このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [続刊レビュー] 2010.11.03
作品紹介はこちら→桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」
8巻レビュー→目黒の愚行とその裏にある弱さについて少々…《続刊レビュー》「悪魔とラブソング」8巻
9巻レビュー→脆性と熱情が同居する目黒のピアノ演奏:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」9巻
10巻レビュー→目黒先輩じゃだめとは、これ如何に:桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」10巻



1102969563.jpg桃森ミヨシ「悪魔とラブソング」(11)


それを
生きて
見守ってやってください



■11巻発売です。
 目黒とマリアは、とうとう恋人同士に!けれどもマリアの声は、未だ出ないまま、一方の目黒も、怪我をした右手の状態は思わしくないまま。マリアは自分の声が出ない原因は、自分の過去と関係あるのではと考え、行動に移すことに。昔住んでいた横須賀へ、目黒、優介、そして申太郎と共に向かう。そこで明かされる、マリアの生い立ちと、衝撃の秘密。思わぬ人物、思わぬ真実との出会いに、マリアは…!?急展開の11巻、登場!!
 

~怒濤の展開~
 1巻でここまで物語が展開するとは思っていませんでした。どうせまた目黒がうだうだやって終わるのかなぁなんて思っていたので、11巻終わっての、状況の変わりっぷりに驚いています。今までで一番物語が動いたんじゃなかろうか、と。ちなみに物語は、目黒とマリアのある意味ラブラブな状況からスタート。マリアが声が出せないという状態も相まってか、目黒に甘える、頼る、尽くすマリアがまるで別人のようでビックリでした。こんなにもかわいらしい行動をとるキャラだったのか、と。とりあえずやたら目黒に抱きつくシーンが目立った気がするのですが、中でもビックリだったのが、目黒の家へ行ったとき。「家に呼ばれる」というパターンを取り違えてしまい…
 

アクラブ11-1
自ら服を脱ぎ、さらに触らせる

 
 結果としてかなり積極的な行動を取ることになったマリアでしたが、今までの行動からして、そういう大げさな行動をとる時は、大抵余裕がなくいっぱいいっぱいの状態のとき。このときも、思考は走っていたものの、かなりテンパっていたのではないかと想像できます。それに対し、目黒はそれなりに冷静(あくまで目黒比)。今までの目黒であれば、そのまま流れで最後までいってしまいそうですが、その時はさすがに余裕がありました。というのも、前科一犯。以前同じシチュエーションでマリアを苦しめたことがあったため、フラットな状態でかなりブレーキがかかっていたのでした。いや、これ普通だったらいっちゃいますよ。ちゃんとやめた目黒は偉いな、と。しかしシチュエーションとしては結構エロいはずなのですが、マリア視点でかつ慈悲の心みたいなものがたっぷりであったので、読んでいるときそういう感覚は一切入ってこず。実に美しく、愛に満ちた時間でありました。
 
 
~マリアからみた目黒~
 気がつけば、完全に目黒にお熱なマリア。今まで結構ヒドいこととか、情けないことをしてきた彼ですが、それでもなお、いやだからこそ彼が好きなのだ、と。そんなマリアは、一体目黒のことをどう思っているのでしょうか。マリアの目黒に対して持っている印象が、露になるシーンが作中で登場しました。それは、今は亡き母親に向かって語りかけるシーンにて
 

悪魔とラブソング11
心配性で
無愛想で
でもほんとは
すごくたのもしくて


 
 すごくたのもしくて
 すごくたのもしくて...え?

 
 どうやらマリアは目黒のことを頼もしいと捉えているみたいです。個人的には頼もしいというよりも、むしろ頼りない印象が強い彼ですが、マリアにとっては頼もしいとのこと。それも、すごくたのもしいとのこと。思わず突っ込みを入れそうになりましたが、マリアにしか見えない頼りがいというものが、あるみたいですね。横須賀での急展開をお膳立てしたのは申太郎でしたが、溺れた時に救ってくれたのは優介でしたが、それでも目黒は頼もしいのです(そろそろ自重しよう)。なんて、頼もしさは人それぞれ。頼もしさとは、感じる側にその意識があって、初めてその存在が認識されるもの。マリアが「頼りたい」「困った」と思ったとき、頼ることができる存在であると、認知されているということでもあるのかもしれません。先の二人のファインプレーも、マリアが望んだことかと言われれば、必ずしもそうではないですし。


~目黒の右手~
 さて、こうして円満な形で11巻の終わりを迎えることができる…と思ったら目黒の右手に危機が…!もしこれで、目黒の右手がダメでピアノが先々弾けないということになったとしたら、それは余りにも厳しい展開であると言わざるをえません。目黒にとってピアノは、今やかけがえのない存在であり、マリアとの関係を語る上でも、なくてはならない存在です。今まできっかけをつくってはきたものの、それ自体が救い・昇華のアイテムとして機能したことはありません。マリアに向けて弾こうとしたコンサートも、結局マリアには聞いてもらえず。以前彼に必要だと言った、成功体験が未だにない状態のままなのです。いや、でも怪我を乗り越えて、成功体験を作ってこそ、初めて相応しい男になれるとも考えられるわけで。とりあえず行方を見守るしかないですね。なんか次回予告の目黒、とんでもなく弱気でまるで別人のようですが…。そういえば表紙では、普通に右手使ってますけど、これはマリアなり目黒の回想という結論でOKですか?


■購入する→Amazon
カテゴリ「マーガレット」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
From:  * 2010/11/04 00:34 *  * [Edit] *  top↑
↑の方

コメント
ありがとうございました!
From: いづき * 2010/11/14 01:39 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。