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Tag [続刊レビュー] 2010.11.17
作品紹介→ジョージ朝倉「溺れるナイフ」
9巻レビュー→この年齢、この舞台だからこそ成立する物語《続刊レビュー》「溺れるナイフ」9巻
10巻レビュー→夏芽を照らし導く“光”:ジョージ朝倉「溺れるナイフ」10巻
関連作品レビュー→「ピース オブ ケイク」「テケテケ★ランデブー」



1102979964.jpgジョージ朝倉「溺れるナイフ」(11)


おまえのことは
全部
わかる



■11巻発売です。
 初めて見た時から、何もかもが癇に触った。目を逸らすことのできない存在に、強烈に引かれた。長谷川家の財産を狙い、当主に取り入ろうとする母親と、コウの家に入り込んだ従弟の桜司は、酷薄なコウの態度に苛立つ日々。母親を守らなくてはならない、そして母親の邪魔をするものは敵。はじめは敵対心をむき出しに、コウに向かっていく桜司だったが…
 

~ずっと大友のターン!!…とはならず~
 待ちに待った11巻発売です。10巻にて完全に大友モード加速という感じで、11巻あたりが最後になるのかな、と予想していたのですが、11巻での大友さんの登場シーン、6コマでした。。。6ページじゃないですよ?6コマです、6コマ。4コママンガだったら、1回オチは入るものの、2回目は起承で終わり、転結が迎えられません。そんなレベル。なんて今回は、1巻まるまる使って、とある少年とコウちゃんの出会いを描いたものになっていたので、それも仕方のないところ。大友押し一択の私からすると、なかなか厳しい内容となりました。あ、それはあくまで感想書く上での話であって、物語自体はものすごく面白いですから、悪しからず。
 

~桜司視点の意味合い~
 さて、今回は桜司とコウちゃんの関係について描かれたわけですが、これになんの意味があったのかという。コウちゃんの特別っぷりを描き出したかったのか、はたまた桜司がこれから大きな役割を果たすのか(いや、たぶんこの一連の話が描かれた時点で、結構な役割は果たしているのだろうけど、気づけない程度には鈍感)。個人的には、コウちゃんという存在を、色恋を介さない視点で描き出すためにこうなったのかな、という印象です。だからこそ最初に、 

本当はよぉ
俺らのじじじの通夜祭でよぉ
初めて兄ィを見たときから
とっくに負けはやきついとったけぇ

 というモノローグを差し込み、コウちゃんと桜司の関係性をはじめに印象付けたのではないかな、と。「負け」という、ストレートすぎる表現を、敢えてはじめに持ってくるというのは、なかなかできない演出のような気がします。
 

~負かさず負かす~
 桜司は前述の通り、コウちゃんに「負け」ていて、気がつけば尊敬・崇拝というようなレベルにまでいっているのですが、振り返ってみると、そのストレートな力関係の表現とは裏腹に、コウちゃんと相対して表面上明確に負けたとわかる場面は一切ありません。桜司は、コウちゃんに対して、「ケンカして勝つ」ということを目的につっかかっていったわけですが、コウちゃんは最後まで彼を相手にすることはありませんでした。それは別にバカにしていたとかいうわけではなく、何かしらの特別な思いが、彼に対してあったからなのではないかな、と。コウちゃんは、ケンカ自体は簡単にします。もうホントに、どうでもいいような相手と。それはイコールで、どうでもよくない人間であればケンカは買わないということでもあるわけで。そんな過程を経て、それでも桜司に「負けた」という感情を抱かせてしまう、そのカリスマ性。
 
 てかいちいちタイミングが絶妙すぎるんですよね、コウちゃんて。母親に捨てられたと強く自覚、絶望し、心も体も沈み行く桜司を、文字通り救ったコウちゃん。多分、もう、これだけで桜司にとっては十分だったのかなという気もします。色々と試されていましたけど、結局はコウちゃんとの出会い以降の、母親との関係性の変化に集約されるのではないでしょうか。
 

~コウちゃんの泳ぐ海~
 コウちゃんがいつも泳いでいる海についての秘密も、今回明らかになりました。あの海は、コウちゃんの実母が亡くなった場所でもあったのです。そんな海で、いつも泳いでいるコウちゃんの気持ちとは、一体。母親探し…なんて陳腐なものではないでしょう。むしろあの海で泳ぐことに関して、以前コウちゃんは「俺は大丈夫」との発言を夏芽にしていたような。ということは、むしろ守られている感覚なのかもしれません。未だ謎多きコウちゃんの考えを掴むのは、まだまだ難しそうです。


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