
僕たちに春は
訪れるのでしょうか
■神社の息子・恭太郎、お寺の息子・孝仁、教会の息子・工。ご近所同士で育った3人は、宗教は違っても息はぴったりの仲良し3人組。庭先に残る藁人形から、己が呪い殺されようとしているのかと恐れる恭太郎に、オカルトが大嫌いで一緒に怖がる孝仁、そしてオカルト大好きで興味津々な工。犯人を捕まえようとした3人は…!?ラブなし、ヒマなし、トラブルありな3系男のリアルでトホホな脱力的日常!!
「読経しちゃうぞ!」という1巻完結の単行本が以前発売されていたのですが、こちらはその連載化されたシリーズをまとめたものになります。前作は自分は読んでおらず、全くの初見でしたが、ゆるゆる日常コメディで面白かったです。主人公は、それぞれ何かしらの宗教に関わるお家に生まれた3人の若者。実家が神社の恭太郎に、実家が寺の孝仁、そして実家が教会の工。それぞれ宗教は違いますが、ご近所さんで歳も近いということで、いつも仲良く一緒に行動しています。気弱で事なかれ主義な恭太郎に、一見真面目に映るもとても臆病で心配性な孝仁、そしてオカルト大好きでちゃらんぽらんな工。宗教だけでなく性格もバラバラな3人の、ゆるゆるで、けれども決してヒマではない日常を描いていきます。

大切な御朱印がなくなり、急遽増産することに。しかし人手は足りず、結果お坊さんの孝仁にお願いをする。まぁ普通に考えたらあってはならないことなのですが、若い分こういうのもありかなと思わせてしまうという。いい感じに緩いです。
神社・寺・教会のイケメン跡継ぎ達を愛でる作品なのかな、なんて思ったのですが、そんな匂いはあまり感じられず。どちらかというと、軸は日常コメディ。跡継ぎではあれど、求道者としての気構えはまだあまりなく、本格的に後を継ぐまでのモラトリアム期間を楽しんでいるという感じで、そんな心構えの弱さから生まれる緩さを、上手いこと笑いとハプニングに繋げているという印象の作品です。ハプニングはどちらかというと、宗教行事やオカルト系のものが多め。恭太郎の神社に藁人形があったり、教会の晩餐のお手伝いをしたり。本来ならば絶対してはいけないような、宗教間の跨がりを、簡単に行ってしまうのも面白いところです。一応ダメという認識はあるのですが、あくまで現実主義というか。
キャラクターはみんな普通の枠に収まっており、また工が結構動くので、静が勝ったコメディということもありません。ハプニングベースのコメディですし、ネタも宗教だけに縛られているというわけではないので、幅は思っている以上に広め。笑いもシュールや下ネタに走ることはあまりなく、日常系4コマで見られるような、間口の広いもので、日曜の夕方とか夜にアニメやってたら受け入れられそうだよね、というような印象を受けます。一応年頃の男の人達ですから、下心がないわけではありません。けれども宗教という後ろ盾があるためにあまり道に外れたことはできず、また群れる草食系ということで、出会いもそこからの発展も芳しくなく。唯一登場する年頃の娘さんと言えば、孝仁の妹さんぐらいでしょうか。宗教ありきという枠を取っ払っても、それなりに面白い良作コメディだと思います。
【男性へのガイド】
→男性も女性も、年齢関係なく楽しめるコメディに仕上っていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→この緩さが心地よい。「聖☆おにいさん」ほど宗教ネタはないにせよ、こちらの方がより生活に溶け込んだ宗教ネタを提供しているので、新鮮で面白いな、と。
作品DATA
■著者:絹田村子
■出版社:小学館
■レーベル:フラワーコミックスα
■掲載誌:flowers(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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