作品紹介→バイト青年×未亡人×執着霊の奇妙で純情な三角関係:河内遙「夏雪ランデブー」1巻
関連作品レビュー→「真空片戀パック」/「へび苺の缶詰」/「ラブメイク」
河内遙「夏雪ランデブー」(2)
願いは一つ
いつも笑っていて欲しい
■2巻発売です。
花屋のバイト青年・葉月の想い人は、店長の六花。六花は3年前に夫を亡くし、その男は幽霊となっていた。最愛の妻に認識されていない霊・島尾と、その姿が見えている恋敵の葉月。六花の心に強く残るのは、島尾。けれども葉月の想いを、目の前であたたかな温度で伝えられると、許してしまいそうになる。二人の拉致のあかない争いは、次第に加熱してゆき、ついに…
~やっぱり面白い!~
とりあえず、相変わらず面白いですよー!上半期新作ベストでは、この作品を筆頭にもってきましたが、やっぱり今年の新作で現時点での一番は、この作品で揺るぎません。とにかく一度読み出すと、夢中で読んでしまう。何か盛り上がりがあるわけでもなく、設定の割に至極淡々と進んでいくのですが、その低温さ加減が、非現実な設定をすんなりと受け入れてしまえる下地を作っているようで、読んでいて何の違和感も感じることがないのです。それって、読む側としてはすごくありがたいことじゃないですか?またその中で描き出す、相手を想う3人の心情が、どこまでも理解できそうな素朴でありふれた心で、痛く感動・共感してしまうシーンが多々あるのです。その中でも、個人的にやはり一番肩入れしてみてしまうのが、主人公の葉月。今回は、体の乗っ取りからの島尾の心情描写が中心となるのですが、その外で自分なりに答えを探そうとする葉月の心が、また良いのですよ。
~花やしきでの一件は…~
島尾との思い出の場所として、花屋敷の話を聞かされた葉月は、後日店長を花やしきにデートに誘い出します。それだけでもすごいのですが、さらにそこから、怒濤の攻めを。どうして葉月は、店長を花やしきに誘ったのか。彼の魂胆を色々と考えてみるのですが、考えがぐるぐると巡ってしまいます。そもそも彼は、なんのために賭けに出たのか。これはあくまで想像でしかないのですが、花やしきの一件は、店長とのデートというよりも、島尾との決戦だったのではないかな、ということ。葉月は「島尾に墓を建ててやる」という想いを少なからず抱えていたようですが、それはつまり島尾に諦めてもらうということ。そのためには、店長に認めてもらうしかないのですが、もう一つの彼の願いとして、「店長には笑っていて欲しい」という想いがありました。そしてその笑顔が一番現れていたのが、ケータイに残っていた、花やしきでの島尾たちとのデートのとき。彼はその笑顔を、同じ舞台で同じシチュエーションで(だからミホさん誘ってもOKと言ったのでは)、同じように生み出すことができるかどうかという事を、勝負の一つの指標としたのではないのかな、と。再現できる、もしくは店長に認めてもらう、そのどちらかさえクリアすれば、賭けに勝ち。しかし葉月は、結局賭けに負け、体を島尾に貸すことを決めます。これで良かったのか悪かったのかはわかりませんが、少なくとも葉月には、もうできることはないと悟った上での行動だったのでしょう。
~恋心がおもわぬ形で~
まぁとにかく切ない、葉月の恋心。あんな温度の低そうな顔して、
なんて、どこまでも純情な心を覗かせてくれる彼。ああ、そんなに大好きで、跳ねちゃうほど嬉しくて、気持ち悪いくらい通ったんだ。そしてその後島尾によって明らかになる、葉月の自宅…

驚くほどの鉢植えの数。うん、これは確かに比喩とか誇張とかじゃなく、ガチで気持ち悪いくらい通ってたかもしれないですね、うん。そして当たり前ですが、みんな鉢植え。彼は自分のことを「鉢植え」とし、島尾のことを「ドライフラワー」と表現していますが、ここまで鉢植え感出さんでも。ちなみにそのイメージは、そのまま表紙に現れていて、2巻の島尾は黄色が眩しい花だらけなのに対し、葉月は緑中心となっています。これってもしかして夢の中のジャングルでのシーンだったりとかないですかね。というか、葉月はいつになったら戻れるのでしょうか。あまりに何もしないと、いつか島尾に喰われちゃうかもしれませんよ。島尾は草食系ですから(全然上手くない
■購入する→Amazon
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関連作品レビュー→「真空片戀パック」/「へび苺の缶詰」/「ラブメイク」

願いは一つ
いつも笑っていて欲しい
■2巻発売です。
花屋のバイト青年・葉月の想い人は、店長の六花。六花は3年前に夫を亡くし、その男は幽霊となっていた。最愛の妻に認識されていない霊・島尾と、その姿が見えている恋敵の葉月。六花の心に強く残るのは、島尾。けれども葉月の想いを、目の前であたたかな温度で伝えられると、許してしまいそうになる。二人の拉致のあかない争いは、次第に加熱してゆき、ついに…
~やっぱり面白い!~
とりあえず、相変わらず面白いですよー!上半期新作ベストでは、この作品を筆頭にもってきましたが、やっぱり今年の新作で現時点での一番は、この作品で揺るぎません。とにかく一度読み出すと、夢中で読んでしまう。何か盛り上がりがあるわけでもなく、設定の割に至極淡々と進んでいくのですが、その低温さ加減が、非現実な設定をすんなりと受け入れてしまえる下地を作っているようで、読んでいて何の違和感も感じることがないのです。それって、読む側としてはすごくありがたいことじゃないですか?またその中で描き出す、相手を想う3人の心情が、どこまでも理解できそうな素朴でありふれた心で、痛く感動・共感してしまうシーンが多々あるのです。その中でも、個人的にやはり一番肩入れしてみてしまうのが、主人公の葉月。今回は、体の乗っ取りからの島尾の心情描写が中心となるのですが、その外で自分なりに答えを探そうとする葉月の心が、また良いのですよ。
~花やしきでの一件は…~
島尾との思い出の場所として、花屋敷の話を聞かされた葉月は、後日店長を花やしきにデートに誘い出します。それだけでもすごいのですが、さらにそこから、怒濤の攻めを。どうして葉月は、店長を花やしきに誘ったのか。彼の魂胆を色々と考えてみるのですが、考えがぐるぐると巡ってしまいます。そもそも彼は、なんのために賭けに出たのか。これはあくまで想像でしかないのですが、花やしきの一件は、店長とのデートというよりも、島尾との決戦だったのではないかな、ということ。葉月は「島尾に墓を建ててやる」という想いを少なからず抱えていたようですが、それはつまり島尾に諦めてもらうということ。そのためには、店長に認めてもらうしかないのですが、もう一つの彼の願いとして、「店長には笑っていて欲しい」という想いがありました。そしてその笑顔が一番現れていたのが、ケータイに残っていた、花やしきでの島尾たちとのデートのとき。彼はその笑顔を、同じ舞台で同じシチュエーションで(だからミホさん誘ってもOKと言ったのでは)、同じように生み出すことができるかどうかという事を、勝負の一つの指標としたのではないのかな、と。再現できる、もしくは店長に認めてもらう、そのどちらかさえクリアすれば、賭けに勝ち。しかし葉月は、結局賭けに負け、体を島尾に貸すことを決めます。これで良かったのか悪かったのかはわかりませんが、少なくとも葉月には、もうできることはないと悟った上での行動だったのでしょう。
~恋心がおもわぬ形で~
まぁとにかく切ない、葉月の恋心。あんな温度の低そうな顔して、
バイトに採用されるずっと前から
気持ち悪いくらい店通ったんだ
はじめて口きいた日の帰り道
三回も飛び跳ねたんだ
気持ち悪いくらい店通ったんだ
はじめて口きいた日の帰り道
三回も飛び跳ねたんだ
なんて、どこまでも純情な心を覗かせてくれる彼。ああ、そんなに大好きで、跳ねちゃうほど嬉しくて、気持ち悪いくらい通ったんだ。そしてその後島尾によって明らかになる、葉月の自宅…

驚くほどの鉢植えの数。うん、これは確かに比喩とか誇張とかじゃなく、ガチで気持ち悪いくらい通ってたかもしれないですね、うん。そして当たり前ですが、みんな鉢植え。彼は自分のことを「鉢植え」とし、島尾のことを「ドライフラワー」と表現していますが、ここまで鉢植え感出さんでも。ちなみにそのイメージは、そのまま表紙に現れていて、2巻の島尾は黄色が眩しい花だらけなのに対し、葉月は緑中心となっています。これってもしかして夢の中のジャングルでのシーンだったりとかないですかね。というか、葉月はいつになったら戻れるのでしょうか。あまりに何もしないと、いつか島尾に喰われちゃうかもしれませんよ。島尾は草食系ですから(全然上手くない
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