このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2010.09.30
1102964465.jpgアキヤマ香「アスコーマーチ!」(1)


勉強できる人間だけが
一流なんて
私は認めない



■目指していた女子高に落ちてしまった直が入学したのは、県立明日香工業高校・通称「アスコー」。鉄とオイルの匂いに塗れ、生徒の大部分は男。昨年の女子の入学生は0で、今年の入学生は直を含め4人。クラスにたった一人の女として過ごす毎日は、囚われの宇宙人のような感覚。元々行きたくもなかった学校だし、女友達はいないし、もうイヤ!けれど、情熱あふれるバカな男子たちに触発されて、徐々に学校が楽しくなって来た直は…!?

 マーガレットコミックスですが、掲載誌はYOU。工業高校に通う女子高生の、工業高校ライフを描いた作品でございます。ヒロインは、スポーツチャンバラの道場のある家に育った娘・直。当初の進学予定は、お嬢様女子高だったのですが、試験当日に高熱を出し、結局不合格。唯一残っていた、明日香工業高校、通称「アスコー」の補欠試験に合格し、今に至ります。新入生のうち、女子は直含めて4人。クラスには、直だけ。あまりの男女差に、直は自分から話しかけることも出来ず、また男子も牽制しあって、一定距離を保ち彼女を観察するという状況。まるで囚われの宇宙人のようと、居心地の悪さに早くも辞めたくなる直でしたが、紆余曲折を経て、徐々にクラスに馴染んでいきます。また、目的を失いやる気がなかったことも、周りの男子たちの情熱にほだされて、楽しもうと前向きに。晴れて、前向きに工業高校の一員として、工業高校ライフをスタートさせていくようになります。


アスコーマーチ
制服よりも、作業着のシーンの方が多いくらい。作業着の女の子って、なかなかかわいくないですか?そして作業着の男子は、カッコイイ!


 工業高校の毎日というのは、経験していないとなかなか想像がつかないもの。そんな謎に包まれた世界を、否定的な立ち位置にいる新入生の女の子というスタートラインから、一緒に覗いていくことになります。工業高校と一口に行っても、専攻するコースや生徒達の意気込みも様々。ものづくりが好きな子もいれば、家が工場を経営している子も、他にも直のように、志望校に落ちて入学したものもいれば、ひねくれでここを志望してきた子も。全員が全員、望んできたわけではなく、クラスメイト達が足並みを揃えて何かに取り組むということは、はじめから上手くいくわけではありません。しかし、バカ正直で素直なのが、生徒達の特徴。その特徴を、女の子の直も持ち合わせており、仲違い、すれ違いがあっても、真っ正面からぶつかり合い、その後にはより強い絆、新しい繋がりが出来上がっています。色気はなくとも、熱く楽しい。そんなちょっと変わった学園生活を、垣間見る事が出来ます。
 
 マーガレットの割に、恋愛展開少ないなぁと思ったら、掲載誌はYOU。印象としては、KISS連載作に近く、工業高校の生活というのが、メインテーマなのでしょう。最初はクラスと打ち解けることが多く描かれ、恋愛方面はほとんどなし。一応相手役筆頭はいるのですが、男子ばかりのクラスということを考えると、そう簡単には事が運ばなそうであります。制服よりも、作業服のシーンが多いというのは、なかなかなくて新鮮ですね。町工場芸人とか、「とろける鉄工所」なんて作品にスポットが当たる今だからこそ、こういう作品が生まれたのかも。ひとつ、工業高校というものに興味がある方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。


【男性へのガイド】
→色気のなさは、プラスかマイナスか。もっと下品でも良いかと思うのですが、そこは少女漫画だからか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→2巻へ持って行くには、ストーリー的なひきがないのは若干苦しいかも。ネタありきで、そこに興味が持てないと、続きは楽しめないのかな、という気がします。


作品DATA
■著者:アキヤマ香
■出版社:集英社
■レーベル:Youマーガレットコミックス
■掲載誌:YOU(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「YOU」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。