
じゃあ
またすぐ追いかける
すぐに俺も
よれよれの爺さんになるよ
■繰り返しの日々に飽き飽きした美人OL・朱美が、通勤時のバスで始めた、ちょっとしたゲーム。見知らぬ男の隣に座り、その男に二度見されたら、自分の勝ち。次々と勝ちを重ね、そろそろターゲットがいなくなりそう…というときに、次なるターゲットとして選ばれたのは、一人の中学生。「もの足りなさは否めない」そんな印象を持ってのスタートだったが、意外と手強く一向にこちらを見ない。次の日も次の日も気を引かせるためにあの手この手を使うが、効果なし。そしてついに諦めようとした頃に、思わぬ事実を知って…!?まさかそれが、二人のそれからのはじまりだったなんて、その時は誰も思いもしなかったのです…
白泉社の楽園からのコミックスということで、個人的に注目だった一冊。楽園が男性女性のターゲットをそこまで明確にしていない以上、ウチのブログで取りあげるには微妙と言わざるを得ないポジションのこちらの作品。とりあえず一作レビューして、反応見てそれからを決めよう…なんて思っていたのですが、この表紙、どう考えても女性の方が手に取りそう!ウェディングドレスにお姫さま抱っこなんて、(ステレオタイプに考えるなら)女性の夢を詰め込んだような表紙なわけですよ。こりゃあもうレビューするしかないだろ、と思ったわけですが、内容もまた紹介せざるを得ないだろうという良さでした。
表題作シリーズを含め、計4作を収録。どれもデフォルメの効いた丸っこいフォルムの、可愛らしいキャラクターたちが、精一杯の恋愛模様、人間模様を織り成すという物語となっています。どれもそれぞれ素敵なお話なのですが、中でもイチオシなのが、表題作になっている「GAME OVER」。美人OLが気まぐれで始めたゲームによって、偶然出会うことになった中学生の男の子。歳の差はありながらも、気になった、気の合った二人は、徐々に距離を縮め、いつしか恋人という関係に。ヒロインは、彼と釣り合わない己の年齢と、大人らしく振る舞いきれない自分に思い悩み、一方少年は、これまた彼女と釣り合わない自分に焦りを感じ、また素直になりきれない自分に苛立ちを重ねるのでした。それでも離れることない二人。そんな二人の前には、やがて一生添い遂げるという選択肢が、出てくることになるのですが…というストーリー。出会いからゴールインまで、年齢差に苦しみ、また楽しむ二人の様子が、瑞々しく、そして温かく描かれていきます。

相手のことを想うからこそ、相手に相応しい人物になりたいと思う。「好き」の気持ちが強ければ強いほどに、その気持ちは強くなる。
もうね、とにかく素敵なんです。年齢差に揺れる二人の間には、安心感なんて全然ないのですよ。どうしても、縮めることの出来ないその年齢差に、感じるのはお互いに焦りばかり。二人でいる分には、そんなことは一切感じないのに、周りと比べると、途端に変に思えてくる。世界は二人中心で描かれているのに、見えざる敵として二人が勝手に意識してしまうのは、いつも二人の外の世界。だからこそそれを乗り越えて手に入れる、二人の世界とその平穏は、見ていて本当に幸せに感じることができるのです。特に最後の結婚式のシーンなんて、反則じゃないですかい?しかもこれって書き下ろしとか、どんだけ頑張ってるんですか。幸せメーターといい、二人の出会い方に絡める様式的な美しさといい、完璧すぎます。これはコミックス買わないとダメですよ、ハイ。
その他の収録作品でのお気に入りは、ショート作品の「きのう けんかをしました」。女の子二人のとある出来事を描いた短い作品なのですが、女の子同士の関係の難しさや、美しさを垣間見れたようか気がして、非常に印象に残っています。また最初に収録されている「誘拐のすすめ」は、男性向け女性向け関係なく、ジャンル誌向けな可愛らしい青春モノで、ほんわかと楽しむことができました。リアリティには欠けますが、そもそもそういう方向で描いている作品ではないので、作品それぞれに作られる世界に、心から浸かりましょうよ、と。
【男性へのガイド】
→「誘拐のすすめ」などは男性でもいけそうな気が。微笑ましい恋愛ものがお好きな方は、是非とも。基本的に男性も女性も、行けそうな気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→読みきりそれぞれでは、印象普通も、表題作シリーズで一気にもっていかれました。素敵な恋物語、幸せいっぱいな様子って、見ているとこちらまで幸せな気分になってくるので、大好きです。表紙を取ってそこに見える、ちょっとした遊び心もまた良し。カラーでお得な気分になります。
作品DATA
■著者:水谷フーカ
■出版社:白泉社
■レーベル:楽園コミックス
■掲載誌:楽園、かきおろし
■全1巻
■価格:743円+税
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