このエントリーをはてなブックマークに追加
--.--.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリスポンサー広告||TOP▲
このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.08.20
1102950683.jpgくらもちふさこ「花に染む」(1)


あの時
瞬時に塗り替えられた空気感を
上手く言えなかった



■比々羅木神社の息子・圓城陽大は、兄・陽向、従姉妹の雛と共に弓道に励んでいた。神社の隣の畳店の娘・宗我部花乃は、陽大の流鏑馬姿を一目見て心打たれ、弓道を始める。それまでは単なる「隣の神社の息子」というだけだったが、その日からは違う。そして今では、園城兄弟と共に、倭舞中学の弓道部で弓を引く日々を送っている。しかしそんな毎日は、ある日突然終わりを迎える。比々羅木神社の宝物殿から出火。瞬く間に燃え広がる炎の中、園城家の人々は、宝物と家族を守るために宝物殿へと飛び込んでいくが…

 くらもちふさこ先生の新作は、連載中の人気シリーズ「駅から5分」(→レビュー)に繋がる、もう一つの物語。神社の息子に生まれた少年と、その彼の流鏑馬姿に心打たれ、以来ずっとその姿を追ってきた少女の姿を、花染町を舞台に描いていきます。神社と、その隣の畳店。そこの子供として生まれた二人、陽大と花乃。お互いに面識はあったものの、花乃にとって陽大は、あくまで単なるお隣さんの息子という感覚。しかしある日、彼の流鏑馬姿を目にしたことで、その印象は一変。一瞬で心打たれ、彼女もその姿、そのとき感じた感覚を追って、弓道を始めます。入学した倭舞中学の弓道部では、陽大、陽大の兄の陽向と共に、弓を引く日々。メキメキと腕を上げた末、関東大会で団体優勝するレベルにまでなります。しかしそんな日々も、ある日突然終わりを告げることに。陽大たちのいる比々羅木神社の宝物殿から出火。宝物を守ろうとした母に、その母を助け出そうとした父、そしてそんな二人を追いかけた兄。ひとり引き止められた陽大だけが、結果として助かるものの、失ったものはあまりに大きすぎました。結局陽大は、生まれた町を離れ、花染町の親戚の元に引き取られることに。離ればなれになってなってしまった、陽大と花乃。しかし花乃の想いは、決して彼から離れることはなく、数ヶ月後、再び二人は出会うことになるのです…というストーリー。


花に染む
斜めに描くことで生まれる、緊張感と気合い、そして躍動感。非常に印象的で、ついしばらくの間眺めてしまいました。やっぱすごいな、と。弓を射る姿のカメラワークが、多種多様で、しかも全部素晴らしいという。


 中学生二人をメインに据えつつも、かなり状況的にはヘビーな物語展開。それでも暗く重苦しく展開するのではなく、緊張感のある空気感を持続させるという形に変換。独特の雰囲気を保った作品に仕上っています。「駅から5分」は短編形式で幾つもの物語が入れ替わりで続いていきますが、こちらは一つの物語で構成。舞台は同じ、物語は絡み合いつつも、味わいや魅せ方は全く異なったものになっているという印象を受けました。
 
 視点は終始、畳店の娘の花乃。彼女の心情、行動から、陽大とその周辺にいる人々を描き出していきます。中学生がこれほどまでにしっかりと考えて行動しているのかどうかはさておき、こういう関係、こういう雰囲気、こういう考え方をしているというのが、しっかりと伝わってくるのは大きな魅力。出発点である強烈な彼の存在・姿という軸をしっかり持っているため、揺れる心を描きつつも、ある意味安定・安心して見ていられるのは、こういったところに要因があるのためでしょうか。ただひたすらに、一つのものを追い求める少女に、その背中よりもあまりに大きいものを背負わされた、物静かな少年。どちらもこの上なく素敵。この二人がこれから、どんな物語を花染町で作り上げていってくれるのか、楽しみで仕方ありません。
 
 絵柄の基本は、やはり時代を感じるものであり、うちのブログを見てくださっている方達のことを考えると、おすすめするのはどうだろうという考えが頭をよぎります。けれども、やっぱり好きなので、結局はおすすめしよう、と。とりあえず、絵柄が苦にならないという方であれば、読んでおいて損はないかと思います。また「駅から5分」との兼ね合いですが、こちら単体で読んでも全く問題なし。「駅から5分」を読んでいると、より作品に味わい深さが出るという感じだと捉えておいていただければ良いのではないでしょうか。どちらを先に読むも良し。個人的にはこちらの方が、より印象的だったので、こちらを強くおすすめしたいところではあります。
 

【男性へのガイド】
→くらもちふさこというと、やはり「少女漫画」なわけですが、好きな人も当然いますでしょう?やっぱり読み慣れているほうがよいとは思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→正直客層を考えると、強めプッシュは気が引けるのですが、好きなものは好きということで、こんな感じで。だって絶対2巻気になりますし、そして面白いに違いないし。


作品DATA
■著者:くらもちふさこ
■出版社:集英社
■レーベル:クイーンズコミックスコーラス
■掲載誌:コーラス(2010年3月号~)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「コーラス」コメント (7)トラックバック(0)TOP▲
コメント

正直、緊張感というより読みにくいし暗い
少女の変な喋り方が気になる
ちょっと私は読んでいて途中でギブアップ
なんというか読む人を選ぶ感じでした。
2巻目は手にとらないないかも
From: あにゃ * 2010/10/03 11:12 * URL * [Edit] *  top↑
若い世代向けではない
From: あにゃ * 2010/10/03 11:14 * URL * [Edit] *  top↑
作者が特に好きというわけではないですが、その作品を読むと必ず引き込まれてしまいます。中学生の頃に読んだ“わずか5センチのロック”から、長くお付き合いさせていただいています。“駅から5分”で本当に何十年ぶりに再会し、あのころとは画風も随分変わったようですが、レビューで指摘されているように、きめ細かな描写と、ともすれば暗くなりがちなストーリーを多彩な設定と魅力的なキャラクターでテンポ良く運んでいくテクニックはさすがだと思いますし、魅力も増していると感じます。
連載誌がコーラスなので、若い世代を対象としているわけではない点で、コミックとしての価値の評価は難しいとは思いますが、どんな世代でも読んで損はない、何かを得られることができる質の高い作品であることは間違いないと思います。
From: chopper * 2010/12/18 23:10 * URL * [Edit] *  top↑
最初「駅から5分」を読んだ時の感想は普通。作家さんの才能はすごいなと思ったけれど、あまり魅力は感じませんでした。
その後「花に染む」を読んで、やはり「駅から5分」よりは(主人公に好感が持てて)好きだと思いましたが普通だと思いました。

両方共レンタルでしたが、その後なんとなくまた読みたくなり借りました。

しばらくするとまた読みたくなって借りました。

「これはハマってるわ」と思い、ついに先日購入しました。

読めば読むほど味があるんですよね・・・

絵に表現力があって、この時の主人公はどういう気持ちだったのか考えるのが楽しい。

「駅から5分」という違う角度から見た作品と合わせて読むのが面白いです。

ハマりはじめたのは雑誌で「花に染む」の1巻の続きを読み始めてから。

つまり2巻ですね!(まだ発売していませんが)

謎が解けた時(つじつまがあった時)の爽快感?やられた感!といったらないですよ!

2巻は手に取らないかもとコメントされていたあにゃさんにぜひ「勿体ない!あきらめないで!」と伝えてあげたい・・・!

今年面白いな~と思った一番のマンガです。(二番は「進撃の巨人」)




From: ここあ * 2011/01/09 09:32 * URL * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございました。
From: いづき * 2011/02/06 09:09 * URL * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございます。
2巻に収録される部分が見所とは、今から続きが楽しみです!
From: いづき * 2011/02/06 09:59 * URL * [Edit] *  top↑
すごいです。くらもちふさこ先生、改めて天才だと思いました。
くらもち先生の作品は、子供には分かりづらいですが、大人になって読むと、どれもこれも奥深くて感激します。
この作品も、本当に素晴らしい。花に染むの方が、恋愛ストーリーが強く、ワクワクドキドキ楽しく読めますが、「駅から5分」も一つ一つのストーリーに多種多様な面白さがあり、またそれぞれの回で微妙な方角から共通点が見られる楽しさがあります。
昔からそうですが、くらもち先生の作品は、何度と読み返すたびに、新しい発見や理解が深まり、飽きることがありません。
言葉を多く語るのではなく、「間」や空気で登場人物の感情を語る・・・素晴らしい才能だと思います。
From: Maki * 2011/05/28 23:44 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。