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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2010.07.27
1102945643.jpg尚月地「金色騎士」


先輩にとっての勲章は
こんなにも
先輩の周りにあふれていたんだ



■のほほんとした土井中村の駐在として勤務しているのは、都の金獅子の隊から左遷された、四郎。元エリートの彼だったが、今ではこれといった事件も起きない平和な田舎で、自由気ままに暮らしている。たまにスイッチが入るとき以外は、ミジンコ並みの戦闘力で、自堕落で女に弱いぼんくら色ぼけ変態野郎。かつての後輩であった草凪矢三郎は、四郎のことをそういって憚らないが、それでも彼だって、やる時はやるんです。たぶん…いや、きっと…なんて言っている間に、ほーらはじまった…

 ウイングスにて「艶漢」を連載中の、尚月地先生の短編集です。短編集と言っても、2篇づつのシリーズが2作収録されており、普通の読切り集とは雰囲気が異なります。とりあえずは表題作となっている、「金色騎士」のご紹介を。舞台となるのは、どこかの戦後の国のとある田舎町。都の有名な隊にいたものの、上官を殴ってしまい左遷となった、一人の駐在・四郎が物語の主人公となります。女たらしで品行が良くない彼は、どちらかというと悪い噂を立てられがちな人間。元々出来る資質はあるはずなのですが、当の本人にはやる気がなく、後輩が話をしにきても、おちゃらけて真面目に相手しません。というかそれ以前に、彼は今いる街が好きで、現状満足しているという状況。そんなよくわからない彼の、ハチャメチャな日々を、後輩の視点から描いていきます。


金色騎士
こんなかわいい子が男の子だなんて…!みなさんほっそり体型で描かれており、華奢な印象。だからこそ映えるのですが。


 絵が特徴的で、非常にキレイなのですが、人物描写もまた独特で繊細なタッチ。これで描く表題作は、コメディです。はい、コメディです。もちろん全編にわたってコメディというわけではないのですが、ベースはあくまでコメディ。芸風は、リアクション系でしょうか。なんか低年齢向けの少女ギャグ漫画作品とかにありそうな、捻りをあまり効かせていない、わかりやすいネタ。それをこの絵柄やってくるという。でなんていうか、ギャップがすごいのです。でもそれを、持ち味と言わんばかりに多用してくるという。そこに、終盤シリアスな物語性を話に付与し、物語を完成させるという流れ。
 
 挟んでくるネタが、やや物語の流れを澱ませている印象があり、ちょいと読みにくさを感じる部分がありました。いや、絵柄的に壮大な方向、ひと捻りありそうなイメージで、ギャップからその持ち味を浮き立たせるという手法もありだと思うのです。でも、これは果たして効果あるのか。シリアスならシリアス、笑いなら笑いと、メリハリ付けてもらえると、もっと読みやすかったかなぁ、と。
 
 もうひとつは、異世界を舞台にしたファンタジー作品。高台にある小さな街に暮らす少女が、ある日敵対している蛮族の王子と出会い、進行を深めていくというもの。こちらもネタをちょくちょく挟みつつなのですが、コメディベースでないぶん、表題作よりも読みやすかったです。残り一遍は、投稿作品。この頃から絵柄良いですねー。


【男性へのガイド】
→表紙は男の人です、二人とも。お耽美な印象ですが、そういう印象が強いのは表題作だけ…と思ったら、蛮族の王子が艶々してたなぁ…。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→作者の笑いは私には合わないと悟った本作。とはいえ、読み応えのあるシリーズ2篇に、投稿作品一篇ということで、短編集の構成としては、かなり高水準かと。作者さんのファンであれば、まず買って間違いない一作だと思います。


作品DATA
■著者:尚月地
■出版社:新書館
■レーベル:ウイングスコミックス
■掲載誌:Wings
■全1巻
■価格:590円+税


■購入する→Amazon

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