作品紹介→*新作レビュー*御徒町鳩「みどりのまきば」
関連作品紹介→御徒町鳩「腐女子っス!」
御徒町鳩「みどりのまきば」(2) 
(…がんばれ …じゃないな)
「お互い がんばろう」
■2巻発売、完結しました。
青葉と若葉は、双子の小学6年生。モテ男・千尋や、「でかまり」こと小毬、小さなまっちんと仲良しです。でかまりの塾友・萩原さんは、保健室登校の常連。彼女が教室に向かえない理由とは。エリート転校生・速水くんは、周囲の優しさを素直に受け取れなくて…。図太いようで繊細な、単純なようで複雑な、コドモのキモチ。胸にじんわりしみる、涙と笑顔の最終巻、登場です!
~完結です~
驚くほどサラッと、そして大きなドラマもなく終わりました。登場する人物達全員で、何か大きなことを成し遂げるわけでもなく、一人一人にドラマはありつつも、決して多くの人を巻き込むことはない。それこそが日常で、そんな中にふと見せる、子供同士の繋がりや、大人との愛情のやりとりが、とても心地よかったです。そんなみどりのまきばで、今回メインで描かれたのは、生意気な秀才・速水くんと、保健室登校の萩原さんの二人。青葉や若葉、千尋や小毬たちは、あくまで脇役に徹しました。
~子供を大事に想う、全ての人が作り上げる世界~
子供中心に描かれるので、子供と子供の繋がりを描いた一作なのかなぁ、などとはじめは思っていたのですが、決してそのような作品ではありませんでした。もちろん子供同士のお話も描かれますが、それだけではありません。むしろそれすらも含めた、子供を巡る、人と人の優しい繋がりと想いを落とし込んだ、家族ものとしての性格が、この作品では強かったのです。例えば保健室登校の萩原さんについてのお話は、彼女とお母さん、そしてお父さんとの関係がメインテーマであり、それぞれが相手を大事に思うからこそ生まれる、家庭でのすれ違いからのジレンマ・不幸が真っ正面から描かれていました。また後の、速水くんの一件も、祖母の不幸を通して、家族のありがたみを痛感するという、子供と家族をめぐる、絆と優しさの物語。またラスト近くに少しだけ描かれた、若葉と青葉の部屋替えのお話も、双子同士のストーリーのように見せかけて、子供と親の関わりあいを最終的には描き出しておりました。それぞれの物語で、子供同士の繋がりは確かに描かれるものの、ベースとなっているのは、あくまで大人と子供という関係。そんなこの作品について、御徒町鳩先生は、あとがきでこう語っておられました
「子供のことを大事に思っている人々によって、めぐる環境」それこそが、描きたいと思っていた風景でした。それは当然のことながら、大人からの視点も多分に含まれています。子供達が作品中で好きなようにできるのも、帰る場所があるのも、みんな子供を大事に思う大人という存在があるから。この作品は、ベースとなっている世界自体が、大人達の、子供への大きな愛で出来上がったものだったわけですから、そりゃあ読んでいて温かくなるということも当然なわけで。
~それでもカッコイイ、小毬~
それでも子供同士のやりとりに触れないわけにはいくまい。今回二つの核となる物語が描かれた中で、どちらでもとってもグッジョブな働きをした子がいました。それが、2巻の表紙からは漏れている(なぜ…)、でかまりこと小毬ちゃん。その身長だけでなく、内面も人一倍大人らしい彼女でしたが、今回はそんな面倒見のよさと空気を読める大人っぷりを見せ、両方の話で非常に良い働きをしてくれました。
まずは萩原さんとのやりとりから、自分の過去にあった出来事を話てくれた萩原さんに対し、一緒に運動会に出ようと提案するでかまり。暗い過去の話を聞いた後だと、なかなかどう触れて良いのかわからないものですが、彼女はそれを敢えて踏み越え、この提案を。そしてだめ押しとなったのが、この一言…

大丈夫なところも
見てもらおうよ
この一言で、渋っていた萩原さんも「うん!」と快諾。いやあ、素晴らしいです。
続いては、速水くんとのやりとりから。祖父が倒れたことで、模試の結果がボロボロだった速水くん。それに対し、塾で一番の成績を残した小毬は、そんな速水くんに対し、こんな言葉をかけます…

お互いがんばろう
しっかりと、かける言葉を選んでからの、この一言。この言葉によって、落ち込んでいた速水くんのキモチも少しは晴れ、少しだけ笑顔になりました。そしてその後「闘える気がする」と速水くん。この時も、萩原さんの時も、一言で、相手に勇気を与える。こればっかりは、愛しているばかりの大人でもだめで、同じ立場にいる小毬だからこそ言えた言葉。加えて、ごくごくシンプルな言葉でそれを行ってしまうというのは、本当にすごいし、カッコいいですよね。ほんと、良い仕事しますよ、彼女。そんな素敵な小学生も見られる、「みどりのまきば」。完結して、改めてオススメでございます!ぜひご一読あれ!
■購入する→Amazon
/
関連作品紹介→御徒町鳩「腐女子っス!」

(…がんばれ …じゃないな)
「お互い がんばろう」
■2巻発売、完結しました。
青葉と若葉は、双子の小学6年生。モテ男・千尋や、「でかまり」こと小毬、小さなまっちんと仲良しです。でかまりの塾友・萩原さんは、保健室登校の常連。彼女が教室に向かえない理由とは。エリート転校生・速水くんは、周囲の優しさを素直に受け取れなくて…。図太いようで繊細な、単純なようで複雑な、コドモのキモチ。胸にじんわりしみる、涙と笑顔の最終巻、登場です!
~完結です~
驚くほどサラッと、そして大きなドラマもなく終わりました。登場する人物達全員で、何か大きなことを成し遂げるわけでもなく、一人一人にドラマはありつつも、決して多くの人を巻き込むことはない。それこそが日常で、そんな中にふと見せる、子供同士の繋がりや、大人との愛情のやりとりが、とても心地よかったです。そんなみどりのまきばで、今回メインで描かれたのは、生意気な秀才・速水くんと、保健室登校の萩原さんの二人。青葉や若葉、千尋や小毬たちは、あくまで脇役に徹しました。
~子供を大事に想う、全ての人が作り上げる世界~
子供中心に描かれるので、子供と子供の繋がりを描いた一作なのかなぁ、などとはじめは思っていたのですが、決してそのような作品ではありませんでした。もちろん子供同士のお話も描かれますが、それだけではありません。むしろそれすらも含めた、子供を巡る、人と人の優しい繋がりと想いを落とし込んだ、家族ものとしての性格が、この作品では強かったのです。例えば保健室登校の萩原さんについてのお話は、彼女とお母さん、そしてお父さんとの関係がメインテーマであり、それぞれが相手を大事に思うからこそ生まれる、家庭でのすれ違いからのジレンマ・不幸が真っ正面から描かれていました。また後の、速水くんの一件も、祖母の不幸を通して、家族のありがたみを痛感するという、子供と家族をめぐる、絆と優しさの物語。またラスト近くに少しだけ描かれた、若葉と青葉の部屋替えのお話も、双子同士のストーリーのように見せかけて、子供と親の関わりあいを最終的には描き出しておりました。それぞれの物語で、子供同士の繋がりは確かに描かれるものの、ベースとなっているのは、あくまで大人と子供という関係。そんなこの作品について、御徒町鳩先生は、あとがきでこう語っておられました
子供のことを大事に思っている人々によって
めぐる環境を描きたくて描いたので
皆が皆を大事にしたいと思ってる環境が
まるで夢物語みたいになってしまっている
ヘンな世の中ですけど…
願うのはやめないでほしいなーと思うんです
めぐる環境を描きたくて描いたので
皆が皆を大事にしたいと思ってる環境が
まるで夢物語みたいになってしまっている
ヘンな世の中ですけど…
願うのはやめないでほしいなーと思うんです
「子供のことを大事に思っている人々によって、めぐる環境」それこそが、描きたいと思っていた風景でした。それは当然のことながら、大人からの視点も多分に含まれています。子供達が作品中で好きなようにできるのも、帰る場所があるのも、みんな子供を大事に思う大人という存在があるから。この作品は、ベースとなっている世界自体が、大人達の、子供への大きな愛で出来上がったものだったわけですから、そりゃあ読んでいて温かくなるということも当然なわけで。
~それでもカッコイイ、小毬~
それでも子供同士のやりとりに触れないわけにはいくまい。今回二つの核となる物語が描かれた中で、どちらでもとってもグッジョブな働きをした子がいました。それが、2巻の表紙からは漏れている(なぜ…)、でかまりこと小毬ちゃん。その身長だけでなく、内面も人一倍大人らしい彼女でしたが、今回はそんな面倒見のよさと空気を読める大人っぷりを見せ、両方の話で非常に良い働きをしてくれました。
まずは萩原さんとのやりとりから、自分の過去にあった出来事を話てくれた萩原さんに対し、一緒に運動会に出ようと提案するでかまり。暗い過去の話を聞いた後だと、なかなかどう触れて良いのかわからないものですが、彼女はそれを敢えて踏み越え、この提案を。そしてだめ押しとなったのが、この一言…

大丈夫なところも
見てもらおうよ
この一言で、渋っていた萩原さんも「うん!」と快諾。いやあ、素晴らしいです。
続いては、速水くんとのやりとりから。祖父が倒れたことで、模試の結果がボロボロだった速水くん。それに対し、塾で一番の成績を残した小毬は、そんな速水くんに対し、こんな言葉をかけます…

お互いがんばろう
しっかりと、かける言葉を選んでからの、この一言。この言葉によって、落ち込んでいた速水くんのキモチも少しは晴れ、少しだけ笑顔になりました。そしてその後「闘える気がする」と速水くん。この時も、萩原さんの時も、一言で、相手に勇気を与える。こればっかりは、愛しているばかりの大人でもだめで、同じ立場にいる小毬だからこそ言えた言葉。加えて、ごくごくシンプルな言葉でそれを行ってしまうというのは、本当にすごいし、カッコいいですよね。ほんと、良い仕事しますよ、彼女。そんな素敵な小学生も見られる、「みどりのまきば」。完結して、改めてオススメでございます!ぜひご一読あれ!
■購入する→Amazon