このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2010.09.11
1102965411.jpg秋月壱葉/芝村裕吏「公僕の警部」(1)


協力せよ。
我は汝の助けを必要とする。



■“警部”から、送信された100万件のメール。このうち99万9600件までは、単なる迷惑メール・スパムメールとして処理された。真に受けて行動を起こしたのは、残りの400人である。ここ3年に限った平均的な殺人件数は1日あたり35件。この日は、31件と4件の減少。誤差と言える範囲。とはいえ、いつもより殺人が少ないのは確かであった。このメールによって命を助けられた人間は、その後も警部から送られてくるメールの指令に、忠実に従う。その結果、行きつくものとは。アンチクライム・カウンターストーリー登場!

 メールで犯罪を抑止する“警部”と、そのメールに従い動く一般人たちを描いた、アンチクライムカウンターストーリーでございます。いきなりなんのこっちゃという感じかもしれませんが、実際にそうなのだから仕方ありません。物語は、“警部”と名乗る人物から届いた、一通のメールによって始まります。その内容とは、「あなたは誰かに命を狙われている可能性があり、もし何物かに追われている状況下にあるのであれば、指示に従って逃げなさい」というもの。100万件送られたそのメールは、その大半がスパムメールとして無視されたものの、実際に追われている(と感じている)状況下に置かれていた人間は、そのメールの指示に従い行動を起こします。「メールによって命を救われた。」「何か変なことをやろうとしている、面白い。」…そのメールに興味を持った人物達は、その後も送られてくる警部からの謎の指示に従い行動を起こします。わかっていることは本当にごくわずか。警部が何か大きな敵と戦っていること、そしてそのためには自分たちの協力が必要不可欠だということ。そんな警部に感化され、導かれるように出会った3人は、段々と更なる非日常へと足を踏み入れていくことになるのですが…というお話。


公僕の警部
物語は、警部に感化された3人の視点で進む。メールという共通項があるからこそ、すぐに打ち解ける。結果それがスピード感アップに繋がり、サクサク物語が読める。良いサイクルです。


 謎の人物から送られてくるメールの指示に従い、感化された一般人が協力して敵を倒す…という流れ。要するに、より大規模な鉄腕ダッシュみたいなもので、ゲーム感覚が強く出ている印象。「100万件のメールって意外と少ない」とか、「本当に悪者なのかわからないけどそれっぽいから車壊して殴っちゃえ…ってのは大丈夫なの?」みたいに、幾らでもケチを付けようと思えばつけられる内容ではあるのですが、視点を内側に置いて、参加者的に楽しめば、意外とすんなり受け入れられてしまいます。何か共通の目的を共有して、特別なゲームに参加できるという感覚は、現実世界の類似シチュエーションでもなかなか気持ち良いもの。物語を読むときは、99万6000人側の感覚ではなく、400人側の感覚で読みましょう。
 
 
 設定だけ見るとかなり無茶なお話なのですが、その設定さえ受け入れてしまえば、あとは問題なしという感じ。土台の上に、しっかりと組み上がっているものの、そもそもの土台が許容できるものか怪しいというもので、大元を受け入れられなければ完全にアウト。基本的にはエンターテイメント狙いで、リアリティなんてものは追求していないはず。ここで冷静にツッコミを入れたら負けなのでしょう。無茶だけど、スピード感とワクワク感はそれなりで、関係者たちが「面白い」と言っているのも納得です。


【男性へのガイド】
→こういう話は結構読めるかと。中二病クサさはあるかもですが。
【私的お薦め度:☆☆    】
→オススメはしちゃいけないかなぁ、と。でも設定なりに読ませるし、何か齟齬があるということでもないです。決して評価低いというわけではないです、はい。


作品DATA
■著者:秋月壱葉
■出版社:エンターブレイン
■レーベル:B's-LOG
■掲載誌:コミックビーズログエアレイド(年月号~)
■既刊1巻
■価格:620円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「B's LOG」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。