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Tag [新作レビュー] 2015.02.27
1106491342.jpg夏芽ミカン「パパには秘密なのですが」



譲くんがお父さんになってくれて
すごく今幸せです




■イケメンアラサーリーマン・譲くんは、女子高生・栞の義理のパパ!ママ亡きあと、栞を引き取って育ててくれた譲くん。だけど、かわいい娘の恋の予感に、譲くんの過保護ぶりが爆発する……!血はつながっていないけど、いつでもお互いが一番の味方。笑いと涙と胸キュンの、ちぐはぐ父娘ホームコメディ。かきおろし後日談もたっぷり収録!

 「まるふく片想い」を描かれていた夏芽ミカン先生の連載作です。父と娘の禁断の恋愛を描いた……なんてことはない、義理の親子の温かな関係を描き出したホームコメディです。ヒロインの栞は母の連れ子で、今の父である譲と再婚後しばらくして他界。義理の父である譲が栞をそのまま引き取りここまで育ててきました。譲は20歳の時に結婚をしたため、高校生の栞を育てているとはいえまだ27歳の若者です。周囲からみれば二人はせいぜい兄妹にしか見られないという状況。それでも精一杯父親として行動する譲と、家事でサポートする栞。良好な関係の二人でしたが、栞の恋の予感に譲は気が気ではなく……というお話。

 構図的にはなかなか恋愛の匂いたつ表紙ですが、めちゃくちゃ真っ当なホームドラマとなっています。恋をしたい娘とそれが心配な父親というのは現実でもよく見られる光景ですよね。父親の譲は義理の父親だからこそ、若いからこそしっかりしなくちゃと、こと恋愛や門限に関しては厳しく管理をするのですが、それが時に裏目に出たりするわけですよ。元々一番だった優先順位も、娘に好きな男が出来ると下がりもするわけで、それが悲しかったり。で、冷たく接してしまったり。その姿は頑固おやじそのものなんですけれど、見た目が若いお兄ちゃんってのがひとつこの物語の面白いところ。自分は別に結婚もしていなければ、子供もいないんですけれど、職業が同じ(システムエンジニア)で年齢も近いということもあり、どうしても彼に肩入れして見てしまう面がありました。


パパには秘密なのですが
いざこっちを向いてくれたと思ったらこれ。素直じゃないけどかわいいじゃないですか。


 娘の栞もその歳の女の子としてはかなり出来た子で、父親の立場というもの(譲の大変さ)をしっかりと理解出来ている子です。時に反発してしまうこともありますが、それはある意味で致し方ない面もあり、こちらの気持ちもよく理解できるから辛いところ。

 それでもって一番いい人は誰かと言うと、栞の恋のお相手である藤村くんかと思います。栞と父親の家庭の事情もしっかり理解して、がっつかずに待つ男の子ですし、非常に穏やかな性格。いざ譲を前にしてもたじろぐことなく自然に真正面から接することができますし、すごくできた男の子なんです。裏表紙の紹介文では名前すら出てこないのですが、割と彼が作中で良い働きをするという(まぁ嵐を呼び起こした発端も彼なのですけれど)。

 というわけで、とにかく悪意を持つ人物が登場しない作りとなっており、善意の行き違いから起こる出来事が物語の中心。ですので読んでいて悪い気持ちになることは一切なく、すっきり温かく読むことができる作品かと思います。一方それに伴うパンチのなさは否めないかもしれません。また大抵この手の作品って読み切りが同時収録されていたりするのですが、本作は1巻まるまる収録されており(書下ろし多めですが)、そこそこ人気もあったのかなと思ってみたり。巻数付いていないですが、反響次第では続刊もあるかもしれません。

 
【男性へのガイド】
→これといって協調材料はないのですが、変に恋愛によってもおらず、ホームコメディ的な作品ということで、間口は割と広いんじゃないかと思います。
【感想まとめ】
→相手役の藤村くんはもっと推されてもいいと思うのですが、そのあたり(不憫な感じ)含めて彼らしく、これでいいのかなと読み終わって納得してみました。



作品DATA
■著者:夏芽ミカン
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックス
■掲載誌:花とゆめ
■全1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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Tag [続刊レビュー] 2015.02.26
1106491320.jpg高野苺「orange」(4)



10年後も待ってるよ
みんなで




■4巻発売しました。
 未来からの手紙は貴子・アズ・萩田にも届いていた。そして、手紙に書かれていた行動と別の選択をして翔と一緒に体育祭のリレーに出場することにした菜穂たち。この選択は翔を救うことにつながるのだろうか?菜穂と翔の距離も近づいていく第4巻―――。


~アクションの2冊目です~
 高野苺先生が集英社を離れて「もうOrangeの続きは読めないんだ……」とあきらめていたのですが、アクションでこうして続きを読める幸せ。アクション自体は女性向けの媒体ではないのですが、もともとの連載誌が女性向けだったので、本作については引き続きレビューをしたいと思います。このマンガがすごい!でもオトコ編としてランクインしているんですよね、これ。


~終わりなんてないという話~
 4巻では、実は全員に未来からの手紙が来ていたということが明らかになり、全員協力体制での翔救出作戦が敢行されます。とにかく翔のことを気にかけて優しく接するその様子は、少しばかり過保護にも映るのですが、これぐらいやらないと精神的に死の淵にいるであろう少年を救うことは出来ないということなのでしょうか。当人からしたら、ちょっと優しすぎる周囲の様子を変に思いそうなものですが、今のところそういった感じは見られず。もしかしたら先々で、何か変だと気づいて問い詰めるみたいなシーンがあるかもしれませんね。実はこの物語は明確なゴールというものがなくて、たとえ手紙に書かれている自殺した日を過ぎたとしても、精神的に病んでいる状況が続いていたとしたら、次の日にでも自殺してしまうかもしれない。未来を知っていたという秘密を守り通さなければならないと同時に、いつまでも気にかけ続けなければならないという大変さをはらんだ行動なのです。


~一番つらいのは須和だろうという話~
 4巻で最も印象に残っていたのは、須和の語りでしょうか。自分が菜穂と結婚した未来を知っていつつも、決してこの世界ではそこにつながる行動=告白はしないというもの。当人からしたら、やっぱりしたいと思うんですよね、告白だって結婚だって。でもそれはしてはいけないし、しないと決めた。で、こんなことを話すんです……

Orange4.jpg
この世界と、手紙を送ってきた世界は直接関係ない


 「未来を変えることはない」というのは、この世界で翔を生かす行動をとることを正当化する理由になるとともに、「菜穂と結婚して幸せな家庭を持っている」という自らの望みを未来の自分に託しているようにも見えるんですよね。諦めというわけではないですが、手紙が未来から過去に想いを託しているのとは逆に、須和だけは逆方向の矢印が飛んでいる感が。自分の想いを殺すか、友達を殺すかの二択ってのは、ちょっと想像するだけでも気が重くなります。


~本当につながっていないのか~
 須和はパラレルワールドの概念を説明し、両者間に直接的な影響はないと話していますが、実際のところはどうなのかわかりません。もし未来を変えることになったとしたら、菜穂と須和の間に生まれた子供がいなくなることになったりしそうなのですが、どうなのでしょう。仮に直接つながっていなかったとしても、生まれるべき命が生まれてこないことになるのですから、難しい問題です。そんな双方のつながりも意識しつつ、5巻を楽しみに待ちたいと思います。


■関連記事
作品紹介→16歳、10年後からの手紙がつなぐキセキ:高野苺「orange」1巻
2巻レビュー→二人分の自分の想いを背負って:高野苺「orange」2巻

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.25
1106491130.jpg湯木のじん「青山月子です!」(1)



私は
ここにいるよ




■事故で記憶喪失となった「青山月子」は以前の性格のように振舞おうとするが、空回りの連続。転校してきた加賀美くんに対して、月子は興味を示したようで……!?記憶喪失×ほっとけない男子が織りなす物語。

 「藤代さん系」(→レビュー)の湯木のじん先生の新連載です。今度のタイトルは「青山月子です!」と名前を前面に押し出したものとなっているのですが、藤代さん系といい、タイトルに名前を使うというのが通例なのでしょうか。なんてそんなことはさておいて、内容のほうをご紹介しましょう。

 主人公はタイトルにもある通り、青山月子さん。高校に入学して早々に交通事故に遭い、しばらくの意識混濁の後に記憶喪失となって目を覚まします。何も思い出せないまま再び高校に通い始める(留年して高1から)のですが、過去を全く思い出せないので、親や友達だという人たちの言う「青山月子」像を再現しようと頑張ります。けれども伝え聞いていた「優しくて明るくてポジティブ」という性格は全く再現できず、空回りの結果周囲からは奇異の目で見られるようになります。そんな中に現れた、転校生の加賀美くん。ひょんなことから彼に興味を持った月子は、半ばつきまとうようにして彼と仲良くなるのですが……というお話。


青山月子です!0002
加賀美くんはあまり笑顔は見せないですが、笑ったときはとっても優しい。受け入れられてるなぁという感じのする、素敵な男性です。普段厳しめですけど。


 記憶喪失のヒロインが、記憶喪失のままに学園生活を送っているという、なかなか突飛な設定の作品です。記憶喪失後の月子は感情の起伏に乏しく、他人の感情も今一つ読み切れないといった、ジト目デフォのローテンションな女の子。そんな彼女が周りの求める「明るくて優しい青山月子」として振舞おうとしても、無表情&棒読み&空気読まないタイミングでの仕掛けと、裏目に出るばかりで周りとの距離は遠ざかっていくばかりです。一方でそういった状況になっても本人は無自覚で全くダメージを受けていないという強さも見せるという。詰まる所、人間関係のすべてにおいて鈍感になっているという感じです。そんな彼女を放っておけないのが、今回相手役となる加賀美くん。別に優しいタイプの男の子ってわけではないのでしょうが、自分を慕ってくれている女の子がふらふらとしていたらどうにも気になるもので、いつしか保護者のような立ち位置に収まります。それが結果的に良い方向に働き、彼自身はクラスでも慕われるようになったりも……。

 月子は記憶を戻したいという欲求はあまりなさそうで、自然に思い出すのに任せている感じがあります。最終的に戻るのかはわかりませんが、加賀美くんとの関わりのなかで少しだけ思い出す瞬間があったりと、最終的には戻る方向に倒れるのかもしれませんね。ともあれ二人の関係構築は、「誰も承認してくれない記憶喪失後の自分を唯一受け入れてくれる存在」としてのヒーローですから、そうなるのはあったとしてもだいぶ先なのでしょう。面倒見の良いヒーローというと語弊があるかもしれませんが、そういう相手役がお好きな方はまず読んで間違いない作品になっているかと思います。

 個々人の背景や性格は全く異なりますが、友達を増やしたいと願うもののその挙動で裏目に出て孤立しており、そんなヒロインを人気の男の子が臆することなく接し、その他の人たちとも関わりを持つようになる……というのは、同じ別マで連載している「君に届け」の爽子と風早くんを想起させます。こちらはもっと閉じた関係で、かつ記憶喪失という背景がある分より根深い問題を抱えてはいるのですが、1巻読んだ感じを受けると、加賀美くんは第二の風早くんになり得るのではとちょっと思いました(優しさの度合いは雲泥の差ですが、ベクトル的には一致してる)。無条件の承認ってのは、やっぱり読んでいても嬉しくて泣けてくるもので、この手のヒーローにはめっぽう弱いんです、私。


青山月子です!0001
ちなみに月子も初期の爽子っぽい雰囲気はあるのですが、変なテンションで感受性に乏しく人間関係に不器用という意味では、「ラストゲーム」の九条さんのイメージの方が近いかも(でも上の画像見ると全然違いますね…!)。ちなみに学年3位の秀才で、見た目も可愛い方という設定でございます。


 記憶喪失のヒロインに対し、周囲の面々も親も冷たいという状況はかなり辛いはずなのですが、ヒロインがとにかく鈍感なので、そういった感じがあまり表に出てきません。なので設定の割に1巻はほのぼのした印象がありました。もちろんシリアスなシーンはあるのですが、突飛な設定の割にはかなりオーソドックスな男女関係の構築図をなぞっています。掴みとしてはこのぐらいでOKで、今後時間をかけてより深い所(暗いところ)を出していけば良いのかなと思います。


【男性へのガイド】
→他の少女漫画比になりますが、キラキラしすぎていない分読みやすいんじゃないでしょうか。変なヒロインですけど。
【感想まとめ】
→流行るかはわかりませんが、個人的には非常に好みな作品でございました。オススメしたいです。


作品DATA
■著者:湯木のじん
■出版社:集英社
■レーベル:別冊マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.24
1106442683.jpgシナガワ「俺の作ったゲ―ム、クソだってよ。」



デートしたければ投獄に気を付けてください
投獄に気を付けてください




■あっ、これクソゲーだ。
 ゲーム業界で彼らの名を知らないものはいなかった。天才ディレクター率いる彼ら最強開発チーム「チームナイン」。彼らが世に送り出す作品は……筋金入りのクソゲーばかりだった!!

 ゼロサムオンラインで連載されていた、シナガワ先生の作品です。私もゲームはやるのですが、比較的メジャーな作品をちょっとかじるくらいで、たぶん習熟度的には矢口真里さんぐらいのレベルだと思います。とはいえクソゲーの情報を見るのは好きで、毎年ネットを賑やかすクソゲーオブザイヤーの発表は楽しみだったり。すっかり「クソゲー」という存在も言葉もメジャーになっていますが、本作はそんな「クソゲー」の制作についてスポットを当てた作品となっています。

 舞台となるのは「チームナイン」という制作会社。ドラクエや妖怪ウォッチなどを手がけているレベルファイブを意識したネーミングでしょうか。優柔不断でアホなディレクターを筆頭に、残念な面々が送り出すのは、間違いのないクソゲーたち。しかも男だらけの制作陣で、BLゲーという領域で勝負をしています。今日も今日とて売れるゲームを作るために奮闘するスタッフたちなのですが…というお話。


俺の作ったゲーム、クソだってよ。0001
残念な要素は枚挙に暇がなく、作画にストーリー、システムに至るまで様々。


 作中では度々、世に送りだされたゲームを購入者がプレーしてツッコミを入れるという話が挿入されてくるのですが、個人的にはそちらがお気に入り。恐らくインスパイア元にもなっているんでしょうが、同人ゲーム的にありそうなネタが多々。BLゲーでツッコミどころ満載という所で言えば「学園ハンサム」が有名ですが、おそらくインスパイア元の一つとなっていると思われます。

 メインはゲーム制作日誌的な所にあるのですが、変なキャラが変に動いているだけでゲームは全く作っている感が見えないという。キャラ達がそれぞれ個性的でぶっ飛んでいたり、各ストーリーに一貫性がなくとっちらかった印象を受けるのですが、それはある意味でこの作品自体が狙った同人クソゲー的な作りとなっているからで、どこかメタ的な風合いを感じることができます。


俺の作ったゲーム、クソだってよ。0002
どのキャラもいまいちピンとこなかったのですが、事務兼カスタマーサポートのマリさんは素敵です。チームナイン制作のゲームに登場する不知火というキャラに相当に入れ込んでおり、同人活動までしているのですが、興味のない人に対しての冷たさが本当に素敵でした。彼女のネタだけ同人方面に飛ぶのも面白いところ。


【男性へのガイド】
→ネタ的にはBLゲーと言えど大丈夫かと思うのですが、いわゆる「狙ってやってるクソゲー」を楽しめるかってのがポイントになるかもです。
【感想まとめ】
→作品としてのまとまりは一切ないんですが、ところどころツボになるネタがあり、結構けらけら笑いながら読んでいました。


作品DATA
■著者:シナガワ
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサム
■掲載誌:ゼロサム
■全1巻
■価格:600円+税


■試し読み:第1話(pixiv)

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Tag [続刊レビュー] 2015.02.23
1106481730.jpgオザキアキラ「ハル×キヨ」(5)



君に会ってから
僕はどんどんかっこ悪くなってる気がする




■16歳の誕生日を迎えて、なんだかラブラブな小春と峯田。そんな中、事もあろうにモジャ夫こと志村が恋に落ちた!?実は小春のプレゼントを用意していた志村。それが原因で事態はさらにややこしく!!


~5巻は志村の回~
 5巻発売しています。早いものでもう5巻、オザキアキラ先生としては最も巻数が多いタイトルということになるでしょうか。名前をカタカナ表記にした甲斐があるってものです。

 さて、5巻も色々とイベントごとがあるのですが、総括するのであれば5巻はまさに志村の回だったと言えるでしょう。噛ませ犬は大好きなものの、どうも志村のことはさほど気にならない管理人なので、これまでもあんまり気に留めていなかったのですが、さすがに今回は頑張ったなぁとちょっと応援してあげたくなりました。ああいったタイプは自分の気持ちに自覚的になると、その行動力と相まって色々仕掛けられますから見ていて面白いですよね。本命党からしたら、厄介な存在なのでしょうが。まぁでも一番萌えるのは、ちょっとしおらしくなってるところなんですが。1巻通じて散々頑張った後のこれとか……


ハルキヨ0003
クッション抱いてセンチメンタル


 これはずるいかわいい。これはなかなか可愛らしいです。しかし悲しいかな、全く小春には意識してもらえてないっていうね。むしろ意識するのは峯田のほうばかり。それって結局敵に塩を送っている状態なわけで、なかなか志村には厳しい状況が続きます。これだけ頑張って6巻に突入するのですが、さてこれ以上打つ手はあるのでしょうか?引き続き奮闘して、時折落ち込んでもらいたいところです。

 ところで彼、噛ませ犬ではあるのですがあまり手を引く想像が出来ないんですよね。噛ませ犬の見どころの一つとして、どの時点であきらめて手を引くのかってのがあるのですが、彼の場合あきらめるってあるのかな、と。彼におあつらえ向きな女の子キャラもぱっと思いつかないですし、もうちょっとこの状況は続くんですかね……?


~小春がものすごくいい女なんですが…~
 志村の奮闘が目立った5巻ですが、小春も負けてませんでした。なんだかやたらイイ女なんです。志村からもらったプレゼントを必死に探すところとか、もうそんなんちょっと意識してた男だったら完全に好きになりますやんっていう。


ハルキヨ0001
相手にその気持ちを隠さずに、すべてバカ正直に話してしまう所とか、いいなぁと。


 損得勘定とかなく、ただただ自身の良心に従う姿は本当に素敵だと思います。たぶんこういう性質は元から持っていたのだと思われ(志村の回想とか見るに)、普通のコミュニケーション能力さえいったん身についてしまえば、こんなに素敵な女の子の出来上がりだよ、と。そしてそんな魅力は峯田にも十二分に伝わっています…


ハルキヨ0002
だから峯田くんはかっこ悪いままでいてください


 これもまた、余計好きになりますやんっていう。さらにあざといのが、ここで器広く受け止める発言をした直後に、「もっと褒めてください」と甘えるモードに移ってバランス調整しているあたり。先のような発言ばかり終始していたら仏様なわけですけれど、たまにぶっこむから効果もテキメンなわけで。小春の末恐ろしさを感じたエピソードなのでした。


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Tag [新作レビュー] 2015.02.22
1106490022.jpgKANA「女の友情と筋肉」(1)



ちょっとマッスルだけど
とっても優しい女の子たち




■磨け!女子力と筋肉!
身長195cm握力97kg、身長189cm100M走10秒8、身長186cmソフトボール投げ85M……のちょっぴり?マッスルだけどとっても優しい女の子たち“イオリ、ユイ、マユ”の3人が繰り広げる、頑張るみんなを応援するキュートでファイトな4コマまんが。

 このマンガがすごい!Webの3月オンナ編で2位になっていたのですが、やっぱりこれ「女性向け」って括りになるのですね。星海社は最近頻繁に単行本を出しているのですが、ツイ4と言われるレーベル(?)で作品がたまってきているからですかね。本作「女の友情と筋肉」は書店でもかなり平積みされており、猛プッシュされているのを感じることができます。いや、なかなか衝撃ですからね、表紙から。

 冒頭のあらすじ紹介では、ちょっぴりマッスルだけど……と表現されていますが、読んだ印象としては全く「ちょっと」じゃありません。スポーティでムキムキな、吉田沙保里選手とかそういう系統の女子あるあるなのかと思っていたのですが、むしろイメージ的に近いのはスーパーサイヤ人だったりします。普通に空飛べるし、ビーム出るし。見た目からしてなかなか衝撃的なのですが、当人たちはそれに対して全くコンプレックスは持っておらず、また周囲の面々をそれをひとつの“個性”として受け入れております。繰り出されるネタはそういった世界を前提としたものとなります。


女の友情と筋肉
一番好きなのはユイさんとその彼氏のヒロユキ。安定感と、時折挟まれるオタクネタの使い方のうまさがツボ。


 3人とも社会人として立派に働いており、またいずれも彼氏がいるという。表紙に描かれているイオリはメーカー勤務で、彼氏は浮気っぽい軽めアホの関西人の営業マン。色々と問題を抱えており、揉めがちというカップル像です。一番かわいい系(と思われる)のマユは明るいアパレル店員で、彼氏はパティシエ見習いのマサノブ。マユが尽くすという関係性で、マユの明るさも手伝ってか比較的のろけがちな楽しいカップルというポジション。黒髪美人(と思われる)のユイは商社で事務をやっているっぽい女性で、彼氏はひょろひょろ系のSEさん。お互い自然体で物静かという感じで、いわゆる安定感のあるカップルというポジション。それぞれありがちなカップル像で、ネタの出発点はそういったカップルにありがちな出来事になります。で、最後に筋肉ネタで落とすという偉大なるワンパターン。

 正直出オチなんですけれども、その圧倒的なパワー(色々な意味で)で最後まで突っ走ります。ネタの起点が未婚社会人の日常って所なので、意外と話題に事欠くことはなく、オチにたどり着くまでは様々なアプローチが可能という強みももしかしたらあるのかもしれませんね。別に読んでいて爆笑するかとか、感動するかとかそういうこともないんですけれど、なんか読んでしまうっていう。でこのインパクトですから、すごい頭にこびりつくんですよね。ちょっと前に読んだ作品の内容すら思い出せないこともしばしばなのですが、おそらく本作のことは全然忘れることないんだろうなと思います。

 
【男性へのガイド】
→これがど真ん中って人はいるのか?ちょっと異質すぎて判断に困る所です。
【感想まとめ】
→先にも書いている通り爆笑するとかはないんですけど、読んでしまうし印象に残るし、やっぱりちょっと笑ってしまうという。サイトで色々読めるようですので、そちらをご覧になっては如何でしょうか?



作品DATA
■著者:KANA
■出版社:星海社
■レーベル:星海社COMICS
■掲載誌:ツイ4
■既刊1巻
■価格:640円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.21
1106491271.jpg雁須磨子「こくごの時間」



何 覚えてる?



■教科書に載っていた作品で好きだったのはなんですか?
忘れていた、あの時間、あの文学、あの気持ち。国語の時間に読んだ本がつなぐ、「あの頃」と「今」。教科書オムニバスストーリー!

 雁須磨子先生のmotto!連載作です。国語の教科書に載っていた文学作品をテーマに描く、オムニバスストーリーです。取り上げられる作品は「走れメロス」や「山月記」といったメジャーなものから、「くまの子ウーフ」「言葉の力」「夕焼け」など、聞いてもいまいちピンとこなかったり、フレーズを聞いて「ああ、そういえばあったね」とやっと思い出すようなものまで。使っていた教科書や時代にもよってくるのかと思いますが、人それぞれ思い出に残っている作品は違うのでしょう。本作はそんな作品の登場人物やエピソードに重ねつつ、現代に暮らす人たちの心の機微を描き出します。


こくごの時間0001
こくごの時間あるある。見込んでた場所とズレて当たって焦るとかありましたよね。


 私はあまり国語は得意な方ではなかったのですが、それでもやけに印象に残っている作品というのは幾つかあります。作中にはタイトルのみ出てくるだけですが、「スイミー」は小学校の時に劇をやって、自分がスイミーのセリフを言ったということもあってよく覚えていますねぇ。あとは「赤い実はじけた」の朗読がやけに気恥ずかしかったり、エーミールの出てくる「少年の日の思い出」ですごく嫌な気分になったり、「ちいちゃんのかげおくり」でしんみりしたり……。そうそう、「少年の日の思い出」は別枠でコミカライズとして収録されているのですが、今読んでもなかなか味わい深い内容で、久々にあの時の気持ちを思い出しました(笑)

 個人的にお気に入りだったのは、大岡信「言葉の力」をモチーフに描いたお話。つけまつげモリモリのギャル子ちゃんが、同じクラスの地味なメガネの男の子に興味を抱き、声をかけてみるという内容。お互いに友達も住む世界も違う、ぱっと見相容れない存在の二人なんですが、静かながらも妙に居心地よさそうなギャル子ちゃんと、珍しい人に声をかけられ焦りながらも悪い気分はしていないメガネくんの関係がめちゃくちゃ「恋」という感じがして素敵なんです。別に手をつなぐわけでも、好きだと言うわけでもないんですが、どこまでも恋だなぁ、と。本作に「言葉の力」がどう絡むかは、読んでからのお楽しみということで。

 もうひとつのお気に入りは吉野弘の「夕焼け」をテーマに描いた作品。夕焼けは夕暮れの電車の中でよくある光景を書いた詩なのですが、本作もお年寄りに席を譲る話が描かれています。主人公は満員電車で色々と考えながら通勤しているのですが、私も満員電車で通っているので「あるある……」と思うシーンがしばしば。お年寄りに席を譲るべきかってのは、いつも悩ましい問題で、周りの目や自分自身の善意の度合いや、相手が本当に席を譲られることを欲しているのかとか、色々なことをぐるぐる考えてしまいます。もちろん作品に登場するような「娘」も出てきます。

 先述の通り、エーミールが登場する「少年の日の思い出」はそのまんま原作をコミカライズした形になっており、これはこれで面白いっていう。当時は「なんて後味の悪い話なんだろう」ぐらいにしか思っていなかったのですが、今となっては主人公の気持ちがよくわかる。


こくごの時間0002
多くの人が覚えているであろうセリフ「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。」


 上のセリフのほかにも「この少年は非の打ちどころがないという悪徳を持っていた」ってのは言いえて妙な素晴らしい表現ですよね。訳者さんの力によるところも大きいのかもしれません。当時このことについて授業で考えたりしたのかもしれませんが、全く覚えていません(笑)このお話は『思い出』とあるように、主人公が過去を回想して話すというスタイルを取っています(全然覚えてなかったですが)。自身の中で冷静に整理がされているからこそ表現できる言葉たちなんだな、だからむしろ大人にこそ響く作品なんだな、と思わされたお話でした。


【男性へのガイド】
→motto!は男性にも親しみやすい作品が多いのですが、本作もその類のうちのひとつかと思います。
【感想まとめ】
→良かったです。なんとなく続き物になっている序盤のお話よりも、むしろ単発の作品の方が心に響いたのですが、他の人はどうだったのでしょうか。オススメです。


作品DATA
■著者:雁須磨子
■出版社:秋田書店
■レーベル:Akita Lady's comics motto!
■掲載誌:motto!
■全1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.21
1106468117.jpgいくえみ綾「私・空・あなた・私」(1)



私のこれからの人生は
明るい




■14歳の鈴木れもんは、ある日「安達家」に引き取られる。「安達家」とは、父親の本妻・胡桃と異母姉妹の林檎、杏が暮らす家。実は、れもんは父親の浮気で出来た子供なのだ。新しい「家族」の中で、れもんの暮らしは始まる。そんな中、庭の剪定にやってきた植木職人・イズミ。女4人暮らしの「安達家」に何かと関わってくるこの男だが……。

 いくえみ綾先生のスピカの新連載です。「あなたのことはそれほど」や「G線上のあなたと私」、「太陽が見ている(かもしれないから)」とすごい連載抱えてるなぁと思ってちょっと調べてみたら、連載中作品が本作含めて6本って出てきて驚きました。様々な媒体で連載されているいくえみ作品ですが、傾向的に一番好みなのはスピカかもしれません。

 物語の主人公は14歳の女の子。いくえみ作品に登場する女子ですから、当然(?)問題を抱えています。彼女の場合は家庭事情がフクザツというもの。父親の浮気相手との子であるヒロイン・れもんは、祖父祖母に育てられていたものの、祖父は他界し、祖母はボケてしまい一緒に暮らすことができなくなってしまいました。そんな彼女に声をかけたのが、父親の本妻である安達胡桃。胡桃と、その二人の娘との4人暮らしが始まります。持ち前の要領の良さですぐに安達家になじむれもんでしたが、表向きの平穏は、とある男の出現によって少しずつ荒れ模様へと変わっていき…というお話。


私空あなた私0001
フクザツな家庭事情でありながら、それを表向きすんなり受け入れ飄々と。けれどもその実、心の底では黒いものが溜まっていく……というのは、いくえみ綾作品では比較的よく見られる光景と言えるでしょう。ヒロインのくるみは非常に明るい性格(に見える)であり、また受け入れる側の安達家も、姉二人は社会人と大学生ということで、年上の余裕があるというもの。母親役の胡桃はどういう了見で受け入れたのか定かではありませんが、大人の余裕を感じさせるサバサバとした印象を受ける女性です。

 物語の肝となるのは、自身が浮気相手の子供であるという出自における引け目だとか、可愛がってくれた祖母のボケが進行していく悲しみだとか、父の本妻と一緒に暮らすだとか、14歳という多感な時期に向き合うにはなかなかハードな事情の数々。それらをまともにくらわないよう彼女なりに必死に明るく生きているのですが、かわしきれずにダメージを受けることもしばしば。そんな時の心のよりどころとなるのが、植木屋のイズミというわけ。唯一当事者でない彼が、いい距離感で心を許せるのでしょう。


私空あなた私0002
唯一の男性であるイズミですが、正直1巻読んだ時点では謎。あまり爽やかさはなく、かといってもっさり感もなく、ちょっと無骨でつかみどころのない人物といった印象があります。ヒロインの年齢から考えても恋愛という感じにはなりそうもなさそう。彼が波乱の中心となるのですが「かき乱してやろう」という意図はあまり感じられず、期待に応えているうちに自然と動きを作ってしまっているという感じです。ある意味安達家の自業自得のような感もあるんですけれども。


 描かれる様子は仲良しな家族そのものという感じではあるのですが、それがどこかわざとらしいというか、それぞれの役割を演じている感がにじみ出ており、なんだか居心地が悪いくもやもやする感じがあります。この気味の悪さがだんだんと形を帯びてくるのが見所であるのですが、面白くありつつも気持ちよさは全くないという(笑)後半は望まざる静かな対立構造が出来上がってきて、さてどう転がるかというところで幕引き。じらし上手です、もう…(悶々)

 1巻時点で面白いかと問われると、ちょっとよくわからんというのが正直なところなのですが、いくえみ綾先生の作品っていつもそんな感じなので、平常運航という感じでしょうか。そのままふわっと終わる作品もままあるのですが、本作ははたしてどっちでしょうか。個人的には本作は設定から割と好みなので、追いかけてみたいと思います。


【男性へのガイド】
→いつものいくえみ綾作品でございます。
【感想まとめ】
→ 小さな出来事が積み重なって少しずつズレが生じてくる。この気持ち悪さと面白さを味わえるのはこの作者さんならではかと思います。


作品DATA
■著者:いくえみ綾
■出版社:幻冬舎コミックス
■レーベル:バーズコミックス
■掲載誌:スピカ
■既刊1巻
■価格:630円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.19
61Rj2.jpg榎木りか「3LDKの王様」 (1)



俺に外の話題をふらないでくれ!!
外は期限がいっぱいなんだよ…!!




■ここは、都心にほど近いとあるマンション。
 大家の娘・美里は、ここに住むイケメンたちに囲まれて、彼らのお世話に大忙しの、まるで乙女ゲーのような日々を送っていた。ただし、彼らは全員『引きこもり』なんだけど。わがままで世間知らずでクズで、クズ!引きこもり男子×ツンツン女子の自宅系ゆるっとラブ?コメ、だらりとスタート!

 「シュガーガール,シュガードール」(→レビュー)の榎木りか先生のシルフ連載作になります。とあるマンションの大家さんの娘が、イケメンの住人達と繰り広げる乙女ゲー的シチュエーションのラブコメ、、、ではあるのですが、その実住人達は引きこもりのダメンズばかり。唯一と言っていいほどに頼れる存在となってしまったヒロイン・美里に、あれやこれやと偉そうに頼み事…もとい、命令をしてきます。そんな彼らにイラつきつつも、ついつい面倒みてしまう美里でしたが…というお話。


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こんなん。もう何もできない。


 この作品はストーリーよりも住人達を紹介した方がよさそうですね。まず面倒を見る相手筆頭なのが、彼女と同じ学校に通っている山田。高い家賃を払えるのはお家がお金持ちだから。俺様キャラですがそれは完全な内弁慶で、外の話題を振っただけで顔面蒼白する程度には外界嫌いの気があります。ただ本人はリア充気取りたいので、嘘の出来事とポエムにまみれたブログ・SNSを日々更新し、多くのフォロワーを集めています(主にウォッチ対象として支持を集めているという状況)。アホナルシストで、顔が良く金持ってるって所以外は全く使い物になりません。明るく清々しい系のクズです。

 もう一人が山田の隣人となる吉田。この人は典型的なオタク野郎で、日々ネトゲに勤しみつつ、二次元の少女に入れ込んでいるという感じの人。理詰めで相手を攻めるタイプで、騒がしくアホな隣人である山田とは当然ソリが合わず、よく言い合いになっています。こちらの方が山田に比べると行動力がない分迷惑度は低いのですが、上から目線でねちねちと理詰めで攻めてくる感じは非常に鬱陶しく、関わると心がザワザワと波立ような陰鬱タイプのクズです。

 もう一人引きこもりの住人がいるのですが、その人は小説家であるために引きこもらざるを得ないという感じなので、クズ感は薄め。詰まる所、先の二人との絡みがメインとなります。オラオラアホ系かグチグチオタク系かどちらが良いですか?という選択肢になるのですが、どちらダメを絵に描いたような人たちなので、甲乙つけがたいところですね。


3LDK0001.jpg
汎用性が高そうなコマ。ヒロインの美里は榎木りか先生の描く女の子ってことで安定して可愛いです。性格きつめに映りますが、こんな男たちを相手にしていたらそうならざるを得ないですから…。あれこれ言いつつもなんだかんだ関係切らさず面倒見てあげるあたり、むしろすごい優しいんじゃないかと思ったり。逆にこういう仕草を楽しむってのもありですかね?


 さてこの状態で恋なんて生まれるのかって話なのですが、もちろんこのままでは生まれることはありません。何かしらの変化を見せないと。目下の第一目標は外に出れるようになるという所からなのですが、そこまでがまあ大変。とはいえ1巻スタート時点から2巻まででそれなりに変化は見せてきており、日ごろの巻き込まれドタバタ劇と共に、そうした側面も楽しむことができる作品なのではないかと思います。


【男性へのガイド】
→この男たちはきついような気がするのですが、どちらもぶっ飛んでいるのでネタとして見ることができれば大丈夫。ヒロインは可愛いので、そこに望みを託したい気も。
【感想まとめ】
→ダメンズ混じりのドタバタ劇でそれ以上でもそれ以下でもないのですが、2巻にて恋が芽生え動き出したりしたら結構面白いことになるんじゃないかと期待したくなる終盤でした。気張らず楽しめるコメディです。


作品DATA
■著者:榎木りか
■出版社:角川書店
■レーベル:シルフコミックス
■掲載誌:シルフ
■既刊1巻
■価格:580円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.18
1106463531.jpg小嶋ララ子「星くずドロップ」(1)



転校初日
桜の中で出会ったのは
ちょっと不思議な女の子




■星のかみさま、お願い。運命の人に出会えますように……!
鳩ヶ谷しの(♂)、高校1年生。転校初日、桜の花びらが舞い散る中、美しい少女・苺と出会います。不登校気味だという彼女には、何か秘密が……。そんな彼女を追いかけ、しのがたどり着いたのは、個性的な面々が集まる天文部で!?天文部を舞台に恋と友情がキラめく青春ストーリー!

 小嶋ララ子先生のARIA連載作です。天文部を舞台にしたボーイミーツガールな青春グラフィティ。主人公の鳩ヶ谷しの(こんな名前ですが男の子です)は、親が世界旅行が当たったことで不在となるため、おばあちゃん暮らす茨城で生活することになります。ドキドキしながら迎えた転校初日、自転車で息切れし倒れたところを美しい少女・苺に助けられ、ちょっとドキドキ。「どんな子なんだろう……」と名前も知らずに探した末にたどり着いたのは、天文部の部室。天文なんて詳しくないけれど、もう一人入ってくれないと廃部だからと懇願され入部することに。星のことはよくわからないけれど、天文部の面々は個性的で楽しそう。気になるあの子の名前も知れて、新たな学園生活に心躍らせるしのでしたが…というお話。


ほしくずドロップ0001
入学初日に一目惚れし、そんな彼女を追いかけて同じ部活に入部する……という部分だけ見るとなかなかなアグレッシブボーイですが、性格はどちらかというとおとなしく、典型的な巻き込まれ型の不運くんという感じがする男の子です物語も、彼が色々なイベントやトラブルに巻き込まれていくことで進んでいきます。そんな中で好きな子にあれこれとアプローチしていくのですが、そのどれもが真っ直ぐで、見ているこちらが気恥ずかしくなるぐらい。青春を振り絞っている感じがしていいですね。そしてそういった行動が全力で肯定される空気感がこの作品には流れており、読んでいて実に心が現れる感じがします。


 遅くなりましたが、憧れの子の名前は世良苺さんと言います。小動物のような見た目で、無口で、不登校気味というなんだかとっても守ってあげたくなるような女の子。表情もあまり変わらないので、何を考え何を感じているのかがわかりにくいミステリアスなキャラクターです。たいていこの手のタイプって付き合い悪くなかなか連れないのですが、その分誘いに乗ってくれたりしたら嬉しいもので、主人公もそういう少ない喜びを糧に恋に頑張っている感じです。

 天文部の面々はみな個性的。先輩2名に1年生4名という構成で、男女入りまじっての活動です。真面目メガネやチャラ男系、不器用男子にふわふわ女子など、なんでもござれのラインナップ。1巻時点では本編にがっつり食い込んでくる感じはないのですが、物語が進めば色々と背景が明らかになって物語の彩もいっそう鮮やかになるのではないでしょうか。


ほしくずドロップ0002
主人公もそうなのですが、どの子も全く嫌味がなく見ていて非常に気持ちいいですしまぁみんな魅力的なんですよ。なんて、やっぱりこの中で一番好きなのは世良さんなんですけれどもね。まあかわいいかわいい。


 なんとなく土台が固まったかという所で1巻完結…と思いきや、最後の最後にものすごい設定を放り込んできており、2巻以降どう転がっていくのか想像つかず。とはいえ作品が放つ雰囲気には変わりないと思いますし、こういった大きな転換を受け入れる下地は、比較的低年齢向けであるARIAならではだとも思いますので、優しく見守りたいと思います。


【男性へのガイド】
→女の子かわいいですし、男の子主人公ですし、男女入りまじっての青春グラフィティは結構好きな方多いのではないかと。
【感想まとめ】
→ストーリー的に何かあるかというとそういうわけでは全然ないのですが、キャラ達がみな生き生きと動いている所が素敵な作品でした。優しい気持ちになれますね。


作品DATA
■著者:小嶋ララ子
■出版社:講談社
■レーベル:KC ARIA
■掲載誌:ARIA
■既刊1巻


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.17
1106491055.jpg遠山えま「四月一日さんには僕がたりない」(1)


不純異性交遊しましょうか
四月一日さん



■バレたら人生がオワル……
才色兼備の優等生・四月一日レイラの誰にも言えない秘密。それは、ラブホテルに住んでいるということ。ある日同級生の三月終とホテルで鉢合わせてしまったレイラ。秘密を守ってもらうかわりにまさかのラブホテル同居がスタート!でも、恋愛経験ゼロのレイラにとって、挙動も発言もゆる~い終との生活はすべてが予想のナナメ上で……。大人気作家が描く思春期迷走系ラブコメ、発信!

 低年齢向け少女漫画誌「なかよし」で指フェラだの耳舐めなど、ギリギリアウトなエロを描いて物議をかもした遠山エマ先生のARIAでの新連載です。最初に言っときます、本作ですが「わたしに××しなさい」よりもドイヒーな内容となっております。表紙からしてエロを匂わしていますが、中身も相当に下世話。では内容をご紹介しましょうか。

 主人公は高校で生徒会長を務める四月一日レイラ。その毅然とした態度に、学力も学年一位と、周囲からは尊敬の対象として見られています。そんな彼女が頑なに隠すのは、彼女の住み処。お城のような佇まいのそこは、なんとラブホテル。彼女の家はラブホテル経営で生計を立てており、居住スペースはラブホテルの中にあるのでした。こんなところを見られたら終わる……そんな危機感を抱え学園生活を送っていた彼女でしたが、ある日ホテルの一室で同級生の男子・三月終と鉢合わせしてしまいます。慌てふためいたレイラは、備え付けのコンドームとローションを浴びベッドに倒れこみます。そんな彼女の姿をすかさず写メに収めた三月終は、その写真と引き換えに、ラブホテルに住まわせてほしいと要求してきます。しぶしぶその条件をのんだレイラは、親の了承を取りラブホテルで一つ屋根の下生活を始めることになるのですが…というお話。


四月一日さんには僕が足りない0001
のっけからこれ。


上の画像を見てもらってもわかる通り、こんなのがちょいちょい登場します。こういったギミック的な表現は遠山エマ先生の得意とする所で、ARIAってなかよしほどではないけど、それなりに読者年齢層低めだったような気がしていたのですが、大丈夫なんでしょうか。車谷晴子先生の「兄が妹で妹が兄で」といい、そういった路線で攻めるっていう姿勢なんですかね。この他には、ヒロインが男の人に触れられると嫌悪感で汗だくになり、おもらしと見まがうほどの水溜りができるとか、ホテルの一室に終が住んでいるために、小道具的なものもちょいちょい使ってみたり(三角木馬とかコスプレ衣装とか)と、攻めまくり。

 かなり散らかった感のあるドタバタコメディなのですが、基本となるのはこの二人の恋愛模様という所になるのでしょう。生徒会でも一緒、家でも一緒ということで接近できる要素は多々あるのですが、ヒロインのレイラは男性嫌いというハンデがあり、また相手役の三月終も性格・生態などかなり謎に包まれたところがあり、お互いに一筋縄ではいかなそうです。三月終はことあるごとにレイラに対して意地悪な要求をしてくるのですが、その真意が見えずかなり不気味で、あんまり好きなタイプではないですねー。逆にレイラは遠山エマ作品のテンプレヒロインという感じで、安心感があります。

 この二人のほか、脇役達もクセが強そうな面々が揃っています。レイラを慕う女友達がアホ巨乳だったり、生徒会の男子たちは、いかにもいい人そうな子から、色々と頭が働きそうなメガネくんとか、1巻ではあまり目立ちませんでしたが、物語が進んで来ればもっと本編に絡んでくるかと思われます。


四月一日さんには僕が足りない0002
友達がアホ巨乳。素直でいい子なんですけれども、アホすぎてちょっと怖いっていう。

 
【男性へのガイド】
→いやーこれは評価に困る所ですねー。エロいとは言いつつも男が喜ぶそれかというとちょっと違うような気がするんですよね。
【感想まとめ】
→さて、この作品が人気出たら結構おじさんとしては心配というか怖いところがあるんですけれども果たして。×しなは割と大手を振っておおすめしていたところがあるのですが、さすがにこれは気が引けますね(笑)静かに様子を見守りたい作品です。


作品DATA
■著者:遠山エマ
■出版社:講談社
■レーベル:KC ARIA
■掲載誌:ARIA
■既刊1巻
■価格:円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.16
1106481919.jpg阿弥陀しずく「からっぽダンス」(1)



付き合って……
るんだと思います……




■惚れちまったらストーカー。
惚れる→追いかけ回す→フラれる……の3連コンボを繰り返す、ストーカー警官・久我が出会ったのは、片思いに破れたばかりの美人OL・月島さん。さっそく近づきデートに誘ってみたら、彼女に連れていかれたのは女だらけの東京ドーム。そして爆音と共に始まったのは、男性アイドルのコンサートで……!?

 阿弥陀しずく先生のフィールヤング連載作です。阿弥陀先生は存じ上げなかったのですが、主にBLで活躍されている漫画家さんのようです。本作はフィーヤンですから当然普通の男女の恋愛を描いた作品です。どういう話か説明するときに、如何とも言い表しがたい内容なのですが、まずはあらすじをばご紹介しましょう。

 メインで描かれるのは二人。まずは表紙に描かれている久我からですかね。彼はかなり惚れっぽい性格の警官で、これまでも様々な女性にアタックをしては付き合いフラれを繰り返しています。今回も意中の女性にフラれ、ラーメン屋で友人に愚痴を言っていたところ、一人でそのラーメン屋に現れたのが相手となるOL・月島さんでした。月島さんも失恋したばかりで、不意に涙が出てきたところを久我に見られてしまいます。それが彼の心を掴んだのか、久我はあっという間に一目惚れ。月島さんが自分の友人の知り合いだと感づくと、名前も知らないのに執念で月島さんまでたどり着き、連絡先を交換することに成功します。久我の積極性にたじろぐことなく、ひとまず食事、次にはデートと距離を縮める二人でしたが…というお話。


からっぽダンス10001
久我はストーカーと描かれていますが、いわゆる危ない感じの男というわけではなく、かなり行動力に長けた惚れっぽい男という感じです。暴力的というわけでもなく、自分勝手というわけでもなく、相手のことをとにかく思って行動するあたりは、割と好意的に受け取れると思うんですけどね。ただ時にそれがヘンな方向に働いて、彼女に会うために職場前でずっと貼りついていたり(制服姿で)してしまうことも。それを怖いとか思う人がいるようで、過去にストーカーとして通報された過去あり。


 一方の月島さんは「失恋した」と言っても彼氏と別れたとかではなく、告白をしたもののダメだったというのみ。実は長年彼氏がおらず、数年来アイドルグループの熱烈なファンをしています(ジャニーズ的な)。久我にこそ問題ありという感じの描かれ方ですが、月島さんの方も色々と問題はありそうで、そんな変わった二人が出会ってみたらどうなるだろうというのを描いたのが本作ということになります。

 かなりの積極性のある男と、消極的な女というところでなかなか合いそうな感もあるのですが、久我は相手の趣味に興味を持って突っ込んでいく性格の持ち主のようで、アイドル趣味とどう付き合っていくかというのも一つ見どころになりそうです。かくいう私も彼女がSMAPファンでコンサートに連れて行かれるという経験をしたことがあり、久我の反応を見るたびに「あるある」と思ったりも。ちなみにSMAPのコンサートは一般人にも知られている曲を中心に構成されていることから、私のような人間もすごく楽しむことができるので、万人向けにおすすめできるイベントです。チケ取りのためにファンクラブに入るよう勧められるってのもお約束なんですかね。


からっぽダンス10002
一応デートと言えどぶれはない。その後彼女は反省することになるのですが、彼女の様子に圧倒された久我はむしろ興味を強めることに。


 最終的にどういう所に落ちていくのかがあまり見えないのですが、カップルとして一つの形になったところで完結という感じなんでしょうか。お互いにカップルっぽい感じが1巻時点では見られるのですが、恋人らしい触れ合いは一切なく、これから楽しみな感じですね。


【男性へのガイド】
→変わったキャラではあるものの、総合的に見れば実に現実にありそうな二人の話で、ハードルは高くないものの読んでみて何かあるかというとそうでもなく。判断に難しいところがありますです。
【感想まとめ】
→アイドルファンと付き合うというところで謎のあるあるを感じてしまったのですが、それがなければ実に普通の恋模様。リアルさがあってそれが一つの味となっているのですが、一方でそれにみんなが面白味を感じるかというと、ちょっとそれはわからないですという感じでしょうか。



作品DATA
■著者:阿弥陀しずく
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC Swing
■掲載誌:フィールヤング
■既刊1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.15
1106491027.jpg有賀リエ「パーフェクトワールド」(1)



あの頃閉ざした感情が溢れてくる
もう 止められないほど
溢れてくる




■この世界は不完全……君がいなければ―――
 インテリアデザイン会社に就職した川奈つぐみ(26歳)は設計事務所との飲み会で、高校のときの同級生であり初恋の人・鮎川樹と再会する。樹にトキメキを覚えるつぐみだったが、彼は車イスに乗る障害者になっていた。「樹との恋愛は無理」。最初はそう思うつぐみだったが…。

 車イス生活者となった初恋の相手との再会・恋を描いたストーリー。作者の有賀リエ先生はこれが初単行らしいのですが、かなり扱いの難しいデリケートなテーマをメインに据えたにも関わらず、かなり読ませる内容に仕上がっております。帯の「Kiss連載時より反響殺到!」という言葉も、決して過剰な表現じゃないのではとも思えてきます。

 主人公はインテリアデザインの会社で働く川奈つぐみ。とある設計事務所との飲み会で、高校時代の初恋の相手である鮎川と再会するところから、物語は始まります。すっかりかっこよくなった鮎川を前に、高校時代に自覚しきれなかった想いが再び湧き上がってきたつぐみでしたが、その後鮎川が車イス生活を送る障害者となっていることを知ります。高鳴った胸と、事実を知り一歩引いてしまった自分……。複雑な想いを抱えたまま、それでも鮎川が気になるつぐみは、以来彼と積極的に連絡を取るように。少しずつ距離が縮まっている…そんなつぐみの想いとは裏腹に、「誰とも恋愛する気はない」とやんわりと壁作る鮎川は。というようなお話。


パーフェクトワールド0002
鮎川を強く意識するつぐみと、そんな彼女の心を知ってか知らずか、壁を作る鮎川。この時はまだ、車イスの人と恋愛をする大変さを全くわかっていなかった。


 初恋の彼と再会するも、相手が下半身不随の車イス生活者であるという壁があるという物語。Kissなので取り上げるワンテーマについてはしっかり掘り下げるため、車イスで生活していることの大変さ、そしてそんな人と寄り添い生きていく大変さというものがかなり詳細に描かれます。座りっぱなしによってできる褥瘡や、尿路感染による腎不全のリスク、行動範囲はどうしても制限され、また排泄も知らぬ間にしてしまっていることもあるという辛さ。我々の想像を超える不自由やリスクを前に、簡単な決意で恋愛などできようはずもなく、ヒロインは決心することをためらいます。

 鮎川もそんな苦しみを与えたくないと「恋愛はしない」と宣言してガードをかけているのですが、一方で夢を追いかけ一人東京で暮らしているという環境の中、精神面・身体面の両面でサポートがあった方が助かるというもどかしい状況。結果、つかず離れずの微妙な関係が1巻では続いていくことになります。決心をしていざ付き合うとなったとしても、周囲の視線や心身への負担など、色々と苦労は予想され、その道のりは平坦でないことは容易に想像がつきます。


パーフェクトワールド0001
鮎川は子供の頃からの夢を叶え、一級建築士として仕事をしています。夢を追いかけているという真っ直ぐさと爽やかさはやはり魅力的で、女性向けマンガの相手役たる男性と言えるでしょう。ちょっと無理をしすぎるというところも「放っておけない」という心を刺激して、女性からしたらどうにも惹かれてしまうという側面もあるのかも。いやはやなかなかなイケメンです。建築士という仕事においても自身が障害者ということもあり、バリアフリーの視点で様々提案できるなど、ある意味でそれが強みにもなったりしています。


 こういったテーマの作品は時折説教がましくなってしまうのですが、本作は上手く「ヒロインや相手役がぶつかっている壁」として作中に落とし込まれるため、一つの物語としてまとまりがあるように映ります。この手の作品では「IS~男でも女でもない性~」や「だいすき!ゆずの子育て日記」など、最終的にドラマ化する流れが顕著という印象がありますが、本作もある程度人気を博すようであればその辺まで視野に入ってくるような気がしています。「受けがいい」なんていうとやや不謹慎かもしれませんが、人気を集める傾向があるのは事実で、なかなかこれは注目しておきたい作品でございます。


【男性へのガイド】
→いかにも女性向けの恋愛マンガという感じはありますが、車イス生活者とのかかわりという面でも一つ勉強になるところがあるかと思います。
【感想まとめ】
→これは予想以上に面白かったです。今後悲恋の匂いが強いロマンスになっていくことはないとは思っているのですが、障壁は変わらず大きく、読むのに体力使う作品にはなっていきそうではあります。キャラや話運びもツボで、オススメしたい作品でした。



作品DATA
■著者:有賀リエ
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [BL] 2015.02.14
1106492691.jpgチョコドーナツ「ネコにさよなら」



……だけど
いい人だ




■捨てられた白いネコと、振られたばかりのサラリーマン。気まぐれに拾ったら、なんと人間に変身!?美少年(ネコ)の飼い主探しに協力するため、2人暮らしが始まった。泣き笑い癒され傷つき、シーソーのように揺れる気持ちが、生物の壁をこえた絆を築いてゆく……。

 本作はライトなBL要素をふくんだ、猫と人間の絆を描いた感動もの。主人公はいつも外面を気にしつつも、それが仇となってか「いい人」認定されてよく女性にフラれてきたサラリーマン・赤井。今回も「いい人だけど…」とフラれ公園で落ち込んでいたところ、一匹の白い捨て猫を見つけます。弱った心に響くところがあったのか、拾って帰ったのですが、なんと翌日その猫が人間の姿に…!何が起こったかわからない中、その猫・シロの話を聞くと、飼い主を探しているとのこと。これも何かの縁と、少しの間飼い主さがしを手伝ってあげることに。一緒に暮らすことで、だんだんと自分の中でシロの存在が大きくなってくる赤井ですが…というお話。


ネコにさよなら
突然ネコになったり、BL要素絡みつつとか、色々と特殊要素はあるのですが、泣かし方はかなり真っ当。序盤こそ同居もののドタバタコメディという感じですが、物語が進むにつれ、ストレートに感動できるように。


 ネコのシロは姿こそ美青年/美少年ですが、中身はかなりのわがままな子供という感じ。人懐っこく甘えてくるのですが、その可愛さに赤井もやられ、なんだか妙にドキドキするようになります。ドキドキする対象は男である上に猫…種別も性別も越えた想いということで、かなり特殊でクセの強い作品のように思われるかもしれません。けれどもいわゆるBL要素は薄めで、強く描かれるのは飼い主と猫の信頼関係・絆といった、より根源的な感情です。イメージ的には子供向けのアニメとかに近いかな、と。根となっている所(感動の源泉となる部分)が比較的ベタであることに由来しているのかも。ラストのシロの語りなんか、なかなか泣かせるんですよ。

 主人公の赤井は「絵にかいたいい人」ではなく、時に自分の感情を優先させてしまう人間臭いところのある人物です。詰まるところ、フツーという。シロは逆に「ネコはあんまり手がかからない」というイメージとは遠く、めちゃくちゃ手のかかる子って感じ。ネコを買ったことがないのでわからないのですが、感覚的にはここで描かれている内容に近い感じなんでしょうか。

 バレンタインデーということで、何かチョコレート物件を…と思っていたのですが、「失恋ショコラティエ」でド定番で行くよりも、ちょっとひねってこんな作品をお届けしてみました。作者さんがチョコドーナツ先生なので、いいかな、と。本作はふゅーじょんぷろだくとのCOMIC Beという雑誌で連載されていた作品です。BL作品も多数含んだ女性向けの雑誌で一般的にはかなりマイナーなのですが、最近は「魔法少女 俺」がヒットし、書店で平積みされているところをよく見かけます。本作も書店いくつか回ってみたのですが、大型書店でようやく発見できる程度。もっと読まれてほしいなぁなんて思う一作でした。 


【男性へのガイド】
→BL要素がありますので、ややハードルは高めかと思います。BL比で言ったらかなりライトなので、とっつきやすいかとは思いますが。
【感想まとめ】
→割とド直球の感動もので、そういう作品を欲している方にはうってつけなんじゃないかと思います。2人の小さな世界で織りなす、優しい物語です。



作品DATA
■著者:チョコドーナツ
■出版社:ふゅーじょんぷろだくと
■レーベル:Be Comics
■掲載誌:Comic Be
■全1巻
■価格:675円+税


■試し読み:第1話~3話(pixiv)

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Tag [新作レビュー] 2015.02.13
1106480406.jpg日当貼「オデット ODETTE」(1)




いいことあった?




■さぁ、今日はどこいこっか?
ドジだけど明るく素直な彼女と、彼女思いのやさしい彼(猫……?)。
カフェに水族館、いっしょに本屋さんも行こう。
ほんわか癒しカップルの、ゆったり「おデート」物語。

 日当貼先生のポラリス連載作です。表紙見て「ODETTE日当貼」ってタイトルかと思ってたのですが、作者さんの名前だったのですね、これはとんだ勘違いを…。ということで、「ODETTE」のご紹介です。内容は、「猫の彼氏とデートする」それだけです。ほんとに。それだけだとアレなので、それぞれどんな人(猫)なのか説明しましょうか。二人は付き合い始めたばかりで、まさにラブラブ盛りという頃合い。女の子の方は社会人で、非常に食いしん坊でおっちょこちょいな性格。名前は多恵ちゃんと言います。一方の彼氏は、落ち着いた性格で無口。名前が明かされることはありません。こんな凸凹な二人のデートの模様を、ただただ描いていきます。

 正直一番最初に想像していたのは、出オチ的な展開だったり、猫ネタ(オチ)をしつこく繰り出したりといったものだったのですが、読んでみるとむしろ「え、これ猫である必要あるの?」というぐらいには普通のカップルとして描かれています。もちろん猫ネタもあるんですが、それを前面に押し出す形にはなっていません。むしろ二人のやりとりをしていると目立つのは人間である彼女の方で、ドジでおっちょこちょいで調子乗りな性格が非常に愛らしい。彼氏はそんな彼女の抜けた行動を無口に優しく見守るという構図で、むしろ彼女の愛らしさを強調するために猫っていうアイコンを取り入れたんじゃないかとすら勘ぐりたくなるような感じだったり。


ODETTE.jpg
この作品の軸は猫ではなく、多恵ちゃんなんだと声を大にして言いたい。こんな子と付き合ってたら、楽しそうですよね(疲れそうだけど)。楽しい物語があればそれに夢中になるし、おいしそうにごはん食べるし、何に対しても「好き」って気持ちがストレートに表現されてくるところが素敵だと思います。


 恐らくですが猫様要素投入の恐らく一番大きな要因は、いちゃいちゃカップルを描きたいけれども人間同士だとどうしても鼻についてしまうので、中和するため…というところが大きいのかな、と思っています。いちゃいちゃというか、彼女が甘える構図ですかね。人間であっても無口でおおらかであれば良いとは思うのですが、こちらの方がキャッチ―ですし、猫好きにも訴求してくる部分がありそう。ともあれカップルの掛け合いがお好きな方は、この作品結構気に入るんじゃないかな、と思います。

 カップルでデートというテーマなのですが、いわゆる付き合う前後の緊張感やドキドキ感はゼロ。二人の間には信頼感に裏打ちされた落ち着いた空気が流れており、ドタバタはありつつも終始ほっこりと温かい雰囲気を楽しむことができます。あと各話のラストがすごくいい雰囲気で締められるので、なんだかすごくいい話を読んでいる感覚に包まれる不思議。まとめよければ全て良しではないですが、そこだけ味わうだけでも十分本作を読む価値はあるのかもしれません。

 ここまで書いてようやく気付いたのですが、タイトルのオデットって、「おデート」とかけてるんですね。


【男性へのガイド】
→イチャイチャドタバタしてるのを見るのが好きな方へ(※ただし彼氏は猫)。
【感想まとめ】
→面白さの源泉は日常ものに通じる所にあるような気がするのですが、いかんせん猫なんで日常じゃねーだろっていう。なんだか不思議な、けれども温かさを感じられる作品でした。温かみのある表紙で、まさに作品の雰囲気が出ている気がします。この表紙が気に入った方がいらしたら、読んでみてはいかがでしょう。


作品DATA
■著者:日当貼
■出版社:ほるぷ出版
■レーベル:ポラリス
■掲載誌:コミックポラリス
■既刊1巻
■価格:570円+税


■試し読み:ポラリスサイト

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Tag [新作レビュー] 2015.02.12
1106481875.jpg三島衛里子「私立ブルジョワ学院女子高等部外部生物語」



私は……
サロンの一員になれる!!




■誰もが羨むセレブ女子校「ブルジョワ学院女子高等部」。中でも中等部から内部進学した“内部生”たちの日常生活は庶民派の“外部生”えり子にとって驚天動地の連続で……!?セレブ女子校の内情と、セレブと庶民の埋められない(!?)格差を描く、カルチャー・ギャップ・セミ・ドキュメンタリー!

 「高校球児ザワさん」の三島衛里子先生による、セレブ女子高の日常を外部生の視点から描いた半自伝的作品になります。「ザワさん」が共学の学生生活っぽい要素をたっぷり詰め込んだ作品だったので、てっきり三島先生は共学出身かと思っていたのですが、どっこい実は女子高出身でしかもお嬢様学校に通っていたという。ブルジョワ学院として描かれているその高校は、中等部からの持ち上がり組(内部生)がお嬢様を地でいく人たちであるのに対し、外部生はガリ勉でモサイ感じが拭い切れず、どうしても越えられない壁というものが立ちふさがります。えり子は当然のことながら外部生。入学して驚愕した数々の出来事と、その中でいかにして生き抜いていったかという様々なエピソードが、面白おかしく描かれております。


ブルジョワ学院
日常的にバイオリンをするなんて想像がつかないし、していたとしてもそんなところにアザができるなんてわかりもしない。この文化的格差。そして「内部生はいけてるしそういうこともしているだろう」という、下世話な偏見。なかなか相容れません。


 描かれる時代は、ギャルを意味する渋谷系が最もイケているとされた時代。ルーズソックスに茶髪全盛というころでしょうか。女子校生はイケイケで、様々なメディアでもてはやされたころだそうです。自分はまだ小学生とかそのくらいでしたでしょうか。この頃は特定の高校がブランド化しており、ブルジョワ学院も例外でなかったそうで。。。

 私は大学まで一貫して国立・公立だったので、私立高校ならではの雰囲気とか内部生と外部生の帰属意識とか、そういったものには触れずに来たのですが、やはりわかる人にはわかるものなのでしょうか。資金力や育ちの良さ、それに裏打ちされたあか抜けた感…洗練されたおしゃれリア充な路線を走る内部生と同じラインで勝負するのはどうしても分が悪い。それ以外の路線で勝負せねばならない(と思い込んでいる)外部生たちは、あれこれと考えを巡らせて自分のアイデンティティを探っていきます。ただどうしても外部生根性が抜けないのか、内部生から認められるとなんか嬉しいっていうあたりは、なんだかわかる気も(笑)

 ザワさんとはだいぶ異なった作品のようにも見えますが、外から入ってきた異質な存在が織りなす笑いやほっこりといった構造は、同じなのかなと思います。こちらの方が自伝である分、自虐的に笑わせてくる部分が多くなってはいますが。また多分にバイアスがかかっているように思いますので、これがこの学校の真実かというと、もちろんそうではないはずですので(時代も違いますしね)。


【男性へのガイド】
→女子高ならではの内容で色気もへったくれもないですけれども、脱力しつつ楽しめる読み物で、ハードルはかなり低めかと思います。
【感想まとめ】
→掲載紙が休刊となったことで1巻完結、なんとなくふわっと終わっている感はあるのですが、終始肩ひじ張らず楽しめる作品でした。



作品DATA
■著者:三島衛里子
■出版社:秋田書店
■レーベル:motto!
■掲載誌:motto!
■全1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.11
1106491075.jpg田中相「その娘、武蔵」(1)



でっかい波だ
見たこともないでっかい波




■中学女子バレーボール界の頂点に立ち、名を馳せた巻田中学校のエース・兼子武蔵。全中優勝インタビューでバレーを辞めると公言した彼女は、心機一転、大仙高校で自由な日々を謳歌しようとしていた。しかし、身長184センチメートルと目立つ彼女はバレー部主将・律から目をつけられ……!?

 「千年万年りんごの子」の田中相先生の新連載です。なかなかインパクトのある表紙だと思いませんか?見ての通り、バレーボールマンガです。主人公は表紙に描かれ、タイトルにもなっている兼子武蔵。飛びぬけた身長と身体能力で中学バレー界を席巻し、難なく全国制覇を成し遂げます。バレー界を背負う至宝だと、その進路に注目が集まる中、彼女が放ったのは「バレー辞めます。部活なんて必死にやっても意味ない。」という言葉。兄が通っているバレー部のない高校・大仙高校へと進学をするのですが、そこには無いと思っていたバレー部が。部員は4人で同好会への格下げギリギリという状態の中、主将の律に目をつけられ、バレー部へ入ってくれと勝負を挑まれるのですが……という話。


その娘、武蔵0001
バレー部ということでキャラクターはたくさん登場してくるのですが、メインとなるのは2人に絞られてくるかと思います。まずは主人公の武蔵。184cmという高い身長の持ち主で、それに対する男子のからかいも全く気にしない、心も体も大きい女の子。類まれなバレーの才能はあるものの、中学時代にバレーをすることに違和感を覚え、以来頑なにバレーをするのを拒否してきました。そんな彼女に狙いをつけて、バレー部再建を目論むのがバレー部主将の律。イギリスとのハーフという変わり種ですが、そのきれいな見た目とは裏腹に、かなり気が強いご様子。バレーに前向きでない武蔵の気を引くために、わざと逆上させるような言い回しをしたりと、目的を達成させるためにはなんだってしてやるというような、意志の強さを感じさせる選手です。なおバレーの実力もなかなかのもの。実は大仙高校、元々バレー部は競合で春高にも出場するぐらいだったのですが、顧問の体罰問題が明るみに出てバレー部は解体、顧問は辞任し、選手たちの大半はバレーが出来る高校へと転校してしまったという背景があるのです。


 もうびっくりするくらいにスポーツもの。バレーものといえば「少女ファイト」なんかが最近だと目立つところですが、女性向けというところでいうと別冊マーガレットで連載されていた「紅色HERO」が記憶に新しいところですね。最近めっきり少なくなったスポーツものということで、それだけで無条件で応援したくなりますね。

 部員数は新人交えてギリギリの状態ではあるものの、部員達の実力はそこそこあるという背景があるため、1からチームを作って長期計画で頂点を狙うというアプローチはしないと思われます。3年生が卒業する前までにチームを作って、春高を目指すという比較的短期の計画。とはいえ順調にレベルアップが図れる環境かというとそうではなく、体罰問題の影響は尾を引いており、周囲からの風当たりは強く、また練習時間もある程度限られてきているようです。

 通常バレー部と言えば、目標に向かって一丸となって進んでいくという印象ですが、本作はちょっと変わっています。律はその行動からもわかるように、残り1年に懸けて本気で春高を狙っています。他の部員はそこまでの熱量かというと少し疑問で、それぞれの思惑を持って部に残っているという感じ。武蔵も一度は嫌になりやめたバレーをもう一度始めるのですが、上を目指して…というよりは、自分にとってバレーとは何かを見出す試行錯誤のアプローチを見せます。最終的に各人の思惑がどういったところに着地するのか、またその結果チームはどこまで勝ち進めるのか、大小2つのアプローチで少女たちの青春を鮮やかに描き出していきます。


その娘、武蔵0002
田中相先生の絵柄でスポーツってあまり結びつかなかったのですが(割とかっちりと収まったコマ割りとか、キャラ造形なので)、バレーのシーンでは変則コマで動きを表現。ダイナミックさにはやや欠けるかもしれませんが、スローモーションを連想させる描き方で、手に汗握るシーンを描き出します。


 そうそう、あと気になったのが新たに顧問になってくれた先生が完全に宮史郎なところ。これ偶然宮史郎的になってるんですかね?不祥事後ということでなかなか顧問になってくれる人がいない中、素人ながらバレーファンである彼が奮闘する姿も、今後見られそうで楽しみ。1巻時点ではバレー部が動き出したというところで終了。2巻以降、いよいよ活動が加速してきそうで、非常に楽しみです。

 
【男性へのガイド】
→スポーツものなので、やはり他作品比で読みやすいんじゃないかと思います。どうして部活をやるのか…という所があるぶん、動き出しは遅くなっているのですが、2巻以降で取り戻すんじゃないかと。
【感想まとめ】
→スポーツものであるってだけで応援したいのですが、それを差し引いても普通に面白いです。オススメです。



作品DATA
■著者:田中相
■出版社:講談社
■レーベル:KC ITAN
■掲載誌:ITAN
■既刊1巻


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.10
1106472774.jpg鈴木有布子「ひとふれ」



だから響子さん
ぼくのこと
好きになってよ




■美人でピアノの腕もいいのに、自己評価の低い音大生・佐藤響子は、担当教官の紹介で出張ピアノ講師のアルバイトをすることに。教え子は超名門校に通う優秀な頭脳と、高いコミュニケーション能力、イギリス人の美しい母似のビジュアルを持つ、自信に満ち溢れた少年・能登瑛流(中2)。自分と真逆な属性の年下の教え子にコンプレックスを抱く響子。今まで派遣されてきた講師を次々クビにしてきたと言う瑛流に、(恋愛的な意味で)気に入られ、猛アタックされはじめて……!?
 鈴木有布子先生のアヴァルス連載作です。鈴木先生も色々な媒体で描かれており、当ブログでも何作がご紹介しているのですが、本当に作品が途切れないですね。さて、本作ですが、美人音大生と生意気中学生の凸凹ラブコメディとなっています。主人公は20歳の音大生、佐藤響子。美人で、優秀な生徒しか担当しないという宇佐美先生が講師を務める実力派と、周囲からは憧れのまなざしで見られている彼女ですが、仕送りがストップされバイトで生活費と学費を稼ぐという苦労人。さらに先輩から言われた一言が原因で、現在ピアノは絶不調という状況。頼りにしていたバイト先が潰れ、新しい働き先を探していると、時給の良いピアノ講師のバイトを紹介され、引き受けることになります。行った先にいたのは、豪邸に住む将来有望な中学生の男の子・瑛流くん。彼に恋愛的な意味で気に入られてしまった響子は、以来彼の超積極的なアプローチを受けることになるのですが…というお話。

ひとふれ
年上らしく毅然とした態度で接しようとするも、生意気瑛流くんに響子はたじたじ。美人ながら恋愛にはオクテなようで、日々を生きるのに精一杯です。


 年の差の禁断ラブという感じのあらましですが、鈴木先生のこれまでの作品からも読み取れるように、決して恋愛一本で展開されるわけではなく、自身が抱える悩みなどを解決しカタルシスを得るというような構造の作品になっています。本作で言うと、ヒロイン・響子の自己評価の低さが軸となります。自己評価の低さを改めるには、他者からの承認や成功体験などが必要となってくるわけですが、その役目を果たすのが瑛流くんというわけです。

 講師たちを次々にクビにしてきたお金持ちで生意気な男の子というと、何やらとんでもないクソガキが登場しそうな感じを受けますが、別にそんなことはないです。講師が気に入らないとクビしていたのは、瑛流くんの母親で、彼自身は特にこだわりはない様子。ただ自分自身に自信があるという所はゆるぎなく、強気に響子にアプローチをしてきます。けれども経験豊富というわけではないので、積極的に想いを伝えるという以外に打つ手はなく、なかなか相手にしてもらえません。登場時こそ手ごわそうな印象を受けたものの、中盤以降は「瑛流がんばれ!」と応援する気持ちになっていました。

 後半には瑛流の友達たちも登場し、比較的にぎやかな様子に。1巻完結でボリュームは少ないながら、そうした脇役たちによってメイン二人の背景を補強し、しっかりと地に足ついた物語となっています。みんな変わり者なんですけどね。


【男性へのガイド】
→生意気な年下男子がお姉さんに必死に食らいつくっていう設定は果たしてどうなんでしょう。
【感想まとめ】
→登場人物が少ないながら、到達すべきゴールに向かうにあたって必要な要素を落とし込み、しっかりと経由してから物語は完結と、読んでいて非常に安心感のある内容となっています。大きな感動や、心ふるえるロマンスがあるわけではないのですが、読み終えて一つ温かいものが心の真ん中に浮かび上がり、前向きな気持ちになれる作品です。


作品DATA
■著者:鈴木有布子
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:アヴァルスコミックス
■掲載誌:アヴァルス
■全1巻
■価格:571円+税


■試し読み:第1話(pixiv)

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Tag [新作レビュー] 2015.02.09
1106472645.jpg晴海ひつじ「こもりとてんま」



私はこうして天磨くんの隣にいれて
幸せだよ




■小森雛は素直で天然な田舎町の中学生。そこに都会から転校してきた、お金持ち&天才の天磨一樹。…と、食いしん坊で女の子が大好きな愛犬・秋伸。超特別扱いで天磨「様」と呼ばれる彼に、興味を持たれた小森は……!?ちぐはぐな2人と1匹、ふんわり青春ラブコメ!

 晴海ひつじ先生のデビュー単行本になるんですかね?1巻完結で、LaLaDXにて連載されていた作品になります。内容は少女漫画では王道とも言える、超絶お金持ちのお坊ちゃまと庶民のヒロインとの格差ラブです。物語の舞台となるのは、長閑な田舎町。なぜかこの土地に転校してきた、日本はおろか世界でも有数の大企業・天磨グループの御曹司・天磨一樹。勉強は天才的で運動も万能、バックグランドは先述の通りと、すべてが完璧な彼は周りから天磨「様」と呼ばれ、畏れられていたのでした。ひょんなことから、そんな彼にタメ口で失礼な発言をしてしまったのが、同じクラスの小森雛。「とんでもないことをしてしまった…。気まずい…。」そんなことを思っていたら、なぜか天磨様は彼女のことが気に入った様子で、以来彼女のことをやたらと気にかけるようになったのですが…というお話。


こもりとてんま
秋伸がなかなか癒される造形。


 天磨は幼いころから畏れられ特別扱いを受けてきたことから、彼らとの壁を感じ傷つき、かなり身勝手で頑なな態度を取るようになっていました。そんな彼の唯一の癒しは、愛犬である秋伸。犬は人間と違い、バックグラウンドで人を判断しないので、唯一信頼が置ける存在なようです。そんな中、自分に対して失礼な振る舞いをする(してしまった)ヒロイン・小森雛に対して、「こいつは同じ目線で話してくれる」と感じた彼は、一気に彼女に絶大な信頼を置くようになるという流れ。長期連載などでは、一応反発があったりするのですが、本作はそこまでゆったりしていられないので、すぐに信頼を置くようになるという、比較的都合のよい展開となっています。

 その後は雛が天磨を、他のみんなと馴染ませようとしたり、雛のピンチに天磨がその力を駆使して助けたりと、ドタバタを経て仲を深めていく形となります。とにかく天磨のお金持ち力が半端なく、どこか現実感がないストーリーとなっているのですが、そもそもの設定からもわかる通り、あくまでファンタジーとして読むお話ですから、はい。また内容的にはあまりひねりはなくシンプルな物語展開となっており、比較的低年齢層をターゲットとしたお話かと思います。マーガレットとかに割とありそうな感じの。

 絵柄はデビュー単行本ということからなのか、1話目と最終話ではかなりの変化が見て取れます。1話目のヒロインは「ちょっと太い?」という印象があったのですが、最終話ではすっきりした佇まい。キャラの成長という線もあるのですが、多分これは作者さんがこなれてきたからかと思われ、そういった部分も楽しんで読める作品となっています。


 
【男性へのガイド】
→いわゆるファンタジックな設定の王道少女漫画ということで、男性にはハードル高めの領域に属する作品かと思います。【感想まとめ】
→設定から描くべき物語はしっかりと詰め込んだシンプルな作品でした。秋伸が癒しキャラとして良いアクセントになっていました。こと面白いところがあるかというと、そこまで目新しさはなかったのですが。



作品DATA
■著者:晴海ひつじ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX
■全1巻
■価格:429円+税


■試し読み:第1話

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2015.02.08
1106476671.jpg深水チロリ「春待ヴァルツ」(1)



青春が季節のように また巡ってきたとしても
同じ春は二度とこない




■今カノと元カレの間でワタシは揺れてる
 女子高生・三澄糸は三年生になった春、親友の加古川莉緒に告白されて付き合い始める。女の子同士だけど「好き」をかみしめる二人。そんな中、新しく赴任してきた非常勤講師の男性を見て糸は驚く。彼は、かつて糸と付き合っていた年上の幼なじみ・佐倉巴だった……。心ざわめくラブ・アンサンブル第1巻!

 深水チロリ先生の、コミックスピカ連載作です。あらすじは冒頭の通りで、ヒロインは普通の女子高生・糸。そんな彼女は女子高に通い、今好きあっている相手は同じクラスの女の子・莉緒です。ささやかな幸せをかみしめていた中、非常勤講師として赴任してきたのが、中学生の時に付き合っていた幼馴染の男の人・佐倉。冷たくフラれ、軽くトラウマとなっていた相手が現れたことで、糸の日常は不安定に揺れ始めます。どういう魂胆なのか、ヨリを戻したいと思っているように受け取れる彼の言動の数々に糸は動揺し、そんな彼女の様子をつぶさに感じ取り、焦り同じく動揺する莉緒。二人の間で揺れる、難しい年頃の女の子の心情を、繊細に描き出します。


春待ヴァルツ0001
こんな百合っぽいシーンも。ごちそうさまです。置かれているシチュエーションとは裏腹に、ヒロインの糸はその年なりの繊細さを持っている、普通の女の子なのですよね。気が強く誤解を受けがちな中、一番の理解者である莉緒に全幅の信頼を置いています。


 選択肢は“現状維持で女の子同士”か、“元さやで教師と生徒”か、というどちらもタブーという複雑な状況。こういう設定はメジャーな少女漫画では難しく、スピカのような媒体ならではという感じがしますね。ヒロインの気持ち的にはもちろん今の相手を選択したいと思っており、何もしなければ変化は起こるはずもないのですが、そうは問屋がおろしません。偶然絡みが生まれてしまうだけでなく、佐倉は明確に糸に対して好意を抱いており、あれやこれやと糸との接点を作ってきます。

 さらには二人の過去を糸の母親がなんとなく気づいており、不必要に二人を会わせようとするなど、まぁ何かと糸の思惑とは逆の方向に流れるという。またそんな状況に莉緒は焦り、自ら自滅する流れもあるなど、決して二人の関係は盤石とは言えなくなってきます。加えて物語が少し進むと、大学時代の佐倉の元カノが臨時講師として学校に出入りするようになり、関係は一層複雑に。こんな一か所に集中するかいというツッコミは置いておいて、複雑ながら非常に面白い様相を呈してきます。


春待ヴァルツ0002
頭では「相手にしちゃいけない」とわかってはいても、気持ちがどうしても反応してしまう。


 読んでいて思うのは、とにかくヒロインに優しくない展開が続く、ハードモードな物語だなぁということ。ヒロインにも色々と考えがあるのですが、それ以上に周囲の大人たちの意思が強く働き、それに抗いきれずに翻弄されてしまうというきらいがあります。この年頃の女の子が抱えるには、あまりに大荷物で、潰れてしまわないか心配になるくらい。何もしなければこのまま莉緒と…という路線になるのですが、周りがそれを許さない状況に追いやり、結果的に明確に糸の意思をもって「決断」しなければ状況は打開できないのです。そのため読んでいて一切気持ちよさはなく、むしろモヤモヤとしたものが残る後味の悪い類の物語にも思えるのですが、それを余りある繊細な雰囲気で補い読ませてしまう、絶妙なバランスの上に成り立っている作品と言えましょう。

 どのキャラも脆さを抱えているタイプに思われ、実に扱いにくそうな面々が揃っていますね。そんな中唯一の良心とも言えるのが、教師の惣田先生でしょうか。最近の若者然とした佐倉にも根気よく付き合い(巻き込み)、彼の気持ちに気づきつつ、彼の元カノを学校に呼び寄せるという野次馬根性の塊(あれ、この人もダメな人だ……)。登場回数が多い中で、唯一複雑な輪の中に入っておらず、ある程度冷静に状況を見れているという安心感があるからですかね、この人見るとホッとするんです。ほかの人たちはバイアスかかってて、どうにも。これ、読者の置かれている立場によって、肩入れするキャラが相当違いそうで面白そうですね。


【男性へのガイド】
→百合的な要素は百合男子への訴求効果は抜群では。普通の恋愛ものとして見ても、こういった繊細な雰囲気が好きな方はそれなりにいると思われ、設定に抵抗がなければいけるかと思います。
【感想まとめ】
→いかにもマンガ読み受けしそうな内容だなぁと読んでいて思ったのですが、あんまり周囲で反応がないような気がするのは気のせいでしょうか。オススメです。



作品DATA
■著者:深水チロリ
■出版社:幻冬舎コミックス
■レーベル:BIRZ COMICS SPICA
■掲載誌:コミックスピカ
■既刊1巻
■価格:630円+税


■試し読み:第1話


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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.08
1106472379.jpg佐藤ざくり「たいへんよくできました。」(1)



今日の私は人生初の
たいへんよくできました
だった気がする




■野々山ぼたんは、ひきこもりな人生を送ってきた女子。友達作り!恋もしたい!と寮付きの高校へ入学して華々しく高校デビュー……なんてできるワケなく、空回りばかり。でも、「友達なんかいらない!」と言い放つワケあり男子・甘藤くんとの出会いから運命が変わりはじめる!?

 「おバカちゃん、恋語りき。」や「マイルノビッチ」の佐藤ざくり先生の新連載になります。それではあらすじをご紹介。主人公は小中と引きこもって過ごしてきた女の子・野々山ぼたん。いずれも1年の時に登校拒否になったので、ほとんど学校には行ったことがありません。そんな彼女の唯一の楽しみは、自分でつくったぬいぐるみに話しかけること。けれどもこれだけじゃ虚しい……と、心機一転、寮付きの高校に入学し、華やかな高校生活をスタートさせようとします。友達たちに囲まれ、時には恋なんかしちゃったりして。。。と期待を膨らませるぼたんでしたが、そう簡単には事は運ばず、なかなか馴染めないままに日々は流れていくのでした。そんな彼女と最もよく絡みがあるのが、イケメンながら全く人をよせつけない甘藤くん。自分とは正反対の考えの持ち主である彼でしたが、何故だかぼたんと通じるところがあるようで。。。


たいへんよくできました10003
 佐藤ざくり先生の作品は、ヒロインがかなりハードモードな人生を送っている印象があるのですが、本作もなかなかにハード。過去の出来事もさもありなんですが、高校に入学してからも、純粋に友達を作りたいと思っているヒロインに対して、ちょっと性格に難ありな女の子たちからのアツい洗礼が。いやー、やさしくないですね。しかしながら、それを乗り越えてこそヒロインの魅力がより発揮されるわけで、安定の佐藤ざくり節と言いましょうか。またそういった出来事があるからこそ、相手役もヒロインを手助けしたくなりますし、距離もより縮まりますから。


 ヒロインのぼたんですが、小学校の時には男子にたくさん虫をプレゼントされたことがショックで登校拒否に、また中学の時には、学校で大人気だったサッカー部の先輩の告白を断ったところ、女子たちから無視されるようになり登校拒否にと、見た目はかなり可愛い方だと思われます(作中で言及ないのですが)。そのためひきこもりテンプレートな、暗い性格の地味めな子というわけではなく、むしろ見た目の良さが災いしてトラブルにみまわれたという、「日々蝶々」のすいれん的な子と言えるでしょう。そんな彼女の相手役となるであろう甘藤くんも、かなりのイケメン。1巻時点ではほとんど過去に触れられることは無いのですが、おそらくその見た目が災いしてトラブルに見舞われ、以来人間関係にうんざりし、人との触れ合いを拒否するようになったものと思われ、置かれていた過去はぼたんと同じなんじゃないかと匂わせています。


たいへんよくできました
 ヒロインはそんな過去を経て、より「友達が欲しい」「恋がしたい」と願うようになり、一方の甘藤くんは頑なに拒否しようとするという。相反する二人ですが、ぼたんの友達欲しいという思いは甘藤くんにも向けられ、甘藤くんもそれに少しずつほだされてくるという関係性を見せます。


 未だに「おバカちゃん~」の印象が強くて、そこからするとかなり絵がこなれていて驚くのですが、もう巻数も重ねているのだから当たり前ですよね。それぐらい印象深い作品だったのですが、本作がそのイメージを塗り替えてくれることを期待したいところです。さすがに長期連載を見据えており、1巻時点では情報が揃いきらないぐらいの進展度。巻数を重ね、ますます面白くなって来そうな予感がしています。

 
【男性へのガイド】
→相手役の性格や、ヒロインの周囲にいる性格きつめの女子たちは、男性にはややとっつきづらい所があるかもしれません。
【感想まとめ】
→一筋縄でいかないハードモードな学園青春物語ということで、爽やかさや気持ちよさはないのですが、そんな苦境に向きあい頑張るヒロインの姿に勇気づけられます。おすすめです。


作品DATA
■著者:佐藤ざくり
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:マーガレット
■既刊1巻
■価格:400円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.06
1106491297.jpg都陽子「地下アイドル、職場の男にバレまして」



また踊ってみせてよ
俺のために



■田中桐子、27歳。平日は“派遣の田中さん”、週末は“地下アイドルのキリちゃん”として2つの顔を持つ彼女は、ある日、路上で撮影イベントをしていたところを職場の性悪男・平野に見つかってしまう。平野は「バラされたくなかったら俺のいうこときいてよ」と言い出して……?いじめっ子サラリーマンと卑屈なアイドルの脅し口説かれラブコメディ!

 「彼は女とシたことない」の都陽子先生のフィール2作目の単行本になります。あらすじはもうタイトルを見れば一目瞭然ですので説明は不要でしょう。それ以上でもそれ以下でもありません。それぞれの登場人物に触れておくと、ヒロインは27歳の派遣OLさん。アイドルになりたいという夢を捨てきれず、この年になっても地下アイドルとして活動を続けています。職場ではメガネで地味めに過ごしていますが、ひとたびアイドルにギアチェンジすればキラキラ輝き、地下ではある程度人気を博しているようです。そんな彼女に気づいちゃったのが、同僚の平野という男。顔が良く、仕事もできる、若手の中では一番の出世頭という優良物件ですが、そのハイスペックが災いしたのか、歯に衣着せぬ物言いで敵も非常に多い人物です。加えてドSの気があり、ヒロイン・桐子のアイドル姿の写メをネタに、アレコレと彼女に要求するようになります。


地下アイドル、職場の男にばれまして0001
ヒロインの地下アイドル業に対する心持ちは、非常に気高いものがあります。ファンには全力でサービスをし、身体のコンディションは常に最高の状態をキープできるよう、手入れに余念がありません。ちょっとイタめのヒロインなのかと思っていたのですが、彼女がアイドルを目指した背景を知れば知るほど応援してしまいたくなる不思議。あー、こうしてアイドルにはまってしまうのか……と、ふと読み終わりに気づいたのでした。


 「彼は女とシたことない」は童貞男が相手役でしたが、今回はハイスペックイケメンを据えてきており、全く異なるタイプ。また前回はメインの2人がぶつかり反発し合いながらも、それを越えて距離を縮めるという関係構築を見せていたのに対して、こちらは全く軸がぶれない相手役にヒロインが振り回されながらも、なぜだか心開いてしまうという展開で、キャラもアプローチもだいぶ異なる内容で、作者さんの引き出しの広さが垣間見えます。どちらも面白いお話だと思うのですが、私はこちらの作品の方が好きですかね。

 俺のいうこときいてよと脅されるわけですが、具体的にどういうことをさせられるかというと、休日に家に呼び出されて踊らされたり、仕事をあれこれ頼まれたり、一緒に食事させられたり…。普通であればうんざりするはずなのですが、時折キュンとするような言葉やしぐさを織り込んでくるので、嫌いになりきれないという。冒頭では「性悪」と紹介されていましたが、悪意あるタイプではなく、自分の興味や感動に非常に素直な性格であるというだけかと思います。結果的にドSであることには疑いの余地はないのですが、いわゆる圧をかけるタイプではなく、どこか物腰柔らかくズケズケと物言う不思議なジャイアンという感じでしょうか。


地下アイドル、職場の男にばれまして0002
二人だけのやりあいではそこまで急に仲が進展するわけではないので、そこに色々なトラブルを投入してくるわけですが、それもアイドルならではのもので、ちょっと普通の恋愛ものとは違ったテイストで楽しむことができます。ストーカーだったり、スキャンダルだったり、ライバルだったり、実際の地下アイドルってのもやっぱりそうなのでしょうか。大変です。

 長年こうして意識高く続けていると、これが彼女のアイデンティティになってきますので、普通の女としての自分と、アイドルとしての自分の間での揺らぎが生まれ、彼女を思い悩ませることになります。元々はアイドル活動こそ全てで、そこがメインだったわけですが、平野の登場により、普通の女性としての自分が少しずつ大きくなるという。アイドルであれば当然恋愛は禁止なのですが、一人の女としては恋愛もしたい。そうした葛藤の中で、本作は最後に収まるべきところに収まるのですが、これがなかなか心地よく泣かせるんです。



 
【男性へのガイド】
→キャラ配置とか見るとまさに女性向けという感じなのですが、アイドルを応援する気持ちがいつしか生まれていたので、割と男性もいけるんじゃねーかと思ったり。
【感想まとめ】
→面白かったです。出オチ系・おバカ系かと思っていたのですが、なんだか思いのほか良い話で、読み終わりにすごく得した気分に。オススメです。



作品DATA
■著者:都陽子
■出版社:祥伝社
■レーベル:FC swing
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:680円+税


■試し読み:第1話

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2015.02.05
1106482003.jpg冬芽沙也「最果てのアオ」(1)



約束だよ
必ずまた
会いに行くよ




■サイハテと呼ばれた地にある調査機関「スフィア」。そこには養成学校があり、ブルーチルドレンと呼ばれる子供たちを育成していた。彼らは、特殊能力を植え付けられた子供たち……。しかし、その施設は3年前、爆発事故を起こし、その姿を失った……。

 冬芽沙也先生の2冊目の単行本です。「最果てのアオ」ってタイトル、なんか聞き覚えがあるなと思って考えていたら、「死にぞこないの青」が出てきました。全然似てなかったです。さてそんな話はさておき、内容をご紹介しましょう。主人公のハルは、3年前に事故によって記憶を無くし、今は元警察官の青年・霧生に引き取られ日々を送っている学生。楽しい友達たちに囲まれ、思い出せない過去は気になりつつも楽しく生きていました。そんな彼の日常が変わったのは、社会科見学で“サイハテ”と呼ばれる地を訪れてから。サイハテにある特殊調査機関「スフィア」の跡地に既視感を覚えたハルは、その夜得体の知れない何かに襲われ、見知らぬ少年に助けられる。混乱している中ハルは、自分がスフィアで秘密裏に育成された子供であり、死なない身体の持ち主であることを聞かされる……というあらまし。


最果てのアオ0002
突如襲われ、わからぬままに守られたハル。この夜を境に、一気にハルの日常は変わっていくことになる。


 ゼロサム(本作はWARDですが)らしいファンタジー作品です。物語背景をざっくりとまとめると、調査機関「スフィア」という怪しげな組織が秘密裏に優れた資質(特殊能力:ブルー)を持つ子供たちを生み出し育成していたものの、3年前に証拠隠滅(?)のために建物もろとも組織は解体。主人公であるハルはその子供で、何やら大きな秘密を握っている模様。当然そんな彼は様々な者から狙われるワケですが、一方彼を守ろうとする者たちもいます。それが彼の保護者である霧生であり、クラスメイトに扮して彼を見守る、スフィアで育った子供であり。またこの世界は厳密に区域分けされ、ハルたちが暮らしているのはいわゆる富裕階層。その近くには貧困層が住む地域があるものの、決して出入りは出来ないようになっているのですが、その辺りもスフィアの設立背景と絡みがあるようで、おいおい明らかになって来そうです。こうした舞台背景からもわかる通り、いわゆるディストピアものの要素を多分に含んだ物語設定で、個人的には大好物の部類。コミカライズ作品ではありますが「No.6」(→レビュー)が完結してしまった中で、本作が登場してきたのはまさに日照りに雨とでも言いましょうか。

 先述したハルを守ってくれる同級生は2人。一人はぶっきらぼうでいかにも不器用という感じの男の子・冬馬。もう一人は女の子で、独特の性格の持ち主である螢。男子の友情的なパートは冬馬との絡みで補給し、男女のアレコレは螢との絡みから、と少ないながらも抜かりない配置。螢に関しては物語途中から同居することになるので、これは色々とイベントを期待できそうです。


最果てのアオ0001
 この螢がなかなかの変わり者で、ハルへの思いの強さは人一倍。ただそれが恋愛感情かというとそうではなく、執着とか信奉とか、そういう類の感情のような印象が強いです。


 ゼロサムに限らずこの手のファンタジー作品でありがちなのが、序盤にあれこれ登場人物や特殊設定を投入しすぎた結果、読者に不親切な内容になり振り落とされてしまうというパターン。そんな中で本作は、比較的一般的(細かい説明不要)な中二要素・ワードで背景を構成しているからか、無理なく物語を説明・展開できている感があり、読者がついていきやすい部類に入るのではないかと思っています。あくまでゼロサム比ですけれども。あとは広げた風呂敷を無理なくたためるか(=ある程度連載が続くか)が鍵となりそうですが、そこは祈るのみ…と。

 
【男性へのガイド】
→絵的には女性向けの耽美な風合いは少なからずあるため、そこが一つハードルになるでしょうか。物語自体は中二好きしそうなファンタジー作品ですので、男女というよりもむしろそういうのが好きか否かかな、と。
【感想まとめ】
→非常に好きな設定の作品なので、是非とも続いてほしいところです。面白かったです。



作品DATA
■著者:冬芽沙也
■出版社:一迅社
■レーベル:ゼロサム
■掲載誌:ゼロサムWARD
■既刊1巻
■価格:580円+税


■試し読み:第1話(Pixiv)

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Tag [新作レビュー] 2015.02.04
1106472773.jpg青桐ナツ「あめつちだれかれそこかしこ」



わかってる
私が怪しいのはわかってる




■ヒゲとこどもと高校生が。
 両親を亡くし、身寄りは他にないと思っていた青司にもたらされた、祖父の遺産相続話。よくわからないうちに相続したのは、平屋の古民家。しかも住んでみると、自分以外の住人が……!?土着日常奇譚の幕開けです。

 「flat」の青桐ナツ先生の新作です。今作は、神様と繰り広げる家庭内バトルという、ファンタジックな要素を含んだ一風変わった日常コメディです。主人公は両親を亡くし、天涯孤独になってしまった青司。ところが最近になって親族が見つかり、祖父から古い平屋の一軒家を相続することになります。その家で暮らすことにした青司は、煤けた家の掃除を手始めにすることに。だんだんと家がきれいになっていくのと同じくして、何やらヒゲのおじさんの姿が濃く見えてくるように。声まで発するそのおじさんの言うことには、彼は年神という存在とのことで、彼との不思議な同居生活が始まるのでした。さらに納戸には子供の神様がおり、ヒゲと子供との3人暮らしに。さらにこの家は、得体のしれない何かを引き寄せる力があるらしく、度々ヘンなことが起こるのですが、、、というお話。


あめつちだれかれそこかしこ0007
この傍若無人な神と、それに全く動じることなく対抗する青司。この淡々としたペースで繰り広げられる、どこかローテンションなネタ。いいです。


 「flat」は小さい子供にあれこれ振り回される脱力系日常コメディでしたが、本作も構成する要素こそ変化があれど、そのスタンスは大きくは変わっていないのではないかと思います。青司は日々平穏に生きたいと願っているのですが、それに反して2人の神様はそれぞれ彼の日常を乱します。子供の納戸神は働きもせず、家でテレビばかり見て、働きもせず散らかすばかり。さらにはあれやこれやと青司に命令をしてきます。おじさんの年男は、穏やかな性格で比較的無害なのですが、いざというときに頼りにならず、時折青司をイライラさせます。

 神様相手ですが青司はひるむことなく立ち向かっていきます。「自分のことは自分でやれ」と堂々と立ち回り、その態度で神様をある程度従わせてしまうという、なかなか肝の据わったキャラクターです。両親を失い、もう怖いものは何もないということなのでしょうか。こういう不思議な存在を相手にしたときでも、これと言って動じることなく話が流れていくのは、青桐ナツ先生ならではという印象がありました。やいのやいのやりあいつつも、振り返ってみればにぎやかで楽しく、しっかりとそこに自分の居場所があったという類の日常ものでしょうか。

 古民家自体が得体のしれない存在には居心地が良いらしく、不思議な出来事が様々起こります。この流れは「夏目友人帳」に通じるものがあるのですが、驚きはしつつも言うほど動じてないところなどは夏目に似ているかも。ただ手段選ばずあれこれやる冷酷さも持ち合わせており、いわゆる夏目的な感動話は一切ないことはお断りしておきます。あくまでコメディなので、コメディ。



 
【男性へのガイド】
→男たちの同居というと、BL的なアレがアレでという想像もできるのですが、普通に読んでいる限りではあんまりその辺は強く感じることはありません。女性キャラが少なく、桃色要素が少ないのは確かにありますけれども。
【感想まとめ】
→巻数表示ありませんが、どうも本誌では連載が続いているようで、またお話がたまれば続刊発売があるんじゃないでしょうか。どんな状態の時でも楽しく読める、脱力系の日常奇譚ということで、幅広い人におすすめできる作品ではないでしょうか。



作品DATA
■著者:青桐ナツ
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:アヴァルス
■既刊1巻
■価格:571円+税


■試し読み:第1話(案内ページ)

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.03
1106463497.jpgアサダニッキ「星上くんはどうかしている」(1)



しょうがないから
あたしが友達になってあげる




■「似てない双子」と有名な2人の星上くん。兄・望はぼっちで、弟・求は人気者。三毛野いさりは「友達の作り方を教えてほしい」と望に頼まれたのをきっかけに、正反対な2人に振り回されることになって……!?八方美人女子×似てない双子のトライアングルラブコメ第1巻!

 「ナビガトリア」(→レビュー)や「青春しょんぼりクラブ」(→レビュー)を描かれているアサダニッキ先生のデザートでの連載作です。早速内容の方をご紹介しましょう。ヒロインの三毛野いさりは、八方美人な性格で、誰とでも適度の距離を取り馴染んでいる計算高い女の子。そんな彼女がある日風紀委員になることを命ぜられるのですが、ペアとなった男子は「ハズレのほうの星上」。校内で似てない二人として有名な星上兄弟のうち、暗くて挙動不審な“ぼっち”の兄・望の方なのでした。彼は何を思ったのか、いさりに友達の作り方を教えてほしいと頼んできます。乗り気のしないいさりでしたが、真剣な彼の姿勢を見て友達作りに協力してあげることにするのですが、ここで思わぬ邪魔が入ります。それが星上兄弟の弟で、学校随一の人気者である求。彼は極度のブラコンで、誰も望に近づけさせまいと、あの手この手で妨害してくるようになり…という学園ドタバタラブコメディ。


星上くんはどうかしている10002
望をめぐって(?)バトルを繰り広げる、いさりと求。そしてそんな二人の様子には一切気づくことがない、鈍感なお人よしの望。中盤以降はこの体制がベースに。


 なんだか正確に問題を抱えた男女たちが、不器用ながらも真正面からお互いに向かい合い、仲を深めていくというお話。これは「青春しょんぼりクラブ」にも通じるところがあるかと思います。ヒロインのいさりは、八方美人ゆえの希薄な人間関係に悩み、星上兄・望は友達が作れないことを深く悩み、星上弟・求は弟への異常な愛により性格が歪んでしまったというなかなかどうかしているキャラ達が揃っています。それぞれ「引く」という発想はなく、それぞれの思惑を通したいという所からぶつかり合いが起こるという。ここからやがて恋の芽も生まれてくるのでしょうが、まだまだそこに至るには時間がかかりそうなご様子。


星上くんはどうかしている10001
いさりは八方美人と言いつつも、自分が大事にすべき相手がだれかということは考えることができる子で、望を見捨てず面倒を見てあげる所がなかなか良い子でかわいらしいです。キャラ的にも結構好きな子だったり。


 ぱっと見一番どうかしているのは弟の求なのですが、冷静に考えると兄の望もかなりヤバめの男の子でして。このおどおどしつつ、いさりを驚くほどに巻き込む力というのは、なかなかの破壊力。「(友達になってくれるのは)きみじゃなきゃダメなんだ」というセリフを、長く効力を発揮しそうな一撃ですよね。この無邪気に人を振り回すというのが一番タチが悪くて、それを地で行く彼はなかなか凶悪ですよ。この後も無邪気にいさりを振り回しそうで、非常に楽しみであります。(振り回されるいさりがなかなか良い味を出しているのですよ)

 友達の輪は少しずつ広がって行くのですが、その子たちもなかなかひとくせふたくせあるキャラ達で、今後話が進んでく中で、3人と良いケミストリーを生み出してくれることを期待したいです。一通り役者が揃い、なんとなくそれぞれの気持ちに変化が現れたところで1巻は終了。さてさて、2巻ではどんなエピソードが描かれるのか、楽しみですね。


 
【男性へのガイド】
→アサダニッキ先生の作品は割と広く受け入れられている印象がありますが、本作も同様に間口は広いんじゃないかと思います。割と色物キャラが多いので、その辺さえ受け入れられればOKかと思います。
【感想まとめ】
→さすが安定の面白さでした。友達作りがスタート地点ですが、これから恋愛要素も含まれてくると思われますので、続きにも大いに期待したいところです。



作品DATA
■著者:アサダニッキ
■出版社:講談社
■レーベル:KC デザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■価格:463円


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] 2015.02.02
1106481739.jpgふみふみこ「神主さんと僕の彼女」



いさこのゆめは…



■有田神社の一人娘・いさ子は、神社の跡継ぎ候補として再会した幼なじみの雲居遥と突然、同居をすることに。何かと世話を焼いてくる過保護な雲居に困惑するいさ子でしたが、彼女を理解してくれる雲居と過ごす内に、本当の自分と向き合い成長していくのでした…。ふみふみこが描く、初の本格少女漫画!

 「ぼくらのへんたい」や「さきくさの咲くころ」のふみふみこ先生のYOU連載作になります。ふみふみこ先生ってマイナー誌で連載してるイメージが強くて、集英社のマーガレットコミックスで目にすることになるとは、かなり意外でした。では内容をご紹介しましょう。主人公は神社の一人娘・いさ子。日々気ままに生きていた彼女でしたが、神社の跡継ぎが登場することによって日常が大きく変化することになります。跡継ぎとなったのは、幼いころに一緒に過ごした年上の男の子・雲居。跡継ぎということで、同居をすることになるのですが、年頃の娘であるいさ子は大層困惑します。一緒に過ごしたとはいえ、いさ子は全く彼の記憶がありません。実質的に初めて知り合う男の人との同居生活。居心地の悪さはぬぐえません。しかも雲居はやたらといさ子を気にかけてきて、かなり過保護気味…なんだかペースを乱され気味な彼女でしたが…というお話。


神主さんと僕の彼女
コミカルに進みつつも、時折シリアスなシーンを入れて話を引き締めます。コミカルがベースにあるからこそ、こういったシーンも映えるという。


 少女漫画という位置づけで物語も一見恋愛メインに進んでいくのですが、本当に描こうとしているものは恋愛そのものではなく、もう少し根底的な何かなのだろうというのが、読んだ直後の素直な感想です。物語は雲居と神社で巫女としてバイトする男の娘・薫くんがいさ子を奪い合うという構図を取るのですが、当のいさ子は恋愛鈍感娘であり、雲居もどこか本意の見えないキャラであるため、恋の駆け引きでドキドキするといった要素は比較的薄め。むしろそういった表立った行動の隙間に見え隠れする、自分ですら気づいていなかった本当の気持ちや互いの慈しみあいにこそ、見所があるのかな、と。

 個人的に良かったのは、女の子同士の友情のフェーズでしょうか。個人的にふみふみこ先生はこっちのほうが主戦場という印象すらあるのですが、必要以上に説明はせず、それでも空気感や間で理解・納得させてしまうのはさすがと言ったところ。分量的に少ない中で、しっかりした濃度でストーリーを織り込んできています。

 一方の恋愛は、最後ふわっと終わってしまった感があり、Amazonのレビューで低評価が並んでいるのも、そういった所が起因なのかと思われます。確かにもう少し続いてもよかったかもしれません。一方で、序盤からの積み上げを見ても、こういう形で終わらせるのが最も納得感があるような気もします。謳い文句である「本格少女漫画」というイメージとのギャップですかね。そこは実際に読んだ方が、各々判断すればよいかと。

 
【男性へのガイド】
→ふわふわ感はまさしく女性向けという感じなのですが、一人の少女の成長譚として読めばまた違った印象もあり、そういったお話がお好きな方には良いかと思います。
【感想まとめ】
→ふんわり雰囲気で持っていかれた感はありますが、しっかりカタルシスは得られた気がします。ただ一方で、仮にふみふみこ作品をオススメするとなったらほかの作品を薦めるかなぁ。


作品DATA
■著者:ふみふみこ
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックスYOU
■掲載誌:YOU
■全1巻
■価格:460円+税


■試し読み:第1話

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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2015.02.01
1106472285.jpg餡蜜「カンナとでっち」(1)



カンナ
行ってきます




■カンナの家は工務店で、父は町の大工さん。ある日、カンナと同い年の見習い大工・勝仁が、父のもとで大工修業することになって!?知らない男の子といっしょに住むなんて……この先どうしたらいいの!!?イケメン職人男子とのドキドキ同居ラブストーリー、第1巻!


 餡蜜先生の別冊フレンド連載作になります。工務店の娘であるカンナの家に、ある日見習い大工がやってくることから物語は始まります。その見習いはカンナと同い年で、同じ学校の定時制に通う男の子・勝仁。金髪にピアスというちゃらい風貌もさることながら、同い年の男の子と同居生活なんて……と戸惑うカンナでしたが、彼の大工仕事に懸ける熱い想いに触れ、だんだんと彼の魅力に惹かれるようになっていき…というお話。


カンナとでっち
勝仁の大工仕事への思い入れはかなりのもので、道具を愛でる気持ちもこんな感じでやや気持ち悪いぐらい。カンナの父に憧れを抱いており、この家へと修行に来たのでした。性格は明るく、非常に人懐っこいところがあります。ノリよくいたずらなところがあり、それがカンナとの距離をうまく縮めるきっかけに。


 年頃の男女が一つ屋根の下で暮らすことになるということで、王道同居ものです。さすがに二人きりというわけにはいきませんが、一緒に生活している以上関わる機会は多いわけで、そしてありえないくらい美味しいハプニングが起きます。看病での密着とか、寝入っちゃって寄りかかるとか、もつれて倒れこんで大胆な体勢とか、長らく生きてきて私自身は一度も経験したことのないような羨ましいアレコレが、1か月ぐらいの短期間で立て続けに起きております。これをありえないなんて言っちゃだめ。お約束なんだから、むしろありがたく頂かないと。こういうところからもわかるとおり、「同居ものとはこうやって攻めるんだぞ」という事がギュッと凝縮されたような作品で、同居もの好きにとってはまず間違いない内容かと思います。


カンナとでっち0003
1話に1~2回くらいはこういうドキッとハプニングが起こります。ありがてえありがてえ。2巻ではお風呂で遭遇とか着替え中の部屋に入っちゃうとか、「お約束」をフルコンプしてほしいところです。


 一方同居ものというと、一緒に暮らしていて何かトラブルなどが起きた時に意外と優しかったとか、そういうエピソードでヒロインからの好感度を上げていくパターンが多いのですが、本作の場合は大工仕事に打ち込む姿を見て胸キュンしちゃったりと、間接的な攻撃もちょこちょこと放り込まれてきます。なので直接攻撃のみの単調さはなく、適度にメリハリはついているのかな、と思います。


 講談社のワンテーマものというと、そのお仕事に関する知識解説などがあるのですが、明示的に説明することはなく、流れの中でこんなものだと軽く触れられる程度です。なのでお仕事ものの側面を期待して読まれると、少し肩透かしをくらうかもしれません。そこはあくまで、そういう職業の人が相手役になった恋愛ものとして読んでいただければよいかと思います。

 
【男性へのガイド】
→ザ・少女漫画という内容ですので、そういうのを求めている方こそが読むべき作品かと思います。相手キャラはいわゆるオラオラ系とは異なり、ノリの良い兄ちゃんという感じなので、そこは障壁にはあまりならないのかな、とも思います。
【感想まとめ】
→ひねりなくど真ん中直球勝負の同居ものということで、読んでいてとても気持ちがよかったです。別冊フレンドらしい、恋愛マンガでした。


作品DATA
■著者:餡蜜
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド
■既刊1巻
■価格:463円


■試し読み:第1話

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