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Tag [オススメ] [名作ライブラリ] 2010.08.18
07143920.jpg久米田夏緒「NEWSPARADE」


   ええ
好きよ
…大好きよ



■庄司えみ、大学1年生。超絶ビビリ。生まれてこの方、一度も幽霊なんてものはみたことはないが、怖いものは怖い。友達のする怪談、心霊番組、暗闇、何もかもが、自分をおどかし不機嫌にさせる。そんなある日目にした、交通事故のニュース。近所でバスが事故を起こし、乗客一人が死亡、数名が意識不明の重体だという。その翌日、その時に亡くなった女性が、自分の部屋の前の住人だったこと、そしてこのアパートに向かっている途中であったことを、隣人から知らされる。恐怖を感じたえみは、その夜に鳴り響いたチャイムの音に…

 「ボクラノキセキ」(→レビュー)を連載中の久米田夏緒先生の作品。これデビュー単行本なのでしょうか。刊行年は、2005年となっています。物語は、一つの事故のニュースで繋ぐ、ちょっとした出来事たちのお話。3話構成で、一つのシリーズとなっています。物語の発端となるのは、とある大学の近くで起きたバス事故。この事故によって、一人の女性が死亡。その他に、複数人が意識不明という状況になっていました。1話目は、この亡くなった女性が以前住んでいた部屋に入居している、女子大生が主人公。極端にビビリな彼女は、その女性が自分のアパートを目指していたという話を聞いて恐れおののきます。そして、夜中に突然鳴った、玄関チャイムの音に…という、ちょっとホラーチックなお話。続いて2話目は、事故によって幽体離脱状態となった、被害者の高校生二人組のお話。そして3話目は、学校に肝だめしに来た男子大学生が、薄幸の美少女幽霊に遭遇するというお話。ファンタジックな要素を、少女漫画的な日常に落とし込んだ作品となっております。


ニュースパレード
個人的に良かった、「雪街」。「時かけ」などにもあるような、ちょっとSFチックな物語が、大好物なのです。そこにちょっとした青春の心が加われば、もう。


 幽霊が出てきはするのですが、だからといってレーベルにありがちなコメディ方向に走るわけではなく、ごくごく自然な形で物語に入り込んでくるんですよね。それは最初は幽霊だとはわからないようになっているからなのですが、同時にどこかドライな空気感もあり、それがそういった印象を生み出しているようにも思えます。ファンタジックな要素を投入したからといって、何か大きな出来事がおこるわけではなく、日常にちょっとした変化が生まれるという程度。でもそれが結果、センシティブな面をしっかりと描き出すのに一役買っており、これはこれでまた素敵。「時をかける少女」とか、そういう作品がお好きな方は、結構好きなんじゃないかと。
 
 同時収録の読切りですが、一つはSF要素を取り入れた、高校生のお話。そしてもう一つは、現実ベースの中学生の恋愛のお話。どれも高校生・中学生の瑞々しさが感じられる作品です。味気ないといえばそうなのかもしれないのですが、最後に残る希望と、後味の良さが、好きな人には堪らないはず。「ボクラノキセキ」的な大きな話には当然なりませんが、ならないならならないなりの枠で、しっかりとまとめる上手さがあり、満足感は高いものでした。特に、最後のまとめ方が上手い。視点も展開場所もバラバラの各話、謎を残しつつの終了だった1話目を、最後の3話目でしっかりとまとめあげた表題作シリーズ。そして関連性のない読切りの2作品を、ラストのかきおろしで繋げ、単行本としての完成を実現させるという粋な計らい。これは上手いし、面白い。「ボクラノキセキ」の面白さも納得のストーリーでした。


【男性へのガイド】
→好きな人は好きかと。男の子視点の話もあり、読みやすい部分は多いかと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→「ボクラノキセキ」ほどの衝撃はないものの、しっかりと面白いです。満足満足、おすすめです。


作品DATA
■著者:久米田夏緒
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:WARD
■全1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazonbk1

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