
この恋は
…きっと…
実らない
■野ばらの下でのできごとは、ふたりだけのひみつ…。それは、白い花園の約束ごと。憧れの由緒あるお嬢様学校・音羽女学院高等科に入学したふたりの幼なじみ、初美とさくら。これから始まる学園生活に心躍らせるふたりが出会ったのは、王子様として生徒達の憧れの的になっている泉と、旧華族のお家柄のお嬢様中のお嬢様・繭子。家柄はもちろん、生徒から慕われる者にだけ与えられる称号である「音羽の華」である二人に対し、初美は憧れを抱き始めるが…。お嬢様学校に集う少女達の、美しく一途な想い。この恋は、神様にもひみつ…
以前、りぼんで百合という触込みで「ブルーフレンド」(→レビュー)という作品が話題になりましたが、今度はなかよしで百合です。あちらは「百合」として括るのは少し違うような作風でしたが、こちらは素人目から見ても完全に百合。非常にオーソドックスな、学園百合物語が展開されています。
憧れの由緒あるお嬢様学校・音羽女学院の高等部に入った、初音とさくらの幼なじみ二人。当然のことながら寮暮らしで、同じ部屋になった二人は、これから始まる学園生活に胸を躍らせます。その寮には、学園で一目置かれる憧れの存在「音羽の華」の称号が与えられる二人の先輩が。それが、まるで王子様のような佇まいの泉と、お嬢様を絵に描いたような優雅な雰囲気の繭子。今までに見たことないような、ただならぬ雰囲気を漂わせる二人に、初音とさくらは目を奪われます。そんなある日、二人で出かけた洋風庭園にて、泉と繭子がキスをしている所を目撃。それまであった憧れは、その日以来、少しずつ形を変えて初音たちを飲み込んでいくようになります。

ヒロインは、とにかく無垢で素直。しかしその素直さが、己をときに暴走させ、さらに幼なじみを苦しめてしまうときがある。それでも寄り添い合うからこそ、美しいのですが。
閉ざされたお嬢様学校で繰り広げられる、禁断の恋。まさに王道と言える設定に、百合に詳しくない自分でもある種安心して物語を読んでいられます。ただ憧れだけを持って入学してきたヒロイン・初美と、その幼なじみのさくら。始めて触れる憧れの世界と、想像とは違う思わぬ人物との出会いから、初音はやがて様々な感情を寮内で抱くようになっていきます。そんな彼女を、あちらの世界に引き入れていく王子様・泉に、そんな彼女と許嫁の間で揺れる繭子、そして先輩にどんどん夢中になっていく幼なじみを見て、必死に彼女を守ろうとするさくら。現状、初美と泉の関係を軸として、四角関係が構築されているわけですが、そのバランス感が絶妙。明確な恋心といえるものは未だなく、憧れや嫉妬、信頼に友情という様々な感情・関係が混ざり合っている状態。これから先、プラスのキレイな感情だけでなく、女子特有の負の感情が物語に落とし込まれていくことを思うと、一層期待感は高まります。
学園ではなく、寮内での物語展開。閉ざされた環境で、極力外の世界の情報を削った上、時代設定も曖昧にしておくことで、この世界を享受する余地を増幅。手堅い作りで、上手いです。唯一違和感を感じるとするならば、これがなかよし連載ということでしょうか。作者の白沢先生も、まさかなかよしで出来るとはと驚いているということで、まぁとりあえずビックリ。「ブルーフレンド」よりも百合百合しているのですが、帯・表紙を見ても「百合」という言葉は一切なし。むしろタイトルは「野ばら」だったりで、その売り方も良いですね。それでもちゃんと少女漫画のエッセンスは残しており、低年齢の読者もそれなりに受け入れられる作りにはなっていると思います。これは楽しみということで、オススメで。
【男性へのガイド】
→もちろんオススメです。少女漫画絵ですが、懸念材料はそれくらいでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→別に物語的にはそこまで☆つけるものではないのかもしれないですが、なかよし連載という中で許容されるギリギリを狙っている感が、個人的にポイント高く。楽しみです。
作品DATA
■著者:白沢まりも
■出版社:講談社
■レーベル:KCなかよし
■掲載誌:なかよし(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
■購入する→Amazon