
ゼッタイ引っ越す
こんな部屋ッ
■私はここんとこツイてない。専門学校に入ってから、ずっと付き合っていた人が、一か月前に出ていった。気分転換にと行った美容院では、驚くほど短く髪をカットされ、電話で友達に愚痴を吐いていたら、隣人から「ウルサい」の合図が。そんなある日、気分転換に部屋の模様替えをしていたら、衝撃の事実が。なんと壁に穴が空いており、お隣の部屋と繋がっていたのだった。お隣さんは、なんだかいけ好かない若い男。見ためは悪くないけれど、どうにも好きになれないのだった。しかしその出来事がきっかけとなり…?
「ひらひらひゅ~ん」(→レビュー)、「娚の一生」(→レビュー)の西炯子先生が過去に発表した読切り達を収録した一冊。新装版となって再登場となりました。掲載作品の発表年は、1991年が2作、1993年が1作、そして1997年が2作と、かなり古めの作品構成となっております。やはり絵柄というのは時代と共に変化するもので、一目で「昔の作品だな」とわかるような絵柄。短編集として楽しむと同時に、現在の西炯子先生の原型を垣間見ることのできる一冊としての価値も見出す事ができます。収録されている物語は、男女の恋愛模様を描いたものもあれば、男子大学生のとある不思議体験を描いたもの、男子学生同士の奇妙な関係を描いたもの、少女と研究生との触れ合いを描いた話、時代ものの必殺仕事人系など、多種に渡っています。

「So much to say」に登場するお隣さんは、ちょっと「娚の一生」の海江田さんに通じるものがあるかも。いや、気のせいなのかもしれませんが。
同時発売の「こいあじ」が10話収録ということですから、5篇収録のこちらは一話をじっくり楽しむ事ができる一冊ということでしょうか。個人的にお気に入りだったのは、大学に迷い込んだ少女が、外国人の研究生と出会い、心を通わせていくという「虹のできるわけ」。ラストは意外な結末を迎えるのですが、どうもサッパリしすぎた印象のある他の話に比べ、ベタながらわかりやすく、素直に楽しむ事ができました。
やっぱり話には旬というものがあって、その時の時代感を反映しているお話だと、どうしてもそこでギャップを感じてしまうということがあります。例えば着ている服ひとつとっても。「虹のできるわけ」は、物語の作りがいつの時代も通用するようなベタな作りであったというだけでなく、時代を感じさせるファクターがあまり登場していなかったということも、楽しめた要因となっていたのかもしれません。それが気にならない人ならば、問題無いのでしょうがが、気になる人は気になるので。物語自体は、十分面白いものではあったのですが、今描いているお話の方が自分的には好みだし、時代感も。従来のファンの方が買って楽しむ作品なのかなぁ、と。私のような浅いファンは、買う前に一回吟味してからの方が無難かもしれません。
【男性へのガイド】
→嫌う要素はさほどなし。イケメン成分、ヒーロー成分強めですが、それをどう見るか。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→手堅くこのへんで。この時代にオススメはしづらいですが、ファンであれば読んでおいて損はないと思います。
作品DATA
■著者:西炯子
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:サウスほか
■全1巻
■価格:686円+税
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