
かっこ悪いのも
素直になれないのも
上手くいかないのは全て
愛するが故
■漆黒の髪を持ち、人の倍生きる種族「魔女」は、フェルネスト王国では不吉の象徴として忌み嫌われていた。百年間孤独に生きた魔女・エヴァは、第一王子の病を治す代わりに第五王子・ルイスを貰い受ける。十年後、すっかり成長したルイスに、エヴァは想いを寄せられるのだが、当のエヴァはすこし困り気味で…。そんなある日、ルイスの元に王位継承の知らせが届く。エヴァの元を離れ、王室に戻ることになったルイスの背を目に、エヴァは…!?
真柴なお先生のデビューコミックスでございます。舞台となるのは、とある世界のとある国・フェルネスト王国。そこは普通の人間と、人間の倍生きる種族である「魔女」が暮らす世界。魔女と言っても、何か特別な魔法が使えるわけではありません。人の倍生き、黒髪で、動物の言葉がわかり、薬草の知識に長けるというだけ。しかしそのことを知らない人間達は、魔女を恐ろしい魔法使いだと信じ、不吉の象徴として忌み嫌っているのでした。そんな魔女である、エヴァがこの物語のヒロイン。王位継承権のある第一王子の病を治す代わりにと、彼女は第五王子のルイスを貰い受けます。そして十年の時が流れ、ルイスは立派に成長。いつしかルイスは、エヴァに想いを寄せるようになります。甘い言葉でエヴァにその想いを伝えるルイスですが、ある日彼の元に、第一王子の代わりにルイスに王位を継いで欲しいとの知らせが入り、エヴァの手を離れることに。離ればなれになってしまった二人でしたが、その心が離れることはなく…というストーリー。

離れてからも、一緒にいることを選択する二人。ルイスもエヴァも、互いを自分のできる形で支え合いたいと考えている。
読切りで描かれたお話がスタートとなっているので、1話目の時点で二人の心はすでに通じ合っています。そこからどう物語を展開させていくかなのですが、ルイスを王室に連れ戻し、物理的・身分的な隔たりを持ち込むという方向に。魔女として忌み嫌われている存在であるエヴァに、本来王位を継承する予定であった第一王子から疎ましく思われるルイス。ただでさえ敵の多い二人が、お互い恋人であることを公言するということで、さらに越えるべき壁は多くなっていきます。そして当然のように訪れる、戸惑い、遠慮、すれ違い。関係性としてはすでに完結しているので、これ以上の進展は望めませんが、他の部分で工夫して魅せるので、しばらく飽きがくることはなさそう。ソレより何より、ヒロインのエヴァが素敵すぎてもうヤバいのですよ!
ヒロインのエヴァは、既に100年以上生きている魔女。そんな彼女が愛した相手は、年下で子供の時から育てた人間の王子。そんなところからスタートしているため、愛する相手といえど、年上・しっかり者として普段は振る舞おうとします。しかしそんな固いガードも、王子の甘い言葉や真摯な想いの前には、ないも同じ。素直に想いを伝えようとするも、素直になりきれず、顔を真っ赤にしながらするその数々の仕草が、可愛すぎてしょうがないのです。私は年上好きなのですが(誰も聞いていない)、年上の何が素敵って、普段余裕があるのに、ふとしたきっかけで余裕がなくなった、その表情や仕草だったり。印象としては、「会長はメイド様!」(→レビュー)の美咲のそれと似ているのですが、彼女よりも自分の気持ちを出すことに素直なエヴァのほうが、個人的には一枚上。こちらの場合、年齢が上であるぶん、自分が恋愛面でもしっかりしなくては…という想いを感じさせるシーンが度々あり、それが結果彼女をさらに不格好にさせて余計可愛いみたいな、好連鎖が。いや、これは破壊力抜群です、はい。

この表情。困ったような、照れているような、どこまでも素直になれないこの赤面が、たまらなくカワイイです。
また、エヴァは育てた者として、そしてルイスから愛される者として、ルイスを守ってやらなくてはという考えを持っており、一方のルイスもまた、王位継承者として誤解に苦しむエヴァをしっかりと守ってあげなくてはという考えをもっています。この二人の、相手に対する想い方が、なんとも素敵ではないですか。ただ素直になれないだけでは、ニヤニヤなんて起こらないのです。こういうひたむきな想いがあるからこそ、極上のツンデレからのニヤニヤを生み出すという。これは久々のヒットでした。続きが楽しみです。
【男性へのガイド】
→これはなかなか。ルイスの甘美な言葉に辟易する人もいるかもしれませんが、エヴァの破壊力は特筆もの。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→どう考えても、物語的にこれ以上の進展は望めないのですが、進まないなりにもニヤニヤは十分生み出してくれそうで、しばらくは楽しめそうという。何よりもエヴァさんツボすぎカワイすぎで、ダメなのですよ、はい。
作品DATA
■著者:真柴なお
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa(平成21年10月号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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