このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2010.07.21
作品紹介→河原和音「青空エール」
4巻レビュー→二人の行動に多大な影響を与えた部活の先輩:河原和音「青空エール」4巻



1102940394.jpg河原和音「青空エール」(5)


たどりつきたいなら
今はとにかく
前みて進め!



■5巻発売です。
 大介にフラレてしまい、大介からどう思われているのか、何で告白してしまったのか、あれこれ悩むつばさ。しかし水島から言われた「自分で決めれるのは自分の気持ちを行動だけでしょ?」という言葉に、ハッとなる。強くなろうと決意したつばさは、目の前に迫ったコンクール予選に向け、部活に全力投球をするが、そこで思わぬ問題に直面し・・・。
 
 
~新たなステージへ~
 大介にふられて、一時は迷走するも、つばさの気持ちはコンクール予選、ひいてはコンクールメンバー選出という目標を持ったことで、再び上昇。物語としても、新たなステージに入っていったような印象を受けました。
 
 これまで、大介とつばさの部活に対する情熱は、どちらかというと開きがあるように感じられました。つばさは目下「高校野球の試合、願わくば甲子園で演奏する」という目標がありましたが、それは吹奏楽部としての目標とは異なり、ごくごく個人的でなおかつ比較的容易に達成可能な目標でした。それに対し大介は、あくまで甲子園。部活に全てを懸け、全力で臨んでいきます。別にお互いがそれで納得しているのであれば良いのですが、キレイな構図で爽やかに青春・恋愛してもらうのだとしたら、お互いに相手の気持ちが理解できる立ち位置にいてほしいものです。それが今回、つばさが新たに「コンクールメンバーに選ばれる」という目標を掲げたことによって、つばさに新たな景色が見えてくることになります。それが、コンクール金賞を目指すチーム競技としての吹奏楽でした。
 
 会話の中でも自然に、「強い」「勝つ」などといった言葉で形容されるその競技は、スポーツ競技と何ら変わりない、勝負事としての表情を強く見せるようになりました。野球部の応援だと、所詮勝ち負けは野球の試合に依るもので、責任云々は吹奏楽部員たちには降りかかってきません。しかしコンクールとなるとそうはいきません。一人のミスが、全体に響き、そして勝ち・負けが明確な形で帰ってくるのです。そういうフィールドに、つばさは少しずつ足を掛けようとしています。まだ野球部で言えば、ベンチ入りメンバーに選ばれるという目標段階ですが、そこに切り替えた時点で、そこから先に続く景色は、全く異なるものになったはずです。そしていつかは、勝ち負けにこだわる所にまで登って行くはず。そこに来てやっと、つばさは大介のことを理解できるようになり、また新たな関係を築いていけるはずです。そうなってやっと、恋愛面でも違った局面になってくれるのではないかなぁ、と。だからそれまでは、部活に一生懸命頑張ってほしいです。
 
 
~春日先輩のプロ意識~
 5巻の見所と言えば、森先輩の怪我とレギュラー獲得への想いなのですが、もう涙なしには語れないような、辛い辛い状況になっております。努力を重ねたからこそ、こうなってしまったという。誰も悪くないのがために、どうすることも出来ないこのもどかしさと悲しさ。詳しくは、読んでもらってということになるのですが、とにかくこれは辛いとしか。そんな厳しい状況を、真っ正面から描き出す河原先生。そう、それでこそ青春部活マンガなんですよ!なんて、そんな中でもキラリと光る春日先輩に、個人的にはドキドキしたわけですが。
 

青空エール5巻
ビンタするときは左手で

 トランペットは吹いたことがないので、詳しいことはわからないのですが、森先輩の症状を見る限り、トランペット演奏は右手に負担がかかりやすいようです。右手はピストンバルブと呼ばれるボタンのようなものを押して演奏するわけで、突き指などは御法度。感情高ぶってつばさにビンタをするときも、無意識的に大事な右手を守り、怪我のリスクを低減させる、春日先輩は、さすが実力ナンバーワンだなぁ、と思ったのでした。何気に、「何かあったら必ず言うんだよ?」と事が発覚する前につばさに言っているように、上に立つ者としての働きもバッチシこなす彼女は、本当に素敵な先輩部員だなぁ、と。


■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

ビンタのシーンですが、殴る箇所は、頬以外にして欲しかった・・。
頬を殴ると、トランペット奏者にとっての命である、口の中を切って
しまうかもしれませんからね。

でも、この巻は全体的にとても良かったと思います。
森先輩の思いには、泣きそうになりました・・。

現実の高校の吹奏楽部は、コンクールの地区予選と、高校野球の応援が
同じ時期(7~8月中)にあるので、練習は本当に大変だと思いますし、
部員同士や顧問との衝突もあるでしょう。
この作品は、そういう辛い部分もリアルに描いていると思うので、部員
たちを心の底から応援したくなります。
From: シャドー * 2010/07/31 15:12 * URL * [Edit] *  top↑
お返事遅れました。
なるほど、口を切るってこともあるのですね。

ちょうど甲子園の時期で、ブラバン部の姿をテレビで見ることも多くなりましたが、
この作品の影響で、スタンドを気にするようになりました(笑)
From: いづき * 2010/08/12 00:43 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。