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Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.11.21
1102980396.jpgみよしふるまち「東京ラストチカ」(1)


君が嬉しいと
僕も嬉しい
君の大切なものは
僕も大切に思える
…生きててよかった



■明治43年。文明開化を終え、著しく西洋化しはじめた首都・東京。女手一つで育ててくれた母を亡くし、幼い弟を抱えた津村花は、子爵の有馬家に女中として奉公に出ることになる。そこで出会ったのは、つい先日亡くなった主に代わり、有馬家を率いていかなくてはならなくなった若き当主・有馬光亨。彼との出会いが、花の運命を大きく大きく変えることになる。時代の変わり目、都会に浮かぶ、身分違いのひとつの恋が、そこにはあった...

 実に目を惹く表紙ですよね。元々購入予定であったのですが、その前に他に何か物色しよう…と考えて手に取ったのがこちらでした。物語の舞台となるのは、明治43年の東京。貧しい家を出た女中と、子爵家の若き当主が、恋に落ちるというラブロマンス。ヒロイン・花は日暮里の貧しい家に、母親と幼い弟の3人で育ってきた年頃の女性。母親が病気で他界し、弟を養わなくてはならないということで、子爵の有馬家で女中として働きはじめます。そしてそこで出会うのが、先日亡くなった当主に代わり、有馬家を率いることになった青年・光亨。亡き母を思い、離れた場所で暮らす弟を思い、真っ直ぐに今日を見つめ仕事をする花に、光亨は他の者とは違う特別な感覚を抱くように。一方の花も、今までの華族のイメージとは異なる心優しく、そして時折憂いと弱さを見せる彼と、心通わせていくようになります。はじめは、気づきもしないような、小さな想い。しかしその想いは、時の重なりと共に…


東京ラストチカ
自分の立ち振る舞いに思い悩む花。ちなみにこれは、凌雲閣(関東大震災で半壊し、今はありません)からの眺め
。当時の町並み、人々の暮らしの様子が、しっかりと物語に落とし込まれています。


 ヒロイン・花は母親亡くし、一方の光亨は父親を亡くしたばかり。親を亡くしたという部分で共通点のある二人ですが、花が母親の形見と位牌を大事に大事に持ち歩いているのに対し、光亨は父親と折り合いが悪く、最後まで親子らしい関係を築けずにいました。身分だけでなく、考え方も感じ方も違う二人を引き寄せたのは、そういった感覚の違いや、ヒロインの正直さや、光亨が纏う寂しさなど、様々。何にせよ、遠からず惹かれ合う運命であったのかもしれません。とはいえ、今はまだ恋とも呼べないような、儚き想い。当人たちとしては、気になる存在、かけがえのない存在という感覚で、お互いを認識し合っているという感じでしょうか。1巻まるまる使ってそのくらいの進展ということで、どれだけ丁寧に二人の関係が描き出されているかおわかりいただけるかと思います。
 
 明治~大正の東京を舞台におくる、女中と若き主人の身分違いの恋。単に身分差ロマンス…というだけでなく、そこに離れて暮らす幼い弟の存在を持ってきたり、亡くなった母親が、有馬家と何かしらの関係があったりとか、さらには時代が時代だけに、病の流行を持ってきたり。いわゆる昼ドラ的な、悲しさを生み出すような要素がてんこ盛り。ある種手垢のついたような、典型的な物語が繰り広げられており、恐らくこれから先もそうなっていくと思うのですが、そのベタさに加え、ヒロインの心情ベースで無駄な寄り道をしないシンプルさが、温かみのある現代的な絵柄とマッチ。非常に読みやすい作品に仕上っています。ひとつひとつ丁寧に、ヒロインの心を描いていくので、設定の割にロマンス感は感じさせず、文字通り「ひとつの恋」を描き出しているという感じ。表紙でピンと来た方は、とりあえず買って損はしないと思いますよ。


【男性へのガイド】
→男性も間違いなく読めます。だいじょうぶ!
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→強く推す理由はないですが、こういうベタでかつ悲恋の匂いのする物語は大好物でございまして。絵柄とのマッチングも良しで、これは続きもチェックしてみたいところ。大きな山はないし、特別新しいということはないのですが。


作品DATA
■著者:みよしふるまち
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:ブレイドコミックスアヴァルス
■掲載誌:avarus(連載中)
■既刊1巻
■価格:571円+税


■購入する→Amazon

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