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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.09.20
1106036123.jpg「NO.6〔ナンバーシックス〕」(1)


待ってろよ
いつかお前の病巣をえぐり出してやる



■人類の叡智を集めた未来都市《No.6》。四方を特殊合金の壁で囲まれた安全な土地、整然として美しい町並み、市内の犯罪率は限りなくゼロ…そこは絶望の存在しない聖都市。そこで幼い頃から未来を約束され、エリートとして育った紫苑は、12歳の誕生日の嵐の夜、「ネズミ」と名乗る傷ついた少年を匿ってから、運命が急旋回し出す。時は経ち4年後、紫苑の周りで続々と奇怪な事件が起こりはじめ…。紫苑とネズミの、あまりにも過酷な青春が幕を開けた…!

 「バッテリー」で知られるあさのあつこ先生の小説が、アニメに。ノイタミナ枠で「うさぎドロップ」(→レビュー)と同じく放送されていた「No.6」のコミカライズ版のお届けです。とかすげー知ってます的な前置きですが、全く知りませんでした(笑)あさのあつこ先生がこんなSF作品を描いていたことも知らなければ、それがアニメ化されてノイタミナ枠で放送されていたことも知らなかったです。というわけで、このマンガが自分にとっては物語とのファーストコンタクト。ウチのブログでは非常に多いですが、原作やアニメとの比較では語れませんので、ご了承くださいませ。
 
 ということで、ご存知の方も多いかもしれませんが、「No.6」のご紹介です。舞台となるのは近未来のとある都市。No.6と呼ばれるその都市は、人類の叡智を集めた未来都市で、犯罪率は限りなくゼロ、安全で豊かな生活が約束された、地上の楽園でした。そんな都市で、エリートとしての将来を約束された少年・紫苑がこの物語の主人公。今までも、おそらくこれからも平穏な人生…そう思えた彼の人生を大きく変える出来事が、12歳の誕生日の夜に起こることになります。珍しく訪れた嵐に興奮した紫苑は、窓を開け放ち外に向かって叫ぶと、そこには謎の少年が。ネズミと名乗るその少年は、No.6の壁の外より侵入した指名手配の受刑者でした。彼を匿い、それがエリートコースからの脱線の契機となった紫苑は、4年後再び彼に出会うことになります。次々に紫苑の周囲で起こる不可解な事件と、ネズミとの再会。やがて二人は、過酷すぎる運命に巻き込まれていくことになるのですが…


No6.jpg
何もわからぬままに巻き込まれていく過酷な運命。その中で、何もわからないなりに決断を迫られる。


 安全と安心を約束された楽園で、とある事件に巻き込まれる主人公。そして知る、その世界の真実。いわゆるディストピアものになるのですが、1巻ではその全容は明らかになりません。とある不可解な事件と、冤罪。そしてそこから助けてくれたネズミと、No.6からの脱出。謎だらけの状況に、主人公の紫苑はネズミに説明を求めるのですが、ネズミは多くを語ろうとはしません。自分はどういう状況に巻き込まれているのか、そして自分はこれからどう行動していけば良いのか。ネズミとの関わりの中、紫苑はそれを知って行くことになります(多分)おそらく1巻は本当に前段という形になっているのですが、それでもなお読み手を引き込む力強さ。次々と起こる出来事に、息つく暇を与えずに一気にラストまで持っていかれました。ディストピアものがそもそも好きなのですが、この作品も面白いです。
 
 この男の子二人がタッグを組んで、この世界を駆け回るということで、要素的にはBL方向もふんだんに含みつつ。というかバッテリーも穿った目で見ればそうだし、あさの先生の作品はそういう風に見れる要素を多分に含んでいるのだな、と思ったりしました。それとは別に、紫苑に想いを寄せる幼なじみの女の子もかわいく、これからどう物語に絡んでくるのか非常に気になる所です。
 
 たぶんハチが物語のポイントになってくると思うのですが、どういう陰謀が渦巻いているのか、想像し出したら止まりません。これちょっと原作から読んでみたい気持ちになってます(笑)アニメも観たら面白いんですかねー。ちなみに2巻は既に発売しております。


【男性へのガイド】
→BLとか言いましたけど、基本は男女関係なく読めるものになってるのだと思います。ノイタミナ枠ですが、ノイタミナ枠って案外男性もいけるでしょう?
【感想まとめ】
→続き気になりますが、これちょっとアニメとかも観てみたい気が。面白い作品だと思います。オススメで。


作品DATA
■著者:あさのあつこ/木乃ひのき
■出版社:講談社
■レーベル:ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2011.09.20
1106070077.jpgリカチ「明治緋色綺譚」(1)


これはあたしに課せられた
あたしの謎
必ず探し当ててみせるわ



■時は明治。元は華族の出身であったが、一家没落のために遊郭へと身売りされた少女・鈴。そんな中出会ったのは、自分を身請けしたいと申し出る風変わりな青年。彼の名前は藤島津軽。藤島屋という大きな老舗の呉服店の長男である彼は、鈴を引き取りそのまま藤島屋の支店の店主になり、商売の傍ら道楽として探し物屋をはじめる。その助手として、鈴は津軽と行動を共にするが、大金を払ってまで自分を買った津軽の真意を知りたくて…!?

 リカチ先生のBE・LOVE連載作。明治時代を舞台に、とある呉服屋の長男と、彼に身請けされた少女の関係を描いた物語でございます。ヒロインは、元華族出身でありながら没落と共に遊郭へ売られてしまった少女・鈴。そんな彼女は幸運なことに、間もなくとある青年に身請けをされ、その身を引き取られます。その身請けをした青年が、現在一緒に暮らしている大きな呉服屋の長男・津軽。呉服屋の支店の店主をしている彼は、その本業(あんまり頑張ってない)のかたわら人や物を探す「さがしもの屋」をしていて、鈴はそのお仕事の助手をしています。その歳の割にしっかり者で大人びた鈴は、一丁前に津軽を意識。大金をはたいてまで自分を引き取った、津軽のその真意を探りたいがために、一緒に行動しながらあれこれと探りを入れるけれど…?というお話。


明治緋色綺譚
しっかり者の鈴は、好きに行動する津軽を叱るぐらい。それが自分の存在意義とでも言うように、無意識のうちに行動する。


 表紙が非常に風情溢れる装いで、書店でもとても目を引いたのですが、それと同時に帯にも目を引く言葉が。「明治時代の歳の差LOVE」。同じ講談社ARIAの「これは恋のはなし」(→レビュー)が話題になっている中で、同じようなシチュエーション。しかもこちらはしっかりと「恋物語」としている所が面白いです。表紙からもわかるとおり、ヒロインの鈴はせいぜい小学校高学年で、さすがに恋愛関係に至るには難しい間柄ではあります。とはいえ鈴はしっかりと津軽を意識しており、そこにはちゃんと「恋」が。「これは恋のはなし」では双方向の視点から物語を動かすため、「恋」とは言明できませんが、こちらは鈴の視点のみで物語が廻るのでこれで充分「恋」なのです。
 
 二人で育む恋というよりは、かけられた愛情を紐解き、それを自分の愛情へと変換していくような形であり、だからこそ見請け人・津軽の想いは全く明らかにはなりません。それがこの物語の肝であり、それが本当に明らかになったところで、この物語はクライマックスへと向かって行くのかな、と。なんの理由もなく自分を引き取るわけはないわけで、だからこそこの状況に少しの遠慮と疑いを持っている鈴は、だからこそ少しでもその不安を軽減しようと、「役に立つ自分」になろうと頑張ります。元々その年齢以上に大人びていたのでしょうが、その状況が彼女の今の性格を作り出しているのは明らか。彼女の性格形成すら、その相手の影響なくしては語れないという、なかなかディープというか、雰囲気以上に濃ゆい関係ですよ。


明治緋色綺譚1-2
素直じゃないけど素直。たまらずこんなこと言っちゃうところとかが、本当にかわいいんですよ。


 あと「しっかり者」の性格が、結果的にツンデレーションを作り出しているのもまた。そのシーンの時は、津軽の視点で微笑ましく見守りましょう。物語の転がし方としては、きっかけに「さがしもの屋」への依頼があり、その中で鈴が頑張りすぎてしまい、最終的に津軽が助けるみたいなパターンが主でしょうか。基本的には人と人の繋がりを描いた感動路線のお話ですが、単話での物語の決着は思いのほか安易。あくまで長期的な視点で、鈴と津軽の関係の変化を見るのがこの作品を楽しむメインとなるのではないでしょうか。表紙といい、物語が纏う雰囲気も良いですよ。


【男性へのガイド】
→これは萌える。少女マンガというか、女の子に夢を与える感があるお話ではありますが、シチュエーションがもう。
【感想まとめ】
→作品の纏う雰囲気が好き。一つ一つのお話の繋がりがあると、もっと全力で推せるのですが!とはいえ面白いですー。シチュエーションにピンと来た方は是非ともチェックを。


作品DATA
■著者:リカチ
■出版社:講談社
■レーベル:KC BE・LOVE
■掲載誌:BE・LOVE(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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Tag [新作レビュー] 2011.09.20
1106070082.jpgもち「ケモノキングダムZOO」(1)


「上野動物園公式ガイドブックって言っていいですか?」
「だめです」



■上野動物園を、こっそりファンタジー王国化しちゃいました!
 百獣の王ライオン→気苦労耐えないつっこみ王!?
 空の貴公子オオワシ→翼の折れたヘタレエンジェル!?
 飼育員も仰天のマニアックな動物たちによる、歯止めの利かないボケとツッコミの応酬!人気アニマル達が、こんなことになってしまいました…。やりたい放題ですみません!作者の溢れる動物愛が、歪んだ形で脳内変換された、アニマルギャグ登場!

 ARIA連載作でございます。いわゆるギャグ枠。パンダでギャグというと、ベツコミに連載している「くるくるパンダ」(→レビュー)なんてものがありますが、こちらはパンダに限らず動物全般が主人公となっております。舞台となるのは、東西に隔てられたとある国・アッパーヤード。元々はパンダが国王としてこの地を治めていたが、王が倒れたことでレッサーパンダが替わって王位に就きます。しかしパンダに比べて「かわいい」「頼りない」「食欲が沸く」など、反対の声も多く王国は未だ混乱のさなかにあります。結果的に東西は分断。その覇権を争い、日々東西では戦いが繰り広げられていたのでした。。。というストーリーなのですが、この作品のモチーフとなっているのは上野動物園。そしてギャグ。ということで、戦いとはいえど非常におバカなやりとりがそこでは繰り広げられているのです。
 
 
ケモノキンク#12441;タ#12441;ム1-1
ほんととりあえずおバカなネタがですね。これは割とストレートな方。他はそれなりに捻ったりシュールだったり…。
 
 
 上野動物園に行かれた方はわかると思うのですが、上野動物園は大きく東西にエリアが分かれていて、行き来するとなるとそれなりに時間がかかったりします。東西というか、上下と言った方が良いでしょうか。単純に動物園をモチーフに日常ギャグを繰り広げるのではなく、その場所の特性を生かして物語を作っていくというのは面白い試みだと思います。そしてモデルがあからさまという辺り、さすが。そして肝心の動物なのですが、物語の中で中心人物となるのが、ライオンとオオワシ。この二人が東西のメインパーソンとなり、戦いを繰り広げます。それを取り巻くように、シロフクロウにカンガルー、シマウマやヤマネ、ゴリラにサルなどがレギュラー陣となります。そんな中、やってくるのはパンダの子ども。これが次期王の候補となるわけですが、これもまた現実のネタを反映したものになります。
 
 実は上野動物園は個人的にも結構好きで、度々訪れていたりします。めちゃくちゃ広いので、半日は確実に時間がつぶせるし、それに入場料が意外とお安いのです。動物はかわいいし、連休に行くと激混みであれですが、たかが動物園だと侮っている人は一度訪れてみて欲しいですねー。動物全般好きなのですが、中でも上野動物園ではお気に入りの動物がいまして。それがオカピなのですが、もうパンダとかライオンとか目じゃないくらい好きで。オカピの檻の前だったら1時間は軽く居れるね!ってくらいに好きなので、今回どう描かれているのか非常に気になったのですが…
 
 
ケモノキンク#12441;タ#12441;ム1-2
擬人化で女子

 
 あ、そうかそういえば上野動物園にいるオカピは女の子でした。オカピって勝手に変人で男な擬人化イメージをしていたので、この展開はちょっと不意打ちでした。このオカピ、ド変人達が集う中で、わりかし常識人。立ち位置的にはダブルヒロインで、美人系ヒロインのシロフクロウと対になる、カワイイ系のヒロインでございます。でもちょっとシロフクロウの存在感がすごすぎて存在感薄いのですけど。それでもちゃんとレギュラーとして登場していて良かった良かった。
 
 ネタは全体的にフリーダム。自由なルールと自由なキャラから作る勢い系の作品です。少女マンガのギャグ枠は、時に毒にも薬にもならないようなギャグ作品があるのですが、こちらは少々のブラックさとシュールさを交えて、しっかりとネタ作品として機能させています。自由すぎるので時についていけない時もあるのですが、それはご愛嬌というところでしょうか。あとどことなく変人というか、変態が多い気がしているのですが、この作者さんのスタンスなんじゃないかと。というのも同時収録されている読切りのギャグ漫画の登場人物が、裸にマフラーというわけのわからない設定で、もうその時点でおかしいよねっていう。あ、裸マフラーはこんな感じです→http://t.co/YdFZazb4


【男性へのガイド】
→動物ものということで、パンチ力は低減も、それなりに笑いは確保。イケメン要素強めなので、その辺が気にならなければ。基本ギャグですし。
【感想まとめ】
→上野動物園というピンポイントさが清々しいです。ギャグ漫画は読む人の笑いの感覚と合うかどうかがポイントですので、合いそうだと思ったかは是非手に取ってみてください。基本はお馬鹿変態ネタ。


作品DATA
■著者:もち
■出版社:講談社
■レーベル:KC ARIA
■掲載誌:ARIA(連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税


■購入する→

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。