
ねぇ私
有馬といると
たまに自分でも扱いきれない感情が
湧いてくるんだよ
■桃山家の兄妹・有馬と千尋は、見ためも性格も全然似ていない高校生の双子。両親と、年の離れた兄と姉と一緒に、毎日明るく楽しく暮らしていたけれど、二人は16歳の誕生日を目前に、若干緊張気味。それは、6年前に偶然聞いてしまった、両親の話が原因となっていた。「16歳になったら真実を話す」という両親の言葉に、千尋は不安を抱えていたのだった。そして迎えた、運命の誕生日、告げられた真実は、想像の斜め上を行く衝撃の内容で…!?
読切り集「空の少年」より実に2年半、待ちに待った新作が登場しました。新連載のタイトルは、「桃山キョーダイ」。いつも仲良しな双子の兄妹が主人公の、ファミリーラブコメでございます。桃山家の兄妹・有馬と千尋は、高校1年の仲良し双子。優しい両親と、共に30代の年の離れた兄と姉との6人暮らしは、とっても明るく賑やかで、毎日楽しく過ごしていました。しかし16歳の誕生日が迫るに連れて、双子の気持ちがだんだんとざわめいて来ます。それは6年前、偶然聞いてしまった「16歳になったら真実を話す」という両親の会話があったから。双子なのに、見ためも性格もそこまで似てない、有馬と千尋。特に千尋は、自分だけが血の繋がっていない子なのではないかと、不安を抱え生活してきました。そして迎えた、16歳の誕生日。そこで聞かされた真実は、二人の予想の斜め上を行くもので…!?というストーリー。

このやたらと近い距離感。無防備な妹の、この距離感が、兄の悩みを大きくする原因でもあった。兄妹的視点でも、男女的視点でも、どちらでも納得できるこの微妙な身体的距離感が、たまらないのです。
その真実は、読んでからのお楽しみになるのですが、とりあえず血の繋がり的には恋愛OKという関係になった二人。この作品の面白いところは、6年前に「本当の兄妹ではないかもしれない」という事に感づいてからの、相手に対する思い方がまったく正反対であるところにあります。物語の視点が置かれることの多い、ヒロインの千尋は、特に家族と似ていなかったということから、より家族的な繋がりを、双子の有馬に求めます。血はつながっていなくても、ずっと兄妹だから、と。それに対し兄の有馬は、むしろ血の繋がりがないことを喜び、千尋を恋愛対象として見続けることとなりました。相反する二人の思いは、明かされた真実の元では両立可能。相手の願いを感じるほどに、アプローチできなくなる有馬。そんな彼の苦悩は知らずに、今までの関係を続けようとする千尋。このふたりが描く平行線が、もどかしさと温かさに溢れていて、読んでいると自然と笑みがこぼれてくるのですよ。
視点は女の子の千尋が中心。しかしこの物語、主人公を一人に絞れというのなら、きっと男の子・有馬の方になると思います。有馬の抱える悩みからすれば、千尋の悩みと願いなんて、かわいらしいもの。ただそのことに真剣に悩んじゃう千尋が、本当に可愛らしいし、守ってあげたくなる気持ちもすごくよく伝わってくるわけで。男として見てもらいたいという思いはありつつも、千尋が兄としての自分を望むのであれば、無理をしてまでも今の関係を変えようとは思わない。ちょっぴりヘタレとも取れますが、千尋相手ではそれが精一杯。千尋が妹的な面を見せれば、あっという間にお兄ちゃんの顔になってしまう彼が、望むように千尋に意識してもらうには、まだ時間がかかりそうですね。
【男性へのガイド】
→有馬くんの気持ちが男性にはよく伝わるのではないでしょうか(笑)千尋もかわいく、また家族の温かさ・賑やかさもあり。読みやすい一作だと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→こういう設定は、大好き。ちょっとした捻りもあって、面白いと思います。
作品DATA
■著者:ふじつか雪
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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