このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [読み切り/短編] 2010.09.14
1102955859.jpg西炯子「うすあじ」


ゼッタイ引っ越す
こんな部屋ッ



■私はここんとこツイてない。専門学校に入ってから、ずっと付き合っていた人が、一か月前に出ていった。気分転換にと行った美容院では、驚くほど短く髪をカットされ、電話で友達に愚痴を吐いていたら、隣人から「ウルサい」の合図が。そんなある日、気分転換に部屋の模様替えをしていたら、衝撃の事実が。なんと壁に穴が空いており、お隣の部屋と繋がっていたのだった。お隣さんは、なんだかいけ好かない若い男。見ためは悪くないけれど、どうにも好きになれないのだった。しかしその出来事がきっかけとなり…?

 「ひらひらひゅ~ん」(→レビュー)、「娚の一生」(→レビュー)の西炯子先生が過去に発表した読切り達を収録した一冊。新装版となって再登場となりました。掲載作品の発表年は、1991年が2作、1993年が1作、そして1997年が2作と、かなり古めの作品構成となっております。やはり絵柄というのは時代と共に変化するもので、一目で「昔の作品だな」とわかるような絵柄。短編集として楽しむと同時に、現在の西炯子先生の原型を垣間見ることのできる一冊としての価値も見出す事ができます。収録されている物語は、男女の恋愛模様を描いたものもあれば、男子大学生のとある不思議体験を描いたもの、男子学生同士の奇妙な関係を描いたもの、少女と研究生との触れ合いを描いた話、時代ものの必殺仕事人系など、多種に渡っています。


うすあじ
「So much to say」に登場するお隣さんは、ちょっと「娚の一生」の海江田さんに通じるものがあるかも。いや、気のせいなのかもしれませんが。


 同時発売の「こいあじ」が10話収録ということですから、5篇収録のこちらは一話をじっくり楽しむ事ができる一冊ということでしょうか。個人的にお気に入りだったのは、大学に迷い込んだ少女が、外国人の研究生と出会い、心を通わせていくという「虹のできるわけ」。ラストは意外な結末を迎えるのですが、どうもサッパリしすぎた印象のある他の話に比べ、ベタながらわかりやすく、素直に楽しむ事ができました。
 
 やっぱり話には旬というものがあって、その時の時代感を反映しているお話だと、どうしてもそこでギャップを感じてしまうということがあります。例えば着ている服ひとつとっても。「虹のできるわけ」は、物語の作りがいつの時代も通用するようなベタな作りであったというだけでなく、時代を感じさせるファクターがあまり登場していなかったということも、楽しめた要因となっていたのかもしれません。それが気にならない人ならば、問題無いのでしょうがが、気になる人は気になるので。物語自体は、十分面白いものではあったのですが、今描いているお話の方が自分的には好みだし、時代感も。従来のファンの方が買って楽しむ作品なのかなぁ、と。私のような浅いファンは、買う前に一回吟味してからの方が無難かもしれません。


【男性へのガイド】
→嫌う要素はさほどなし。イケメン成分、ヒーロー成分強めですが、それをどう見るか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→手堅くこのへんで。この時代にオススメはしづらいですが、ファンであれば読んでおいて損はないと思います。


作品DATA
■著者:西炯子
■出版社:新書館
■レーベル:ウィングスコミックス
■掲載誌:サウスほか
■全1巻
■価格:686円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ新書館コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。