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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.08.14
1102950599.jpg久世番子「神は細部に宿るのよ」(1)


コートを買いに行くための
コートが必要



■オシャレの川下の住人…つまりあんまりオシャレでない人、久世番子。それでもたまにはオシャレの川上の様子が気になります。ネームのタグの扱い、百貨店フロアの年齢設定、流行の変遷、病院服、デニムの裾上げ、日焼け対策、服VSバッグetc...上げ出したらキリがない、被服のあるある、そして悩み。機能性重視で見ためはまったく気にしないのか、ちょっと気にして結果無難なスタイルに落ち着くのか、勇気を出して冒険するのか。被服生活の細部にスポットを当てて、ちまっと描く大共感、非オシャレ系コミックエッセイ登場!

 エッセイコミックもこれで何冊目でしょうか。久世番子先生の新作は、被服にスポットをあてたものとなっております。書店員生活を描いた「暴れん坊本屋さん」や、漫画家として育った過程を描いた「私の血はインクでできているのよ」(→レビュー)と同じく、自分の経験を元に描く、非モテ系のコメディエッセイコミックとなっています。ファッションではなく、あくまで「被服」。着こなしもあるものの、タグやバーゲン、クリーニングに都会服・田舎服など、被服に関するものであればなんでもごちゃまぜにつっこみましたという感じの内容。そしてその大半に、私達は「あるある(笑)」と。あまりオシャレでない人を、オシャレ川下という表現で表していますが、山沿いから扇状地を経て、平野へと貫く川と流域を考えるのであれば、人口が最も多いのは下流。ファッションも基本的には、この人口分布に当てはまるような気がします。


神は細部に宿るのよ
このデフォルメ姿で被服を語るというのがすごいです。もちろんちょっとしたオタクネタもあり。


 少しでもコンプレックスを抱えていて、そして好きなものであれば、幾らでもネタとツッコミが生まれる。自分をオシャレ川下と言っていながらも、やはり久世先生は服が好きなのでしょう。いあ、まぁ気にしない方が無理ですよね。そんな日々の被服への想いの中に沈む違和感を、しっかりと形にして吐き出すという、そこが素晴らしい。わかっちゃいるけど、なかなか突っ込めない、そんな部分を、気持ち良く吐き出す様は、実に痛快。批判しているようで、全肯定している、そんなところも素敵でございますよ。

 女性の被服についての話がベースとなっているのですが、それでも男でも共感できる部分は多々あります。たとえば「ショップなどの素敵空間では、自分に合わない服でも素敵に見える魔法にかかる」とか、「結局グレーの服に落ち着く」とか、「都会に出たからといって別にオシャレになるわけではない」とか、納得しまくりでした。特に都会に出たからといって、垢抜けるわけではないというのは、納得です。東京って、めちゃくちゃオシャレな人もいれば、逆に田舎ではみないような汚い格好をしている人もいたりと、かなり服装に対する許容範囲が広い印象があります。そして必要にかられない限り、オシャレ度はアップしていかないという。服って、大変ですよね…。でも男からすると、女性の被服事情はうらやましかったりします。だって女性の方が、服の種類がたくさんあるし、お店も様々。お手頃な値段で、素敵な服を買うことができるのですから。それに対して男性向け被服のスタンダードさと値段の高さといったら…。「これなんでこんなに高いんだろ…でも全身ユニクロとか全身無印じゃあなぁ…」なんて思いつつ服を買ってますよ。


【男性へのガイド】
→気楽に読める、エッセイ本です。男性には想像つかない部分もありますが、それはそれで興味を持って読める部分もアリ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→これ、1巻表示ついているんですよね。てことは2巻もあるのか…これは続刊レビューしにくそうですね。たぶんしないけど。あ、おすすめです。


■作者他作品レビュー
久世番子「ふたりめの事情」
久世番子「ひねもすハトちゃん」


作品DATA
■著者:久世番子
■出版社:講談社
■レーベル:KCkiss
■掲載誌:KISS(2009年No.7~)
■既刊1巻
■価格:667円+税


■購入する→Amazon


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2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


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