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Tag [新作レビュー] 2010.11.27
1102979418.jpg池美留奈「キスに従属」


最近キスをすると安心する…
でも…
どうしてだろう?



■盗賊の頭・リリスは、逃亡中に敵に射たれ、そのまま転落し意識を失ってしまう。気がついたときにいたのは、見知らぬベッドの上。そして目の前には、一人の貴族の男の姿が。ロードと名乗るその男は、リリスを匿い介抱する代わりに、食事のたび、薬を飲ませるたび、包帯を取り替えるたび、キスをすることを交換条件として提示してくる。絶対にイヤだと思ったリリスだったが、ここで拒否して人生を終えてしまうのはもっと嫌だと、その条件を呑むことにする。そして数週間の時が流れ…

 タイトル通り、キスが売りのラブロマンスでございます。作者さんにとっては初単行本となるのでしょうか。主人公となるのは、盗賊団のお頭である女性・リリス。ある日盗みに入って逃げる際、敵の放った矢が当たってしまい、高所から転落、そのまま意識を失ってしまいます。気がついた時には、見知らぬ屋敷の、見知らぬベッドの上、そして目の前には、見知らぬ男が一人。ロードと名乗るその貴族の男は、リリスを匿う代わりとして、何かをする度に自分にキスをしてくれと要求してきます。ここで死ぬわけにはいかないと、渋々その要求を呑むリリス。最初はイヤでイヤで仕方なかった彼女でしたが、彼の優しさと、明るい笑顔の裏に潜む寂しさを知るごとに、キスもイヤでなくなってきます。結局ロードの婚約者の存在により屋敷を出ることになってしまうリリスでしたが…ぽっかりと空いた心の穴を埋めることはできず、ついに…というストーリー。
 

キスに従属
のっけからもの凄い要求。とはいえそれを拒否すれば、高い確率で死が待っている。そりゃあ、呑みますって、うん。顔も悪くないし。


 作者さんコメント欄より、この作品を表すと「とりあえずキスをするお話です(身も蓋もないな…)」とあるのですが、確かに身も蓋もなく、キスをくり返すお話で間違いありません。貴族であったロードは、結局リリスを追って盗賊に。以降、常に行動を共にするようになります。ということは、しようと思えばいつでもキスができるわけで、まぁこのレーベルでこれかよってぐらいキスシーンが頻発します。とはいえただただ乱発するというわけではなく、しっかりと心情とシチュエーションを乗せて展開、キスにもしっかりと味付けを加えます。あくまでロマンチックに、愛を感じるように。ポップさはありませんが、かといってエロティックというわけでもありません。ヒロインが恋愛経験に乏しく、また相手役が子どものような心理状態にある場合があるということが、その要因となっているのかも。表紙や帯から受ける印象ほど、淫微さはないですよ。
 
 単に「キス」と言っても、ヒロインと相手役のロードにとって、キスの意味合いは異なります。リリスにとっては、相手との繋がりを感じることであると同時に、己の相手に対する気持ちを再確認する行為になります。一方のロードは、愛情を受けてこなかったという過去があり、キスという行為に愛情を見出すようになったという、やや歪んだ感性の持ち主。そんな二人の歩み寄り、二人での歩き出しを、キスを交えて描いていくというお話というのが一番しっくりくるでしょうか。
 
 ロマンス追求型のように表紙からは受けたのですが、意外とコメディ要素もあります。大量にある書き下ろし4コマは意外なほど出来が良く、こちらで軽く連載してても十分楽しめそう。花ゆめレーベルですが、作風としては徹底して女子向けの感。てか本来そうあるべきなのですが、最近の花ゆめはは男性向けの感が強めの作品が多くて…。


【男性へのガイド】
→ヒロイン俺っ子でちょいとアホな感じなところもかわいらしいのですが、そこでどれだけ盛り返せるのか。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→初単行本でもクオリティ高いのが白泉社。キスで引っぱるというのが、結果本筋のストーリー展開を弱くしている感もありますが、あくまでキスを活かすためと考えると、そのぐらいのバランスが丁度良いのかも。


作品DATA
■著者:池美留奈
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ
■全1巻
■価格:400円+税


■購入する→Amazon

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