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Tag [新作レビュー] 2010.08.25
1102949859.jpg喜久田ゆい「魔法使いの猫」1巻


どうせ死ぬなら
私を守って死ね



■本が大好きな高校生・理央は、双子の兄弟、真央ととっても仲良し。運動も勉強もできて、女子からもモテる真央とは対照的に、本だけをひたすらに愛し、地味に育った理央は、ある日道に飛び出した猫を追いかけて、車に轢かれてしまう。そして目が覚めると、そこは知らない世界…そして自分の姿はなんと猫!?魔法使いを守り戦う、使い魔と呼ばれる猫として、謎の魔法使い・ターニストに召還された理央は、その運命に縛られ翻弄されていく…

 「少年羽狩人」(→レビュー)の喜久田ゆい先生の新作でございます。物語の始まりは、現実世界の普通の日常風景から。双子の片方・理央は、双子の片割れ・真央と一緒に毎日を過ごす日々を送っています。読書大好きで、それ以外には特に好きなことも得意なこともない理央。そんな彼に対して、勉強も運動も青春も人一倍謳歌している、真央。そんな彼を目の前に、ただただ感心するばかりの理央でしたが、ある日二人の間は哀しくも引き裂かれることに。猫を追って道に飛び出した理央は、車に轢かれてそのまま姿を消してしまいます。そして気がついた時には、全く見知らぬ世界に。誰かの声で目が覚めた理央は、自分の姿が猫になっていることに驚きます。そして少しして、彼の目の前に現れた、主人と名乗る一人の魔法使い。事故に遭いそうになったところを、自分が助けてやった。これからは使い魔として、その身を呈して自分を守れ。そう唐突に伝えてきたその魔法使い、ターニストのもとで、理央は運命の波に揉まれていくことになります。


魔法使いの猫
ターニストは性別も年齢も不詳。ただとにかく強い魔法使いであるという、わかっているのはそれだけ。あ、ちなみに猫ではありますが、普段は人間の姿でいられます。


 異世界召還、しかもそのままの姿ではなく、猫として。ファンタジックな要素をたっぷり詰め込んだ物語は、導入こそ現実世界で展開されましたが、その大部分は異世界にて展開されていきます。この世界は、魔法王と呼ばれる絶対的な魔法使いが統べる世界。魔法使いは生まれながらにその力が与えられ、社会の中で特別な地位を獲得しています。そんな魔法使いに仕え、魔法使いを守るのが、使い魔。その代表的な使い魔である猫として、主人公の理央は異世界に飛ばされることになります。典型的な巻き込まれ型のファンタジーで、物語序盤から、よくわからない展開が続くという形。その中で少しずつヒントが与えられ、自分のいる場所、自分の置かれた立場、そして自分がどう生きていくべきかを見出していくというもの。
 
 1巻まるまる使って導入という形で、未だ物語の全体像…というかどうもっていきたいのかという部分が明確でありません。主人公にはこれといった主体性もなく、どうも無味無臭という印象。また具体的な目標も提示されないために、物語自体もどこか宙に浮いたような、ふわふわした印象を受けます。最終的に明らかになったターニストの正体も、これだともう動かしようがない(力関係的には)わけで、何か大きな異世界ファンタジーストーリーを期待しているのであれば、ちょっとそれは違うのかな、という感じ。そんな中、再び繋がった現実世界での、双子の弟の動きが、大きな転換点となりそう。現時点ではやや退屈と言わざるを得ない物語展開ではありますが、双子を軸として展開するのであれば、2巻以降大きな変わり身を見せる可能性は十分にありと言えそうです。


【男性へのガイド】
→ターニストと理央との関係、真央と理央との関係、どちらをフォーカスしても、やや腐の香りが。関係で見せる異世界ファンタジーは、やっぱり女性のほうが好きそう。
【私的お薦め度:☆☆    】
→2巻以降面白くなりそうな気配はするものの、2巻買おうと思わせるだけの引きはなく、ファンタジー慣れしている、ないし作者さんのファンの方でないと、これは少々厳しいかもしれません。


作品DATA
■著者:喜久田ゆい
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(平成22年1月号~)
■既刊1巻
■価格:552円+税


■購入する→Amazon

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