
勝手なことを言うのは…
私に勝ってからにしな
■西暦2222年
「ぷちパレード!」(→レビュー)の大岡さゆり先生の新作は、おバカ系の魔法少女ものでございました。元々かわいらしいキャラクターで、ファンタジーの匂いはさせていた大岡先生ですが、魔法少女でここまで自由に駆け回るとは、正直意外。舞台となるのは、西暦2222年の未来。日々世間を騒がせるのは、異常電波から発生する「ウイルス」。そんなウイルスを退治するのが、対ウイルス用の機械「モバイル」を操るモバイルマスター。ヒロインの小日向めもりは、そんなモバイルマスターを養成する学校に通う生徒です。亡き母の形見であるモバイル・スペードと共に、一人前のモバイルマスターを目指して頑張る日々ですが、なにせめもりは極度の恐がりで、ウイルスを間近に見ると失神してしまうような子。スペードとの意思疎通もイマイチで、養成学校では落ちこぼれという存在でした。そんな彼女に、ある日転機が訪れます。突如現れたウイルスと対峙した際に、スペードちゃんとシンクロ、「モバイルリンク」という合体技により、魔法少女へと大変身を遂げます。

ふだんのめもりは、黒髪でメガネで内気。それが変身をすると、表紙のような強気な魔法少女に。
モバイルリンクを遂げためもりは、普段とは見ためも性格も正反対。いつもはおどおどした、メガネの黒髪ロングの彼女が、モバイルリンクを遂げると、強気ツンデレの、金髪少女に大変身。そしてモバイルリンク後は、もうやりたい放題。パートナーであるスペードちゃんの意思も混ざりつつ、舞台を縦横無尽に駆け回り、敵を倒していきます。何度か変身するシーンがあるのですが、変身後の姿は毎回異なり、ある種のコスプレを楽しめるという設定。やりたい放題やる爽快感と、敵を難なく倒していくお手軽感で、非常に気楽に、そして楽しく読み進めることができるようになっています。
連載とはいえ、長期は見据えていないので、バトルものにありがちな、敗北や挫折からの成長という描写はほぼありません。基本的に、「魔法少女もの」を真っ正面から真っ当に描こうなんて意思はあまり感じられず、どちらかというと「魔法少女」というのは雛形程度の認識で、そこに自分の好きだと思うものをこれでもかと詰め込み、バカっぽく楽しく展開できればOKという空気感が感じられます。でもだからこそ、自由で面白い。基本的にバカで自由なノリの作品って大好きなのですが、これは結構ハマりましたね。敵をただ倒すというのは、深く考えなくとも消化できる展開ですし、おバカ系の話とは結構相性が良いのかもしれません。

遊助の「ミツバチ」人気を見越してか、ライバルキャラはまさかの蜂化。とりわけ残念なのが、イケメンの彼。素晴らしい働きを見せてくれますよ。
色々と、意図的に残念な要素を用意しているのですが、特に残念なのが、ライバルの剣沙己くん。「モテたいからに決まってんだろー!」などと叫んだり、巨大化しためもりのパンツを盗撮したりと、ヒーローポジションのイケメンにあるまじき言動の数々をこれでもかとやってのける所が素晴らしい。また後半には、女体化までカバーするなど、こちらもまたやりたい放題でございます。やはり魔法少女は2人揃ってこそ(ry
最後には、元ネタとなった読切りが収録。色々と話題になった、りぼんファンタジー増刊の作品がプロトタイプとなったようですが、こちらはヒロインの性格がきつめで、世界観は「サマーウォーズ」みたいな感じになっています。こちらはこちらでまたアリかも。1巻で終了ということを考えても、決して人気が出そうな作品ではありませんが、個人的には応援したいと思う作品でした。男女関係なく、ネタ的に物語を読むことができるのであれば、楽しめるのではないかと思います。
【男性へのガイド】
→男性も楽しめそうですね。萌えも広くカバー。但しあくまでネタ的に。お馬鹿系がお好きなら、一度チェックを。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ノリの良いバカ系作品は大好物。これをオススメにするのは憚られるような気はするものの、1巻完結でもうご紹介する機会もないということで、オススメにしておきます。
作品DATA
■著者:大岡さおり
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:りぼん
■全1巻
■価格:400円+税
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