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Tag [新作レビュー] 2010.09.14
1102958349.jpg築島治「好き・嫌い・好き」(1)


あたしはこの人の
どこに惹かれたんだろうな…



■井上梓は、クラスメイトで顔は良いけど性格は最低な斉藤のことが大の苦手。けれども何かと一緒になる事が多く、気がつけば彼のオキニイリに。何かにつけて絡んでくる彼に、最初は腹がたってばかりの梓だったけれど、言う事に筋が通っていることに気づき、いつしか惹かれていくように。そんな二人の関係に、割って入ってきたのが、中学からの同級生でクラス委員長のヒカル。思わぬ形の三角関係に、梓は…!?

 築島治先生の初連載でございます。おめでとうございます。物語は、性格正反対の、イケメン男子二人の間で板挟みという、三角関係学園ラブストーリー。ヒロインを務めるのは、サッパリした性格で、ものを考えるのが苦手な女子高生・井上梓。そんな彼女の目下の敵は、同じクラスのイケメン・斉藤。顔の良さから超絶モテるものの、そのキツい性格が、梓はどうしても受け付けられません。そしてある日、ひょんなことから彼を殴打。それがきっかけとなったのか、その後彼と何かと一緒になる事が多くなり、そして執拗に彼がちょっかいを出してくるようになります。最初はそれがイヤで仕方なかった梓ですが、言う事に筋が通っている彼に、気がつけば惹かれていくように。そして、そんな彼女の様子を見て、焦ったのがクラスの王子様的存在のクラス委員長・ヒカル。急速に動き出す、三人の気持ちと状況。悪党か、王子か、究極の板挟みの中で、梓は心を迷わせていくのでした。


好き、嫌い、好き
対等にやりあえる主張の強さと、自分の非を即座に認め、お礼まで言える素直さと思いやりがある。魅力はしっかりと備わっています。


 表紙の絵を見て、なんとなく矢沢あい先生系統の絵なのかなぁ、と思っていたのですが、読んでみるとどちらかというと真崎総子先生っぽいでしょうか。たぶんそう見せているのは、ちょっと幼さを覗かせる、生意気な相手役のせい。デザートスタンダードの、ガラの悪いワルっぽい子が、相手役となっております。そんな彼と対比で置かれる、人の良い王子様系の男の子。そんな二人から、不器用なアプローチを受けつつ揺れるという、なかなか美味しい作りのお話。物語を成り立たせるためには、好かれるに足る「特別さ」がヒロインに必要になるのですが、見ために騙されず自然体で、ことさら真っ直ぐに生きる人物像がしっかりと描かれており、無理のないヒロイン像・物語像となっております。
 
 性格の悪い相手役に惹かれていく過程で、「彼は口は悪いけれど、言っていることは正しい」というシーンが度々あるのですが、それらは正しい正しくないではなく、単にヒロインと価値観が合う合わないというだけの話なのではないかな、と。それら含めて恋とすれば問題なしなのですが、どうも読者の見解すらも固定しかねない表現に見えて、ちょっとひっかかってしまったり。物語で見たら、些細なことなのですが、相手役の魅力を補強するのが、正当性なのか感覚的接近なのかで、やはり意味はかわってくるのかな、と。今のところ悪党優勢ですが、後半から王子がギアを上げ、一気に攻勢に。ダラダラと長引かせることもないでしょうし、2巻以降も入れ替わりの激しいラブバトルを見ることができるでしょう。ジェットコースター的な、男子優勢の恋物語がお好きな方は(結構絞った気が…)、気に入るのではないでしょうか。
 
 そういえば、同じ読み方の作品に、こんなのも小畑友紀「スキキライ好き。」。こちらのイメージが強いので、比べてしまいそうになります。シチュエーションは似てなくもないけれど、全く別のお話に。流れでご紹介です。


【男性へのガイド】
→女性得な作品ではないでしょうか。敢えて男性がこれを読む必要もないかと…。
【私的お薦め度:☆☆   】
→物語としてはしっかりと構築され機能しているものの、これといった目新しさはあらず。デザートということを考えると、なかなか手堅い作りなのかな、という感じがします。


作品DATA
■著者:築島治
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

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