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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.09.08
1102958691.jpgやまがたさとみ「砂漠を泳ぐ、眠る」


傷つけばいい
あなたが わたしを
少しでも好きだったなら
同じだけ傷つけばいい



■「恋愛じゃないなんて嘘。スイッチを切っていただけ」。。。年齢以上に幼い容姿のあさみと、彼女をめぐる4人の男。遊び人で、約束を守らない男・須川。一定の距離を保ちつつ、優しさを与えてくれる男・ナツキ。友達として、自分のことを気にかけてくれる男・トモ。そして、電車でいつも一緒になる、名前も知らない妻子持ちの男。迷えるあさみが、彷徨い続けた果てに辿り着いた場所とは。大人のための、優しく心震わすラブストーリー。

 やまがたさとみ先生の、フィーヤン初掲載作とのことです。物語は、一人の迷える女性と、彼女を巡る4人の男の物語。恋愛関係にはなっていないけれど、肉体関係や精神的依存はあるという、ちょっとオトナな人間模様が描かれています。主人公は、気分次第で不特定の男性と寝てしまう、ちょっと不安定な心の持ち主であるあさみ。そんな彼女の不安定さを生み出しているのは、一人の男の存在。遊び人で、約束を守ることもない男・須川を相手に、決して信用することはなくとも、心のどこかで彼を欲している彼女は、振り回されるたびに傷を増やしていきます。そんな彼女に声をかけたのが、一定の距離を保ちつつも、優しさを与えてくれる男・ナツキ。彼の登場が、あさみに微かな変化をもたらし…というお話。


砂漠を泳ぐ、眠る
ヒロインは、どこか危うげで、そして可愛らしい。そりゃあ男が放っておかないわなぁ。自分がなんとかしてあげたいって思っちゃうもの。


 なんとも形容しがたいお話でした。多分色々な見方があるのでしょうが、多分自分はこの物語を根底から理解することはできていないな、とレビューを書こうとして改めて思っています。簡単に言ってしまえば、恋に傷つき気持ちを閉じこめてしまったヒロインが、紆余曲折あって再生への道を進んでいくという流れなのですが、その話の節々に登場するモチーフや人物たちに、どういうメッセージが含まれているのか、そこが掴みきれていないと言いますか。強引にこの物語を形どってしまって、結論付けてしまうのであれば、この作品で重要なモチーフとなるのは、向日葵と砂漠かなぁ、と。道標もなく彷徨うナツキを導く向日葵があさみで、居場所を求め迷うあさみを受け入れたのが、砂漠のナツキ…みたいな。いや、何度か読んだらまた違う感想になるかもしれないですが。
 
 男女共にたくさんの登場人物が出てくるのですが、どのキャラクターも自分に嘘をついていたり、傷を抱えていたりと、弱さを抱える人間として描かれています。それはもう、徹底して。誰しも傷や嘘を抱えて生きているわけで、共感できる人は共感できるはず。かくいう私も、結構物語に引き込まれてしまいました。特に友達でいながら密かにあさみに想いをよせる、トモに。この吹っ切れない感じが実に素敵でした。時間の流れや、物語の流れ、心情の流れが非常に掴みにくい、不親切な描かれ方のしている作品ではあるのですが、この雰囲気の良さはそれらを補って余りあるものであると思います。雰囲気だけでいっちゃう作品は、あまりオススメしたくはないのですが、これは絵柄もかわいらしいし、良いかなぁ。一度読んだだけじゃちょっと足りない、2度読んでやっと自分の中で答えが出そうな感じなので、とりあえずこの記事上げたらまた読み直します、はい。


【男性へのガイド】
→男が感情移入できる余地は結構あるのではないかと思います。このだらしのない関係が耐えられないって人もいるかもですが。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→作品としては、オススメしづらいのですが、なんだかんだ集中して読んでいたので。実際書店で手に取ってみて、ピンと来た方は読んでみると良いのではないでしょうか。基本的に雰囲気系で不親切でございます。


作品DATA
■著者:やまがたさとみ
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング
■全1巻
■価格:933円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「フィール・ヤング」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

こんにちは。

『実際書店で手に取ってみて、ピンと来た方は読んでみると良いのではないでしょうか』とのお言葉に従って、書店で手に取ってみて、綺麗な表紙と帯の『大人のための、優しく心震わすラブストーリー』とにピンときたので読んでみました。

これはイイですね。

主役級3人にはまったく共感できないし、とりたててドラマティックな物語があるわけでもないし、時間の前後関係が分かりにくいし・・・しかし、絵がかわいくて、なんだかよく分からないけど雰囲気がすごくイイですね。

なんだかんだいって、引きこまれて、読み終わった後も余韻に浸ってました。
しばらく他の本を読む気になれなかったくらい。

感情移入や共感はできないけれど、それでも心の琴線はふるえました。不思議な作品です。

オススメ、ありがとうございました。
From: しろくま * 2010/09/15 19:24 * URL * [Edit] *  top↑
元々購入するか迷っていたのですが、自分自身、書店で表紙を見て購入を即決した一冊でした。
万人にお勧めできるような内容の作品ではないですが、
少しでも気に入ってくれた方がいたのでしたら嬉しいです。
From: いづき * 2010/09/20 00:41 * URL * [Edit] *  top↑

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