作品紹介→*新作レビュー* 都戸利津「群青シネマ」
関連作品レビュー→都戸利津「環状白馬線 車掌の英さん」
都戸利津「群青シネマ」(2)
そうやって人はね
夢を見るんですよ
■2巻発売。完結しました。
高校3年の夏、映画の自主制作を意気揚々と進めていた、朝日、たまき、弥方たち。しかし、小さな行き違いから、気持ちがバラバラになり、映画の制作中止の危機!?過労で倒れた朝日、英国行きが決まったたまき、そして実家に戻された弥方…そんな彼らを繋いだのは、たった一人、かけがえのない存在である、水野先生。突然彼らの前に現れた水野先生は、再び3人を映画制作に向かわせた…!
~完結しました~
2巻で完結ということで、意外とあっさりと終わってしまいました。しかし物語のほうは素晴らしい終わり方。2巻だから、もの足りないということは全くなく、大満足での終了となりました。やはり水野先生はすごい。彼の一言があって以降、バラバラだった3人の心は一つになり、そのままの勢いで突っ走ってしまった。しかも彼は、表立って何かをしたわけではありません。裏で少しだけ、彼らに道を作ってあげて、あとは言葉で、あくまで本人たちが能動的に動けるように言葉をかけてあげる。その言葉は、直接的な、結論となるような言葉ではありません。あくまで彼らのヒントになるような、何気ない『道標』。そしてその言葉に含まれる説得力は、誰の心にも響く普遍的な事実認識。立派なことは言わずに、立派なことをする。こんな大人に恵まれた3人は、本当に幸せです。
~キレイなまとめ~
最終的には、彼らの映画制作の過程そのものが、シネマになるというまとめ。予想できたといえばできたまとめ方ですが、本格的に取り組んでいたぶん、何か具体的な作品をしっかりと残した上で展開するのではと考えていたので、個人的にはこのまとめ方はしてやられた形。「皆で過ごした思い出が、最高の映画なんだよ」みたいな状況。言葉にすればクサいことも、作品として真っ正面に、そして少しの時代感を盛り込めば、こんなにも爽やかな物語になるのです。これはもう見事と言うほかありません。
さて、ここでもう一度水野先生のお話。彼は朝日を焚き付ける際に…
と伝え、映画作りのヒントを与えました。朝日に伝わったそのメッセージは、「失敗を切り落とし、望むシーンを繋いでいく、まるで映画のよう」という捉え方がなされました。そして映画制作を経て、発表。しかし水野先生率いる大学の面々が選んだのは、「失敗を切り落として望むシーンを繋げた」フィルムではなく、ふざけ失敗しとても良いところばかりとは言えない、NGシーンの寄せ集めとなったフィルムでした。最初はそう伝えておきながらも、最後には失敗もまた良しという着地点。未来視点と、過去回帰での視点の違いとはいえ、その気づきを共に生み出した水野先生は、やっぱりカッコ良過ぎると思うんです。こんな大人になれればいいなぁ。
~逆算して作られてるの?~
まとめ方と良い、水野先生の言葉の選び方と良い、なんとなく着地点を想定しながら、逆算して作られた作品なのではないかという感じを受けます。とにかく出来上がったときの形がキレイ。それは1巻完結の「環状白馬線 車掌の英さん」でも同じことで、最後の最後で本当の感動を見るという、珍しい作風の持ち主だと言えるでしょう。次の作品も本当に楽しみ。素敵な作品を、どうもありがとうございました!
■購入する→Amazon
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関連作品レビュー→都戸利津「環状白馬線 車掌の英さん」

そうやって人はね
夢を見るんですよ
■2巻発売。完結しました。
高校3年の夏、映画の自主制作を意気揚々と進めていた、朝日、たまき、弥方たち。しかし、小さな行き違いから、気持ちがバラバラになり、映画の制作中止の危機!?過労で倒れた朝日、英国行きが決まったたまき、そして実家に戻された弥方…そんな彼らを繋いだのは、たった一人、かけがえのない存在である、水野先生。突然彼らの前に現れた水野先生は、再び3人を映画制作に向かわせた…!
~完結しました~
2巻で完結ということで、意外とあっさりと終わってしまいました。しかし物語のほうは素晴らしい終わり方。2巻だから、もの足りないということは全くなく、大満足での終了となりました。やはり水野先生はすごい。彼の一言があって以降、バラバラだった3人の心は一つになり、そのままの勢いで突っ走ってしまった。しかも彼は、表立って何かをしたわけではありません。裏で少しだけ、彼らに道を作ってあげて、あとは言葉で、あくまで本人たちが能動的に動けるように言葉をかけてあげる。その言葉は、直接的な、結論となるような言葉ではありません。あくまで彼らのヒントになるような、何気ない『道標』。そしてその言葉に含まれる説得力は、誰の心にも響く普遍的な事実認識。立派なことは言わずに、立派なことをする。こんな大人に恵まれた3人は、本当に幸せです。
~キレイなまとめ~
最終的には、彼らの映画制作の過程そのものが、シネマになるというまとめ。予想できたといえばできたまとめ方ですが、本格的に取り組んでいたぶん、何か具体的な作品をしっかりと残した上で展開するのではと考えていたので、個人的にはこのまとめ方はしてやられた形。「皆で過ごした思い出が、最高の映画なんだよ」みたいな状況。言葉にすればクサいことも、作品として真っ正面に、そして少しの時代感を盛り込めば、こんなにも爽やかな物語になるのです。これはもう見事と言うほかありません。
さて、ここでもう一度水野先生のお話。彼は朝日を焚き付ける際に…
楽しいところ
成功するところだけ
都合のいいところだけを寄せ集めて
思い通りの世界を描く
成功するところだけ
都合のいいところだけを寄せ集めて
思い通りの世界を描く
と伝え、映画作りのヒントを与えました。朝日に伝わったそのメッセージは、「失敗を切り落とし、望むシーンを繋いでいく、まるで映画のよう」という捉え方がなされました。そして映画制作を経て、発表。しかし水野先生率いる大学の面々が選んだのは、「失敗を切り落として望むシーンを繋げた」フィルムではなく、ふざけ失敗しとても良いところばかりとは言えない、NGシーンの寄せ集めとなったフィルムでした。最初はそう伝えておきながらも、最後には失敗もまた良しという着地点。未来視点と、過去回帰での視点の違いとはいえ、その気づきを共に生み出した水野先生は、やっぱりカッコ良過ぎると思うんです。こんな大人になれればいいなぁ。
~逆算して作られてるの?~
まとめ方と良い、水野先生の言葉の選び方と良い、なんとなく着地点を想定しながら、逆算して作られた作品なのではないかという感じを受けます。とにかく出来上がったときの形がキレイ。それは1巻完結の「環状白馬線 車掌の英さん」でも同じことで、最後の最後で本当の感動を見るという、珍しい作風の持ち主だと言えるでしょう。次の作品も本当に楽しみ。素敵な作品を、どうもありがとうございました!
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