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Tag [続刊レビュー] 2010.08.23
作品紹介→*新作レビュー*ふじもとゆうき「ただいまのうた」
関連作品紹介→ふじもとゆうき「キラメキ☆銀河町商店街」



1102949792.jpgふじもとゆうき「ただいまのうた」(2)


踏ん張れ
負けんな
でもどうしても辛いときは
アタシ達に甘えなさい
わかった?



■2巻発売です。
 6年前に両親を亡くした花寺向日葵は、5人兄妹の長女。優しく、自由過ぎる兄弟達との夏は、貧乏ながらも楽しい毎日。肉不足にあえぐ中、近所の福引きで肉盛り合わせが賞品になっていることを知り、一家総出で獲得を目指し、初めての家族旅行では、見知らぬ男の子と仲良くなったりと、いつにもまして賑やか!あったか、にぎやかホームコメディ第2巻は、向日葵を囲む兄弟達も大活躍!


~印象的な表紙~
 「ただいまのうた」ゆっくりと2巻発売です。ヒロインの名前は向日葵ですから、まさにこのタイミングでのコミックス発売は理想的な形。家族とひまわりをバックに、満面の笑顔を浮かべる向日葵の姿が、とっても印象的な表紙となっていますね。そして表紙から受ける好印象そのままに、内容のほうも申し分なく素敵なものになっていました。描くのは、あくまで家族愛。その家族愛の形というものが、はっきりとわかるような、そんな物語たちでした。


~それぞれが、自分の考えで、自分のやりかたで~ 
 この作品は、ザ花とゆめ掲載作品ということで、基本的には1話読切り形式で物語は進んでいきます。そのため、一つのお話に対して、一つのイベントが対応しているという形。だからこそ、毎回とある目標に向かって、それぞれのキャラクターが動いていくのですが、その動き方というのが、兄弟一人一人がテンでバラバラになっていて、とても面白いのです。福引きからのバーベキューでも、温泉旅行での宴会でも、末っ子の梅太に対しての助言でも、それぞれが同じ目標を共有しながらも、こなす役割は全く別もの。長男の桜は、腕力から何から、男らしく力技で家族を引っぱります。そして次男は、美しさを演出することで、家族の中に文化的な潤いをもたらし、コミュニケーション能力の高さで家族内部、そして外部との関係を円滑にします。三男は冷静さと勉強力で、知識の面から家族をサポート。そして四男の梅太は、家族のマスコット的存在として、家庭に明るさをもたらしてくれます。それぞれが、得意な面で、お互いを邪魔しないように、プラスに作用し合う。実に素敵な家族役割の棲み分けだと思うんです。
 
 多くの家族、特に親が健在の家族だと、その親子というのはすごく似てくるものだと思うんです。家族ものに限らず、親子を描く作品って、そういう傾向が強い。けれどもこの作品の場合、親は既に他界しています。まだこれから育っていかなくてはいけない、幼い子が家族の中にいる。そんな子を、自分が立派に導くには、自分がしっかり役に立つには、どうしたらよいのか。具体的な目標が目の前にいないなか、己の道を模索して、辿り着いたのが今の姿だったのだとしたら、本当にみんな頼もしいなぁ、と。彼らはきっと、一人でも生きていける強さを持っています。けれども、それらの個の力が結集したとき、さらに素敵な力を生み出していける。他人発進の強さだからこそ、噛み合ってなお輝く、彼らを見ていると、そんな想いが自然と生まれてきて、実に微笑ましく物語を読み進めることができるんです。


~オネエの菊之介が好き~
 個人的には次男の菊之介がお気に入り。何故か大人数兄弟が出てくる作品では、高確率でオネエがいるのですが(「お兄ちゃんと一緒」,「ひめごとははなぞの」)、このポジション、大好きでございます。妹を相手にしたとき、よほどぶっ飛んだ兄でないと、思春期まっただ中の女の子を抱きしめることってなかなかできないわけで。そしてその壁を軽く乗り越えてしまうのが、このオネエポジションの兄だったりするのです。今回、オマケページにちょっとした絵が描いてあったのですが、それがもう素敵で素敵で。


ただいまのうた2
花寺兄妹。この密着感は、普通の兄弟だとなかなかできません。この兄だからこそ。


 オネエって大事です。男だらけの家族の中で、母親や姉、妹としての役割を果たしていくことで生まれる「女らしさ」というのは当然ありますが、同時に女の人がいるからこそ、受け継がれる「女らしさ」というものもあるはずで。姉や歳の近い年上の女性というのは、女性として成長していく上で、大きな影響を与えてくれます(と、妹が言っていた)。全てのオネエ系の兄がそうとは限りませんが、少なくとも美しくいて、かつ女の心を持つ菊之介は、向日葵に女性的な影響を与えてくれているはずで、彼女の成長、ひいては物語の広がりに、かなり寄与してくれているのではないでしょうか。3巻以降、向日葵の恋愛模様も動いてくるらしいですが、きっと菊之介お兄ちゃんの活躍もあるはず。楽しみですねー。



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