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Tag [続刊レビュー] 2010.09.06
作品紹介→*新作レビュー*仲野えみこ「帝の至宝」



1102957378.jpg仲野えみこ「帝の至宝」(2)


深い意味なんて全然ない志季のことば
それでもあたしは
飛び上がっちゃうくらいうれしい



■2巻発売しました。
 村の裏山で倒れていた青年・志季と出会った香蘭。傷の手当をきっかけに仲良くなった二人だけれど、その後志季の正体が帝であることを知ってびっくり。平民である自分にも、対等に優しく接してくれる志季に、香蘭は徐々に惹かれていくものの、相変わらず志季は香蘭を子供扱い。こう見えても18歳…中身も外見ももっと女らしく…と思った矢先、志季にお見合いの話が持ち上がって…!?
 
 
~待ちわびた2巻~
 待ちわびた2巻、いやあ面白かったです。やってることは1巻とそこまで変わりがないのかもしれませんが、発刊のスパンが空いているので、全然問題無く楽しめます。むしろある程度パターン化されてこそ生まれる安定感や、そこから一歩踏み出して描き出すドキドキ感やトキメキで、パワーアップした感すらあるような…。さて今回は5話ほど収録されているのですが、その殆どが志季との関係性に悩み、そこからなんとか脱却しようを試みる香蘭の姿が描かれました。
 

~慌てふためくヒロインがかわいい~
 王子と平民という話では、1巻のレビューの際にも挙げた「赤髪の白雪姫」(→レビュー)があるのですが、こちらの白雪は王子・ゼンとの関係性をそこまで意識することなく、日々の生活を送り、王子と接しています。このブレることのない自然体が、いわば彼女の魅力なわけですが、香蘭は逆に、帝との関係性を意識しまくってアタフタするところが、どこまでも魅力的。見ためはこんなんだけど、中身は実年齢の18歳、もしくはそれ以上に大人…なんて設定になりそうなところなのですが、気がつけば中身も18歳らしからぬ幼さを覗かせるようになっています。ただでさえ見かけと身分に差があるのだから、せめて中身は追いつきたい…そう思えば思うほど、空回りして想い通りにいかない。そして結局志季に慰められるようにやさしい言葉をかけられて、とりあえず落ち着くという。あれ、別に18歳じゃなくて良くね?なんて思えるわけですが、18だからこそ余計に気負い、空回るという効果を生むわけで、やっぱり18歳っていう年齢設定は必要なのですよ。


~薬師という生き方~ 
 今回、志季がお見合いをするにあたり、むやみに会いに行くのはよそうと香蘭は決めるのですが、その一方で、何か会いにいゆく理由を作ろうと必死になってしまいます。その中で彼女が見つけた理由は「仕事で大変そうだから、栄養ドリンクを作っていく」というものでした。このわざわざ理由を考えて会いに行くというところがまず可愛らしいのですが、この理由というのが、この場面に限らず、香蘭が志季の隣に、自ら納得できる形で居つづけることができる精神的支柱になっているのではないのかな、と感じられ、より愛おしく映ったという。


帝の至宝2-1
相手が身分の違う相手である以上、会う理由・用事を求めないと、しんどい。


 そもそも普通であれば、決して一緒にいることなどできない身分である二人。香蘭が志季に対して放った「だって志季は帝じゃん」という言葉は、その関係性を意識しないことは不可能であるという香蘭の考えを端的に表しています。そんな相手の側に居続けるには、やはり何かしらの理由が必要。例え志季が無条件に良いと言っても、こちらがそれを意識している以上、自分の中に理由がないとしんどいです。そんな彼女にとって、居つづける理由として機能しそうなのが、この薬師としての生き方でした。好きな相手は支えるべき、そして尽くすべき相手であり、帝は守るべき相手。その全てを満たし、かつ側にいることが出来る仕事の一つが、薬師なのです。だからこそ、薬の勉強をする香蘭が、一番健気に可愛らしく映って見えたり。。。
 
 
~スゴい馬の乗り方~
 さて、なんだか色々と話してしまいましたが、今回一番パンチが効いていたのが、馬に二人で乗るシーンですよ。普通であれば、馬を駆る男の人の背中に抱きつくという構図になるのですが、今回は全然違いました…
 

帝の至宝2-2
前側から抱っこ


 これってアリなんですかー!?これ絶対馬に乗りにくいと思うんですけど、そんなことはどうでも良いのです。ときめくでもない、エロいでもない、なんだかただ単に恥ずかしいこの感じ。いやぁ、素敵です。これもまた、香蘭が小さいからこそできるシチュなわけで、小さいのも悪くないよね、と香蘭もこのときは思えたのではないでしょうか。
 
 
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