このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] [オススメ] 2010.11.28
1102979986.jpg金田一蓮十郎「ライアー×ライアー」(1)


高槻湊 20歳
生まれて初めて
レベルの高い嘘に飲みこまれそうです



■高槻湊は、母親の再婚によって血の繋がりのない弟・透と暮らす大学生。いつも不特定の女の人と遊んでいる下半身のユルい透に、散々迷惑をかけられてきた湊は、彼のことを毛嫌いし、不仲な状態。そんなある日、ノリで友だちの高校時代の制服を借りて街に出た湊は、偶然にも透と出くわしてしまう。必死になって別人を装った結果、なんとか信じてもらえたけれど、勢い余ってなぜだか透は、「女子高生姿」のほうの自分に惚れてしまったみたいで…。その日から、湊の一人二役の生活が始まったけれど…!?

 「ハレのちグゥ」や「ニコイチ」などの作者である、金田一蓮十郎先生のデザート連載作品でございます。折り合いの良くない血の繋がりのない弟と、思わぬ形で恋愛関係になってしまうというお話。ヒロインは、潔癖性の大学生・湊。恋愛に全く興味のない湊は、好きでもない不特定多数の相手と交際をする弟・透のことが理解できず、毛嫌いしていました。そんなある日、ノリで友達の高校時代の制服を借りて街に出た湊は、そこで透と遭遇してしまいます。「何やってんの」と呆れられ気味で声をかけられた湊は、必死に別人を装います。その結果、なんとか別人だと信じてもらえたのですが、その後思わぬ展開に。なんと透クン、女子高生姿の湊に惚れてしまったようで、以来積極アプローチをくり返すように。強く言えない湊の性格と、全く知らなかった純真無垢な透の一面を知り、結局断りきれないままにズルズルと、その後も関係は続いていってしまうのでした…


ライアー×ライアー
コメディベースで空気感は緩め。その空気感に安心して流されたまま読んでいると、気がつけばとんでもないところにいてビックリ(痛快)。


 金田一蓮十郎先生の作品、もう漫画読みの皆さんには説明不要なくらい有名どころが揃っているわけですが、すみません自分この作品が初めてです。。。変装ものという意味では「ニコイチ」も同じになるのでしょうか。この作品との比較は、他のサイトさんにお任せするとしましょう。こちらで書くのは、あくまでこの作品のみに絞ったお話。作者さんの他作品既読者の感想がどうなのかはわかりませんが、ひとまず端的に感想を言っておくならば、すごく面白かった(面白くなりそう)です!
 
 女子高生の格好をしたら、実の弟に惚れられてしまった…まずこのスタート段階で結構なE難度技を決めているわけですが、物語はそのまま転がっていくように、どんどんとありえない状況を維持したまま進んでいきます。そしてその転がし方が実に上手いのですよ。ズバッと正体を明かしてしまえば全ては終わるわけですが、せっかく面白いことになっているのだから、少しだけ遊んで痛い目見せてやれと、序盤はむしろ積極果敢に湊がきっかけ作りをしていきます。しかしその結果、透に大きな貸しを作ってしまったり、意外に純情な一面を見せられ良心の呵責に苛まれたりと、ズルズルと関係は継続。更には透の積極性に押し負ける形になり、恋愛関係に歩を進めてしまいます。まだ余裕、まだ戻れる、まだ大丈夫をくり返し、気がついてみたら危険水域に。そんなヒロインの状況判断と同じような感覚で、読む側も転がされている、その感覚の心地よさと言ったら…!
 
 物語は女子高生姿のヒロインと弟の二人だけで展開されるわけではありません。普通の状態のヒロインに、そんな彼女に好意を持ってくれる爽やかイケメンも物語に介入。状況的に、恋愛対象として見なくてはならない相手が、二人できることになってしまいます。それまで全く恋愛に興味などなかった彼女は、もうパニック寸前。弟とこんなことにならなければ、先輩一本で心置きなく恋愛を知れるということに気づくこともなく、必死に日々を過ごしていく様子が、実に滑稽。ちなみにここまで弟が気づいていない体で話を進めてきましたが、案外気づいているんじゃないのかな、という気も。その辺は、ヒロイン及び透の過去が明らかになってくるであろう2巻以降でのお楽しみというわけで、これから一層楽しくなってくる目算も十分。これは期待したいですね、オススメです!


【男性へのガイド】
→これは男性も結構楽しめるのではなかろうかと思うのですが。ヒロインの干物女気味なところとか、コメディベースで親しみやすいところとか。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→現時点でも十分面白いのですが、状況が進めばさらに面白くなりそうで、これは強くお薦めしたいです!要チェック!


作品DATA
■著者:金田一蓮十郎
■出版社:講談社
■レーベル:KCデザート
■掲載誌:デザート(連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税


■購入する→Amazon

カテゴリ「デザート」コメント (2)トラックバック(0)TOP▲
コメント

男でも読んでます(笑)
From: うさろる * 2011/02/12 12:36 * URL * [Edit] *  top↑
もぅ、めちゃくちゃ面白いですよね!!
何回読んでも、飽きませんっ!
From: りっち * 2011/09/26 18:30 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。