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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.02.25
つづきはまた明日紺野キタ「つづきはまた明日」


「空知らぬ雨ってどういう意味?」
「涙 空の知らない水 涙のことだよ」



■小学5年の杳と、妹の清。母を亡くして、今は父子家庭。子煩悩な父親と、頻繁に顔を見せる父の妹に見守られながら、毎日楽しく過ごしている。そんなある日、隣に原田さん一家が越してきた。明るい奥さんに、専業主夫の旦那さん、そして同級生の早歩。しかも旦那さんと、娘の早歩は、亡くなった母親にそっくり。何気ない日常に見え隠れする、人の優しさ、暖かさ、純粋さに、きっとあなたもあたたかい気持ちになる   

 父子家庭の兄妹と、そのふたりを見守る人たちの、何気ない日常を描いたハートフルストーリーです。母親を早くに亡くしたせいか、歳の割に大人びた杳と、歳相応に快活な清。そのふたりを取り巻くのが、父親とその妹、そして原田さん一家。これといった出来事は起こらず、あくまで日常のちょっとしたことを切り取っていきます。そのゆっくりほのぼのとした雰囲気が、とても心地良い。
 
 ここで注目したいのが、ふたりの登場人物。
 まずはお隣さんの娘で杳の同級生の早歩。亡くなった母親にそっくりな彼女は、すんなりと兄妹の中に入っていきます。いずれ関わっていくうちに、杳の心の奥底にある何かを引き出していくことになるのでしょう。ゆったり穏やかに流れる物語の中、かすかに凛とした空気がたたえられているのはきっと彼女の存在があるから。まぁとにかくカワイイです。
 もうひとりは杳と清の叔母にあたるリカコ。美容師をやっていて、頻繁に家を訪れる彼女、実に奔放な性格で、一定になりがちな流れを上手い具合に変化させてくれます。家族対家族、そして親対子と、ある程度閉じた関係が描かれる中で、そこには完全には所属していない彼女が風穴を開ける。そうすることで、退屈にならず話を展開させることが出来る。実に良い役回りですね。あとモモカン(おお振り)に似てる。
 
 
【オトコ向け度:☆☆☆☆ 】
→ほのぼのした作品が好きな方は。どこか懐かしさを覚えるような、あたたかい作品になっています。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→とにかく空気感が好き。明るいだけじゃない、色んな感情を包み込んだ優しさが、この作品には溢れています。オススメです。


作品DATA
■著者:紺野キタ 作者サイト→「Sally Gardens
■出版社:幻冬舎コミックス
■レーベル:バースコミックスガールズコレクション
■掲載誌:Webスピカ(2008年6月号~連載中)
■既刊1巻
■定価:590円+税

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