
女子の人生として優先順位間違ってる
かもしれませんが
とりあえず
ダブルワークはじめます
■彼氏なしの薫は、病院で派遣の医療事務をしている26歳。以前から考えていたダブルワーク、ネイルのお店を始めようと決めた彼女は、店舗を構えるために物件探しを始める。そんな中出会ったのが、会社の後輩・シロちゃん。丁度良いことに、プログラマをしている彼の事務所の一階部分が未使用。雰囲気も良く立地も良いそこを、頼み込んで使わせてもらうことに。仕事も恋も、人間関係も、立ち止まり癖のある薫は、いつも迷いながら進む。恋愛プチフリ女のダブルワークを、おかざき真里が描く!!
「サプリ」(→レビュー)、「渋谷区円山町」(→レビュー)などを描かれているおかざき真里先生の新連載でございます。今回描くのは、恋愛プチフリ(立ち止まり癖=プチフリーズ)女のダブルワーク。ヒロイン、薫は病院で派遣医療事務として働く26歳。安定性のない職業ということで、密かに始めていたネイルの仕事を本格始動。店舗を構えて営業を始めようと、物件を探しはじめます。そんな折、大学時代の後輩・シロちゃんと再会。なんやかんやで話をしていると、彼の経営する会社の事務所の1階部分が空いているということを知り、そこにお店を構えさせてもらうことに。そうして始まった、彼女のダブルワーク。しかしその頃から、彼女の日常に若干の変化が。病院での人間関係と、知ってしまったとある医師の過去。そしてダブルワークで突きつけられる、自分の中途半端さ。「良く生きる」という意味が未だによくわからないままに、静かにもがき続ける薫の日々を描き出していきます。

他人に触れられるのが苦手。それを振り切れるか否かが、ひとつの恋愛バロメータとなる。
ヒロインの薫は、26歳ですが、未だに男性と付き合ったことがありません。そのことは、他人との比較の中でどこか変だと自覚はしているものの、具体的に打開策を見出そうとはしていないという状況。そんな中、仕事ではダブルワークと、ますます恋愛とは離れていくことに…なると思わせておいて、そうはいかないんだこれが。ダブルワークを始めた時点で、2カ所で恋愛に発展しそうな種が。ひとつは大学の後輩で、店舗を貸してくれたシロちゃんとの関係。こちらはシロちゃんが密かに薫を意識しているという感じ。当の薫は、病院の医師で45歳とだいぶ年上の矢飼の陰を知ることで、徐々にひきこまれていきます。ダブルワークということで、それぞれのフィールドで恋愛の萌芽を仕込むというあたり、さすがおかざき先生というところでしょう。とはいえ恋愛・仕事だけでなく、そこからつまるところ自分自身の存在や考え、立ち位置というテーマに落とされていき、作品としては掲載誌のフィールにぴったりと副う物語となっています。
何か大きな事件があるわけではないのですが、とにかく内面の描き出しが秀逸で、あっという間に物語に引き込まれます。作中にて、ヒロインが語るモノローグがあるのですが…
今日 仕事のことで甘いって起こられて
男の人にキスされたよ
なんて
なんか
すごい
言葉にするとなんてありふれていてチンプなんだ
男の人にキスされたよ
なんて
なんか
すごい
言葉にするとなんてありふれていてチンプなんだ
物語中、キスされたシーンはハイライトとも言うべき大きな出来事だったのですが、それを「ありふれていて陳腐」と一蹴。とはいえそれは、「言葉にすると」という前提があるから。言葉で言えば陳腐なシーンも、おかざき先生が描けば、途端に魅力的な物語に早変わり。ドラマ化した「サプリ」は元気いっぱいなヒロインでしたが、今回はどちらかというと塞ぎ込みがちな女性。それでも恋愛と仕事を軸としてまたしても読ませる物語を描くのだからすごい。今回もオススメです。
【男性へのガイド】
→女性が読んでこそなのだとは思うのですが、基本的に読ませる先生なので、その辺気にせず面白く読めると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→地味というか、やや暗いですが、それでも面白いしグイグイひきこまれる。これは面白いです。オススメで。
作品DATA
■著者:おかざき真里
■出版社:祥伝社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:FEEL YOUNG(連載中)
■既刊1巻
■価格:933円+税
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