く、脚と鎖骨。そしてこのポーズ。どう考えても狙ってますよ、この子。いや、狙ってないんだけど、結果狙ってるみたいな形に。もうね、これ誰が得するんだろうっていう。男性になら多少受けは良さそうですが、この作品はあくまで少女マンガなわけですから、こういう事してもあまり効果はなさそうなものです。え?私は男ですから、もちろんごちそうさまですよ。むしろ脚にかかったモノローグが邪m(以下略


~邪魔すぎるパンチラ~
 さて、さらに後半では、あからさますぎるカットがございました。もうね、どうするのこれ…っていう。それが、菜花が紅への想いを完全に自覚するという、物語的に非常に大事なシーンにて…
 

君じゃなきゃダメなんだ4-2
豪快なパンチラ


 おい、カメラアングルと重力自重しやがれ。もうどうしようもないくらいのパンチラ。これ、すごくすごく大事なシーンなんです。このカットでの主役は、ヒロインの心情を表しているそのモノローグ。モノローグがしっかりと配置できるように、しっかりと構図が出来上がっているのにも関わらず、なぜパンツを見せて視線をハズすのか(笑)興味があるないに関わらず、マンガの中のパンツって記号的な存在として認識されているから、あったら視線が行ってしまうんですよ。…ん、ちょっと待ってください。これって、モノローグを読んでいく動線の延長上にパンツがあるという、逆に計算された配置と言えなくもないような…。これ、狙ってるのでしょうか…。いや、絶対狙ってる。物語の流れ的には、邪魔でしかないこのパンツ。直前で菜花が「ビックリした…」と言っているのですが、こっちがビックリですよ。田島先生の意図がまったくわからない…。でも私は男ですから、もち(以下略

 無防備にエロを振りまくヒロインてのも……悪くないですよね(結局)


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Tag [新作レビュー] 2010.07.24
1102940401.jpg聖千秋「KECHONPA」


うすっぺらーい同情と
笑える自虐ネタをひとつ以上持ってれば
ここの空気は心地いい



■毎日渋谷を我が物顔で闊歩する、カリスマギャルのリリコ。いつもは遊び歩いている彼女だったが、ひょんなことから探偵の真似事をすることに。婚約者と信じている、エリート警察官僚の二ィのため、行方不明になったひとりのギャルを捜す。リリコの洞察力と、ギャルの情報網、そして愛の力(?)を総動員し、目指すは事件解決!しかしそう簡単に、事は運ばなくて…!?

 渋谷のギャルが、事件を解決。新感覚ミステリーコメディでございます。作者は聖千秋先生。ドラマ化もされた「正義の味方」の作者さんです。ヒロインは、渋谷をホームに活動しているギャル・リリコ。そんな彼女がある日、ひょんなことから人探しを手伝う事に。というのも、田舎の名家の出身である彼女が、かつて婚約者として紹介された相手で、警察のエリート官僚であるニィが、とあるギャルの行方を追っているということを聞いたため。未だにニィが婚約者であると信じているリリコは、彼の役に立つためと奮闘。持ち前の洞察力の高さと、ギャルの情報網を駆使し、事件の真相へと迫っていきます。


ケチョンパ
婚約者にはギャルになった後の姿を知らせていない。だから会うときは清楚系で、取り繕って会う。


 言葉遣いや格好が、現代ギャルの姿をリアルに描きあげているかというと、よくわかりません。ただ、絵柄が一昔前の雰囲気をたたえているので、リアルな雰囲気はあまり受けないかなぁ、と。しかしながら、あくまでコーラスを読む世代、作者さんの世代の方が、物語を楽しめれば良いので、その辺はあまり問題ではありません。
 
 一応触込みは、「ミステリーコメディ」ということで、ギャル達のお馬鹿さかげんと、ちょっとしたミステリー要素を投入して展開していきます。イメージ的には、石田衣良原作の「池袋ウエストゲートパーク」が近いかもしれません。一話完結型で、1冊通して複数の事件を収録。人が死ぬような大事ではなく、もう少しミニスケールな、ストーカーや行方不明になった人間の捜索などが主になっていきます。
 
 最後まで読んでみた印象としては、どういった話を描きたかったのかよくわからないというもの。何かしら、一貫したものがあれば良かったのですが、婚約者でるニィとの関係も、ヒロインの過去と現在の心境も、軸として持ってくるには、やや露出不足だったような感を受けました。単発で読むぶんには、全然楽しんで読めるのですが、通して読んだ時にプラスアルファで何かあれば、シリーズ物としてより楽しめたのではないかな、と思います。


【男性へのガイド】
→どうなのだろうか。さして拒む要素も無さげであり、かといって強みもないような。ギャルってだけで敬遠する人は多そうですが、果たして。
【私的お薦め度:☆☆   】
→別に何が悪いってわけではないのですが、もうちょっと捻りや一貫性があれば。。。


作品DATA
■著者:聖千秋
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス
■全1巻
■価格:419円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.22
1102948088.jpg原明日美「中川翔子物語~空色デイズ~ 」


あたしのままで いられる
あたしの 大好きな世界



■自分らしく生きれば、人生は変わる   
素直になれないまま、父と突然の別れを迎えた幼い日。いじめのつらさも、友情の大切さも知った、中学時代。夢と現実の間でもがいた、デビュー期。そして多くを苦難を乗り越え、掴んだブレイク。苦しみながらも自分らしく生きる事を求めた、人気アイドル・中川翔子の感動ストーリー!

 なかよしで、アイドル・中川翔子さんのサクセスストーリー。メンタリティは読者と合いそうですが、果たして需要はあるのか、若干疑問に思いながらの購入だった本作。中川翔子さんというと、TBSオールスター感謝祭でのひとりぼっちの姿が真っ先に思い浮かぶので(なんでだよ)、「中川翔子物語」と聞いた時点で、「きっと芸能界でひとりぼっちでも負けない・・・!みたいな物語なんだろうな」などと勝手に予想していました。そして実際読んでみると、なんというか…まぁ…当たらずとも遠からずといった内容。ヒロイン・しょうこが小学生の時から物語はスタートし、中学生時代、そしてデビュー期からブレイクまでを描いていきます。サクセスストーリーといえばサクセスストーリーなのですが、芸能人としてというよりは、一人の人間として、女の子としての生き方を描くという方向。


中川翔子物語
家族の絆というものが、「中川翔子」を作り上げるひとつの重要な要素となっている。母と、亡き父。特に二人の影響は多大。


 芸能人の半生をなぞるように進むと、適当なエピソードをかいつまんでお終い…と、どうにも薄っぺらい印象を受けがちなのですが、この作品は、とある人物の存在を軸に置く事で、エピソードに一貫性を付与。しっかりと物語として機能させる事に成功しています。物語の始まりは、しょうこが小学生の頃から。その時に、父親で芸能人でもあった故・中川勝彦氏が登場するのですが、以降、彼の存在というのが、ことあるごとに影響してくるようになります。故人だからといって、その相手のことを頑に信じるというわけではなく、ときにその存在に反発したりするところも、見所として良し。事実かどうかは知る由もありませんが、結構泣かせる展開もあるのですよ。サブタイトルの空色っていうのも、そういった意味合いが込められているのかも。
 
 デビューまでの流れは良かったのですが、デビューしてからブレイクまでの過程については、ちょっとよくわからなかったり。前後の差がハッキリとわからず、気づいたら売れてる…みたいな。中川翔子さんの芸能活動の時系列(ブログ開始、歌手活動開始etc.)がハッキリと把握できていれば、その辺もしっかりと脳内味付けして楽しめたのかもしれないのですが、いかんせんにわか以下の知識しか持ち合わせていない自分には、限界があるというもので。ちなみに私が中川翔子さんをはじめて知ったのは、グラドルで最近はマンガ原作もしている、浜田翔子さんとセットで、フライデーのグラビアを飾ったとき。あれって結構前のことのような気がするのですが、もうデビューして結構経つのですね。しかしブログの総アクセス、25億ってすごいですね。なんかケタが違いすぎて、同じ「ブログ」って感じがしないです、はい。


【男性へのガイド】
→中川翔子さんのファンであるのなら。低年齢向けの、良い伝記(っていうのか?)だと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→しっかりと物語に仕上げていたので、驚き。「もしヒドい出来だったら、どう楽しみ方を工夫しようか…」なんて思っていたのですが、素直に作品を楽しむ事が出来ました。低年齢向けのノリなので、それさえ我慢できるのなら、手にとってみても良いのでは。


■作者他作品レビュー
原明日美「最強生徒会ツバキヨ」


作品DATA
■著者:原明日美
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし
■全1巻
■価格:419円+税


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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2010.07.22
1102940343.jpg桃生有希「修恋」


もっとちゃんとあたしのこと
ひとりの女の子として見てほしいよ



■女子校という環境の中、女を捨てた女子高生は、修学旅行先で出会った男子校の生徒に一目惚れ。偶然が重なれば、イヤでも人は気にしてしまうわけで…。北海道では、元カレと今カノのラブラブ模様を目の前で見せつけられる、地獄の班行動に、元カノが悶絶。鎌倉では、スッピンをひた隠しにしている、化粧美人が罪悪感に苛まれ。東京では、自分に勇気をくれたメル友に、思い切って会う約束を…。修学旅行で恋しよう…!

 桃生有希先生の初単行本でございます。修学旅行での恋をテーマに描いた、読切りを4篇収録。修学旅行での恋というと、みなさんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。旅行先で出会って、恋に落ちる……クラスの気になるあの子と、旅行きっかけで急接近……既に付き合っている相手と、旅行によってさらに仲は深まり……。色々と、思い浮かべるものはあるでしょうが、この作品では、それらの恋を一通りカバー。旅行先での出会い、接近、そして決別など、様々な恋愛イベントが、修学旅行というパッケージの中に落とし込まれていきます。


修恋
ちゃんと修学旅行先の名物も使う。こちらは住吉大社のおもかる石。


 帯には「編集長推薦本」の文字が。編集長って、販促効果あるのだろうか…などと疑問に思いつつ読んだ本作。なんとも青春色の強い、恋愛一本の少女マンガらしい内容になっています。デザート掲載ということですが、どちらかというと別フレのほうがよりしっくり来そうな印象がある一冊です。一話目は、修学旅行先にて出会いそのままくっつくという話なのですが、時間とページが限られているためか詰め込み気味で、ちょっと展開早めに感じてしまいました。しかし以降は、それぞれ違うパターンで話を展開。後半の2作などは、青春ならではの疾走が、比較的落ち着いた展開の中で逆にハッキリと浮かんで、作品の持つ魅力をしっかりと味わいつくせたような感じがあります。なんて書くと、「最初の話は良くないんかい」とか思われそうですが、修学旅行先のとある名物を重要なアイテムに使うなど、題材を考えるとこちらのほうがより「らしさ」が出ていたような気がします。
 
 初単行本ということで、まだまだ伸びしろはたっぷり。現時点では、かわいらしく、学生の恋愛をオーソドックスに描くという、ある意味で没個性的な作風なのですが、ここで判断するのはあまりに次期尚早。デザートって、こういう作風のラインが手薄な印象もありますし、定着しても全然おかしくないですよね。個人的には、こういう定番感のある作品は好物なわけで、終始楽しんで読む事が出来ました。


【男性へのガイド】
→テンパる女の子ってのもかわいいものですよ。そんな一面を見たいのであれば、いかがでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→インパクトは弱いも、一定のラインを崩さないクオリティは、読んでいてとても安心できます。


作品DATA
■著者:桃生有希
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:
■全1巻
■価格:429円+税


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.21
作品紹介→河原和音「青空エール」
4巻レビュー→二人の行動に多大な影響を与えた部活の先輩:河原和音「青空エール」4巻



1102940394.jpg河原和音「青空エール」(5)


たどりつきたいなら
今はとにかく
前みて進め!



■5巻発売です。
 大介にフラレてしまい、大介からどう思われているのか、何で告白してしまったのか、あれこれ悩むつばさ。しかし水島から言われた「自分で決めれるのは自分の気持ちを行動だけでしょ?」という言葉に、ハッとなる。強くなろうと決意したつばさは、目の前に迫ったコンクール予選に向け、部活に全力投球をするが、そこで思わぬ問題に直面し・・・。
 
 
~新たなステージへ~
 大介にふられて、一時は迷走するも、つばさの気持ちはコンクール予選、ひいてはコンクールメンバー選出という目標を持ったことで、再び上昇。物語としても、新たなステージに入っていったような印象を受けました。
 
 これまで、大介とつばさの部活に対する情熱は、どちらかというと開きがあるように感じられました。つばさは目下「高校野球の試合、願わくば甲子園で演奏する」という目標がありましたが、それは吹奏楽部としての目標とは異なり、ごくごく個人的でなおかつ比較的容易に達成可能な目標でした。それに対し大介は、あくまで甲子園。部活に全てを懸け、全力で臨んでいきます。別にお互いがそれで納得しているのであれば良いのですが、キレイな構図で爽やかに青春・恋愛してもらうのだとしたら、お互いに相手の気持ちが理解できる立ち位置にいてほしいものです。それが今回、つばさが新たに「コンクールメンバーに選ばれる」という目標を掲げたことによって、つばさに新たな景色が見えてくることになります。それが、コンクール金賞を目指すチーム競技としての吹奏楽でした。
 
 会話の中でも自然に、「強い」「勝つ」などといった言葉で形容されるその競技は、スポーツ競技と何ら変わりない、勝負事としての表情を強く見せるようになりました。野球部の応援だと、所詮勝ち負けは野球の試合に依るもので、責任云々は吹奏楽部員たちには降りかかってきません。しかしコンクールとなるとそうはいきません。一人のミスが、全体に響き、そして勝ち・負けが明確な形で帰ってくるのです。そういうフィールドに、つばさは少しずつ足を掛けようとしています。まだ野球部で言えば、ベンチ入りメンバーに選ばれるという目標段階ですが、そこに切り替えた時点で、そこから先に続く景色は、全く異なるものになったはずです。そしていつかは、勝ち負けにこだわる所にまで登って行くはず。そこに来てやっと、つばさは大介のことを理解できるようになり、また新たな関係を築いていけるはずです。そうなってやっと、恋愛面でも違った局面になってくれるのではないかなぁ、と。だからそれまでは、部活に一生懸命頑張ってほしいです。
 
 
~春日先輩のプロ意識~
 5巻の見所と言えば、森先輩の怪我とレギュラー獲得への想いなのですが、もう涙なしには語れないような、辛い辛い状況になっております。努力を重ねたからこそ、こうなってしまったという。誰も悪くないのがために、どうすることも出来ないこのもどかしさと悲しさ。詳しくは、読んでもらってということになるのですが、とにかくこれは辛いとしか。そんな厳しい状況を、真っ正面から描き出す河原先生。そう、それでこそ青春部活マンガなんですよ!なんて、そんな中でもキラリと光る春日先輩に、個人的にはドキドキしたわけですが。
 

青空エール5巻
ビンタするときは左手で

 トランペットは吹いたことがないので、詳しいことはわからないのですが、森先輩の症状を見る限り、トランペット演奏は右手に負担がかかりやすいようです。右手はピストンバルブと呼ばれるボタンのようなものを押して演奏するわけで、突き指などは御法度。感情高ぶってつばさにビンタをするときも、無意識的に大事な右手を守り、怪我のリスクを低減させる、春日先輩は、さすが実力ナンバーワンだなぁ、と思ったのでした。何気に、「何かあったら必ず言うんだよ?」と事が発覚する前につばさに言っているように、上に立つ者としての働きもバッチシこなす彼女は、本当に素敵な先輩部員だなぁ、と。


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.20
作品紹介→*新作レビュー*南マキ「声優かっ!」
2巻レビュー→アニメ化へ着々…?:南マキ「声優かっ!」2巻



1102940633.jpg南マキ「声優かっ!」(3)


夢が叶って
思い切り笑う君を見るまで
絶対離さない



■3巻発売です。
 声優になる夢への第一歩を踏み出した姫。しかし肝心の「王子声」は何故か思うように出せないまま。男に扮し、一人で「隠れ家」に住む生活にもだいぶ慣れた頃、そんな姫を特訓するために山田プロデューサーは、AQUAの2人と一緒に合宿をさせることに。「王子声以外の地声禁止。もし100回以上王子声以外を出したら、地面に埋める。」そんな恐ろしいことを告げられ、スタートした合宿で、姫は変身を遂げることが出来るのか…!?地獄のスパルタレッスンの先に、姫が見たものは…!?


~合宿メインの3巻~
 快調なペースで3巻発売。アニメ化へ着々といったところでしょうか。さて今回は、地獄のスパルタ合宿が作品の殆どを占めることになります。王子ボイスを自在に出せるようになることが目的のこの合宿。一緒にAQUAの二人も参加するわけですが、姫と関わるうちに、落ち着いたメガネの方(瑞希)の様子が徐々に変化。そして後半にさしかかる所で、彼の思わぬ過去が明らかになります。その過去がどんなものかは置いておいて、その回想に登場した女の子がやたらかわいかったという、そんな下らない話をしようかと思います。


~回想に登場した紗奈って子がやたら印象に残った~
 回想は、瑞希が小学生のころにまで遡ります。そこで登場する、その女の子の名前は


声優かっ3-1
園原紗奈


 その容姿や態度などから、なんとなく高飛車なお嬢様をイメージさせますが、育ちはわからないものの、何事に関してもどんくさい、落ちこぼれな女の子みたいです。瑞希に絡むのは、彼がなんでも率なくこなしてしまうから。そんな彼女が、中学に入ると同時に、演劇部に入部。夢は大女優で、瑞希を蹴落としてやると息巻きます。まぁとにかく夢が大きいし、そういう意味ではちょっとバカなのですが、同時に頑にその夢が叶うと信じ、ひたむきに頑張ることの出来る姿は、本当に魅力的に映ります。そして同じ土俵で戦う相手として、そして仲間として、瑞希と紗奈はやがて信頼関係を築き上げていくのですが…。という話の流れ。
 

声優かっ!3-2
こういう真っ直ぐに夢が叶うと信じる姿って、良いと思いませんか。


 初めて登場してから僅か十数ページなのに、全てを持っていってしまうような、引き寄せる力の強さ。1話の中に差し込まれた回想シーンであるはずなのに、強烈に紗奈という子が印象に残るのです。回想ですから、視点は瑞希。しかしながら、その回想自体は、他でもない紗奈の物語となっていました。限られたページの中に、しっかりと物語をしまい込み、さらにキャラクターを強烈に印象づける、その手腕はお見事。さすが構成協力が5人もいるだけありますね!(←× いや、これはストーリー構成だけでなく、南マキ先生のキャラ描写の上手さもあるのだと思います。いやはや、ベタすぎでしたが、面白かった。これ今後登場することってあるんですかね?瑞希の傷を癒すのは、彼女しかいないと思うのですが、果たしてどうなのでしょうか。
 

~姫という名前~
 2巻から通して読んでいてふと思ったのですが、母からの姫に対する期待の大きさって、よっぽどのものだったのではないのかなぁ、と。それは単純に、名前が「姫」だからってだけなのですが、なかなか「姫」なんて名前付けないですよ。皆から愛されるような、お姫さまになって欲しい…みたいなニュアンスなのかわからないですが、妹の「茜」と比べても、やはり姫の方が断然派手というか、ドリーミーな感じを受けます。それが、今では逆の立場に。そして彼女に求められているのは、姫ではなく王子ボイスという、なんとも名前と逆を行く人生となっています。名前ひとつにすらなんとなくドラマを感じてしまう、主人公・姫。これからも乗り越えるべき壁は多いと思いますが、頑張って乗り越えてもらいたいものです。


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.19
作品紹介→葉月かなえ「好きっていいなよ。」
3巻レビュー→根暗と幼女とヤリマンと・・・ 葉月かなえは計り知れない 《続刊レビュー》 「好きっていいなよ。」3巻
4巻レビュー→まだまだ幅を見せつける,どんどん面白くなる 《続刊レビュー》葉月かなえ「好きっていいなよ。」4巻
関連作品レビュー→葉月かなえ「堀高ハネモノレンジャー」 葉月かなえ「あれもしたい、これもしたい」



1102940341.jpg葉月かなえ「好きっていいなよ。」(5)


自分で自分の首を絞めるなんて
悲しいじゃないか



■5巻発売です。
 学校一のモテ男・黒沢大和と付き合いはじめて、しばらく経つ。お互いの想いを確認し合って、ラブラブな二人だけど、めいはまだまだ自信が持てない。読者モデルのめぐみも未だに大和を諦めていないし、同じ高校に入学してきた大和の中学時代の親友・海も、次第に二人の関係に影響を与えて…。めいも、大和も、みんな必死で精一杯な、ドキドキの第5巻、登場です。
 
 
~めぐみちゃんが素敵に映った~
 久々の5巻。やっぱり良いですねー。大和は相変わらずのモテっぷりで、競争相手はいなくなりません。今回は、かつての愛子を凌ぐほどに、読者モデルのめぐみがダークサイドを見せて物語を盛り上げてくれました。えーと、そうですね…私ああいうライバルキャラ大好きなんですよ。もう今回のめぐみさん、ホント素敵やなぁ、と。性格悪くてカワイイから好きってわけじゃなく、己のコンプレックスを自覚して、それを克服しようと努力するようなキャラが好きなんです。そしてこの作品には、コンプレックスを自覚した後、それを克服するために努力をし、生まれ変わったキャラが沢山登場します。
 

~努力と苦労を重ねて生まれかわった脇役たち~
 まずは海。彼は中学時代、線が細く虐められていた経験がありました。そんな彼を虐めた人間に復讐をするため、体を鍛え逞しく生まれかわりました。

好きっていいなよ5-1
元々勉強は得意でなかったのかもしれませんが、それでも受験勉強が疎かになり浪人してしまうほどに、トレーニングに勤しんでいました。それが大きな自信となり、今の彼の姿があるのです。

 
 続いては、かつてのライバル・愛子。今でこそスレンダー美女の愛子ですが、かつてはかなり太っており、化粧も厚塗りの今以上にケバい容姿をしていました。それが男にふられ、自分の容姿の悪さを改めて自覚。その克服と、大和へキレイになった姿を見てもらいたい一心で、体重を2か月で17キロも落としました。この歳でのダイエットって、かなり大変なことです。それを見事に遂行し、生まれかわった愛子さん。彼女もまた、想像以上の努力を重ねて今を手に入れた苦労人なのです。


 そして今回の、めぐみ。その名が表しているように、生まれながら恵まれた容姿・環境で育って来たのかと思いきや、彼女の回想シーンによって、昔は貧乏な家に生まれ、みすぼらしい格好をし、周囲から虐められていたことが明らかになりました。彼女もまた、努力と執念によって、己を磨き、今のポジションを手に入れた努力人なのでした。
 

~努力したからこそ、生まれる想い~
 そしてそんなめぐみは、大和と付き合っている冴えないめいに対して、こんな想いを抱いていました…
 

好きっていいなよ
どうして努力してかわいくなった
あたしや愛子さんが選ばれないで
努力もなにもせず
いつまでも地味で冴えない橘めいが
選ばれなきゃならないの



 すごくよくわかるんですよ、努力でコンプレックスを克服して、でもそれが思っていた形で幸せを呼び込んでくれなくて悲嘆にくれたり、努力もしていない人間が幸せを手にして苛ついたりする気持ち。努力を重ねているからこそ、何かしらの結果が出ればそれは自信になり、やがてそれはアイデンティティへと変化していきます。だからこそ、視点はその土俵で固定され、そこに上がってこない、ないしそこで結果を残せていない相手を見ると、苛立つ。ましてや自分が手に入れたいものを、そいつが手に入れていたら、そりゃあムカつくじゃないですか。実はめぐみと同じようなことを、愛子もまた考えていたのでした…


好きっていいなよ5-3
努力もせずになにかを得ようとするやつは
認めない



~葉月先生が込める想いとは~
 驚くほどに、努力をしてコンプレックスを克服する脇役が多いのにも関わらず、ヒロインはその逆を行くようなキャラクターとなっています。実は葉月先生は、過去にイジメを受けていた経験や、太っていてダイエットに成功した過去を持っており、どちらかというと脇役たちに近い側にいた方でした。それでも彼女たちとは違う生き方を、ヒロインにさせる。その意図は、いったいどういったものなのでしょうか。どちらが正しいなんてことはないのでしょうが、ヒロインのような生き方に、何かしらの可能性を見出そうとしているような、そんな気がしてきます。でもむしろリアルなのは、愛子や海や、めぐみの心情で、だからこそ私は彼女たち、彼らに強く惹かれてしまうのです。メンタリティ的には、めぐみちゃん、海と合いそうな気がするんだけどなぁ。高確率でそっちの方向に流れそうな気がする。うん、6巻楽しみですね。


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.19
作品紹介→槇村さとる「RealClothes」
7巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」7巻
8巻レビュー→意見を闘わせずして、前進はない《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」8巻
9巻レビュー→絹恵の成長を確かに感じられた巻《続刊レビュー》槇村さとる「Real Clothes」9巻



1102940402.jpg槇村さとる「Real Clothes」(10)


日本発信のファッションを
世界に売る!



■街中でばったり出くわしたニコの隣には、田渕の元カノ・雪乃の姿が。付き合っており、しかも結婚して母のホテルを手伝うため、仕事を辞めて二人でイタリアに向かうという。それを断固拒否する絹恵と、抵抗もせずに静かに受け入れる田渕。大きな戦力を失って、神保美姫率いるH&Hに対抗することになった絹恵たちチーム田渕。でも、停滞している場合じゃない。こんなときこそ攻めに出る…!


~田渕さん絶好調~
 美姫様に続いて、ニコまで離脱。ヒロイン絹恵にこの仕事の厳しさと楽しさ、そして志とスキルを教えてくれた人間が、どんどんと絹恵の周りを離れていきます。全てが自分のために回っているわけではない。それぞれに、それぞれの考えがあり、事情がある。そのことを、槇村先生は隠すことなく物語の中に描いてきます。そんな中、未だ絹恵にとって頼れる存在もいるわけで。その一人が、上司の田渕。ここ最近、出来る男・田渕というキャラが復活してきていた彼ですが、10巻でも魅せてくれました。とにかくカッコイイ。こんな男に憧れます。こんな上司が欲しかった。そしてこんな上司になりたいものです。


~部下のやる気の焚き付け方を知っている~
 ニコの送り出しのシーンも素晴らしかったのですが、あれは田渕がすごいというのもそうでしが、同時にニコとの絆の強さを表すものでもあったので、田渕のカッコ良さとはちょっと違うのかな、という感じ。10巻でカッコいいなぁ、素敵だなぁと最も感じることが出来たのは、後輩の使い方について。天才型の人って、あまり人を使うのが上手いってイメージがなくて、どちらかというとワンマンタイプな印象が強いんですよ。けれども田渕は、ワンマンタイプっぽい突進力と同時に、後輩を焚き付けてついてこさせる方法をしっかりと心得ているのです。
 
 例えば上に話を通さないで、勝手に展示会を行おうとしたとき。当然上に話が行っていなければ、仕事としてはマズいわけですが、そのことを心配する部下達に…


RealClothes10.jpg
失敗したって俺がクビになるだけだ!
だから俺をクビにさせないように成功させろ!



 こんなこと言われたら、頑張るしかないじゃないですか。なんてこれは、クビになっても田渕には引き手が数多あるということや、田渕の手腕への高評価が前提となっているわけですが、それを上手く活用しているという意味では、やはり上手いなぁ、と。
 
 他にもそのプランを絹恵に話したときの、「お前が言ったんじゃんかよぉ」で絹恵に参加者意識を持たせた上で、具体的な夢を語ってやる気を引き出すという流れも、さりげにカッコ良いなぁ、と。


 いつしか上司としての絹恵という色が強くなってきた物語。いつまでも下でないからこそ、物語は勢いを失うことなく、色を変えて読者を飽きさせることがありません。ついつい続刊買っちゃうんですよね。切りどころがないんだもの。



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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.07.19
1102940874.jpgヤマシタトモコ「ドントクライ、ガール」


あ、全然大丈夫です。(涅槃的な意味で)


■親の不手際で知人宅に居候することになった悲劇の少女・たえ子。ピンポンを押して、出迎えてくれたその男・舛田は、なぜか一糸まとわぬ全裸で登場。清純な、処女の女子高生を相手に、なぜに全裸?しかも悪びれる様子も一切なし。まさに衝撃の初対面。たえ子が17年間積み上げてきた価値観が、グラグラと音を立てる。これって現実?私、今、正気?泣いても始まらない、苦難と爆笑の日々が、スタートした…!

 BL作品としては「くいもの処 明楽」、最近ではアフタヌーンや、フィールなどでも活躍をし、「Love,Hate,Love」(→レビュー)や「HER」(→レビュー)といった作品を残しているヤマシタトモコ先生が描く、コメディ作品。とりあえず、「なんだねこれは」という感じの作品。ダメ親の不手際で、なぜか親の知人宅に居候することになった女子高生・たえ子。そしてそんな彼女を出迎えてくれたのは、家では基本全裸という、イケメン高収入ながらかなり厄介な性質の持ち主である31歳・舛田。そんな二人の同居生活を描く、愛と涙と爆笑の物語となっております。もうリアリティなんてものはガン無視。超人間が登場するわけではないですが、かけ合い、キャラその他が皆々どこかぶっ飛んでいて、好き放題やっているという感じ。これ、ヤマシタ先生描いてて楽しかったろうなぁ…。


ドントクライガール1
のっけからこのノリ。世間の常識などそこでは通用しないのです。だってこの家では、これこそが常識なのだから。


 こんなアホな作品も描けるのかと、驚きました。終始笑いに走り、トキメキやドキドキは5%あるかないか。笑わせ方は、ある意味セオリー通りの二パターン。BL作品ないし腐女子の方向けの作品のそれにあるような、小難しい言い回しやパロディを多用したネタと、男同士のかけ合いの中に見せる、どぎつい下ネタ。個人的に前者は大好きなのですが、後者は「さすがに男同士でもそんな下世話なこと言わねーよ(笑)」と辟易してしまい、どちらかというと苦手な部類になります。しかしそれでも、前者の笑いが尽くホームランで、打率低めでも大量得点で全然楽しめたという。ということは、どちらもイケルのならば、そりゃもう笑い転げる状況になるのではなかろうか、とも思うわけで。
 
 登場人物は5人で、裸族の舛田と、その友人で下ネタがどぎつい陣内、そして常識人のヒロイン・たえ子と、その友人二人。軸となるのは、当然のことながら舛田とたえ子なのですが、その中で終始舛田がイニシアチブを取っているかというとそうではなく、むしろ主張はたえ子の方が強め。舛田は全裸であるというそのシチュエーションだけで、場所を制しているのですが、やがてそれにも慣れてきます。そして、気がつけばパワーバランスがどんどんと変化していくという、その様子もまた面白いです。色モノである舛田は、それだけでいるとただの「変な人」なワケですが、そこに常識人のたえ子が投入され、つっこまれることで初めてネタとして機能。この作品は、常識人のたえ子がいて初めて成り立つのですよ。いやあ、素晴らしい組み合わせです、ホント。


ドントクライガール2
人間「慣れ」という能力を持っているわけで、たえ子も気がつけば適応していき、段々と自分主導でことを運ぶことが出来るように。


 表題作は6話で終わり。残りには、学校に行きたくなくなった少女が、父の元同僚である女性の元へお世話になるという物語が収録されています。こちらは笑いなしの、ごくごくシリアスなお話。一人の少女が、自分とは歳の離れた二人の女性と生活を共にすることで、新たな価値観や考え方を身につけて変化・成長していくという内容になっています。ドライな空気感で内面をえぐり出すように語られるこちらの物語の方が、よりヤマシタトモコ的な印象。また表題作とのギャップもあり、1冊で二度美味しい作りになっているとも言えます。何はともあれ、お買い得な一作となっているのではないでしょうか。
 
 面白いかは個々人の笑いのアンテナに依ると思いますが、とりあえず衝撃度は抜群。中には「いや、狙いすぎだろ」とか「どや?って感じがして…」みたいな感想を持たれる方もいるかもしれませんが、いや、でもそういうところも含めて面白いんでしょう?、と。
 

【男性へのガイド】
→面白いと思うのですが、正直なところどうなのかよくわかりません。面白いと思う方が大半だと思いますが、対して拒否反応すら示してしまいそうな方もいそうで、諸刃の剣的印象を受けます、はい。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→これはオススメせざるを得ません。この衝撃はなかなかのもの。とにかくやりたい放題で、ヒドい(全力で褒め言葉)作品です。


作品DATA
■著者:ヤマシタトモコ
■出版社:リブレ出版
■レーベル:ゼロコミックス
■掲載誌:
■全1巻
■価格:600円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.18
1102940636.jpg西形まい「花の騎士」(1)


つらい時ぐらい
つらいって言ってもいいんじゃねぇの



■財閥・大鳥家の次期当主・セイ。学業、振る舞い、容姿、全てにおいて秀でており、その家柄に相応しい者として、華麗に育っている。そんな彼女に仕え守るのが、第一騎士(ファーストナイト)と呼ばれる誉れ高き存在。現在その座に就くランは、セイと同じ高校に通いながら、日々彼女のガードにあたっている。そんなファーストナイトは、大鳥家に仕える他の騎士の挑戦を受け、勝ち続けなければならないという、過酷な試練が課されており…!?

 西形まい先生の新作です。前作は、イケメンに変身したものの、かつての地味時代の性格が抜けきらず、なかなか新しい環境に適応できない男子高校生を描いたコメディでしたが、今回は一風変わった設定で送る、シリアスロマンスとなっています。物語の舞台となるのは、名門私立・聖ログルス学園。そこに通うのは、財閥・大鳥家の次期当主・セイ。そんな彼女に仕え守る、第一騎士(ファーストナイト)と呼ばれる役職に就いている、黒野ランがこの物語の主人公となります。主人の側に付きっきりで、その身を守るのが、ファーストナイトの務め。そのポジションに就くのは、非常に困難な道のりであり、同時に大鳥家につとめる騎士達の挑戦を受け、その座を守らなくてはいけないという、非常に過酷な運命の待ち受ける位置だと言えます。そんなファーストナイトの黒野ランは、実は女の子。そのことを隠してまで、ファーストナイトにこだわるランと、そんな彼女を見守るセイ、そしてその秘密を知りやたらと関わってくるようになる、セイのフィアン・天王イバラたちの関係を中心に、彼らを取り巻く過酷な運命を、華やかに描き出していきます。


花の騎士
ファーストナイトの座を懸けて、選りすぐりの挑戦者達が挑んでくる。もちろん命を落とすことさえある、極限のステージ。


 前作が、非常に爽快でおバカなコメディであったので、今回もそうくるのかと期待していたのですが、まさかの完全シリアス。しかもかなり特殊な設定の、学園ロマンスを描いてきました。本来はこういう路線でいきたかったのでしょうか?その雰囲気の違いに、かなり驚きました。さて、本題の内容のほうなのですが、独自の設定をかなり投入して物語を展開した生花、序盤がかなり説明的な内容になってしまっています。特に主人公のランの台詞が、ほぼ説明的なものとなっており、主人公への感情移入への手伝いが、若干疎かになってしまっているような。その分、主人公および次期当主・セイの過酷な運命と、強い絆が確認できるのですが、説明だけだとシチュエーションで萌えろってのは、あまり美味しくないんじゃないのかなぁ、と。
 
 セイとランの信頼関係は、はじめから強固なものになっており、そこに困難が降りかかることで物語が盛り上がり…という定番パターンが軸。ただそれだけでは終わらず、そこにセイのフィアンセで、どちらかというと自由に動くタイプのキャラクターが参戦し、その二人の関係性に変化を与えるようになってきます。彼とランの関係がどうなってくるのかが、今後の物語の鍵を握りそう。毎回のように、ファーストナイトに挑戦する騎士達(12人いるらしい)が現れ、戦いを繰り広げ、話のネタはそれなりにありそうです。
 
 個人的には、前作のようなおバカコメディみたいな作品のほうが好みなのですが、こちらの方が読者受けしそうな気もします。コミナビ(コミックスに入っている白泉社の小冊子)でもトップでプッシュされていますし、出版社の期待も高いのかもしれません。


【男性へのガイド】
→男性受けする要素はあるのでしょうか。このシチュを好むのは、やはり女性が多いような気がします。
【私的お薦め度:☆☆   】
→少々ややこしい設定で、序盤説明に終始した割に、新キャラ投入で状況的に落ち着かないなど、シチュエーションを気に入れないと物語が美味しく感じられないような作り。ちょっと期待していたのと異なっていたので、拍子抜けしたってのもありますけど…。


作品DATA
■著者:西形まい
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.18
作品紹介→*新作レビュー*モリエサトシ「白磁」
関連作品紹介→モリエサトシ「ラブ シック」



1102940625.jpgモリエサトシ「白磁」(2)


そうだった
ぼくが好きになったのは
あの純粋で健やかな君



■2巻発売、完結しました。
 病気で光を失った生花の、彷徨って焦点を結ばない瞳…。明春に全てを委ねるようになった生花の白い肌に、全てをぶつけられる快感は、明春の感情の発露であった絵への執着を失わせてしまう。変化する環境。掴んだと思った幸せ。買われると思った自我。人はどうしてこんなに弱いのか、人はどうしてこんなに苦しいのか。運命は、あまりに残酷で…!?


~完結。素晴らしかったです~
 1年以上続刊を待ちわびていた「白磁」が、2巻の発売をもって完結いたしました。完結自体は結構前にしていたことは、モリエ先生のブログで存じていたのですが、単行本発売まで時間がかかった!しかし2巻も素晴らしい内容。読んだときに受けた衝撃を、どのような言葉で表そうか、色々と思案したものの、これはちょっと難しいかな、という結論に。もうね、だれかに伝えようなんて考えず、纏まらない気持ちのワルい文章をダラダラと並べようと思ったわけですよ。


~エロいけど、それだけじゃない~
 そもそも万人受けするような内容ではないですし、物語は終始二人だけの世界で完結しています。それはあまりにも不健全で、少女漫画的にもいかがなものかと思わせるのですが、あまりに無垢で純粋で幼い二人が構築するその世界は、同時にとても美しく、言いようのない力を持って自分を取り込んでくるのです。どちらの視点にも、共感という意味での介入の余地があまりないにも関わらず、その二人の作り出す世界にのめり込んでしまうというのは、あまりない経験で、だからこそこんなに興奮するわけで…。エロティック…だけどああいうエロとは違うのさ!エロい目じゃないほうの目で見たエロってのを、二人の関係の中に、なんとなく垣間見たような気がしました。


白磁2
 こんな、男性向けエロ漫画にありそうなシチュエーション&台詞回しでも、なんだかとても美しく純粋であるように映るから、不思議。


~内面・魅力を象徴する格好~
 物語の終盤にて明春が、「やっぱりぼくの好きな彼女はこれ(セーラー服姿)なんだ」と言っているのですが、これには本当に納得。彼にとっては、セーラーを着た生花こそが、最も彼女の魅力を映し出している姿なのです。
 明春が生花の外見でこだわっている部分といえば、その美しい白い肌。彼女の内面を映し出すようであり、彼女との繋がりを確信できる部分です。そんな白い肌を、最も美しく映えさせることができるのは、やはり他でもないセーラー服。学生という、穢れなき純粋さと若さの象徴(現実とは別として)。濃紺と、透き通るような白の対比。この美しさは、ブレザーなどでは表せません。また、彼女の髪は黒髪ロングで、その肌の白さを映えさせるにはうってつけ。このことは、1巻の冒頭にて語られているのですが、最後にこういった形で反映させてくるとは思っていなかったので、出てきたときは「おお…」と思わず唸ってしまいました。そしてラストも、その姿で締める。さすが、モリエ先生わかってる。


モリエサトシ「白磁」2巻
なーんて、私服姿の生花もかわいらしいわけですが。こちらはこちらで、色みを持った柔らかな印象を与えてくれて素敵です。


 またその純粋さを格好で表しているのは、何も生花だけではありません。明春は、一貫して白シャツを身にまとい、創作活動を行っています。白いシャツもまた、彼の純粋さないし、純粋さに憧れる気持ちを表しているようで、良いですよね。汚してダメになるので、量産型で安い白シャツを…ってことなのかもしれませんけど(笑)


~締め方も、ベタながら素敵でした~
 最後は実にベタでしたが、感動できたので良し。二人だけの世界に固執していた明春が、生花のために恐怖に打ち勝ち外の世界へと足を踏み入れる姿は、更なる物語の広がり(ふたりのこれからが、明るいものになること)を示しているようで、本当に素敵だったと思います。とりあえず、今年の作品の中でも、個人的に5本の指に入るくらいお気に入りの新刊となりました。と言っても、決して万人受けするとは思えないのですが。それでも好きなのだから、私はそれを素直につたえるだけです、はい。
  

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Tag [新作レビュー] 2010.07.17
1102940637.jpg松月滉「王子と魔女と姫君と」(1)


   これが本当なら
何してくれとんじゃ
前世の私   



■女子にモテモテの王子系女子・大路昴は、昔住んでいた街に引越し&転校することに。数年ぶりに会った幼なじみの仁は、小さく弱々しかったかつての姿はなく、凛々しく気怠さをたたえたイケメンに成長していた。そんな仁を筆頭に、転校先で待っていたのは、元親、真白、零時の「プリンス」と呼ばれる男子たち。イケメンよりも、もっぱらカワイイ女の子に興味のある昴だったけど、とある事実を告げられて、事態は思わぬ方向に…。どうなる、昴の学園王子生活!?

 「幸福喫茶3丁目」(→レビュー)を連載していた松月滉先生の新作でございます。今度のヒロインは、ボーイッシュな王子様系の女子高生。幼い頃はお姫さまに憧れていたものの、気がつけば男の子っぽく過ごし、女子校では王子様的ポジションを獲得していた昴は、根っからの王子様気質。女子の好意を素直に受け取り、優しい言葉と笑顔で返しハートを打ち抜く。そんな彼女が、親の都合でかつて育った街へ再び戻ることになります。そこで待っていたのは、見違えるようにイケメンになったお隣さんの幼なじみ・仁。さらに彼を筆頭に、転入先には、元親、真白、零時という「プリンス」と呼ばれる男子たちがいるという状況。そんな彼らと、なぜか行動を共にすることが多くなる昴は、ある日彼らから、思いもよらない事実を告げられます。それは、昴の前世が女たらしの王子様で、プリンス(元親、真白、零時の3人)の前世がお姫さまだということ。そして、その姫たちは、前世にて王子の争奪戦を展開、そんな状況を見かねた魔女が、王子にとある呪いをかけてしまったということ。そしてそして、その呪いとは、女に転生するるというもので、本物の運命の相手と結ばれるまで、呪いは解かれないというものでした。


王子と悪魔と姫君と
 元親はおやゆび姫。真白が白雪姫。零時がシンデレラ。それぞれおとぎ話に登場するお姫さまが前世となっている。


 女たらしの王子様の生まれ変わりということで、昴の王子様気質は生まれ持ったものであることがわかります。そんな彼女を恋人に…と争奪戦に参加してくるのは、元親、真白、零時のプリンス3人。前世でヒドい目に遭ったんだから、放置して呪われたままにしておけばいいじゃないかと考える人もいるかもしれませんが、王子と結ばれた姫には、もの凄い幸運が訪れるという特典つき。そのため、狙うことはあれど、嫌うことはないのです。そんな4人をよそ目に、一人だけ前世が明かされない人物が。それが昴の幼なじみであり、プリンスの一人である仁なのですが、まぁそれは読んでからのお楽しみということで。前世のプリンスが、現世のプリンス達に求愛されるという、不可思議なシチュエーションの学園コメディ。ノリ自体は前作同様ライトで、比較的親しみやすい内容となっております。ただ恋愛色がどちらかというと強めですので、その辺苦手だとどうだろうとは思いますが。
 
 前作が15巻も続いて驚きだったのですが、今作は果たしてどのくらい続くのでしょうか。相手候補が多いからこそ、最終的な着地点は逆にハッキリと見えてきますし、前世という設定を使っているからといって、「僕の地球を守って」であるとか「NGライフ」(→レビュー)のような、壮大ないしドラマチックな展開になることはあまりなさそうで、意外と決着は早いのかもしれません。ただ学園が舞台で、いかようにも物語を転がすことができるのも事実であり、そういった進め方は、松月先生も出版社も得意そう。なんとなく印象が似ていると思った、別マの「ファイブ」(→レビュー)的なポジションで、堅調な人気を獲得しそうな気もします。さすがに魅せ方は心得ていて、1巻買ったら2巻も買わずにはいられないような締め方。やはり上手いです。


【男性へのガイド】
→逆ハーレムで、王子様系のヒロイン。そこに耐えられるかどうか。序盤はニヤニヤ要素少なめで、これから増えてくるとは思いますが、敢えてこの作品で…という強みがあるかというとうーむ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→良くも悪くも、手堅い印象。飛躍のためには、お姫さま要素をいかにして投入するかといったところでしょうか。魅せ方・展開のさせ方は、やっぱり上手い。

作品DATA
■著者:松月滉
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(2010年1号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税


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2010.07.17
■前の記事で1000記事目でした(記事番号が)。まさか1年半で1000記事行くとは思っていなかったので、驚きです。思えば遠くへ来たものだ。元々は、「僕等がいた」(→レビュー)の感想が書きたくて始めたブログだったのですが、長期休載&復帰後迷走と、未だ2記事目を書くに至っていません。新刊発売はいつでしょうか…来年とか?そんな中、「僕等がいた」に取って代わったのが、「となりの怪物くん」(→レビュー)でした。事あるごとにプッシュしていたので、もしかしたらウチきっかけで買ってくださった方も何人かいるのかな…なんて。なので、1000記事目が「となりの怪物くん」というのは、個人的には非常に格好がついて良かったな、なんて思っています。


 ブログを始めた当初、まだ私は学生で、卒論の仕上げと、迫り来るモラトリアム期間の終焉に怯えながら、毎日取り憑かれたように更新をしていたのを覚えています。3月の更新数とか、今見るとすごいですよね(笑)今だと40記事が限界で、およそ半分にまで記事が減っています。それでも頑張ってる方だと思うのですが…。
 
 
 記事の濃度自体は、当初の方がかなり薄いですね。改めて見直してみると、かなりヒドいです。今でも満足に文章を書けないでいるのですが、それと比較してもやはり。うーむ、文才ってのはどこかにころがってないのでしょうか?ちなみにこんなバカみたいに感想書いてますが、小中学校の時は読書感想文など大嫌いで、いかに段落や読点、鍵括弧を駆使して行数を稼ぐかを考えてばかりいました。
 
 
 これからも、下手の横好き的にこのブログでレビューを続けていくつもりです。気が向いた時にでも、ふと覗いていただければ。…本当は、もっと色々書こうかと思っていたのですが(はじめて知ったレビューサイト界隈のこと、アクセスのこと、しんどかったこと、嬉しかったこと、私生活の変化etc...)、あまりダラダラとつまらないことを書いても仕方がないので、このくらいで締めたいと思います。ではでは、これからもどうぞよろしくお願いします。
 
 レビューは明日から再開予定です。予約投稿が上手くいってれば…(本人は静岡のバンクフェスに行っております)。あ、現在Twitter非公開ですが、別にネガティブな理由からではございませんので…。こちらのアカウントで、間違ってリアル知人をフォローしてしまったという、凡ミスを犯してしまいまして(フォロー通知なんて機能なくせばいいのに…)。見る人もあまりいないでしょうが、しばらくしたら元に戻す予定です。 


  
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Tag [続刊レビュー] 2010.07.16
作品紹介はこちら→*新作レビュー* ろびこ「となりの怪物くん」
2巻レビュー→《気まぐれ続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」2巻
3巻レビュー→三者三様の考え方…女の子たちがとっても魅力的です《続刊レビュー》「となりの怪物くん」3巻
4巻レビュー→あさ子の可愛さに、目が離せない!《続刊レビュー》ろびこ「となりの怪物くん」4巻



1102940342.jpgろびこ「となりの怪物くん」(5)


いつか
この手のひらが
キミにとって温もりだと
感じられる瞬間が



■ちゃんと人と向き合おうと変わり始めた雫は、ついにとなりの席の超問題児・吉田ハルに再告白する。しかしハルは、雫に興味を示す友達・ヤマケンを意識しすぎてそれをまさかのスルー!!そんなかみあわない二人をよそ目に、夏目さんの恋が急発進!新学期早々、物憂げな表情を浮かべ、想う相手は、なんとみっちゃん!?果たしてこの想いは届くのか。そして友の恋を知った雫は…!?友の恋を知り、友の声を聞き、人は前へ進む。ますます目が離せない、第5巻登場です!


~のっけから夏目さん可愛すぎ~
 とにかく夏目さんが序盤から可愛すぎです(唐突に)。4巻にてその魅力を如何なく発揮させた彼女ですが、5巻ではさらに威力倍増、もはや凶器のレベルですよ。好きだけど、恋を自覚しきれない夏目さん。そんなとき、雫の「…で結局みっちゃんのこと好きなの?」という問いかけによって、ついに覚醒…
 
怪物くん5-1
 たぶん
 大好きです



 「大好き」だけど「たぶん」。この曖昧さと絶対感が同居する、やや矛盾を孕んだような言い回しが、彼女の精一杯の気持ちを表しているようでたまらなくかわいらしかったです。そこからはもう猪突猛進とでもいいましょうか。とにかくポジティブに、積極的に。きっかけひとつで変わることってありますが、まさか夏目さんの針が、こんな風に吹っ切れるなんて予想していませんでした。その後はラヴ全開でみっちゃんにアタック。抱きついたり、「好きです♡(←ハート大事)」って言ったり、素晴らしいですね。しかしよくよく考えると、友達として、雫と仲良くなりはじめた頃もこんな様子だったような。。。そうか、夏目さんはひとたび大好きとなると、とことんその気持ちを表に出してしまう子なんだな。そんな夏目さんが、私は大好きなのですよ。

 
~ハルが「怪物」であるが所以~
 5巻にて、ハルが「怪物」である所以が明らかになりました。それは、みっちゃんの母であり、しばらくハルを世話していた叔母さんとの会話を回想するシーンより、叔母が少年・ハルに言い放った一言にありました…
 
 君は愛を知らない
 ゆえに
 人間ではない

 「愛を知らない者は、人間ではない」そう叔母の京子は、ハルに言い放ちます。しかしこれは単に突き放すためにいっているのではありません。その後、彼におまじないをかけるとき…
 
 いつかこの手のひらが
 キミにとっての温もりだと感じられる瞬間が
 訪れるかもしれない

(中略)

 その時
 きっとキミは
 とても幸福な人間になる

 ここでも「人間になる」との言葉が。そのまま受け取れば、「幸福になる」と同義のように感じられるのですが、私には、どうにも先の「人間ではない」がひっかかり、それに対しての「人間になる」というニュアンスを強く含んでいるように感じられてならないのです。温もりを感じる相手ができて、始めて人間になる。それまでは、所以人間ではない=怪物。最初はワケの分からない豪快な人物だからこそ、「怪物」だと思っていたのですが、どうもこの作品でいう「怪物」は、「温もりを知らない寂しき生き物」 を表しているようです。そしてそんな彼を「人間」にしようとしているのが、雫。なんとなく、「美女と野獣」を想像させるストーリー。まぁ雫が美女かどうかは置いておいてですね…。
 

~恋する女の子として、変化を迎合する雫~
 そんな二人ですが、確実に二人の仲は進展しているなぁ、と実感。例えばハルが唐突に「キスしていいか?」と訪ねながら、これまた忽然と姿を消すという、大変失礼な行動をした後の、雫の心情描写…


となりの怪物くん5-2
 ハルに理解を示し、己のとるべき行動までわかる。いつしか、そんなにも理解できるところにまで、雫は来ていました。序盤から考えると、こんな思考はありえないですよ。他人への興味など皆無であり、対人スキルが超絶低い。それに加え、相手は思考の読めない怪物くんです。そんなところから出発し、気がつけばここまで。うーむ、すごい進歩です。
 
 さきほど、雫はハルにはじめての温もりを与えてくれた人だということを書きましたが、ハルもまた、初めて「他人に好かれるという感覚」を彼女にもたらしてくれた存在でした。そこから始まり、恋愛に至る。ハルとの恋愛は、もちろんはじめてづくし。しかもちょっと変わった感覚の持ち主であった雫は、普通であれば当たり前のことでさえも、初めてになったりします


怪物くん5-3
力一杯遊ぼう

 
 それまで誰かと遊ぶということがなかった雫にとっては、遊ぶことさえ意識的に行う対象。彼女のそれまでの生活と、そこから変化しようとしている姿勢が見え隠れするこの言葉、良いですね。夏目さんに隠れがちですが、雫も恋する女の子として、どんどんと可愛らしくなってきているのですよ。
 

~ヤマケンにもちょっと~
 あれ、そういえば前回のレビューのときに「ヤマケンについて書く!」とか言っていたのに、一度も触れず…。とりあえずヤマケンは、かませ犬ですけどヘタレじゃないから良いですよね。素直じゃない×噛ませ犬ってのは、なかなかの黄金配合なのでは…とヤマケンを見るたびに思います。ヘタレ×噛ませ犬って、見ていてなんだかちょっとカワイソウで、同情してしまうのですが、ヤマケンの場合は可哀想って感じはあまりしないんですよね。ただそこにいるだけで、カワイイし面白い。だからそういうキャラが振り回されると、なんだかちょっと滑稽で、笑ってしまうというか。そしてそんなときふと見せる、落ちた瞬間が、またカワイイという。とにかく美味しい存在だということですよ、ヤマケンは。

 次はもちっとちゃんとヤマケンについて書きたいですね。次こそは…!とりあえず長文お疲れさまでした。あ、ちなみにこのエントリで、1000件目みたいです。いつもありがとうございます。



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Tag [新作レビュー] 2010.07.14
1102940322.jpg森永あい「キララの星」(1)


メガネを取るくらいなら
パンツを脱いだ方がマシだ!!



■今は亡き、伝説の大女優の娘だけど、本人はオーラの欠片もなく実に平凡な女子高生の亜弓。最近はもっぱら、父の経営する弱小芸能事務所を手伝っている。そんな弱小事務所の救世主、売れっ子アイドルが、ある日突然愛の逃避行!そしてその子を連れ戻す為と、父親は海外へ行ってしまう!そして結果、プロダクションを引き継ぐハメに…。違約金5億の返済のため、目指すはスター発掘!そして見つけた、ダイヤの原石は…!?

 「極楽♨青春ホッケー部」(→レビュー)や「僕と彼女の×××」(→レビュー)などの作者である、森永あい先生の新作です。今度の舞台は芸能界!と言っても、ヒロインは芸能事務所側の人間で、表舞台には出てきません。ヒロインは、伝説の大女優の娘である、亜弓。そんな偉大な母親を持ちながら、本人は芸能人オーラゼロ。今は残された父と共に、弱小芸能事務所を切り盛りする毎日。そんなある日、事務所の看板アイドルが、仕事をぶん投げて海外へ愛の逃避行。彼女が居なければ事務所が傾くということで、父は彼女を追って海外へと出ていってしまいます。そんな父が去り際に残した一言が「俺が帰るまで事務所を頼んだ!」。残されたのは、売れっ子の一人もいない芸能事務所と、違約金5億円。借金返済の為には、一発逆転スター発掘しかない!と息巻く亜弓の前に現れたのは、クラスでも最も地味な男の子・星。しかしその彼、メガネを外すと驚くほどの美少年。星くんにビビビときた亜弓は、彼こそが救世主と、芸能界へ誘おうとするのですが…


キララの星
美少年を目の前にしても、お金のことで必死なために恋愛対象としてはみれない。トキメキをプラスさせるには、そこからさらに踏み込んだ関係にならないといけないわけですが、これからどう展開するのか…。


 メガネを取ったら驚きの美少年…というのは、もはや見なくなったステレオタイプなお約束。そんなネタ的な設定を持ち込み、相変わらずの力技の連続で、ストーリーを展開します。ミソとなるのは、相手役が頑に顔を出すことを拒んでいること。その見ための良さは自覚しているものの、それゆえに幼い頃から危ない目に遭いまくっており、トラウマに。そしていつしか、目立たないように目立たないように生きるようになっていたのでした。そして出た台詞が、「メガネを取るくらいなら、パンツを脱いだ方がマシだ」の一言。どちらも一歩も引けない、強い思いがあるのです。ゆえに、お互いのかけ合いは常にテンションマックス。力技も映えるってもんです。
 
 力技とは、例えば素顔の写メを撮ってパソコンに保存、脅迫の材料にして芸能事務所に入れさせたり、動物好きが原因でアパートを追い出され、結果親の居ないヒロインの家に一緒に住むことになったりなど、とにかく作品にひとつふたつしか投入されないような、ありえない展開が次々と投げ込まれてきます。リアリティを求めて読んじゃダメ、ハイテンションコメディとして、怒濤の展開に身を任せましょう。ちょっと一本調子すぎるかな、と思っていたら、ラストにまたしても力技。うーむ、侮れない。


【男性へのガイド】
→森永先生の力技は、一度拝んでおいて損はないかも。ただ「僕と彼女の×××」などに比べると、題材的に男性に勧めるには弱そうではあります。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→いつも通りの森永先生。それは良くも悪くも変わりがないということで、そこをどう捉えるかによって評価が分かれそうなところであります。


作品DATA
■著者:森永あい
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:419円+税


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Tag [新作レビュー] 2010.07.14
1102940544.jpg和深ゆあな「メリクロンの涙」(1)


「どうして泣くの…?」
「あなたが笑っているからよ」



■其れは神の御業か、悪魔の所業か…。とある街の一角にある、少し大きな洋風のお屋敷。そこに住むのは金髪で碧眼の謎の青年・ルイ。そこで彼が生み出すのは「メリクロン」と呼ばれる代物。簡単に言うならば、記憶さえも生き写すことが出来る、クローン。自分の<代わり>として、誰かの<代わり>として、生み出されるそれは、元の本人とまるで見分けがつかない。その作り手である、ルイは、神か悪魔か。そしてそれを側で見つめる一人の少女は、何を思うのか…

 秋田書店から、和深ゆあな先生の新作でございます。タイトルは「メリクロンの涙」ということですが、この「メリクロン」とは、記憶までもコピーできるクローンのこと。そんなメリクロンを巡る様々なお話を、一話完結形式で展開していきます。そしてその中で、「メリクロン」の生みの親である、謎の青年・ルイと、彼の屋敷に一緒に暮らす一人の少女との関係を描き出し、物語の深淵へ進んでいくという感じ。お話の舞台となるのは、「メリクロン」の生成(良い言葉が見つからない…)場所であり、謎の青年・ルイの住む屋敷。何らかのきっかけでそこを訪れる人間、ないしルイが見つけてきた人間が、メリクロンを作るか否かで迷い葛藤し、自分なりの結論を出していくというものになります。


メリクロンの涙
視点は、メリクロンの生みの親である青年・ルイと一緒に生活する少女(?)から。一緒に生活していても、メリクロンに対する見方は、ルイとは異なる。


 話の視点は、ルイの屋敷に住む少女。名前は明かされず、いつもルイからは「君」、もう一人の同居人である少年からは「姉ちゃん」などと呼ばれています。物語の中心となるのは、ルイと彼女。実は彼女、自分のメリクロンを作り、かつて居た場所から逃げ出してきたという過去を持っており、それを今も後悔しているという状況。メリクロンを作りに訪れる人に対しても、「作らない方が良い」と助言をするなど、ルイと一緒に暮らしていながら、その立ち位置は全くの正反対になります。それでも強く苦言を呈することはない、ルイ。当然その裏には何か事情があるわけで、それらは追々明かされていくという塩梅です。
 
 この手の設定は、確かに面白いのですが、一話完結で多用してしまうと、途端に無駄遣い感が出てしまうから不思議。SFやミステリーの方向で話を広げれば面白いのですが、各話単体で見るとやはりヒューマンドラマ志向が強くなり、どうにも薄味に感じてしまうことも。「イキガミ」の序盤など、「悪くはないんだけど、そっちなのか…」みたいな。というか、最初にヒロインとそのメリクロンが出会うという話を持ってきて、そっち方面に構えさせたのがもったいなかったのかな、と。順番を変えて、後半に進むにつれ確実に物語の深いところに到達しているという感覚が味わえた方が、個人的には好みだったかも。いや、それでもライトな読切りとして見るのであれば、及第点以上の高水準にあるわけですが、設定的にかなり面白そうだったので、ついつい要求がワガママなものに…


【男性へのガイド】
→男性が嫌う要素はそこまでないような。ヒロインはそれなりに可愛らしいし、青年の飄々とした感じも、ウルサくならず良い味付けに。読みやすいと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→思っていたのとは若干違う方向に進んだものの、それが悪いかというとそうではない。ヒューマンドラマを良しとするのであれば、一風変わった感じで、楽しめると思います。


作品DATA
■著者:和深ゆあな
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス
■既刊1巻
■価格:400円+税


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Tag [続刊レビュー] 2010.07.12
作品紹介→*新作レビュー*新條まゆ「ハートのダイヤ」
関連作品レビュー→*新作レビュー* 新條まゆ「あやかし恋絵巻」



1102916038.jpg新條まゆ「ハートのダイヤ」(2)


だったら一生
俺を好きでいろ



■2巻発売です。
 姫乃の心臓に眠る「すべての願いを叶えるダイヤ」。姫乃のダイヤを巡り、迫り来る男たち。そんな姫乃を守るのは、真守と影護、二人の守護神!そして運命に戸惑いながらも、姫乃に芽生える恋心。許されない愛、ゆるぎない使命、揺れる恋心…姫乃が選んだ恋の行方は一体!?いっそう加速する、極限LOVE第2巻!!
 

~違った意味での「面白さ」~
 「面白い作品」と聞いたとき、皆さんはどのようなファクターを想像するでしょうか。例えばストーリーが秀逸であったり、雰囲気が良かったり、キャラが魅力的だったり、またそれらが複合的に絡み合っている場合もあるかと思います。要は何かしら、「すごい!」とか「良い!」と思える部分があるからなのですが、この「ハートのダイヤ」も、そういった意味ではまごうことなき「面白い作品」であると思います。とにかく、今年の新作の中でもインパクトはこれが一番。とにかく色々と衝撃でした。特に守護神の二人が、あまりに輝きすぎているのです。

 
~でっかい夢持つイケメン影護~
 自分を好きだと伝えてきた姫乃に対し、苦しくも「興味がない」と突き放してしまった影護。そして逆に姫乃に突き放されてしまいます。


ハートのダイヤ2-1
 その日は雨。後者裏の軒下で、影護は姫乃を呼び止めることもできずにただ呆然とその後ろ姿を見つめます。空虚を掴むかのようなその手つきが、なんとも物悲しいです。そしてその2ページ後、ヒロインが校舎を走っている間に影護は…


2ページ後…
ハートのダイヤ2-2
唐突にびしょ濡れ


え、何があった?


 雨の当たらない場所にいたはずなのに、なぜかびしょ濡れ。しかも2ページ後に突然という唐突さ。雨も滴る良い男…なんでしょうか。しかも彼、その直後に風邪をひきますどう考えても自業自得だろうが!
 
 そんな不思議ちゃんな影護くんのプロフィールが、柱の部分に書いてありました。
 
生年月日:11月3日(さそり座)
血液型:O型
……
好きな色:黒・シルバー
行ってみたい場所:宇宙
……

 
 行ってみたい場所が「宇宙」。なんてでかい夢を持った男なのでしょう。なかなか居ませんよ、「お前行きたいところとかあるの?」と聞かれて「宇宙」と答える人間なんて。その割に、「将来の夢:特にない」って…そこはでっかく宇宙飛行士とかにしようぜ!
 
 

~冷静さとテクニックを持ち合わせた御曹司・真守~
 そんな影護と双璧を成すライバルが、三ッ葉真守。彼もまた、柱のプロフィール紹介でそのポテンシャルの高さを披露しています。

生年月日:11月3日(さそり座)
血液型:A型
……
好きな食べ物:ケーキ
登記な教科:英語
好きなスポーツ:クリケット
好きな言葉:花鳥風月
……

 
 ク…クリケット…?どうやら最近のお金持ちのおぼっちゃんは、クリケットをたしなむみたいです。そして好きな言葉が「花鳥風月」って、またすごいですね。「お前好きな言葉何?」と聞かれて「花鳥風月」と答える高校生。住む世界が違いすぎる(´・ω・`) そんな真守さん、1巻でも紹介したとおり、すごい必殺技を持っています。それが…
 

 
ハートのダイヤ2-3
トランプ投げ
 
 少女漫画版マジック快斗ですよ。てかなぜトランプが武器なのか、未だによくわからないんですが。なんかこの立ち絵とか、シュールじゃないですか?指の長さとか手のひらの大きさとかは目を瞑るとしても。なんて話が逸れましたが、実はこのシーン、ヒロインである姫乃を助けにきた場面で、真守はさらに思わぬ特技を披露してくれます。


2コマ後…
ハートのダイヤ2-4
 まず平然と女子更衣室に乗り込むという時点で、すごい。そして冷静すぎる、姫乃の返し。しかしそんな返しも虚しく、平然と「君を守るためだよ…」。真守様じゃなければストーカーで逮捕ですよ。てかこのコマひとつだけでも結構な衝撃がありますね…。とまぁそれは置いておいて、手元のカードにご注目。最初のコマから考えると、今こちら側に向いているのはカードの裏。しかしこちらには、クラブの3が見えています。そう、たった一コマの間に、カードをひっくり返したのです。しかしこんなのは序の口。その後、更なる驚きを見せてくれます
 


次ページ…
ハートのダイヤ2-5
手元からカードが消える


普通に考えれば、投げたという結論に至るわけですが、
その2ページ後…


ハートのダイヤ2-6
突如手元に現れる「クラブの3」


 え、どこから現れた?そう、どう考えても、真守様は手品の名手だという結論に至ります。平然と女子更衣室に乗りこみ、さりげなく目立たない形で、自分のスキルをアピールする。カ…カッコ良すぎる…


 そんなカッコイイ男の子たちが登場する、「ハートのダイヤ」。是非とも誰かと一緒に読んで楽しんでもらえたらと思います。てかなぜ他のレビューサイトが取りあげないのか、不思議なんですけど…。
 
 
 
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Tag [新作レビュー] 2010.07.12
1102940457.jpgみやまあかね「きな子~見習い警察犬の物語~」



一緒なら
どんなに大変でもがんばれる
言葉は通じんでも心は通じ合う…
どんなときも
おまえだけはそいつを信じるんだよ



■父の影響で警察犬の訓練士を目指す杏子は、訓練所で体の弱いラブラドール・レトリーバーの子犬・きな子と出会う。ご飯もまともに食べず、警察犬はおろか生きていくことすら難しそうな様子のきな子を相手に、杏子は懸命に面倒を見る。その甲斐あってか、いつしかきな子は元気な成犬に。しかしお世話になっている訓練士から、きな子は警察犬には向かないと言われてしまい…。ふたりでひとつの夢を追いかける、心温まるきずなの物語。

 見習い警察犬と、見習い訓練士のきずなを描いた物語です。このお話、香川県丸亀市に実在する女性訓練士と警察犬がモデルになっており、小学館から映画原作本が出版され、8月14日に映画が公開されるそうです。その先駆けとして、この漫画作品が発売に。ちゃおコミックスですが、ちゃお連載ではなく、全てかきおろしとなっています。
 
 ヒロインは、父の影響で訓練士を目指す18歳の杏子。父は既に亡く、その父と仲が良かった訓練士の元に預けられる形で、訓練士を目指していくことになります。そこで出会うのが、体の弱いラブラドール・レトリーバーの子犬・きな子。父のパートナーも、子犬の時に体が弱かったラブラドール・レトリーバーということもあり、杏子はすぐにその子のことを気に入るようになります。しかし出会った当初は食事すらもままならない状況。そんな中、杏子の必死に面倒もあり、きな子は段々と元気になっていきます。そしていざ訓練となるのですが、なかなか上手くいきません。そんなきな子を見て、お世話になっている訓練士は、きな子は警察犬に向いていないと言い放つのですが、杏子は決してあきらめることなく…というストーリー。


きな子
描くのは、絆。成長とはそういう意味では少し違うかもしれない。


 その後様々な障壁を乗り越えて、きな子と共に訓練士・訓練犬として成長していく…と行けば良いのですが、1巻完結ということで、成長をじっくり描くというよりは、絆重視で物語は展開します。そのひとつ、大きなイベントとなるのが、きな子が芸能犬としてスカウトされるというもの。警察犬としての才能が開かない中、とある報道によって人気ばかりが先行してしまったきな子にとって、そのオファーは決して悪いものではありませんでした。そんな中、杏子は、きな子は、どういった決断をするのか。言葉を交わせず、犬の感情が100%わからないなかで、「犬の気持ちを考えて…」などと言ってしまう人を見ると、どうにも人間のエゴのように感じられて個人的にイヤな気分になってしまいます。しかしこの物語では、決して人間が「こちらの方が良いから」と強引に意思決定しようとはしません。最後に自分の行く道を決めたのは、他でもないきな子自身。うん、それは納得。
 
 低年齢向け作品らしく、クセもないし実に教育的な内容。絵柄や話運びにどこか古くささを感じるのは、わざとなのでしょうか。ただ真っ直ぐだからこそ、シンプルに心にくるシーンもあり。新奈ちゃんが杏子ときな子にプレゼントを用意していたことがわかるシーンなどは、思わず泣きそうになりました。それでもコミックスはあくまで前菜。やはり映画を見た方が、より物語を堪能できるのではないでしょうか。


【男性へのガイド】
→低年齢向け作品ということで、可もなく不可もなく。恋愛はナシ。犬好きの方ならば。
【私的お薦め度:☆☆   】
→ソツのない感じが、逆に味気ないか。読み手の年齢を考えると、これぐらいで丁度良いのだと思います。どこが悪いってわけじゃないです。


作品DATA
■著者:みやまあかね
■出版社:小学館
■レーベル:ちゃおコミックス
■掲載誌:かきおろし
■全1巻
■価格:400円+税


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Tag [オススメ] [読み切り/短編] [名作ライブラリ] 2010.07.11
07195822.jpg中村明日美子「片恋の日記少女」


見てるだけでは
ものたりないのです
俺は



■読みきり6篇を収録。それでは表題作をご紹介します。
 探しても見つけ難いのに、恋とは突然訪れるものです   
 昨年亡くなった父の部屋で見つけた日記帳に書かれていたのは、あまりにも淡く儚い、一人の少女への想い。電車の中で見かける、勤め先の学校の生徒に、父は恋をしていたのだった。物理の教師で堅物の父からは、想像もできない内容に、その少女に興味を持ったたかしは、ダメ元で日記に書かれていた電車に乗ってみる。みどりの花のピン留めをした、その少女は、偶然にもたかしの目の前に…
 
 父と元・息子、父と娘の友達、姉と偽り男と会う弟…親子兄弟ジェンダーが入り混じった、ヒトとヒトとの多彩な関係性を、おかしくせつなく描いた作品集です。中村明日美子先生といえば、いまや押しも押されぬ人気作家。BL出身で、最近ではエロティクスFやモーニングでも連載をするなど、女性向けだけでなく、男性向け漫画誌にまで進出しておりました。しかし先日、ハードワークが祟ったのか、心身の状態を著しく崩してしまい、しばらくの間活動休止とのこと。復帰が待たれます。この作品は、そんな中村明日美子先生が、白泉社はメロディを中心に描いた物語を中心に収録されたもの。ちょっと変わった組み合わせで送る、なんとも愉快でなんとも切ない物語が展開されていきます。


片恋の日記少女
難しい言葉はあまり使わない。シンプルに、だからこそスッと心に届く。


 ジェンダーが入り交じり、ちょっと変わった組み合わせで物語が展開。表題作は、教員採用試験に落ちた青年と、父親の恋の相手であり教え子である女子高生という組み合わせで送られるお話。その他では、家を出て男から女になった主人公のもとに、ある日父親が訪ねてくるという「父と息子とブリ大根」。彼女にフラれたばかりの男が、大晦日の夜におっちょこちょいで彼氏との待ち合わせに遅れそうな女の子と出会うという「待ち人キタリ」。社会人の主人公が、中学生の娘の同級生で、デートクラブでバイトする少女となぜか夏祭りに行くことになる「娘の年頃の娘」。姉に変装した弟が、出会い系で出会った男とデートをする「とりかへばやで出会いましょう」。保健室のお色気教師と、ガリ勉メガネ男子のちょっとしたかけあいを描いた「原色メガネ男子標本」。
 
 収録作のうち、二つが女装・ないしニューハーフが登場。正統派の男女を描いたのは、「待ち人キタリ」ぐらいでしょうか。けれどもそれが、面白い。「ちょっと変」が、その語りの上手さから、しっかりと現実の中に組み込まれ、中を浮いたような物語になっていない。物語に投入される非現実的要素が、そのまま物語の魅力となって迫ってくるのです。それこそが、中村明日美子先生の真骨頂。そこから描き出す感情は、本当に普遍的で身近で、誰もが持っているようなもの。とりあえず読んでほしいです、はい。
 
 キャラクターがそれぞれ魅力的なのですが、特に男と女という構図で行くとしたら、圧倒的に女性たちが魅力的。物語の視点が、どちらにあるかとか関係なく。みんなどこか傷を心に持っていて、けれどもそれを隠すかのように、つとめて明るく、奔放に振る舞う。そんな彼女たちが、それぞれの作品の魅力を底支えしているように、私には映ります。そしてこの表紙。ええ、きっと色々な想像をしてこの作品を手に取るでしょう。そして読んでわかる、真実。私達もまた、父親やあの青年と同じように、してやられるわけです。そんな遊び心がある表紙も素敵な、「片恋の日記少女」オススメです。 


【男性へのガイド】
→男性視点の物語あり、女性が喜ぶような恋愛一本というわけでもなく、非常によみやすい作品かと。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→いつかレビューしなくては、と思っていたのですが、このタイミングでできるとは。全力でオススメでございます。秀逸な読切り集。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 中村明日美子「曲がり角のボクら」
中村明日美子「ダブルミンツ」

中村明日美子「同級生」


作品DATA
■著者:中村明日美子
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:メロディ、未発表作品
■全1巻
■価格:619円+税


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Tag [オススメ] [BL] 2010.07.11
07185542.jpg鈴木ツタ「あかないとびら」


ずっと好きだったというよいrも
これは
二度目の恋です



■大学時代、ゲイだと噂される後輩がいた。そいつが俺のことを好きらしいと聞き、俺はそいつと距離をとった。男のくせに、俺を好きになるマヌケ野郎を、俺が好きになるはずが無い。そして、二度と会うことも無いだろう。そう思っていた薄井だったが、仕事で人手が足りなくなり、紆余曲折あってそいつに助っ人を頼むことに。数年ぶりに再会した後輩・升岡は、相変わらずおどおどしていて、そして相変わらず俺の事を…

 鈴木ツタ先生が描くBL作品集です。鬼畜で俺様な先輩と、エッチな妄想で頭がパンパンの気弱な後輩の恋を描いた表題シリーズ他、2シリーズを収録。それらを少しずつ紹介すると…高校の時に好きだった女の子が憧れていた、同じ高校の人気者と、大学で再会した主人公。好きだった子のお陰で、そいつと話したことも無いのにすっかり彼の情報がインプットされてしまった主人公は、なぜかそのせいでやけに彼のことを意識してしまい…!?という「みにくいアヒルと王子様」と、その後を描いた「王子様の恋人は」。そして、いつも行くコンビニの麗しき男性店員に、ある日思わず声をかけてしまい…という「冷たいさびしがり」。どちらも地味目で大人しい性格(だけど突如暴走・暴発しがち)な男と、余裕のある見目麗しい鬼畜系の男というカップリングとなっています。


あかないとびら
異様にフェロモンを発する後輩くん。加えておどおどしているから、つけこまれやすい。


 この作品、結構な人気作で、BL読み始める以前の私も名前は知っていました。今回はオススメされたので、良い機会だと読んでみることに。レーベルなのか、この先生の作風なのかわかりませんが、とりあえずエロ多め。これまで意識的にライトなエロ描写のBLを読んでいたので、それらと比較するとなかなかがっつりしてます。しかしながら、全然読める。いや、むしろ全然面白い。気がつけば、自分もちょっと遠いところに来てしまったのでしょうか。しかし見渡す先は、まだまだ果てしない。うーむ、とんでもない一歩を踏み出してしまったようです。
 
 エロメインではあるのですが、肉体関係で全てが解決♪みたいな雑な作りではなく、そこに至るまでで、おおまかな関係性の中の問題点は解決されていきます。だからこそ、エロたっぷりでも全然読めたのかな、と。主導権握るイケメンは、いわゆるテンプレ的なものとして享受できるので、個人的にはプラスにもマイナスにもならない感じ。それよりは、不埒な妄想を重ねて「あわわわわ」ってなる地味サイドの男たちが滑稽で、実にかわいらしいく、にやにやしながら読むことが出来ました。


【男性へのガイド】
→いかがなものだろうか、これは。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→BL読んでない人は買わん方が良きものと思われ。個人的にはとっても楽しむことが出来ました。しかしそれは少々問題アリな気も…。


作品DATA
■著者:鈴木ツタ
■出版社:竹書房
■レーベル:バンブーコミックス麗人
■掲載誌:麗人
■全1巻
■価格:562円+税


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Tag [新作レビュー] [オススメ] [読み切り/短編] 2010.07.11
1102940574.jpgヤマシタトモコ「HER」


20歳のときは焦っていた
25歳のとくはさみしかった
31歳になった
   ただ怖い



■女たらしの男性客に、不穏な妄想を抱く美容師。白髪のお隣さんが、女同士でキスをしている所を目撃してしまう、女子高生処女。母の秘密を心に秘めて、“一夜限り”を繰り返す地味女…年齢、職業、立場は違えど、その奥に隠しもつ本音は、みな可憐で獰猛だ。オンナたちの本音を描く、全六編の連作オムニバス。女は皆、可愛げな獣。

 ヤマシタトモコ先生の新作でございます。同社から昨年刊行された「Love,Hate,Love.」(→レビュー)が結構な話題を呼んだのに、この新刊があまりプッシュされていないような。本屋さんでは当然平積みだと思っていたのに、並んでいたのは背表紙で2冊だけと、少し寂しいものがありました。いや、たぶん私の行った本屋だけがそうだったんだ、きっと。
 
 というわけで、今度のヤマシタ先生の新作は、女の本音を綴る全六篇の連作オムニバス。アパレル会社で働く25歳の女性を皮切りに、その近くにいる人たち一人一人にスポットを当てる形で、物語は進んでいきます。「本音」を描くということで、どのお話もキレイな部分だけを描くなんてことはせず、むしろ弱い部分であるとか攻撃的な部分、悩みなどがありのままに吐露されていく形に。どこかしらに寂しさと不安を抱えたヒロインたちの日常風景は、決して色鮮やかには映りませんが、その暗さ・ドライさが、逆に読み手の心にザクザクと刺さってくるような感じを受けます。


HER1.jpg
序盤は大抵冷静。しかしちょっとしたことが降り積もり、爆発することも。その発露の仕方も人それぞれで、興味深いところ。


 帯では、「君に届け」(→レビュー)の椎名軽穂先生が推薦文を書いており、その締めくくりとして「女の子って本当に可愛い!」との言葉が。しかしながら、この作品を読んでこういった感想を持つのは、大多数が女性なのではないかな、と思ったりしました。ここで描かれる女性たちは、どこか怖い。それはその攻撃的な意思が見え隠れするところであったり、「嫌い」という感情が表に出ているからであったり、焦りや不安・絶望が真っ正面から描かれているからなのかもしれませんが、それ以上に、もっとあからさまな部分で「怖い」と感じる要素が。それが、ヒロインたちの笑顔の少なさ。基本無表情多めで、どこかドライな感じを受けるのです。男というのは作中でも語られているように、バカで子供で短絡的な生き物ですから、表面的でわかりやすい事物にその想いを左右されることが実に多いです。笑顔もそのひとつで、わかりやすい感情表現ということで、見れば安心・喜びがち。女性からすれば、「もっと内面をわかってよ!共感してよ!」となるのかもしれませんが、それこそ作中で語られているように、「男は愚か」であるわけですから、難しいものがあるのですよ。いや、いるのかもしれませんが、私にはそういった部分を見てなお受けとめるだけの度量の大きさがないのかも。
 
 どのヒロインも、抱える悩みは異なるけれども、その根底にあるものは同じもののように感じます。それは、誰もが「愛されたい」と思っていること。ただその相手となるのが、そのヒロインによって異なるだけで。そしてその感情の発露の仕方が、ヒロインによって異なるだけで。そしてそんな彼女たちの様子を見て、女性たちは椎名先生のように、「女の子って本当に可愛い!」と感じる。祥伝社のサイトにヤマシタ先生のインタビューが載っていましたが、やはり先生の願いは、「「女の子っていとしいなあ」と思ってもらいたい」とのこと。それを聞いて、改めて納得。HERというタイトルは、決して作中に描かれた女性のみを指しているのではなく、女性読者さんすらも包括しているのかもしれません。


HER2.jpg
結局行きつく先はこの言葉。「だって女だもんねー」。「女は醜い」としながらも、物語自体は、女性を全肯定している。素敵じゃないですか。そりゃ愛さずにはいられない。


 個人的にお気に入りなのは、処女の女子高生が、ある日お隣に住む白髪の女性が、女同士でキスをしているところを目撃するところから始まるCase3。そしてラスト、男性視点で語られるCase6。前者は、白髪の女性が、世の中の理(というか女の理)を全て知っているかのような語りをするのですが、その内容が本当に納得のいくもので、思わず何度も読み返してしまいました。また後者は、男性視点というのもさることながら、作品を通して何度か暗示されていた「男は女をわからない(わかり合えない)」というものが、しっかりとテーマとして描かれ、この作品のまとめとして最高の出来になっていたと思います。1話目読んだときは正直ピンとこなかったのですが、最後まで読んでみればほら面白い。今度の新刊も、期待を裏切らない素敵な作品でした!


【男性へのガイド】
→女性こそ楽しめるのだと思いますが、男性に楽しめないのかというと、そうではないと思います。感想は異なりそうですけど。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→恋愛一本で来るのかと思っていたのですが、まさかこんなお話とは。面白かったです。もちろんオススメ。


作品DATA
■著者:ヤマシタトモコ
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング(2009年11月号~2009年4月号)
■全1巻
■価格:648円+税


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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2010.07.11
07195881.jpg高宮智「フルムーンジョーカー」


だから
伝わってるからわかるじゃなくて
ちゃんと声に出して聞かなきゃ



■雪原睦月は満月学園に通う高校1年生。勉強が苦手で、遅刻の常習犯の睦月が持つのは、「人の心がわかってしまう」という変わった能力。そんな彼女がある日出会ったのは、電車で隣に座った男の子。寝顔のかわいらしさに一目で心奪われた睦月は、その後学校で思わぬ形でその男の子と再会することに。これってもしや運命の出会い…!?いやいや、現実はそう自分に優しく出来ていません。気がつけば、ワケの分からないことに巻き込まれていて…!?

 高宮先生の9冊目の作品。今はなき「ちゅちゅ」での連載作でございます。ヒロインは、ちょっとバカで勉強ができない、残念な女子高生の雪原睦月。先生から怒られてばかりの彼女ですが、ちょっと他の人には無い能力が。それが、「人の心がわかってしまう」というもの。その能力を、彼女は決して好意的に捉えてはいませんでしたが、その能力を持つが故に、とある出来事に巻き込まれることになります。電車で一度隣になり、以来気になっていた生徒会長・望月栄と放課後の校舎内で偶然再会、その時に彼女のその能力が必要になったのです。生徒会長を筆頭に生徒会をあげて取り組んでいたのは、「カード」の回収。心の弱っている者につくというその「カード」は、見かけはただのトランプのジョーカーだけれど、持ち主の精神を崩壊し乗っ取ってしまうという恐ろしいもの。そのカードの持ち主と、カードの在り処を突き止めるのに、睦月のその能力は役に立つのです。


高宮智「フルムーンジョーカー」
猫耳が生えた状況で、「自動コスプレ装置?」という発想。基本的におバカで、緊張感がない。


 表紙にてメインの二人が動物耳(猫耳に見えますが、狼の耳)になっているのは、カードの回収において、特に重要となる者に与えられる道具の副作用みたいなもの。生徒会長の栄は、カードを持ち主から離れさせる「狼の爪」を、睦月には、カードの在り処を突き止める「狼の耳」をそれぞれ持ちます。そんな設定を軸に、傍若無人で素直じゃない会長と、アホで要領の悪い睦月がの凸凹コンビが、学園をところ狭しと駆け回ります。
 
 カードの正体は何なのかなどは一切語られないなど、設定の甘さはご愛嬌。他の作品もそうですが、高宮作品の魅力は、そのキャラクターたちにあります。今回のヒロインは、高宮作品のヒロインの中でも鉄板な、アホ子。ただし気の強さや行動力の高さはそれほどなく、どちらかというと抜けた感じの性格。ゆえに癒し効果はは抜群で、核は同じであるもまた他の作品のヒロインとは違った魅力を見せてくれています。高宮作品のアホ子は、基本的にアホな部分がブラスに働いているから良いですよね。思わぬハプニングを持ち込み、どん底にまで落ち込むレベルにまで思い悩む思考回路を持っていないという。また相手役もまた、鉄板である俺様タイプ。つまり鉄板同士の組み合わせなわけで、どう考えても崩れるなんてありえないってことですよ。
 
 設定は甘めも、ストーリー自体はなかなか。破綻の方向に向かうことはなく、ヒロインの能力を出発点に、まとめもそこに絡めて、ヒロイン自身の成長を描くという、1巻完結のものとしては実にキレイなまとめ方。恋愛は低年齢向けのちゅちゅということで、微笑ましくどちらかというとライトなかけ合いが多め。移籍先でもぜひこのような作風の作品を生み出し続けてほしいものです。
 

【男性へのガイド】
→キャラの可愛さは折り紙付き。ちょっとアホな子がスキな方は、ぜひぜひ。物語の設定は甘めなので、その辺は覚悟の上でお願いします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→鉄板の組み合わせ。かわいらしさに加え、ストーリー的にもキレイにまとめてあって、読みやすいです。設定が設定だけに、ちょっと物語としては薄めですが、そもそもそこを期待したらいかんわけで。


■作者他作品レビュー
ちゅちゅでの最後の作品を収録した、高宮智ファンには堪らない一冊:高宮智「S×M」
高宮智「ソラオト」
高宮智「わたしのおくすり」
高宮智「今宵音降る空の下」
高宮智「HEAVEN’SWILL」

作品DATA
■著者:高宮智
■出版社:小学館
■レーベル:ちゅちゅコミックス
■掲載誌:ChuChui(年月号~)
■全1巻
■価格:390円+税


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20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

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2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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