作品紹介→宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」
6巻レビュー→恋愛のスタンスに見る、ダイキチとコウキの強い繋がり的なもの 《続刊レビュー》宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」6巻
7巻レビュー→りんに感じた違和感と、それをも超える確かな信頼感について 《続刊レビュー》宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」7巻
宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」(8)
私がこれ以上のことを望まなければ
こんなに楽しい暮らしもないな…
望めば全部
無くなっちゃうけど…
■りんを引き取り、早10年。独身ながらも初の子育てに奮闘し、りんと二人三脚で、いつしかりんも高校生になった。そしてついにりんは、没交渉だった実母と再会。そこでりんは、母親が妊娠しており、近く妹が生まれることを知る。思い出せないほどに会っていなかった、実母との再会、そして新たな命が生まれること…そして、以降のダイキチとの生活。少しずつ、動き出す、りんの心。そして自覚する、一つの気持ちとは…
~再び盛り上がってきてます!~
りんが大きくなってから、評判が今ひとつであった「うさぎドロップ」ですが、ここにきて再び盛り上がりを見せようとしていますよ!(私の中で)。前回まさかの、「ダイキチとの恋愛」という可能性を匂わせてきたわけですが、8巻ではそれが確実になりつつあります。果たしてこれからどう進んで行くのか、楽しみで仕方ありません。さて8巻なのですが、りんとダイキチに限らず、作品の中で家族役割について触れられる場面が多かったという印象がありました。元々、叔母と甥という血縁関係でありながら、実生活では親子のような関係をとる二人を描くこの作品は、家族関係というものは、一つの大きなファクターとなっています。それが今回は、目に見える形で良く出てきたな、と。
~親としての母と、女としての母~
以前にもその情報は出ていたのですが、コウキのお母さんの再婚が決定。そのことが、コウキにも伝えられました。そのことに、コウキは高校生ながらショックを受けます。そのときコウキは、こんな印象的な言葉を残します…
これに対し、ダイキチも「わかる!」という言うわけですが、私ももの凄くこれには同意でして。もちろん母親も一人の女だということは、頭ではわかっているのです。けれども、子どもからしてみれば、母親は生まれたときから母親であるわけで、女としての一面というのはほぼ目にする機会はないわけですよ。それがある日ドンと目の前に提示されるんですから、そりゃあショックを受けますとも。「裏切り」とまではいきませんが、自分へ向けられるものとは違う”愛情“が知らぬ他人に向けられる気持ち悪さというのは、多くの人が持つ感覚ではないのかな、と。
自分も両親が双方に浮気して、別居していた時期があったのですが、それが発覚したときの心持ちにすごく似ていて、思わず同意してしまったという(笑)今でこそ、その歳になってまで恋愛できてた両親すごいなとか、思えるのですが、当時はやっぱりショックでしたねぇ。
~りんにとっての、ダイキチの存在の変化~
さて、またダイキチも、その関係・感情をどのような関係性の上で認識しているのかという問いを、りんにかけます。
これは、生まれてくるりんの妹のことを「かわいい」とはしゃいで話すりんに対して向けられたもの。それに対しりんは「わからない」と返すのですが、そこから話は、妹ではなく自分自身の存在と、彼女のダイキチおよび母親に対する認識に関するものへと移っていきます。

自分が今まで何者なのかよくわかんなくて
なんていうか…糸がついていない風船を
ダイキチが持っててくれる感じだったんだけど
あの人がお母さんって実感があってから
ああ
糸が付いてたんだなーっ思った…
でもやっぱり
今それを持ってるのはダイキチなの
彼女は自分の存在について、風船と糸という形でダイキチに話をしています。この糸とは、家族役割ないし精神的存在としての「保護者・親」を表しているものだということは、ほぼ明白。今まではダイキチがその役割を代わりに務めていたけれど、その役割に納まるのは、正子さんである、と。そして面白いのは、けれども“今”それを持っているのはダイキチであると、りんが言っていること。ということは、いつかは持つ人が変わると暗に言っているようなもので、やはり恋愛路線へと進んでいくということで間違いないのかな、と。家族的な形式をとって同居している中で、一人に対し家族的な役割を複数持つというのはやはり良くないというか、無理が生じるもの。ダイキチが親・保護者としての立場を持ち続けている以上は、恋愛関係に発展することはありません。(そもそも、3親等という時点でアウトなのですが…まぁこの際は成就するしないは気にしないでおきましょうか…)。それが正子さんの再登場によって、ダイキチの親という役割からの解放という可能性が出てきた。彼女が正子さんの所に通い、親子関係を強めようとしているのは、無意識にダイキチとの関係の変化を望んでいるからなのかもしれませんね。
~この展開は、既定路線だった?~
正直なところ、ダイキチはコウキのお母さんと結婚するものだとばかり思っていたので、最近のこの展開には驚いているのですが、色々考えると、このルートは既定路線だったのかもしれません。ダイキチがりんをひきとった直後の流れとして、例えば正子さんと連絡をとらないとかって選択肢もあったと思うんですよ。でもちゃんと今まで連絡が取れるようになっているし、最初は悪い印象ばかりの彼女が、今やりんにとってはかけがえの無い存在になりつつあり、また心証もかなり良くなってきています。そもそもダイキチが、りんを養子として迎えていれば、今のこの展開はまずありえなかったと思うのですが、それをりんは6歳のときに拒否。あのやりとりは、このためにあったのだろうか…なんて今だと思ってしまったり(そもそも、3親等という時点で~以下略)。正子さんは、りんとダイキチなんてレベルじゃないほどに歳の離れたお爺さんと恋に落ちたわけですから、りんがダイキチのことを好きになるなんてのは、ありえないどころか、むしろ自然ですらあるわけで。この親にしてこの子あり…なのかもしれません。ダイキチ、お祖父ちゃんにすごく似てますしね(笑)
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6巻レビュー→恋愛のスタンスに見る、ダイキチとコウキの強い繋がり的なもの 《続刊レビュー》宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」6巻
7巻レビュー→りんに感じた違和感と、それをも超える確かな信頼感について 《続刊レビュー》宇仁田ゆみ「うさぎドロップ」7巻

私がこれ以上のことを望まなければ
こんなに楽しい暮らしもないな…
望めば全部
無くなっちゃうけど…
■りんを引き取り、早10年。独身ながらも初の子育てに奮闘し、りんと二人三脚で、いつしかりんも高校生になった。そしてついにりんは、没交渉だった実母と再会。そこでりんは、母親が妊娠しており、近く妹が生まれることを知る。思い出せないほどに会っていなかった、実母との再会、そして新たな命が生まれること…そして、以降のダイキチとの生活。少しずつ、動き出す、りんの心。そして自覚する、一つの気持ちとは…
~再び盛り上がってきてます!~
りんが大きくなってから、評判が今ひとつであった「うさぎドロップ」ですが、ここにきて再び盛り上がりを見せようとしていますよ!(私の中で)。前回まさかの、「ダイキチとの恋愛」という可能性を匂わせてきたわけですが、8巻ではそれが確実になりつつあります。果たしてこれからどう進んで行くのか、楽しみで仕方ありません。さて8巻なのですが、りんとダイキチに限らず、作品の中で家族役割について触れられる場面が多かったという印象がありました。元々、叔母と甥という血縁関係でありながら、実生活では親子のような関係をとる二人を描くこの作品は、家族関係というものは、一つの大きなファクターとなっています。それが今回は、目に見える形で良く出てきたな、と。
~親としての母と、女としての母~
以前にもその情報は出ていたのですが、コウキのお母さんの再婚が決定。そのことが、コウキにも伝えられました。そのことに、コウキは高校生ながらショックを受けます。そのときコウキは、こんな印象的な言葉を残します…
オレにとってはもう絶対的に母ちゃんだからさあ
女としては見れねーわけ
けどダメなんだ“女の母ちゃん”は
なんかちゃんと見れなかった
女としては見れねーわけ
けどダメなんだ“女の母ちゃん”は
なんかちゃんと見れなかった
これに対し、ダイキチも「わかる!」という言うわけですが、私ももの凄くこれには同意でして。もちろん母親も一人の女だということは、頭ではわかっているのです。けれども、子どもからしてみれば、母親は生まれたときから母親であるわけで、女としての一面というのはほぼ目にする機会はないわけですよ。それがある日ドンと目の前に提示されるんですから、そりゃあショックを受けますとも。「裏切り」とまではいきませんが、自分へ向けられるものとは違う”愛情“が知らぬ他人に向けられる気持ち悪さというのは、多くの人が持つ感覚ではないのかな、と。
自分も両親が双方に浮気して、別居していた時期があったのですが、それが発覚したときの心持ちにすごく似ていて、思わず同意してしまったという(笑)今でこそ、その歳になってまで恋愛できてた両親すごいなとか、思えるのですが、当時はやっぱりショックでしたねぇ。
~りんにとっての、ダイキチの存在の変化~
さて、またダイキチも、その関係・感情をどのような関係性の上で認識しているのかという問いを、りんにかけます。
それって赤ちゃんだからかわいいのか?
それが妹だからか?
それが妹だからか?
これは、生まれてくるりんの妹のことを「かわいい」とはしゃいで話すりんに対して向けられたもの。それに対しりんは「わからない」と返すのですが、そこから話は、妹ではなく自分自身の存在と、彼女のダイキチおよび母親に対する認識に関するものへと移っていきます。

自分が今まで何者なのかよくわかんなくて
なんていうか…糸がついていない風船を
ダイキチが持っててくれる感じだったんだけど
あの人がお母さんって実感があってから
ああ
糸が付いてたんだなーっ思った…
でもやっぱり
今それを持ってるのはダイキチなの
彼女は自分の存在について、風船と糸という形でダイキチに話をしています。この糸とは、家族役割ないし精神的存在としての「保護者・親」を表しているものだということは、ほぼ明白。今まではダイキチがその役割を代わりに務めていたけれど、その役割に納まるのは、正子さんである、と。そして面白いのは、けれども“今”それを持っているのはダイキチであると、りんが言っていること。ということは、いつかは持つ人が変わると暗に言っているようなもので、やはり恋愛路線へと進んでいくということで間違いないのかな、と。家族的な形式をとって同居している中で、一人に対し家族的な役割を複数持つというのはやはり良くないというか、無理が生じるもの。ダイキチが親・保護者としての立場を持ち続けている以上は、恋愛関係に発展することはありません。(そもそも、3親等という時点でアウトなのですが…まぁこの際は成就するしないは気にしないでおきましょうか…)。それが正子さんの再登場によって、ダイキチの親という役割からの解放という可能性が出てきた。彼女が正子さんの所に通い、親子関係を強めようとしているのは、無意識にダイキチとの関係の変化を望んでいるからなのかもしれませんね。
~この展開は、既定路線だった?~
正直なところ、ダイキチはコウキのお母さんと結婚するものだとばかり思っていたので、最近のこの展開には驚いているのですが、色々考えると、このルートは既定路線だったのかもしれません。ダイキチがりんをひきとった直後の流れとして、例えば正子さんと連絡をとらないとかって選択肢もあったと思うんですよ。でもちゃんと今まで連絡が取れるようになっているし、最初は悪い印象ばかりの彼女が、今やりんにとってはかけがえの無い存在になりつつあり、また心証もかなり良くなってきています。そもそもダイキチが、りんを養子として迎えていれば、今のこの展開はまずありえなかったと思うのですが、それをりんは6歳のときに拒否。あのやりとりは、このためにあったのだろうか…なんて今だと思ってしまったり(そもそも、3親等という時点で~以下略)。正子さんは、りんとダイキチなんてレベルじゃないほどに歳の離れたお爺さんと恋に落ちたわけですから、りんがダイキチのことを好きになるなんてのは、ありえないどころか、むしろ自然ですらあるわけで。この親にしてこの子あり…なのかもしれません。ダイキチ、お祖父ちゃんにすごく似てますしね(笑)
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