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Tag [オススメ] 2010.11.23
07106955.jpg紺野キタ「あかりをください」


あかりをください
神さま
そこは
私の帰る場所
大切な人を迎える場所



■高校生の鳩子は、保育園児の妹・多実と、サラリーマンの義父・尚典と3人暮らし。今は亡き母が選んだ再婚相手。出会ったときは、まだまだ子ども、けれど高校生になった今、彼は「父親」という名の眩しい存在となった。保育園に多実を迎えにいき、料理を作り、洗濯をして尚典の帰りを待つ。そんな毎日が、とても愛おしく、そして同時に、切ない。家族の中で秘めた想いを抱えたまま揺れる鳩子は…!?

 紺野キタ先生の短編集です。新装版の刊行は、大体一年ぐらい前のこと。収録されているのは、2000年前後の作品と、およそ10年前の作品が中心となっています。前後編で構成される表題作のほか、読切り4編を収録。それでは表題作をご紹介致しましょう。ヒロインは、ごく普通の女子高生・鳩子。母は今は亡く、母の再婚相手の尚典と、妹の多実と暮らしています。主に彼女は家事担当。妹の面倒を見ながら、料理を作ったり買い物をしたりという毎日。そんな生活が、彼女にとってかけがえのないものでありながら、同時に心の内ではとある悩みを抱えていました。それが、昔とは確かに違う、尚典に対して抱く想い。父親としての尚典も、家族としての生活も、全ては一番大事なもの。けれどもそれとは矛盾する自分の正直な想いに、心優しい鳩子は思い悩むのでした。


あかりをください
義父とは血の繋がりはない。家族としての関係を求めるために、このような辿り方で問いかける。しかし抱えている想いが想いだけに、どう返答されても何かしらの形で傷は残る。


 母が亡くなったことで、表向きは家族でも、様式としてはなんとも奇妙な同居生活。主人公の鳩子は、日々形がハッキリとしてくる自分の、義父への想いに思い悩みます。とはいえとてもとても優しい彼女は、この上なく幸せだと感じている今を、壊そうなどとは考えません。あくまで自分の中で消化しようと、努めます。けれどもそれだけで消化できるほど、シンプルで簡単な悩みではなく、時折その感情が吹き出してしまうことも。そしてそんな彼女を救ってくれるのは、父親として接してくれる尚典であるわけで。そんな自分の居場所を、自分の灯りを求め続ける、一人の少女の繊細で複雑な心の内での葛藤を、丁寧に丁寧に描き出していきます。



 十代女子の繊細さ、難しさを描き出すのは、紺野先生お得意のフィールド。ヒロインだけでなく、一緒に登場する親友の女の子に、ちょっぴり百合的な要素を持たせるのもまた少女の想いの儚さが良く出ているようで、なんとも切ないストーリーに仕上っています。男の私では理解できないレベルで、繊細・複雑。様々な感情が入り乱れているという感じ。物語としては、何か具体的に動くわけではなく、あくまで自分の中に結論を出すだけ。しかし動きがないからこそ、物語として面白く、納得の行く話に仕上げるのは難しくなるわけで。それをしっかりクリアしているのはさすが紺野キタ先生というところ。紺野先生自身、百合BL家族ものファンタジー洋ものと様々な作品を描いていますが、この一冊にはそれらの要素がまるまる収まっているような印象。ファンとしては是非とも抑えておきたい一冊となっていると思います。
 
 同時収録の読切りでは、「みあげてごらん」がお気に入り。庭から宇宙からやってきたアンドロイドが掘り起こされるというところから始まる、ちょっとSFっぽいストーリー。実に心優しく素直なアンドロイドと、人の感情の揺れ動きが敏感に読めてしまうヒロインが、だんだんと心を通わせていく、その過程が素敵。全体通して明るさのある話ではないですが、最後に救いを用意してくれているので、読後感は良し。心が読めて人と心を通わせなくなった子が、人間とは違う心を持つアンドロイドを介して少し大人になるというのは、シチュエーションとしてもわかりやすく、親しみやすさがありました。その他、とある少年の恋を描いた「人魚の骨」と、ちょっと90年代トレンディドラマっぽい匂いを感じさせる「ビューティフル・デイズ」(タイトルもトレンディっぽい。。)もオススメです。


【男性へのガイド】
→こういう雰囲気の作品がお好きな方も結構いるのではなかろうか。女性が読んでこそ、共感が得られるものなのかもしれませんが、揺れる少女を見て美しいと思う楽しみ方も同時にできるわけで。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→2000年前後ということで、服装・絵柄が若干古くささを感じさせるものの、それを補って余りある、雰囲気の良さ、繊細な描写。紺野キタ先生好きなら、是非とも抑えておいて欲しい一作です。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*紺野キタ「続きはまた明日」1巻2巻
紺野キタ「SALVA ME」
紺野キタ「日曜日に生まれた子供」
紺野キタ「夜の童話」
紺野キタ「Cotton」


作品DATA
■著者:紺野キタ
■出版社:幻冬舎
■レーベル:BIRZ COMICS GIRL'S COLLECTION
■掲載誌:きみとぼく
■全1巻
■価格:540円+税


■購入する→Amazon

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